ザ・対決 ホンダ フィット VS トヨタ ヴィッツ
コンパクトカー編
ホンダ フィット vs トヨタ ヴィッツ

 各社から個性的なモデルが豊富にリリースされているのが、コンパクトカーだ。ミニバンと並んで、売れ筋のジャンルといっていい。取り回しのいいボディに、見た目以上に広い室内。さらに燃費のよさやエンジンやお手頃な価格などが人気の秘密だろう。男性だけでなく、女性にも高い支持を受けている。このようなコンパクトカーブームの先駆けとなったのが、トヨタの初代ヴィッツ。さらに独自の技術で昇華させたホンダのフィットだ。ヴィッツも今や2代目。さらにフィットも新型へとスイッチしたばかりで、いきなり新車販売も絶好調となっている。どちらも甲乙つけがたい、実力の持ち主だけ、その比較は興味ひかれるもの。

PHOTO/佐藤靖彦 構成/近藤暁史
モデル/

ROUND1:ファーストインプレッション

ホンダ フィット
ホンダ フィット
ボディはひと回り大きくなりつつも
初代フィットの持ち味はそのまま

 ホンダから初代フィットが登場したのは、2001年のこと。今やホンダ自慢の装備となった、ガソリンタンクを車体下部中央に配置するセンタータンクレイアウトをいち早く採用し、コンパクトカーの概念を超える広大な車内を実現。大きなヒットとなった。
 それから6年が経った2007年に2代目は登場した。初代と比較してもイメージは大きく変わっていないが、サイズはひと回りほど大きくなっている。この結果、室内空間のさらなる拡大だけでなく、乗り心地や衝突安全性の向上を実現。トータル性能の底上げに成功した。ただし、接合部分の見直しなどにより、剛性は確保しつつも車両重量自体は増加していない。
 エンジンラインナップは初代フィット同様、1.3リッターと1.5リッターの2本立てで、走行性能だけでなく、燃費にもこだわって両者ともバルブ休止も行なうi-VTECになっているのがトピックスだ。ミッションはFFがCVT。4WDは5速ATが組み合わされる。また1.5リッターは初代シビックにも存在したスポーティグレード、RSのみで、こちらにはクロスレシオ化などによりキビキビとした操作感を実現した5速MTの用意もある。ちなみにRSとはロードセーリングの略で、ロングホイールベース化された2代目に確かにピッタリのグレードだ。
 室内に目をやれば、初代で人気を博した広大なパッケージングももちろん現在。Aピラーを細くするなどの工夫により、開放感も拡大に高まっている。まさにトータルでの実力アップというのが新型フィットの特徴だ。

[エコ&燃費]
 そもそもサイズは大きくなっていながら、車両重量は変わらないのは燃費に有利。エンジンもi-VTEC化することでより緻密なバルブ制御を実施し、さらになる燃費の向上を目指している。特に1.3リッター車の燃費性能は優秀。だが1.5リッターモデルの燃費はクラス平均レベルといえる。またCVTもトピックスで、これまでのクラッチからトルコンへと変更することでハイレシオ化とスムースな走りが可能になり、省燃費に貢献する。環境性能もマニホールド直下に2つの触媒を設置したり、EGRバルブの大型化などにより、全グレードで4つ星を獲得している。

[取材時実測燃費]
16.5km/L

[フィット価格帯]
119.7〜178.5万円

トヨタ ヴィッツ
トヨタ ヴィッツ
日本のコンパクトカーの概念を覆す
洗練されたスタイルと高性能

 コンパクトカーの世界にトヨタが満を持してリリースしたのが、初代ヴィッツ。日本のみならず、海外でもヤリスの車名で大きなヒットとなった。2代目である現行型が登場したのは2005年のことだ。グレード体系なども含めて、初代を踏襲しているといっていいのだが、細かく比較してみると大きな違いとしては、まずボディサイズの拡大。そしてエンジンラインナップの拡充が上げられるだろう。 まずボディだが、初代ヴィッツのイメージをうまく引き継ぎながらも、より未来感のあるデザインへと進化。ビビッドなボディカラーも用意され、洗練されたものになった。この点もボディサイズ拡大によって、より自由度が増したといっていいのだが、もちろん1tを超えてしまったボディの拡大自体は、走行性能や安全性向上のためというのがメインになる。
 それを受けてのエンジンバリエーションの拡大で、1.5リッターによりコアグレードがシフトしている。ただし燃費や経済性を重視した1リッターモデルはパッソ譲りでダイハツが開発した3気筒が搭載されるのは、トピックスではある。ミッションはCVTがメイン(4WDは4速AT)で、スポーツグレードのRSには5速MTの用意もある。ホットハッチ的な乗り味を求めるならオススメだ。ハンドリングについては、コンパクトカーらしく素直で、乗り心地もかなり高いレベルにある。内装については、伸びやかなインパネなど、開放感の演出に力が入れられているだけでなく、上質さにこだわったI'LL(アイル)を用意。幅広いユーザーに受け入れられる素質をもっている。
 また安全性能の高さにも注目したいところ。運転席&助手席エアバッグはもちろん、サイドエアバッグも全車標準装備となるのは見逃せないポイントだ。

