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<クラウンをベースにロングホイールベース化。3.5Lのハイブリッドシステムを採用>

トヨタクラウンマジェスタ
その昔、トヨタのフラッグシップモデルにはセルシオがあった。しかし、セルシオはレクサスLSとなり、トヨタブランドから姿を消した。その結果、クラウンマジェスタがトヨタブランドの最上級車種となり、現在に至っている。クラウンマジェスタは、クラウンをベースとしているため、クラウンのフルモデルチェンジにタイミングを合わせ、クラウンマジェスタもフルモデルチェンジし発売を開始した。

新型クラウンマジェスタは、基本的な部分は、クラウンと共用している。ただし、単純にクラウンをより豪華にしただけではない。ボディサイズは、クラウンのホイールベースを75㎜延長。この延長分をすべて後席スペースに充て、余裕ある空間を作り出している。

ボディサイズは4,970×1,800×1,460mmとなり、全長以外はクラウンロイヤルと同じで、ホイールベースを伸ばし、2,925mmとしている。全幅はクラウン同様に、1,800mmを死守。これは、国内の立体駐車場などでの使い勝手を重視したものだ。ロングホイールベース化しても、最小回転半径を5.3mに抑え道路の狭い日本でも使いやすいものとなっている。

エクステリアは、王冠を連想させるグリルに、マジェスタ伝統の縦バーを大胆に配した威厳をアピールするフロントフェイスとなった。さらに、精悍さが際立つLED4灯式ヘッドランプを採用。エクステンション部を黒色化したうえ、クリアランスランプのライン発光部をスモークブルーとするなど特別感を演出。しかし、明確にクラウンとの違いがあるようには見えず、パット見た目ではクラウンとの判別が難しい。

インテリは、木目を多用したゴージャスな仕上がりだ。欅(けやき)の流麗な年輪と玉杢(たまもく)の風合いをいかしたサンバースト木目調加飾で室内を美しく演出。ステアリングにも木目調加飾を加え、厳選された本革を使用するなど、最上級車種にふさわしい最上の質感を追求した。



<V8エンジンが消え、3.5Lのハイブリッドだけの設定>

トヨタクラウンマジェスタ今回のフルモデルチェンジで、パワーユニットは、V6 3.5Lのハイブリッドシステムのみの設定となった。先代まであったV8エンジンは姿を消しただけでなく、クラウンのように、ガソリンエンジンの設定すらない。この割り切りの良い設定は好感がもてる。クラウンのように、今時アイドルストップ機能も無く、燃費もエコカー減税の対象とならないのでは、ほとんど意味が無い。クラウンもハイブリッド車だけで良かったのでは? と、話すエンジニアもいるほどだ。もちろん、クラウンマジェスタの場合、月販販売目標台数が、わずか500台。この台数では、複数のエンジンラインアップを設定するなどし、コストをかけてもメリットがないと判断されたようだ。500台という販売目標台数からして、トヨタにとってはもはや存在の薄いクルマなのだが、販売を担当するトヨタ店から「売る車がない」など、営業的なしがらみから抜け切れず生まれたクルマともいえる。

トヨタクラウンマジェスタクラウンマジェスタに搭載された3.5Lのハイブリッドシステムは、基本的にレクサスGS450hと同じもの。しかし、エンジン出力はレクサスGSが217kw&356Nmに対し、クラウンマジェスタは215kw&354Nmと微妙に低い。これは、サイズが小さいGSが700万円オーバーで、クラウンマジェスタは610万円ということもあり、レクサスブランドの顔を立てるためなのだろうか。燃費は同じ18.2㎞/Lを達成している。
クラウンマジェスタでは、実用燃費の向上にも力を入れている。フロントロアグリル後方に、車速やエンジン水温などに応じて開閉するグリルシャッターを装備。空気抵抗の低減や暖機の促進を図り、実用燃費向上に貢献している。こういったところには、トヨタの真面目さがうかがえる。
トヨタクラウンマジェスタ積載性もクラウン同様、大幅に進化した。ハイブリッド用電池の配置を変更することで、トランクルームは大幅に拡大。先代クラウンハイブリッドの弱点とされていたトランクの狭さは改善され、しっかりとゴルフのキャディーバッグが4つ収納できる広大なスペースを確保している。このいった実用性は、ハイブリッド車を作り続けてきたトヨタの技で、他メーカーではユーティリティ性能が劣るケースがほとんどだ。

また、パッセンジャーが、よりリラックスし移動できるように、乗り心地と操縦安定性をボディから見直した。スポット溶接打点の増加など、ボディ剛性を高め、操舵時の優れた車両応答性やグリップ感を確保している。

ベースとなるクラウンより、確実に1クラス上の高級さを手に入れたクラウンマジェスタだが、実際の購入にする場合には悩みも多い。トヨタブランドの最上級車種とはいえ、実際はレクサスLSがライバルではなくレクサスGSがライバルとなる。確かに、レクサスGSがグローバルで勝負するために、走りを鍛えたのに対して、クラウンマジェスタは徹底して国内マーケットを重視し、その要望に応えるため燃費・静粛性・快適性を重視した。そういう意味では、GSとクラウンマジェスタは、明確に方向性が異なるので差別化ができている。クルマを自ら運転して楽しみたいというのならGS。とにかく、移動は快適性重視で、後席にも座ることがあるのならクラウンマジェスタという選択になる。
ただ、価格軸でみると700万円以上するレクサスGSに対して、クラウンマジェスタは600万円台からと、エントリーグレードの価格差は90万円もある。高級という視点なら、クラウンマジェスタもかなり高いレベルにあり、ハイブリッドシステムも同じということならクラウンマジェスタに軍配が上がりそうだ。GSはレクサスの中でも、苦戦を強いられてきたこともあり、国内では存在そのものが疑問視されたときもあった。クラウンマジェスタの登場で、顧客の奪い合いになると、GSはますます厳しい状態になることも予想される。それだけ、クラウンマジェスタが、価格的にもバランスに優れたクルマとみることもできる。


■トヨタ クラウンマジェスタ価格



・クラウンマジェスタ        6,100,000円
“Fバージョン” 6,700,000円


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