EV先進県【神奈川県 電気自動車でスマートドライブ】Vol.2〜ドライブ編〜

神奈川県なら電気自動車でも安心&快適にドライブを楽しめる

神奈川県 箱根町役場

 神奈川県内には2010年3月現在42カ所の急速充電器が設置されている。今もさまざまな場所に設置が進んでいて、2014年度までには100カ所までに増える予定だという。さらに横浜市役所や横浜ベイクォーターなどのショッピングモールなどにも200Vの充電器が整備されているなど、電気自動車の充電インフラは日本一整っているともいえる。これなら航続距離の心配をそれほどしないでもドライブが楽しめるはず。というわけで都内から神奈川県を代表する観光スポットである箱根まで、日帰りドライブに行ってきた。

三菱 i-MiEV(三菱自動車本社前にて)

午前9時:三菱自動車本社(東京・田町)出発

三菱 i-MiEV メーター(出発時)

 午前9時、東京・田町の三菱自動車本社からi-MiEVを借り出す。バッテリーは、もちろんフル充電。トリップメーターをリセットし、箱根までのドライブがスタート。ルートは首都高・芝公園入り口から大黒PAや横浜横須賀道路、そして小田原経由で最終目的地である箱根を目指すというもので、走行距離は、およそ240km。カタログではフル充電で160kmの走行が可能だが、実際には80〜100km程度なので、最低でも3回の充電が必要になる計算だ。

まずは大黒PAで最初の充電

三菱 i-MiEV 充電風景(大黒PA)

  午前10時、大黒PAに到着。電池の容量は十分にあったが、ひとまずここで最初の急速充電を行なった。田町からの距離はジャスト30km。充電残量は12目盛り(フルで16目盛り)で、残りの航続距離は62kmと表示されていた。
 ここまでの電費(?)で単純計算すると、電池がなくなるまで120kmは走れる計算だが、これは比較的条件のいい高速道路がほとんどだったからだろう。箱根の山越えでは、もっと電池の消耗が激しくなるはずなので、念のためここで充電を行なった。約15分の充電で14目盛りまで復活。

三菱 i-MiEV メーター(電池残量)
三菱 i-MiEV メーター(トリップ)
三菱 i-MiEV メーター(残り航続距離)

充電前の残り航続距離は62kmだった。これは直前の走行状態に応じて計算されるため距離が増えることもある。普通のクルマと同じように、高速では電力消費が抑えられるせいか、30km走行したにもかかわらず、出発時の58kmを上回った。

小田原合同庁舎で2回目の充電

神奈川県 小田原合同庁舎

 大黒PAを出発し、12時過ぎに神奈川県の小田原合同庁舎に到着。約65km走行しバッテリーの残量が3目盛りになったので、ここで昼食を兼ねて充電することに。途中、横浜新道で渋滞があったものの、残りの航続距離は18kmと、それなりに余裕があった。当日は比較的暖かかったため、暖房を使うこともなくバッテリーの消費を抑えられたおかげだろう。
 ただ、エアコンを使用していたとしてもギリギリ到着できたはず。というのもエアコンを使用すると、それに応じた残り航続距離が表示されるのだが、大黒PAを出発するときのナビの表示によれば、数kmの余裕があったからだ。ここでの充電時間は約25分で、バッテリー残量は13目盛りまで復活した。よいよ箱根芦ノ湖を目指す。

三菱 i-MiEVと神奈川県 小田原合同庁舎
三菱 i-MiEVと神奈川県 小田原合同庁舎の急速充電器
三菱 i-MiEVと神奈川県 小田原合同庁舎の急速充電器
急速充電器 充電表示パネル

首都高の大黒PAや第三京浜の港北PAなどにある急速充電器は、常時電源が入れられており、24時間使用が可能。ただ、小田原合同庁舎や箱根町役場などにある急速充電器は、使用するたびに役所のスタッフが電源を入れに来る。そのため、夜間などは充電できない場合もあるので注意が必要だ。急速充電器の仕様にもよるが、バッテリーの残量や充電電圧、そして残りの充電時間などがモニターに表示される。

