EV先進県【神奈川県 電気自動車でスマートドライブ】Vol.1〜自治体インフラ整備編〜

神奈川県は電気自動車大国

神奈川県庁とEV公用車(三菱 i-MiEV/スバル プラグイン ステラ)

 環境意識の高まりもあり、何かと注目されている電気自動車。だが電気自動車は、まだまだ航続距離が短い(三菱 i-MiEVで実質80〜100km程度)のがネックだ。やはり充電インフラがガソリンスタンドほどは整っていないので、今までのガソリン車やハイブリッドカーのように気軽に使えるわけではない。とはいえ、全国の自治体などを中心に、充電インフラや購入時の補助金など、電気自動車の普及に向けた取り組みはなされている。その中でも神奈川県と横浜市を始めとした県内の市町村は、最も電気自動車の普及に力を入れている自治体といえる。

神奈川県

神奈川県庁とEV公用車(三菱 i-MiEV/スバル プラグイン ステラ)

神奈川県では電気自動車(三菱 i-MiEVとスバル プラグイン ステラ)を公用車として使用している。また通常業務のない土日などに公用車をレンタカーとして貸し出すなど、電気自動車の周知、普及に取り組んでいる。

10km圏内に最低ひとつの急速充電器を設置

神奈川県 環境農政部 電気自動車担当課長 山口健太郎氏

 神奈川県では「かながわ電気自動車普及推進協議会」を立ち上げ、2014年度までに県内に3000台の電気自動車を普及させるべく、充電インフラなどの整備に取り組んでいる。電気自動車は、まだまだ航続距離が短く(三菱 i-MiEVで160km)今までのガソリン車やハイブリッドカーのように気軽に使えるわけではない。だが、神奈川県では県内を10km四方のメッシュに分け、そのエリア内に最低ひとつは急速充電器を設置している。そのため安心して電気自動車を利用できる。
 電気自動車の充電方法は100Vまたは200Vの普通充電と最大30分の急速充電があるが、神奈川県では急速充電器をメインに整備を進めている。「普通充電でも1〜2時間で10km程度走れる充電は可能です。しかし、それだけの時間を充電のために潰すのは効率的ではありません。何かのついで(買い物など)に補充電で、というやり方には有効だと思います。ですが、急場しのぎで飛び込みで充電できるという意味では、やはり急速充電の方が10〜20分でも50〜60kmは走れますので安心感は高いと思います。そうした理由で急速充電器の普及に力を入れてきました。もちろん普通充電を否定しているわけではなく、ふたつの方向性(急速充電と普通充電)で充電インフラの整備を進めています」と、神奈川県 環境農政部 電気自動車担当課長の山口健太郎さんは話す。
 神奈川県では三菱 i-MiEVとスバル プラグイン ステラを公用車として使用している。そのクルマを、県庁が休みの土・日・祝日に「EVシェアリングモデル事業」として貸し出している。この公用車の充電だが、県庁内に太陽光発電を利用した充電システムを利用しており、さらなる環境への配慮もなされている。またEV普及元年ともいえる2010年度から「EVタクシープロジェクト」を開始するなど、一般のユーザーに電気自動車を身近なクルマとして知ってもらえるような取り組みも行なっている。電気自動車に対する優遇策も自由実しており、購入時の補助金や軽自動車税の免除、そして有料駐車場の割引や県内有料道路の通行料補助なども行ない、電気自動車の普及を推進しているのだ。

自然エネルギーを利用した独立型リチウムイオンEV充電スタンド
神奈川県では県庁前に太陽光パネルを設置。公用車の充電(200V)は、このシステムを利用しており、究極のゼロエミッションを目指している。
自然エネルギーを利用した独立型リチウムイオンEV充電スタンド
シャープ製の太陽光パネルにエリーパワー製リチウムイオン電池を組み合わせている。このため夜間や雨などでも自然エネルギーを利用した充電が可能。
神奈川県庁に設置されているEV急速充電器
県庁を始め、県内各所に急速充電器を設置。詳しい設置場所は、県の公式サイト内「かながわの電気自動車(EV)への挑戦」などで確認できる。

