日本車が世界に秀でている点は数あれど、他国に真似ができないのが、軽自動車であり、そのなかでも今回取り上げるクロカン4WDだろう。軽自動車ならではのコンパクトな規格のなかで、本格的な性能を確保しているのは驚くべきことだ。
今回は、元祖たるスズキ ジムニーと三菱 パジェロ ミニを対決。スズキが40年にもわたって培ってきたノウハウが詰まったジムニーは、日本のみならず世界中にコアなファンを持つほど。一方のパジェロ ミニは三菱の看板モデル、パジェロの血統を受け継いだスタイルはじつにユニークで、走りに関しても贅沢な機構を備える。
どちらも高い評価を受けており、登場から約10年経過した長寿モデルというのも共通している。オンロードからオフロードまで、高い走破性が求められるつつ、独特の雰囲気演出も重要になるだけに、意外にレベルの高い対決になりそうな気配だ。
- この記事の目次 CONTENTS
- 三菱 パジェロ ミニのファーストインプレッション
- 三菱 パジェロ ミニの性能
- 三菱 パジェロ ミニのエンジン&インテリア
- スズキ ジムニーのファーストインプレッション
- スズキ ジムニーの性能
- スズキ ジムニーのエンジン&インテリア
- 日常ユースならパジェロ ミニ、アウトドアレジャーでならジムニーがおすすめ
三菱 パジェロ ミニのファーストインプレッション
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スズキのジムニーの独壇場だったところに、三菱 パジェロ ミニが登場したのは1998年。つまり軽自動車の規格が変更され、ボディサイズが拡大されたときだから、長寿命モデルといっていい。
スタイルと車名を見ての通り、三菱の看板モデルであるパジェロをモチーフにしたもので、当時はリッターカーのパジェロ ジュニアもラインナップされ、パジェロ3兄弟と言われていた。その後、ジュニアは消滅し、ミニが末っ子として生き延び、現在に至っている。
デビュー10年以上経過したものの、古くささはまったくなし
パジェロに呼び名が準じたグレードはかなり豊富で、エンジンは自然吸気とターボの2タイプが用意されているのだが、3気筒ではなく4気筒としており、静粛性と滑らかなフィーリングという点で大きなアドバンテージとなる。
ミッションは4速ATをメインにしつつ、5速MTも用意。肝心の4WDシステムはイージーセレクト4WDと呼ばれるモノで、手動で切り替えるタイプだ。
そして4WDだけでなく、2WD(FR)も用意され、走り重視からスタイル派まで幅広い需要に応えているのも特徴だろう。
マイナーチェンジ後もまずまずの販売台数を記録
最新のマイナーチェンジでは、フロントまわりを現行パジェロ風にチェンジ。そして内装ではシート地の変更やインパネまわりの質感アップなどを行なっている。
また、さらに日産にはキックスの車名でOEM供給され、こちらもまずまずの販売台数を記録しているのもトピックスとなる。
三菱 パジェロ ミニの性能
三菱 パジェロ ミニの性能について詳しく解説。
エコ&燃費:設計自体が古く、それほどよくない
設計自体が古く、最近のクルマと比べるとかなり遜色がある。燃費も10・15モードではどのグレードも15km/L台だが、実際はエンジンをかなり回して走るだけに、それほどよくない。燃費重視なら2WDモデルを選ぶのも手だ。
安全性能:4WDは標準装備だが2WDはオプション設定
ABSは4WDモデルに標準装備されるものの、2WDにはオプションというのはメーカーの安全に対する姿勢が問われるところ。RISE(衝突安全強化ボディ)は前面/オフセット/側突の各衝突基準で高いレベルを実現している。
取材時実測燃費
8.9km/L
パジェロ ミニ価格帯
123.48〜165.9万円
三菱 パジェロ ミニ エクシードのスペック
三菱 パジェロ ミニ エクシードのスペックは以下の通り。
ボディサイズ(全長x全幅x全高) | 3395×1475×1665mm |
車両重量 | 990kg |
エンジンタイプ | 直列4気筒SOHCターボ |
総排気量 | 659cc |
最高出力 | 64ps(47kw)/6000rpm |
最大トルク | 9.0kg-m(88N・m)/4000rpm |
ミッション | 4速AT |
10・15モード燃費 | 15.0km/l |
サスペンション(前/後) | ストラット/5リンク式 |
ブレーキ(前/後) | ベンチレーテッドディスク/ドラム |
税込価格 | 159.6万円 |
三菱 パジェロ ミニのエンジン&インテリア
三菱 パジェロ ミニのエンジン&インテリアについて詳しく解説。
オフロードのみでなくオンロードの静粛性も抜群
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パジェロ ミニはターボエンジン(写真)だけではなく、自然吸気エンジンも用意。4気筒らしいフィーリングと静粛性が特徴だ。