[エコ&燃費]
 ATを採用していた初代ヴィッツから一転して、CVTメインに切り替えたのは燃費のため。名称自体スーパーCVT-iとやる気を感じさせるもので、積極的に制御することが可能になり、優れた燃費を実現している。さらに注目なのは、初代ですでに採用されていた、アイドルストップ機能付きモデル。1.0FとBのインテリジェントパッケージに用意されており、24.5km/Lの10・15モード燃費を達成している。環境性能に関しても、4つ星を獲得しているだけでなく、開発から廃棄までトータルで環境負荷を減らす社内基準のエコバス対応の初適合車種という点に注目だ。


[取材時実測燃費]
15.7km/L

[ヴィッツ価格帯]
107.1〜163.8万円

1.3L(FF)
ボディサイズ(全長x全幅x全高)
3900×1695×1525mm
車両重量
1030kg
エンジンタイプ
直列4気筒SOHC
総排気量
1339cc
最高出力
100ps(73kw)/6000rpm
最大トルク
13.0kg-m(127N・m)/4800rpm
ミッション
CVT
10・15モード燃費
21.5km/l
サスペンション(前/後)
ストラット/車軸式
ブレーキ(前/後)
ベンチレーテッドディスク/ドラム
税込価格
134.4万円
1.3F(FF)
ボディサイズ(全長x全幅x全高)
3785×1695×1520mm
車両重量
1020kg
エンジンタイプ
直列4気筒DOHC
総排気量
1296cc
最高出力
87ps(64kW)/6000rpm
最大トルク
11.8kg-m(116N・m)/4000rpm
ミッション
CVT
10・15モード燃費
19.6km/l
サスペンション(前/後)
ストラット/トーションビーム
ブレーキ(前/後)
ベンチレーテッドディスク/ドラム
税込価格
123.9万円
ホンダ フィット 1.3リッターエンジン

1.3リッター(写真)は標準車、1.5リッターはRSと、キャラクターに合わせたエンジンを搭載。1.3G(FF)は24.0km/Lの燃費を実現した。

ホンダ フィット 15インチホイール

15インチのアルミホイールはオプション。RSのMT車は16インチタイヤ&ホイールを標準装備し、スポーティな走りとルックスを両立している。

トヨタ ヴィッツ 1.3リッターエンジン

ヴィッツのエンジンは1リッターから1.5リッターまで4種類を用意。売れ筋の1.3リッターはFFと4WDで異なるエンジンを搭載している。

トヨタ ヴィッツ 15インチホイール

こちらも15インチタイヤ&ホイールはオプション装備。燃費や快適性を重視したタイヤだが、ハンドリングの正確さもあり、走りの質は高い。

ホンダ フィット インパネ

ボディサイズが拡大されたこともあり、広々とした雰囲気のインテリア。各部の質感も向上し、1クラス車格が上がった印象を与えてくれる。

ホンダ フィット シフトレバー

FFはCVTで4WDは5速ATを搭載する。またRSには5速MTの設定もあり、スポーティな走りが楽しめる。CVTはギクシャク感が少なくなった。

トヨタ ヴィッツ インパネ

先代同様、センターメーターレイアウトを採用する。小物の収納スペースも充実しており、コンパクトカーとしての使い勝手はハイレベルだ。

トヨタ ヴィッツ シフトレバー

燃費向上のためFF車はCVTを採用した。RSの1.5リッターは5速MTのみの設定で、キビキビしたホットハッチ的な走りが味わえるのが魅力だ。

ホンダ フィット フロントシート

センタータンクレイアウトのおかげで、とても広々としている。シートのサポート性も高く、ホンダらしいスポーティな走りにも対応する。

ホンダ フィット リヤシート

優れたパッケージングのため、リヤシートの広さもかなりのもの。足元のスペースなど、コンパクトは思えないほど広々しているのが印象的だ。

トヨタ ヴィッツ フロントシート

ソフトで手触りのいいシート表皮を採用する。また助手席に置いた荷物が滑らないよう、買い物アシストシートを装備しているので、使い勝手も抜群だ。

トヨタ ヴィッツ リヤシート

先代に比べ、リヤシートの居住性は大幅に向上している。クッションの厚みも十分確保されているので、長距離ドライブでの快適性も高い。

ホンダ フィット ラゲッジ

フル乗車時でもまずまずのラゲッジスペースを確保している。開口部下側の幅がやや狭いのが気になるが、形状はいいので使い勝手は良好だ。

ホンダ フィット ラゲッジ

ラゲッジの広さはクラストップレベル。シートアレンジも多彩で、背の高いものや大きなものなど、用途に合わせて使いやすい工夫が満載だ。

トヨタ ヴィッツ ラゲッジ

奥行きがやや少ないのが気になるところ。だが、コンパクトカーとしては平均的なスペースを確保しているので、実用上大きな問題はないだろう。

トヨタ ヴィッツ ラゲッジ

リヤシートを収納すれば広いラゲッジスペースが現われる。形状も悪くないので、大きなものや重い荷物でも楽に積み込むことができる。

ホンダ フィット vs トヨタ ヴィッツ

フィットはエンジンパワーが大幅にアップしたため、走りにもゆとりが感じられる。ヴィッツも動力性能に不満はなく、CVTならではの滑らかな走りが味わえる。