横浜市

横浜ベイクォーター 200V充電設備

横浜市では地元のショッピングモール「横浜ベイクォーター」などと連携し、200Vの普通充電設備を市内各所に整備している。買い物中にある程度の充電ができ、利用者にとっては利便性が高い。

補助金を交付し200V充電器の設置を進める

横浜市環境創造局 環境保全部 交通環境対策課 担当係長 井上武史氏

 横浜市では全国でもまれに見る勢いとスピードで電気自動車の普及を目指している自治体といえる。そこで重要なのが、やはり充電インフラの整備だろう。横浜市では実際にどのような取り組みをしているのか? 横浜市環境創造局 環境保全部 交通環境対策課 担当係長 井上武史さんにお話しを伺った。
「神奈川県が電気自動車の普及を進めており、横浜市も県内にある自治体ということで、基本的には同じ方向性です。ですが、横浜市としては急速充電器に関する働きかけは行なっていません。急速充電器よりも200Vの普通充電の方が、さまざまな面から対応がしやすいのではと考えています。まず普及の第一段階としては200V充電を優先するべきだと考えています」とのこと。
 これはやはり設置費の問題(設置費込みで急速充電器は700〜800万円)もあるようだが、基本的にはユーザーが夜間に充電を行なうのを基本にするべき、との考えから。昼間に急速充電器を使うよりも、夜間電力を有効活用する方が、電力需要を考えると理に適っているからだという。というのも民間の施設に充電器の設置を依頼するときに、基本料金が上がってしまうことなども考えられるし、充電にかかる電気代も夜間の方が安い。設置時のコストだけでなくランニングコストも多くかかってしまう場合がある。充電器設置事業者の負担を考えると、急速充電器はややハードルが高い。そういった意味で、やはり200Vの普通充電が有利だということのようだ。
 横浜市では200Vの充電器の設置について最大20万円の補助を行なっている。安全面や使いやすさなどの点から横浜市が認定している豊田自動織機の200V充電器は40〜50万円(設置費別)とのことで、約半分は横浜市からの補助でまかなえる。工事費を考えても急速充電器よりはかなりコストが安い。また電気自動車の購入時の補助金も行なっており、それは平成22年度も継続される予定だという。

横浜市内にあるショッピングモール「横浜ベイクォーター」200V充電設備
横浜市では、市内のショッピングモールなどに200Vの充電器設置を進めている。市役所の敷地内などにも設置が進む。
豊田自動織機製 200V充電器
豊田自動織機製の200V充電器。横浜ベイクォーターでは、専用の駐車スペースを設け、充電ができるようになっている。
電気自動車 充電風景
豊田自動織機製200V充電器は、誰でも簡単に利用できるのが特徴。安全性も高く、横浜市の補助金対象としても認められている。

横浜ベイクォーター

横浜ベイクォーター 店舗外観

200V充電器が設置されている横浜市内のショッピングモール「横浜ベイクォーター」

●営業時間:ショップ & サービス 11:00〜21:00/レストラン&カフェ11:00〜23:00
※店舗によって異なる。

●駐車場
収容台数
730台(車高は2.2mまで)
営業時間
8:00〜23:00(出庫は24:00まで)
駐車料金
30分ごと300円(税込)
駐車サービス
1.横浜ベイクォーター
1店舗3,000円(税込)以上のお買上げで1時間無料
※駐車券を売場でご提示ください。
2店舗目以降も各店舗3,000円(税込)以上のお買上げで
1時間の駐車サービス券をお渡しします。

2.そごう横浜店
2,000円(税込)以上のお買上げで1時間30分無料
※駐車券を売場でご提示ください。

●問合せ先
TEL:045-450-6811(横浜ベイクォーター駐車場直通)
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電気自動車(EV)で神奈川県をスマートドライブ【Vol.2〜観光ドライブ編〜】

【新車情報】  written by CORISM編集部 (2010.03.31)

電気自動車の充電インフラが整っている神奈川県では、急速充電を行ないながら、観光ドライブも楽しめる。三菱 i-MiEVによる箱根日帰りドライブレポートをお届けする。 >> 記事全文を読む