この記事の目次 CONTENTS
クーペ的ルーフラインが特徴のデザイン
航続距離は十分な485km!
本革を使わない初のボルボ車
ワンペダルドライブも可能
超絶激速!408ps&660Nmの大出力
FR車っぽい走行フィール
コスパに優れるシングルモーター仕様
ボルボC40価格・スペック

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

ボルボC40は、ボルボ初となるEV(電気自動車)であり、初のオンライン販売やサブスクリプションを実施したクルマだ。
プラットフォーム(車台)は、XC40と同じCMAで、ガソリンやディーゼルの他、PHEVやEVにも対応する。
今回はC40の試乗記をお届けする。

クーペ的ルーフラインが特徴のデザイン

C40

ボルボC40とXC40のデザインやシルエットはよく似ている。共通したプラットフォームを採用しているからだ。
ボディサイズを比較してみよう。【全長×全幅×全高(mm)】

  • C40 …4,440×1,875×1,595
  • XC40…4,425×1,875×1,660
C40の外観

大きく異なるのは全高だ。C40は65mmも低くなっている。全高を低くすることで、よりクーペ的で滑らかな弧を描き、テールエンドに向かう個性的なルーフラインを実現した。

このルーフラインをより美しく見せているのが、Cピラーに埋め込まれたように見えるLEDのテールランプの造形である。奥行きのある立体的なデザインで、ユニークなリヤビューを生み出している。C40の最も美しい部分に感じる。
ルーフスポイラーのデザインは、中央部分はルーフからフラットな流れとしながら、両サイドをやや上部に持ち上げている。空力を意識したものだが、なかなか個性的なデザインとなった。

C40のフロントフェイス

フロントフェイスは、ほぼXC40と共通だ。C40はEVなのでグリルが必要ないため、カバー状になっている。フロントフェイスのデザインは、もう少しEVらしい大胆なデザインで攻めてほしいところだ。

C40のリヤエンド

航続距離は十分な485km!

C40のバッテリー容量・航続距離・電費は以下の通りだ。比較の参考として、やや全長が大きいトヨタbZ4X(20インチホイール装着車)も記載する。

  バッテリー容量 航続距離 電費 車重
ボルボC40 78kWh 485km 6.2km/kWh 2,160kg
トヨタbZ4X 71.4kWh 487km 6.8kWh/km 2,010kg

電費はbZ4Xのほうがやや優れている。これは、車重が影響しているようだ。
bZ4XはC40よりも150kgも軽い。XC40は、これから少しダイエットが必要かもしれない。

C40の航続距離485kmを、少ないと感じるか十分と思うのかは人それぞれだ。
EVで長距離走行を何度もした経験から言うと、十分な航続距離といえる。例えば、高速道路で400kmを無休憩で走ることは滅多にないだろう。休憩だけでなく、トイレ、食事などでサービスエリアやパーキングエリアに立ち寄ることは多い。トイレ休憩10分だとしても、その間、急速充電すれば、さらに航続距離は長くなる。こうした継ぎ足し充電を短い時間でも繰り返していると、意外なほど長距離を走行可能になるからだ。慣れてしまえば、それほど気にすることはない。
むしろ、日常使いでガソリンスタンドへ行くことがなくなり、時間の節約や、ガソリンよりかなり安価な電力で走れる経済的なメリットの方が大きい。

 

本革を使わない初のボルボ車

C40のフロントシート

ボルボC40に乗り込もうとすると、まず傾斜したAピラーが少々頭にぶつかりそうな違和感がある。慣れてしまえば気にならない範囲だ。

C40のリヤシート

リヤシートの頭上部分のスペースは少ない。傾斜したルーフの影響だ。やや圧迫感もあり、余裕たっぷりとは言い難い。前席もそうした傾向が強い。

C40の荷室

室内に入ると、XC40とメーター以外ほぼ同じインテリアであることに気付く。

C40のインパネ
C40のメーター

XC40よりも高価なEVであることを考えれば、もう少し差別化しても良かったかもしれない。

C40は、本革を使用しない初のボルボ車となった。
シートだけではなく、インテリアの室内装飾、ステアリングホイール、ギアシフト、マットなどの内装部品にも使われていないのだ。本革の代わりに、耐久性とメンテナンスを損なうことのないプレミアムな合成素材やリサイクル素材を使用している。これがまた、なかなかの上質感なのだ。よほど目の肥えた人でなければ、本革との差が分からないほどの出来である。
サステナブルへの努力は、さすがボルボといえる。

ワンペダルドライブも可能

ボルボC40で走り出してみる。
前後に設置された2つのモーター出力は、408ps&660Nmと超強大だ。CセグメントのSUVでこれだけのパワーはなかなかお目にかかれない。
660Nmは、ガソリン自然吸気エンジン換算すると、約6.6L級だ。C40は車重が2トン超えの2,160kgとはいえ、十分過ぎるくらいの出力である。
走る前からワクワクする。C40のアクセルを一気に踏み込もうものなら、どんな加速が始まるのか十分想像できる。

走り出しは、ゆっくりとわずかにアクセルを踏んだ。C40は、アクセル操作通り、ゆっくりと滑らかに走り出す。アクセルを踏む量はほんの僅かでも、市街地の制限速度にはすぐに到達する。さすが、660Nmのパワーユニットだ。

C40は回生ブレーキを使ったワンペダルドライブが可能だ。市街地走行では、アクセル操作だけで停止まで行える。アクセルとブレーキを踏みかえる必要がないので、ドライバーの疲労軽減にも繋がる。慣れてしまえば、とても快適で便利な機能だ。

