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一枚の名車絵 第5回 ボルボ P1800(VOLVO P1800)


高い安全性とモダンなデザインで日本でも人気のスウェーデンのメーカー「ボルボ」。最近ではかつての「四角いクルマ」というイメージから一転、流麗なデザインを持ち、スポーティで若々しい雰囲気も獲得しました。その四角いボルボの時代を代表する「240シリーズ」は1983年から1993年まで製造されましたが、その前身である1966年に登場した「140シリーズ」を含めると、実に長い間、四角いボルボのイメージを形作っていたことになります。また、240の後継である「850」も、140、240シリーズの上位車種となる「740/760」なども含め、四角いボディに6ライトウインドウを備えていました。


◆曲線のVOLVO


ですが、その140シリーズの前のボルボ、120シリーズ「アマゾン」は、四角くないのです。1956年に登場したという背景もあり、時代を反映した丸いスタイルが特徴的でした。また、この頃からすでに3点式シートベルトなどを備え、【ボルボは安全】という姿勢を打ち出しているのは注目に値します。


今回取り上げるボルボ「P1800」も、四角いボルボというイメージとはかけはなれたデザインとなっています。何も知らされていなかったら、これがボルボのクルマだとは思わないかもしれません。P1800は1960年にアマゾンにフルア出身のデザイナーの手によるスタイリッシュなボディを載せ1960年に登場したスポーツカーで、テールフィンとドア付近のボディパネルのえぐれラインが特徴でした。キャビンは小さいですが2シーターではなく、2+2の4人乗りとなっています。


アマゾンがベースであるため、レイアウトは一般的な後輪駆動でした。エンジンは実績があり耐久性に優れていた1.8リッター OHVユニットを採用。ツインキャブなどで武装、100馬力を誇りました。


◆13年にも及ぶ生産期間


copyright_izuru_endo_volvo_p1800_1280_667_2015_12(クリックで拡大)ボディは当初ドイツのカルマン社に製造を依頼していましたが、当時カルマン社は「VWカルマン・ギア」の量産で余裕がなく、イギリスのスポーツカーメーカーである「ジェンセン」での生産が決定しました。ところがこの肝心のイギリス製ボディに品質上の問題があり、ボルボは結局自社での生産を行うこととなりました。1963年のことです。この際、車名がP1800からスウェーデン製であることを示す「1800S」となりました。1800Sではエンジンも強化され、1969年には2.0リットルに換装されています。


さらに1970年にエンジンがインジェクション化されて「1800E」に車名も変更、1971年にはテールエンドをワゴン風に伸ばしてガラスハッチを設けたスタイリッシュなスポーツワゴン「1800ES」も登場しましたが、基本設計が1950年代のアマゾンであるということからメカニズムや操縦性の旧態化が目立つようになり、惜しまれつつも1973年に製造を終了しています。1960年、P1800として登場してからの13年間で約4.8万台が製造されたとのことです。


◆さて、タイトルはP1800ですが・・・


イラストは1967年ころの1800Sです。P1800ではクラシックすぎ、また1800Eではグリルがブラックアウトされてモダンになったため、やはりこの頃のスタイルがいちばん好みなのです。なお、絵のタイトルもこのコラムのタイトルもP1800としていますが、知名度の低い「1800S」という名称よりもP1800のほうがメジャーですし、「この形のクルマはP1800だ」というイメージが強いため、あえてそうしています。


【イラスト/文 遠藤イヅル】
フリーのカーイラストレーター/ライター。東京都出身。自動車雑誌、WEBサイトにクルマをテーマにしたイラストや記事を多数提供。世界各国の生活感があるクルマを好み、20年間で18台のクルマを乗り継ぐ。クレイジーなほど深くて混沌としたクルマ知識を持つ元自動車系デザイナー。自身のクルマ体験をもと、独創的な視点で切り込むイラストやインプレッション記事は、他にないユニークなテイストとして定評がある。2015年7月現在の愛車はプジョー309SI。最新の掲載誌は遠藤イヅルのfacebookで確認!

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