東京モーターショー2009 私が選ぶ注目の1台「スイフトプラグインハイブリッド」【御堀直嗣コラム「EV(電気自動車)の未来」 Vol.3】

スズキスイフトプラグイン・ハイブリッド[東京モーターショー2009　スズキブース　出展車両]

プリウスやインサイトとは違うハイブリッドシステムを選択。そのワケは！？

　先ごろ始まった東京モーターショー。今年は各自動車メーカーからハイブリッドカーが目白押しの出展となっている。
　その中で、スズキの「スイフト・プラグイン・ハイブリッド」は、他のハイブリッドカーと様子が違う。ハイブリッドカーの種類でいうと、シリーズ式と呼ばれる方式で、プリウスやインサイトなどのパラレル式とは別の方式を選んできた。
　わかりやすく言えば、『ほとんど電気自動車に近いハイブリッドカー』である。つまり、クルマを走らせるのはモーターで、エンジンは、そのモーターに電力を供給するための発電機を動かす動力でしかない。
　電気自動車だと一回の充電で走行できる距離は限られるが、発電用エンジンを積んでおけば、発電機を動かすエンジン用にガソリン補給すれば、エンジン車と同じように遠出ができる。
　同様の方式を採用するのは、アメリカ・ビッグスリーの一角であるGMのボルトというハイブリッドカーだ。スズキとGMの永年にわたる関係からすれば、なるほど、縁の深い技術的つながりがあると想像させる。
　また、スイフト・プラグイン・ハイブリッドは、電気自動車と同じように家庭でバッテリーに充電できる充電プラグを備える。したがって、20km程度の近距離の用事であれば、まったく電気自動車と同じに使うことができ、その間ガソリンエンジンを運転することはない。また、深夜電力で充電すれば、電気代はガソリン代よりはるかに安上がりになる。

シリーズ式ハイブリッド、意外な落とし穴！？

　シリーズ式ハイブリッドカーで気掛かりなのは、発電用エンジンが作動した際、クルマの加減速と関係なく、エンジンがほぼ一定回転で回ることだ。したがって、エンジン車に乗りなれた感覚からすると、速度変化と関係なくエンジンが回るので違和感が出やすい。
対策として、クルマの加減速にあわせ、エンジン回転をある程度エンジン車のように上下させるという、演出を加えることもできる。それは、マツダが前回(2007年)の東京モーターショーに出展し、今年3月からリース販売しはじめたプレマシー・ハイドロジェンREハイブリッドで行っている。
　プレマシー・ハイドロジェンREハイブリッドは、水素ロータリーエンジン開発の一環として誕生したクルマで、水素ロータリーエンジンで走るのではなく、発電機を動かすために利用し、走行はモーターのみで行う。ただし、マツダはZoom〜Zoomを標榜し、マツダ車はどれも運転の楽しめるクルマであることを特徴としているので、加速感には単に加速性能のよさだけでなく、エンジン音を含めた雰囲気も大切だと考えた。
　そこで、プレマシー・ハイドロジェンREハイブリッドは、発電機用としての効率を考えれば一定回転で水素ロータリーエンジンを運転するのが最適だが、加速感をエンジン音でも楽しめるよう、わざわざ加速中は水素ロータリーエンジンの回転数を高めるという演出をしている。
　こういう実例があるのだから、スイフト・プラグイン・ハイブリッドも、加速にあわせエンジン回転数をある程度高めていくという演出は不可能ではないだろう。走りの壮快さで人気を高めたスイフトであるから、スイフト・プラグイン・ハイブリッドもそうした雰囲気を備えたハイブリッドカーとして市販に移されるなら、期待して待つ人は多いのではないか？

( レポート：御堀直嗣[みほりなおつぐ：モータージャーナリスト] )

車名	スズキスイフトプラグイン・ハイブリッド
ボディサイズ［mm］（全長×全幅×全高）	3755×1690×1510mm
車両重量［kg］	−
ホイールベース［mm］	2390mm
発電用エンジン	658cc/出力40kW
発電用モーター	永久磁石同期電動機/最大出力40kW
駆動用モーター	永久磁石同期電動機/最大出力55kW
動力用電池	リチウムイオン電池/定格電圧260V/容量2.66kWh
充電電力使用時走行距離	20km※外部電源による電力を用いて走行可能な距離
駆動方式	FF

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