普通のガソリン車のように運転したいという人向けに、ワンペダルドライブをオフにする機能もある。オフにすると、アクセルオフ時の減速は、エンジンブレーキのような感覚で減速する。クリープ機能もあるので、違和感なくガソリン車から乗り換えることが可能だ。

 

超絶激速!408ps&660Nmの大出力

C40のバッテリー

C40の実力を体感すべく、高速道路へ向かった。
料金所を過ぎた合流地点で、少しアクセルを深く踏む。少しだけ踏み込んだつもりだが、C40はアッという間に速度を上げた。わずかにシートに押し付けられ、頭が後方に持っていかれるような軽いGがドライバーにかかる。スムースで、心地よい加速感だ。高速道路でも、アクセルはほんの少し踏む程度で十分に速度をコントロールできる。

C40に慣れてきたところで、ようやく408ps&660Nmを全開放!
アクセルを床まで踏みつけた瞬間、ドン! と、体全体が後方に引っ張られるような加速Gを感じる。あっという間に制限速度に達した。なんと、C40の0-100km/h加速は、わずか4.7秒とスポーツカー並みだ。
しかもCセグメントのSUVで、価格は700万円前後だというのだから、コストパフォーマンスも抜群である。

FR車っぽい走行フィール

通常走行時、C40の加速感は、FR(後輪駆動)車のように後ろから押されているような感覚だ。リヤタイヤにグッとトルクをかけて走る。
FF(前輪駆動)ベースが中心のボルボ車としては、かなり異質な走行フィールだ。だが、気持ち良いハンドリングに一役買っている。

気持ちの良いハンドリングを生み出している大きな理由は、約500kgもあるリチウムイオンバッテリーを床下に配置したことだ。重量物を床下に設置したことで、重心高は大幅に下がっている。前後重量バランスは、バッテリーの最適配置によってほぼ50:50となった。
さらに、バッテリーを保護するための強固な安全ケージによって、ボディ剛性も向上した。こうした理由で、C40の運動性能はかなり高いレベルになった。

ステアリングを操作すると、C40はスッと曲がり出す。重量級ボディなのに重さをほとんど感じさせない。
一般的に、背の高いSUVは重心も高い。そのためカーブを曲がる際、車体はそれなりに傾くのだ。ところが、C40は車体がほとんど傾いていないような感覚で走り抜けるフラットライドを実現している。これは、低重心化されたメリットといえる。

カーブではかなりの旋回Gがかかる。だがステアリングを切り足しても、グイグイとイン側に曲がり出すのだ。ポテンシャルは、非常に高い。
カーブの立ち上がりでは、アクセルを踏むとリヤタイヤにグイっとトラクションがかかり、怒涛の加速を始める。AWDなので、リヤタイヤが滑り出せば瞬時に前後のトルク配分を最適化してくれるので安心してアクセルを踏める。
タイヤサイズは、フロントが235/45R20、リヤが255/40R20だ。リヤのタイヤが幅広なことからも、いかにFR的な走りを狙っているのかよく分かる。

アクセル操作に対するモーターの反応速度は、ガソリン車の比ではない。超速レスポンスは、まるで背の高いスポーツカーのような走りを披露した。

こうした走りを楽しんでいるときも、室内の静粛性は極めて高い。ガソリンエンジンが高回転域に入ったときの高揚するエンジン音や排気音などが無いので、スポーツ走行している時はとくに走っている感が少ない。これも慣れの問題かと思う。ヒュイーンとかキーンといった高まるモーター音もなかなか慣れてくるとワクワク感が出てきたのだ。

乗り心地は、やや硬め寄りのしなやかさをもつ。重い車重が効いているのか、シットリとした乗り味だ。

 

コスパに優れるシングルモーター仕様

ボルボC40は、かなり刺激的なクルマに仕上がっていた。

  • ボルボ初のEV
  • CセグメントのSUV
  • スポーツカー並みの出力

走行性能にこだわる人にとっては、かなり面白く魅力的といえる。試乗後、欲しくなった1台でもある。

だが、ボルボのデザインや安全性能などに興味がある人にとっては、C40リチャージツインはかなりオーバースペックになる。とても重い荷物を常に積んでいる状態で、無駄に電力を消費していることになるからだ。
そういう人にとっては。2023年モデルとなるが、シングルモーター仕様がよい。出力は231ps&330Nm。バッテリー容量は、ツインモーターより少し減り69kWhとなる。航続距離は(欧州WLTP モード)で434kmだ。
価格は599万円と、輸入EVとしてはリーズナブルといえる。

ボルボC40価格・スペック

ボルボC40価格

【2022年モデル価格】

  • C40 Recharge Twin(4WD、ピクセルLEDヘッドライト装着車) 7,190,000円
  • C40 Recharge Twin(4WD、ピクセルLEDヘッドライト非装着車) 6,990,000円

【2023年モデル価格】

  • C40 Recharge Plus Single Motor(FF) 5,990,000円 
  • C40 Recharge Ultimate Twin Motor(4WD) 6,990,000円

ボルボC40 Recharge Twin電費、充電時間、出力などスペック

代表グレード C40
ボディサイズ 全長4,440mm×全幅1,875mm×全高1,595mm
ホイールベース、最低地上高 2,700mm、175mm
車両重量 2,160kg
最小回転半径 5.7m
定員 5名
駆動方式 4輪駆動(AWD)
蓄電池種類 リチウムイオン電池
総電力量、総電圧 78kWh、396V
充電時間 28分(10~80%、速充電所要時間は150kW直流充電器を使用)
モーター最大出力 300kw(408ps)/4,350-13,900rpm(システム合計)
モーター最大トルク 660N・m(67.3kg-m)/0-4,350rpm
一充電走行距離WTLCモード 485km
サスペンション マクファーソンストラット
タイヤサイズ 前:235/45R20、後:255/40R20