売れなくても売れって・・・・。

 新車が売れていない。新聞などでは、上期で250万台を割り込むのは27年ぶりの低水準だという。で、タイトルのように新車が売れないのに、なぜ08年の1〜3月に新車が激安になるのだろか? フツーは1台当りの利益を確保して、売り上げは下がっても利益を確保しようとするものだ。いわゆる、減収増益的な考え方になる。ところが、自動車販売はひと味違うのである。 自動車ディーラーの多くは、年度初めに自動車メーカーと契約台数という販売台数に対する契約をする。コレは簡単に言うと「我々ディーラーは契約台数分必ず売ります!」という誓約書みたいなものだと思ってもらえればいい。07年度の契約時には、まさか上期で27年ぶりとなる250万台を割り込むような需要予測はされていなかったはずだ。つまり、もっと売れるだろう、とディーラーもメーカーも思っていた。メーカーはディーラーとの契約台数をベースに工場の生産台数の予定を立てる。それに基づき工場の工員数や部品の生産などなどの計画は立てられる。 ところが、これほどクルマが売れないとメーカーも減産体制に入りたいのだが工場の生産台数の大幅なダウンや工場そのものを止めるということは、複雑な事情がありなかなかできないらしい。その反動はディーラーにも向く。需要が低迷しているからといって、メーカーはディーラーに対して、そう簡単に契約台数を下方修正することを許さない。メーカー側としてみれば、それを許すと販売台数減の歯止めが効かなくなるばかりか、メーカーの経営計画に影響を与えるからだ。

札束(インセンティブ)でディーラーの尻を叩きまくるメーカー

 そのため、メーカーはあらゆる手を使いディーラーへ活力を与えるべくお金を使う。その多くがインセンティブなどと呼ばれる報奨金制度だ。大きなところでいうと、契約台数に対する達成率に対する支払いだ。例えば、契約台数100%達成で1台当り5万円などがあったとしよう。年間1万台売るディーラーなら、1台当り5万円の報奨金でなんと5億円の粗利となるのた。売り上げではなく利益となるので、ディーラー経営のうえではかなりインパクトのある数字となる。これが100%達成ではなく90%台なら2万円としよう。そうなるとインセンティブは2億円となり、100%達成時に比べ3億円の利益がなくなる計算だ。その他、この手のインセンティブは車種に対するものや、下取り車に対するものなどなど恐らく数十種類になるほど細かく用意されている。

インセンティブ欲しさから無用の自社登録車が山のように生まれていく

 こういったインセンティブが原因になり、年度末(3月末)になると自社登録といって、多くのディーラーが自社名義にした新車を何十台何百台と登録する。自動車はナンバーを付けた(登録)状態で、インセンティブの対象となるからだ。4月以降になると、ディーラー系中古車店を中心にいわゆる新古車、登録済未使用車、走行ゼロ車などとして売られているクルマの多くはインセンティブ調整の自社登録車なのである。また、今年度の契約台数の達成率や販売台数によって来年のインセンティブの金額テーブルが上がるか下がるかするパターンまで用意されているので、ディーラーは必死になるのが分かるだろう。

今が新車の買い時だ! 買う側にとっては千載一遇のチャンス! 大幅値引きで新車が買える!!

 と、いうワケで作る側(メーカー)と売る側(ディーラー)が2〜3月がいかに必死になっているかがご理解いただけたと思う。この状況はまさに買う側(お客様)にとっては、強力な追い風。売る側(ディーラー)はもはや赤字覚悟の台数勝負に打って出ることは確実。だから、じっくりと他社のクルマと競合させ、値引き勝負の雰囲気さえ作ればディーラーから値引き金額の上乗せ攻撃が確実となる。冒頭にも書いたとおり、新車が想像以上に売れない今年度は、メーカー&ディーラーとも最後の帳尻あわせに奔走する。その先には、空前絶後の新車値引き合戦が待っている。新車を狙っているのなら、このチャンスを逃がしてはならない!