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上級モデルのエクシードは15インチのアルミホイールが標準装備。悪路や雪道はもちろん、オンロードの静粛性も満足できるもの。
クロカンよりも乗用車ライクなインテリア
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マイナーチェンジでインテリアの質感が大幅にアップした。クロカンらしい無骨な雰囲気はあまりなく、乗用車ライクな印象だ。
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大型のグローブボックスや小物入れ、そしてドリンクホルダーなど、運転席まわりの収納スペースは豊富で使い勝手はとてもいい。
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フロントシートまわりのスペースは十分満足できる。クッションの厚みもあるので、長距離ドライブでも疲労感は少ない。
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最近のハイト系軽自動車ほどの余裕はないが、それでも大人が十分座れるだけのスペースは確保され、ファミリーユースにも耐える。
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ミッションは4速AT(写真)のほかに、一部のグレードでは5速MTも選択可能。最新のATよりは、やや変速ショックが感じられる。
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本格的な副変速機を備え、悪路から雪道まで高い走破性を発揮してくれる。また一部のグレードには2WD(FR)も用意されている。
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基本設計は古いが、マイナーチェンジで現代的なデザインのメーターになった。視認性は良好で、質感の高さもまずまずのレベル。
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4人乗車時のラゲッジスペースは、実用上困らないだけの広さが確保されている。開口部の広さも大きめで、荷物を積みやすい。
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リヤシートは左右分割して倒すことができ、使い方にあわせたアレンジが可能だ。
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リヤシートを倒せば広くフラットな空間が現われる。アウトドアでの使い勝手もいい。
スズキ ジムニーのファーストインプレッション
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なんとスズキ ジムニーの初代が登場したのは、1970年のこと。まだ360cc時代で、2ストロークエンジンを搭載していた。ちなみにさらなる源流は、別の会社が作っていたホープ スターというモデルにさかのぼる。
それだけにさまざまな改良や仕様変更がなされて現在に至るのだが、現行モデルはまだ3代目となるから、各代の長寿ぶりには目を見張るばかり。軽自動車ながら本格的4WDとして高い性能を実現しているからにほかならなず、多くのクロカンライバルに対してもジムニーは堂々と肩を並べるほどだ。
サムライの名前で海外でも人気、軽を超えた高い悪路走破性
ジムニーがそれほどまでに高い評価を得る秘密は、軽量ということもあるが、本格的ラダーフレームを採用しているということが挙げられる。さらに懐の深いサスペンションを組み合わせることで、悪路走破性を高めているわけだ。
そして4WDシステムについては、もちろんジムニーならではの信頼性の高いモノを採用しているが、スイッチひとつで2WD/4WD/4WD-Lが切り替えられるのもイージードライブという点でじつにありがたい。室内のデザインも含めて、以前のような無骨な雰囲気は薄まってしまったが、余裕たっぷりの最低地上高や対障害角度など、性能面では未だに本格派だ。
グレードラインナップは少々さみしく2タイプのみ
ただし、現在のグレードラインナップは少々さみしく、2タイプのみで、それぞれ4速ATと5速MTが用意されるのみ。とくに先代まであった幌タイプがないのは少々さみしい。
スズキ ジムニーの性能
スズキ ジムニーの性能について詳しく解説。
エコ&燃費:工夫は見えるが環境性能重視とは言えない
エンジン自体の設計も古く、環境性能を重視しているとは決して言えない。強いていえば、オンロード走行時は2WDとすることで、燃費向上を図っていることと、エンジンとラジエータをアルミ製とすることで、リサイクル性が高いことが上げられる。
安全性能:安全性に貢献したボディだが、致命的な欠点が
スズキの安全ボディであるTECTを採用。さらに堅牢なラダーフレームも安全性に貢献しているだろう。ABSやプリテンショナー式シートベルトも全車に標準装備されている。だが、ベースモデルでは後席のヘッドレストがオプションですら装着できないのは致命的な欠点だ。