芦ノ湖を目指すもののバッテリーの残量が……

箱根ターンパイク 道路標識

 いよいよ今回のドライブの目的地である芦ノ湖を目指して出発する。だが、ここで問題が発生。トーヨータイヤ ターンパイクを通って芦ノ湖を目指し、箱根新道経由で箱根町役場で充電する予定だったのだが、航続距離がギリギリであることが判明。上り坂ではかなりの電力を消費するはずなので、戻れなくなる可能性もある。だが、なんとかなるだろうという判断の下、ひとまず出発することに。
 いざ山越えを始めると、想像以上に電力の消費が激しい。およそ半分まで上ったところで、すでにバッテリーの残量は6割程度になっている。不安を抱えながらターンパイクの頂上にある大観山のドライブインに着いた時点で、バッテリー残量表示は、わずか2目盛り(フルで16目盛り)になってしまっている。充電場所の箱根町役場までは、下り坂ばかりなので、電力を回生しながら戻れそうだが、芦ノ湖まで行くにはアップダウンもあるので断念。充電のため箱根町役場へと向かった。

三菱 i-MiEV(大観山ドライブインにて)
三菱 i-MiEV 走り(トーヨータイヤターンパイク)
三菱 i-MiEV(大観山ドライブインにて)
箱根 芦ノ湖

箱根の山越えは、想像以上にバッテリーの消費が激しい。標高が上がり、気温が下がったことも影響しているかもしれない。ただ、パワーこそベースのiと同じ64psだがトルクは1.8リッター並みの18.4kg-mもあるので、上り坂でも余裕のある力強い走りが楽しめる。またエンジンとは違い、モーターは静粛性も高いので、車内の会話もしやすい。ドライブにはうってつけのクルマといえそうだ。眼下に芦ノ湖が見えているのだが、バッテリー残量を考え、今回は芦ノ湖の観光ドライブは断念した。

回生ブレーキでバッテリー残量が復活!

三菱 i-MiEV 走り

 箱根町役場までは、ほぼ下り坂。アクセルをそれほど踏み込むことなく、回生ブレーキを使いながら坂を下っていく。電力消費が圧倒的に少なくなるため、大観山ドライブインで13kmだった航続距離も、役場に着いた時点で、なんと38kmまでになった。さらに驚いたのが、バッテリー残量が4目盛りから5目盛りに増えたこと。通常のガソリン車では走行中に燃料の残量が増えるということはないので、これには驚かされた。

バッテリー残量&残り航続距離(大観山ドライブイン)

三菱 i-MiEV メーター(電池残量)
三菱 i-MiEV メーター(残り航続距離)
三菱 i-MiEV(大観山ドライブイン)

バッテリー残量&残り航続距離(箱根町役場)

三菱 i-MiEV メーター(電池残量)
三菱 i-MiEV メーター(残り航続距離)
三菱 i-MiEV(箱根町役場)

トヨタ プリウスやホンダ インサイトといったハイブリッドカーにも回生ブレーキは装備されている。だが、電気自動車の場合は、ありがたみが増す。というのも、ガソリン車は燃料であるガソリンが走行中に増えることはない。しかし三菱 i-MiEVのような電気自動車なら、山の上でバッテリー残量がほぼ空になっても戻ってこられるのだ。

箱根町役場に到着! 中学生がデザインした電気自動車も!!

箱根町役場

 下り坂で回生ブレーキの恩恵を受けながら、なんとか急速充電器のある箱根町役場に到着した。箱根町役場でも小田原合同庁舎と同じく、担当者を呼び出して急速充電器の電源を入れてもらう。だが、電気自動車大国の神奈川県といえども、今回のように飛び込みの充電はほとんどないようだ。箱根町役場の担当者も珍しいようで、今回のドライブ取材の話をした。すると「芦ノ湖湖畔の箱根町総合体育館(レイクアリーナ箱根)にも急速充電器がありますよ」だそう。なんとそんなところに急速充電器があったとは……。事前に充電スポットを調べたときに見逃していたらしい。それならば芦ノ湖のドライブも楽しめたはずだが、時すでに遅し。
 さらに「この役場でも3台のi-MiEVを日常業務に使用しています。そのうちの1台は地元の箱根中学校の生徒がデザインしたカラーリングが施されています。駐車場にあるので撮影しますか?」とのこと。またとないチャンスなので、充電している間に撮影させていただくことに。ちなみにここでの充電時間は約25分。バッテリー残量は5目盛りから13目盛りまで復活。小田原合同庁舎からの走行距離は約40kmだった。

三菱 i-MiEV(箱根町役場にて)
三菱 i-MiEV メーター(電池残量)
三菱 i-MiEV メーター(トリップ)
三菱 i-MiEVと箱根町役場の急速充電器

小田原合同庁舎から大観山ドライブインを経由して、箱根町役場までの走行距離は約40km。田町からのトータル距離も約135kmとなった。急速充電器の場合、電池容量80%までの充電なので、13目盛りまでの復活だ。駐車場の一角にある急速充電器はスペースも広く、利用しやすい。

箱根町役場で使用されている電気自動車(三菱 i-MiEV)

