マツダの新アイドリングストップ機構「マツダi-stop」を搭載した新型 アクセラ

イマドキ、ハイブリッドカーを持たないメーカーは冷や汗モノ・・・

マツダの新アイドリングストップ機構「マツダi-stop」を搭載した新型 アクセラのエンジンルーム

　世の中、新型プリウス205万円というショッキングな価格で大いに盛り上がっている。クルマの価格でこれだけ盛り上がるというのも例がないくらいだ。さらに、追い風でハイブリッド車を中心としたエコカーの重量税・取得税の減免・減税が始まった。
　そんな中、ハイブリッド車を持たない自動車メーカーは冷や汗ダラダラ状態。ようやくその危機感に対する答えともいえる技術が発表された。それがマツダの「i-stop」だ。これはいわゆるアイドリングストップ技術。プリウスもインサイトも停車時には、当たり前のようにアイドリングストップするので、一般の人には何を今更感があるかと思う。ところが、一般のクルマにはまだまだ普及していない。
　その理由の多くは、システムの開発コストがかかり、車両価格が高くなると売りにくくなるなどの企業側の論理によるものだ。ところが、世の中が本気でCO2の排出量に対して真剣に取り組み、またユーザーも燃費は家計に大きく直結することを実感し始め、今回のように燃費基準に対して重量税・取得税の減免や減税がされたりする方向性が明確化されると、燃費＝販売台数に比例という方程式ができあがる。自動車メーカーとしては、まさに大きなターニングポイントとなった。

アイドリングストップ機構「マツダi-stop」を搭載した新型 アクセラのロゴマーク

　とはいえ、燃料電池車や水素自動車など、次世代自動車に関しては開発投資をしていたものの、今すぐできる現実的な大幅な燃費改善策を怠ってきた。そして、今更ハイブリッド車はすぐには作れないとなったなら、アイドリングストップというベーシックな技術を導入するのが一番早い。マツダはその選択が早かった。未だ日産やスバルなどからは、アイドリングストップに関する情報は入ってこない。
　そういう意味で、マツダのi-stopはシンプルなシステムでリーズナブルな燃費改善策として期待できる。既存のアイドリングストップとはいえ、ただ単純にスターターでエンジンの停止と始動していないのがマツダ流のテクノロジー。スターターの力をアシストとして、シリンダー内に直接燃料を噴射できる直噴エンジンの利点を生かし、スグにエンジンを始動できる仕組みを開発。クルマが停止するときに、ピストンが最適な位置で停止する新クランク角センサーを開発するなど、熟成されたアイドリングストップ機能を開発したのだ。この技術により、エンジンの始動時間はわずか0.35秒と短く、ブレーキペダルを放しアクセルに足を乗せた頃にはすでにエンジンは始動済みで、いつでも発進できる状態にある。

「i-stop」は、オプション装備と言わず全車標準装備とすべきだ！

アイドリングストップ機構「マツダi-stop」の機能を表示するマルチインフォメーションディスプレー

　さて気になるアイドリングストップ時は？　と、いうと基本はDレンジのみでアイドリングストップし、ブレーキを離すとエンジンが始動する。その間、バッテリーの容量が通常ならアイドリングはストップし、空調やナビなどは普通に使用することができる。バッテリーの容量が不足気味になると、自動的にエンジンが始動するのでバッテリー上がりなどの心配もない。エンジン停止・始動時の振動も若干あるものの、とくに気になる程度ではない。
　エコ意識を高めるためにセンターコンソール上部には、エンジンの停止時間を表示するマルチインフォメーションディスプレーが装備されている。ディスプレーには、およそ8.4時間で1本の木が育つというものだ。軽く毒を吐かせてもらうが、ビアンテに燃費計すら付けなかったメーカーとは思えないほどの意識の変化だ。
　こういった技術を駆使し、i-stopは約10％程度の燃費向上を果たした。このi-stopを新型アクセラにオプション装備する予定。マツダは2015年までに、マツダ車の燃費を30％向上させるという技術開発の長期ビジョンを設定している。そういったビジョンを設定しているのに対し、新型アクセラのアイドリングストップ機能i-stopは、残念ながらオプション設定。このi-stop技術は直噴エンジンに広く使えるのだから、限りなく短い期間でビアンテやプレマシーなどへの展開に期待したい。それこそ「○○年までに全車i-stopを標準装備にします！」くらいの意気込みと覚悟を見せて欲しい。少なくとも今年1年はハイブリッドが主流になることは間違いなく、うかうかしているとトヨタに全部持っていかれる可能性も高い。今、マツダのブランド価値を一般ユーザーに訴えることのできる技術はi-stopしかないのである。この技術に日産・スバルが相乗りする前に宣言してしまうことが重要だ。

アイドリングストップ機構「マツダi-stop」を搭載した新型 アクセラの試乗風景

written by 大岡 智彦
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