取材時実測燃費
8.7km/L
ジムニー価格帯
126.0〜158.025万円
スズキ ジムニー XC(4速AT)のスペック情報
スズキ ジムニー XC(4速AT)のスペック情報は以下の通り。
ボディサイズ(全長x全幅x全高) | 3395×1475×1715mm |
車両重量 | 1000kg |
エンジンタイプ | 直列3気筒DOHCターボ |
総排気量 | 658cc |
最高出力 | 64ps(47kw)/6500rpm |
最大トルク | 10.5kg-m(103N・m)/3500rpm |
ミッション | 4速AT |
10・15モード燃費 | 14.8km/l |
サスペンション(前/後) | 3リンクリジッドアクスル式/3リンクリジッドアクスル式 |
ブレーキ(前/後) | ディスク/ドラム |
税込価格 | 158.025万円 |
スズキ ジムニーのエンジン&インテリア
スズキ ジムニーのエンジン&インテリアについて詳しく解説。
扱いやすく、悪路での走行に優れる
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パジェロ ミニと異なり、ジムニーはターボエンジンのみをラインアップ。実用域のトルクもしっかり確保され、扱いやすい特性だ。
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パジェロ ミニより1サイズ大きい16インチタイヤを装備。悪路でのグリップ性能は非常に優れている。XCはアルミホイールが標準だ。
クロカンらしく機能性重視のインテリア
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インテリアのデザインはクロカン4WDらしい機能性を重視したもの。エアコンやオーディオのスイッチ類も操作しやすい配置だ。
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グローブボックスやドアポケットの他に、助手席下にも収納スペースがあるのはスズキらしいところ。実用性の高さは文句なし。
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フロントシートのスペースはパジェロ ミニと同等で広さに不満はない。視界が良く、見切りはいいので、狭い道などでも運転はしやすい。
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リヤシートは大人でも何とか座れるが、正直言ってパジェロ ミニほどのスペースはない。長時間のドライブはちょっと厳しいだろう。
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全グレードに4速AT(写真)と5速MTが用意される。ゲート式のATは操作性がいいが、基本設計の古さが感じられる場面もある。
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ジムニーは全車、副変速機付きの4WDのみの設定。モード切り替えはレバーではなく、スイッチ操作だけなのでスマートな印象だ。
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エクステリアやインテリアと同様、メーターも機能性を重視したデザインだ。文字盤や表示は大きめなので、視認性はとてもいい。
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ジムニーのラゲッジスペースも実用上十分なスペースがある。室内空間もそうだが、パジェロ ミニと大きな差は感じられない。
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ジムニーも左右分割してリヤシートを倒せるが、段差ができてしまうのが残念だ。
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スペース自体はパジェロ ミニと遜色ないのだが、段差のぶん使い勝手はやや劣る。
日常ユースならパジェロ ミニ、アウトドアレジャーでならジムニーがおすすめ
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パジェロ ミニは高い悪路走破性を重視しつつも、オンロードでの快適性に配慮した設計がなされている。そのためクロカン4WDとしては街中や高速道路での静粛性に優れている面があるので、日常ユースを重視するならこちらを選んだ方がいいだろう。
一方のジムニーだが、世界でもトップレベルの悪路走破性を誇り、かなりのラフロードでも何事もなかったかのように走れるのには驚かされる。そのぶんオンロードでの走りや快適性が犠牲になっている部分もあるが、アウトドアレジャーでの走破性を重視するならこちらがおすすめ。