箱根町役場で使用されている電気自動車(三菱 i-MiEV)
箱根町役場で使用されている電気自動車(三菱 i-MiEV)
箱根町役場で使用されている電気自動車(三菱 i-MiEV)
箱根町役場で使用されている電気自動車(三菱 i-MiEV)
箱根町役場で使用されている電気自動車(三菱 i-MiEV)
箱根町役場で使用されている電気自動車(三菱 i-MiEV)
箱根町役場で使用されている電気自動車(三菱 i-MiEV)

箱根町役場では公用車として3台の電気自動車(三菱 i-MiEV)を使用している。そのうちの1台は箱根中学校の生徒がデザインしたカラーリングが施されている。電気自動車を購入した町民への補助制度も用意されている。神奈川県では横浜市や箱根町など、各市町村が電気自動車の普及に対する取り組みを行なっている。まさに電気自動車先進県といえるのだ。

大黒PA経由で田町への帰路につく

大黒PA 道路標識

 箱根までの日帰りドライブもいよいよ終盤を迎えた。あとは三菱の本社がある田町へ戻るだけだが、距離的にどこかで充電しなければ難しそうだ。そこで一気に箱根から大黒PAを目指すことに。距離は約70kmあるが、今までの電力消費量や残り航続距離の表示から判断すれば、ギリギリたどり着けそうだ。
 箱根町役場から大黒PAまではそれほど渋滞もなく1時間30分ほどで到着した。ただ日暮れが迫り、寒くなってきたことで暖房を使用したため、バッテリー残量はゼロ(最後の目盛りが点滅を繰り返している)で、残り航続距離は3kmになってしまった。もちろん航続距離が0kmになった瞬間に泊まってしまうわけではないだろうが、かなりギリギリだったのは事実。その反面、この航続距離表示はかなり正確なようで、走行パターンが急に変わらない限り、ほぼオドメーターと比例している印象だった。
 大黒PAでの充電時間は約30分。12目盛りまで復活したので、後は田町を目指すだけだ。田町までの距離は約30kmで、到着時点のバッテリー残量は5目盛りだった。出発時よりも電力消費は多い印象で、やはりエアコンを使用するとバッテリーへの負担が大きいようだ。

三菱 i-MiEV充電風景(大黒PA)

バッテリー残量&残り航続距離(大黒PA)

三菱 i-MiEV メーター(電池残量)
三菱 i-MiEV メーター(トリップ)
三菱 i-MiEV メーター(残り航続距離)

バッテリー残量&残り航続距離(田町到着時)

三菱 i-MiEV メーター(電池残量)
三菱 i-MiEV メーター(トリップ)
三菱 i-MiEV メーター(残り航続距離)

今回の取材中、最も充電までのインターバルが長かったのが、箱根町役場から大黒PAまでの区間。エアコンを使用したこともありバッテリー残量は、かなりギリギリになってしまった。

神奈川県なら電気自動車でのドライブも楽しめる

かながわの電気自動車(EV)への挑戦

 今回の箱根日帰りドライブの走行距離は236.6kmで、充電回数は4回だった。充電までの最大の走行距離は箱根町役場から大黒PAまでの約70km。バッテリーがフル充電(急速充電器は80%まで)だったと仮定すれば、やはり80〜100kmが1充電あたりの現実的な走行距離といえそうだ。
 そう聞くとガソリン車に比べてずいぶんと短く、めんどくさく感じるかもしれない。だが、充電することによって適度な休憩ができるし、その間に食事や観光もできる。実際、ガソリン車でドライブに出かけたとしても、これぐらいのタイミングで休憩や観光をしていることが多いはずだ。そういった意味では、神奈川県ならば電気自動車でも十分快適に観光ドライブを楽しめる。

三菱 i-MiEV(大観山ドライブインにて)
箱根 道路標識
三菱 i-MiEV(トーヨータイヤターンパイクにて)
三菱 i-MiEV 充電風景(箱根町役場)

神奈川県には箱根を始めとした多くの観光スポットがある。また急速充電器などのインフラが、県内各所に配置されているのも電気自動車ユーザーにとってはありがたい。電気自動車だからという制約をほとんど受けることなく、観光ドライブを楽しめる。

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電気自動車(EV)で神奈川県をスマートドライブ【Vol.1〜自治体インフラ整備編〜】

【新車情報】  written by CORISM編集部 (2010.03.31)

日本で最もEV用充電設備のインフラが整っている神奈川県。航続距離の問題など、普及への道はまだまだ遠いが、神奈川県内においてはそれが現実のものとなりつつある。 >> 記事全文を読む