自動車業界を取り巻く社会的傾向の変化のひとつとして「若者の車離れ」が指摘されています。

クルマに関係する企業や機関が行っている、クルマに対しての興味・関心を調べる調査結果などを見ても、若年層ほどクルマに興味や関心があると答える人の割合は10年ほど前と比べると大幅に減少しており、実際に運転免許の取得率も低下しています。

クルマを保有する若者が減少している要因はいくつかありますが、そのひとつが「ライフスタイルの変化」です。
スマートフォンやパソコンの購入費用や通信料金、コンサートやイベントといった娯楽などにお金を使い、高価なクルマを買うほどの経済的余裕がないという事情や、交通インフラの発達した都市部では移動手段としてクルマを持つ必要性を感じないという人もいます。

また、「少子化」の影響や、自動車保険料が他の世代と比べて割高であるというのも若者をクルマから遠ざけている要因です。

こうした状況に歯止めをかけるために、クルマの購入や免許の取得を検討している若者に対して新たなサービスや試みを行っている企業・施設があります。

今回は若者がクルマに興味を抱くための様々な取り組みをご紹介してみたいと思います。


◆JAFが16~17歳限定のサイトを開設


9-82015年5月20日より、JAF(日本自動車連盟)が「U-17世代」限定のサイト「JAF U-17 OPEN CAMPUS」を開設しました。

これは免許取得前の若い世代の方たちに向けてクルマに関する様々な役立つ情報を発信することによって、クルマや自動車免許取得への興味・関心を高め、バックアップしていきたいという思いで開設したサイトです。

本サイトの対象者は16歳・17歳の方限定で、道路上に潜んでいる危険を学ぶための「交通安全動画」やクルマに関する知識、運転免許取得のために役立つ情報などを提供。
またメンバー登録(無料)をするとメンバーズカードが発行され、全国にあるJAF提携の優待施設(スキー場・レストラン・温泉など)でメンバー向けのお得なサービスが受けられるようになるとのこと。

今後も「若者のクルマ離れ」を食い止めるべく様々な活用をしていくようですが、まだ運転免許を取得していない若い世代に積極的にアプローチしていくことで、クルマに興味を持つ若者が増えるかもしれませんね。

今後の展開に期待したいところです。


◆若者に優しい自動車保険


若者のクルマ離れの要因のひとつと言われているものに「保険料による経済的負担の大きさ」がありますが、自動車保険の収益の悪化にもつながる若者のクルマ離れにストップをかけるべく、大手損害保険各社が2015年秋から若者ドライバー向けに新たな自動車保険を投入しました。

初めてクルマを持つ人の保険料を安くするなどのサービスで負担を軽減し、自動車保険への加入を促す狙いがあるようです。

MS&ADグループの三井住友海上火災保険とあいおいニッセイ同和損害保険は、若年世代を中心とした初めてクルマを保有(はじめて自動車保険に加入)する人を対象にした自動車保険を共同開発。
2015年10月から、通常より保険料を6~12%割り引きます。
保険料は既存の自動車保険商品に比べ、年間で1割安くなるそうで、対象者を若者に絞ることで新たな顧客獲得につなげたい考えがあるようです。
また損保ジャパン日本興亜は、20代前半でゴールド免許(優良免許証)を保有する方の保険料の割引率を従来の7%から拡充し、2015年の10月1日以降は12%程度の割引を適用しています。

一般的に自動車保険には、全てのドライバーが加入しなければならない自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)と任意加入の自動車保険があります。
自賠責保険はクルマの購入時に加入が義務付けられるわけですが、クルマを保有するのであれば任意保険への加入も必須です。

しかし若い世代の方にとっては、ここにひとつの壁があるのです。というのも、任意保険は事故を起こすリスクが高い人の保険料は割高となり、事故を起こすリスクが低い人の保険料は割安となるからです。
つまり、運転歴が長い人ほど運転に慣れているため事故リスクが低く、運転歴の短い若い人の方が事故リスクが高いと判断されるわけです。

こうした自動車保険制度が若い世代の方のネックとなっているのですが、そんな中で、若年ドライバーの保険料を安くするという新たな自動車保険の登場は、若者がクルマを持つということに対してポジティブな材料となるのではないでしょうか。


◆若者を惹き付けるユニークな自動車教習所


自動車教習所という言葉からどのようなイメージを思い浮かべるでしょうか?

一般的には特別に楽しい場所という印象はないと思いますが、主に若い世代の方が通う自動車教習所にとって、若者が来ないという状況は死活問題とも言えるわけです。
そういった中で、魅力的な独自のサービスやプランを用意して若者を惹き付けているユニークな自動車教習所もあります。

例えば東京都武蔵野市にある武蔵境自動車教習所は、教習の待ち時間を楽しく過ごせるように、マッサージやネイルアートが格安で受けられるサロンを開設したり、フットサル大会やランニングイベントを開催するなど、ユニークな取り組みで注目されています。
他にも若いママ世代向けの無料託児所などもあり、生徒同士の交流も盛んに行われているといいます。

また、長野県伊那市にある合宿免許の信州伊那自動車教習所は、専任のシェフが作る料理や、週1回のケーキバイキングを実施しており、リゾートホテルのような設備と快適性を備えた宿泊施設が好評を博しています。
他にも、山形県長井市の長井自動車学校は音楽スタジオを無料で利用できたり、静岡県熱海市の熱海自動車学校には熱海ならではの温泉大浴場があるなど、とても魅力的なサービスで若者をもてなしています。

教習所はサービス業であるという考えに基づいて、時代の流れに合わせてサービス内容も変化させているわけですね。
今後様々なサービスを実施する自動車教習所が全国に増えていけば、自動車教習所は楽しい場所だというイメージになり、多くの若者に運転免許取得に対する興味を持ってもらえることでしょう。

価値観が多様化していると言われる今の時代に若者をクルマに惹き付けることは簡単ではありませんが、今回ご紹介したような様々な工夫や試みによって、若い世代の方たちがクルマに興味を持ち
「若者のクルマ離れ」
という自動車業界全体を覆う暗い影を払拭してほしものです。