【国沢 光宏の試乗記】日産 エクストレイル クリーンディーゼルエンジン搭載車「エクストレイル GT」 エクステリア

ガソリン車との外観上の違いは欧州仕様のグリルとバンパー中央の開口部程度(ステッカーは付きません)

達人「国沢光宏」が斬る!

日産 エクストレイル GT(クリーンディーゼルエンジン搭載車)自動車評論家、国沢 光宏 氏の評価は

国沢光宏

職業:自動車評論家
歯に衣を着せぬ原稿で、なにかと話題の自動車評論家。歯切れの良い文章も分かりやすく、多くのファンをもつ。カートップやベストカーなど、多数の自動車雑誌に寄稿するだけでなくWRCなどのTV解説まで幅広い活動を行なっている。

臭い、汚いとは無縁のクリーン度を実現!

日産エクストレイルクリーンディーゼル エンブレム

 ついに「世界初のクリーンディーゼル」となったエクストレイルがデビューした! ガソリンエンジンと同等のクリーン度を要求している『ポスト新長期規制』と呼ばれる排気ガス規制をクリアしているというのだから画期的と言ってよかろう。

 どれどれ、と試乗会場で排気ガスの臭いを嗅いでみたら、ディーゼル特有の排気臭は皆無。排気口の内側にススが全く付いていないことに驚く。ちなみに今後日本で発売するディーゼルの新型乗用車は、全てエクストレイルと同じクリーン度を達成しなければならない。

日産エクストレイルクリーンディーゼル デモンストレーション
発表時に排気ガスのクリーン度をアピールするため行われたデモンストレーション
日産エクストレイルクリーンディーゼル デモンストレーション
デモンストレーションにはアイドリングや空ぶかしなども含まれるが、汚れはまったく付かず
日産エクストレイルクリーンディーゼル エンジンルーム
ルノーと共同開発された「M9R」型エンジン、コモンレール燃料噴射システム、DPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)、リーンNOx触媒等の装着によりポスト新長期規制をクリア

 ただ、新しい規制をクリアするのは極めて難しい。クリーンディーゼルに注力しているホンダさえ、来年の秋以降になる模様。技術的な難易度からすれば、1997年にトヨタが出したハイブリッドのようなもの。というか3年前まで「そんな規制をクリアするのは不可能」だと言われてました。

ATの設定がない理由とは?

クラッチやシフトフィールも軽く、MTでも疲労は少ない

 そうそう。エクストレイルのカタログを見て「なぜATの設定が無いのか?」と疑問に思う人も多いだろうけれど、マニュアルですら「何とか規制値をクリア出来ました」というレベル。マニュアルより燃費の悪いATは「排気ガスも多く出す」ため技術的なハードルがワンランク高くなる。

 現在のエンジンに6速ATを組み合わせることは可能ながら、排気ガス規制をクリア出来なくなってしまうワケ。参考までに書いておくと、排気ガス規制が日本より圧倒的に緩いヨーロッパではエクストレイルにもAT仕様が設定されている。

日産エクストレイルクリーンディーゼル インテリア
ダッシュボードなど一見した印象はガソリン車と変わらない
日産エクストレイルクリーンディーゼル メーター
ディーゼルエンジンのため、レッドゾーンは4500回転から
日産エクストレイルクリーンディーゼル DPF手動再生スイッチ
右側はDPFの手動再生スイッチ、メーター内の警告灯が点灯した際に使用する
日産エクストレイルクリーンディーゼル 前席
クリーンディーゼル搭載車のシート地はガソリン車の防水シートと異なり、一般的な布となる
日産エクストレイルクリーンディーゼル 後席
欧州仕様に近い20GTには後席中央の3点式シートベルトとヘッドレストが装備される
日産エクストレイルクリーンディーゼル ラゲッジルーム
ガソリン車と同様に水洗いが可能なフロアやアンダーボックスを備え、使い勝手は良好

コツさえ飲み込めば燃費と走りを高次元で両立できる!

 前置きが長くなりました。乗るとどうか? おそらく最新のディーゼルを知らない人だと「低い回転域の粘りがありませんね」と感じることだろう。実際、2千回転くらいでシフトアップしていくと、このエンジンの「美味しさ」は味わえない。

 何せ最大トルクの36.7kgmはインプレッサSTIバージョンやランサーエボリューション並。ブースト圧だって2バールもある! スポーツエンジン並なのだ。ある程度回転を上げてやらないと真価を発揮してくれない。

 逆に2千回転以上を使えばディーゼルだと思えないくらいパワフル! 『20GT』というグレード名(ディーゼルなのに!)も納得してしまう。ドイツのアウトバーンで試乗した時は200kmでの巡航が出来たくらい。ガソリンエンジンなら3.5リッター級というイメージ。

日産 エクストレイルクリーンディーゼル 走り

 それでいて燃費いいのだから素晴らしい。平均速度30kmという通勤モードならリッター15km以上走ってくれる。高速道路の90km巡航もリッター20km近く。ガソリン仕様より高価なディーゼル仕様だが、年間走行距離2万kmを超えるような人は、5年で収支トントンになります。