一新したコンセプトは吉と出るか凶と出るか?

新型デミオSPORT

弟子永田:「いろいろ使えて便利なコンパクトカー」として初代、2代目モデルともに成功を納めてきたデミオが5年振りにフルモデルチェンジされました。
国沢:今までちょっと背の高い“ハイトワゴン”として人気だったデミオを、普通のコンパクトカーにしてきたというのはかなり勇気の要ることだったと思う。ほとんど別のクルマのような感じもする。
弟子永田:メーカー側では、軽量化による燃費の向上や輸出先での評判(ヨーロッパでは普通のハッチバックの方が売りやすいとのこと)を考えての変更だと発表しています。
国沢:軽量化といえば、コンパクトカーとして見るとちょっと車重の重すぎた先代デミオ(1100kg程度)から約100kgもの軽量化が行われている。軽量化がクルマ全体に与える影響も楽しみ。
弟子永田:マツダの大黒柱の1台ですから非常に完成度が気になりますね。

スタイルは二重丸、インテリアは三角

弟子永田:では、スタイルとインテリアから見ていきましょう。
国沢:スタイルは精悍な顔やパンと張り出したサイドビューとかすごくカッコいいと思わない?
弟子永田:はい、同感です。実車を見て即座に「カッコいい!」と感じた国産車ってかなり久しぶりではないでしょうか。個人的にはスタイルだけで買ってもいいかなと思ったくらいです。

新型デミオSPORT
SPORTにはシリーズ中唯一となる16インチホイールが装着される(15インチへの変更も可能)
新型デミオSPORT
実際のサイズ以上に伸びやかに感じるところなど、ヨーロッパでも強い存在感をアピールできそう
新型デミオ13S
新型デミオには11色ものボディカラーが用意されるところも魅力。写真はオーロラブルーマイカ。

国沢:若いユーザーがエントリーカーとして買うケースも多いこのクラスのクルマにとっては、強力な武器になりそう。でも、インテリアの質感は水準以下かな。
弟子永田:インテリアのクオリティはムーヴあたりの「すごくよく出来た軽自動車」と比べると負けかなと感じますね。
国沢:インテリアの質感はともかくとしても、結構ビックリしたのがシート表皮とかラゲッジスペース内の素材のクオリティ。シートは肌触りが良くないし、ラゲッジスペースのトノカバーとカーペットは徹底的にコストダウンしてる感じ。

新型デミオインテリア
質感ではライバルに劣るものの、造型はスポーティかつ使いやすいインテリア。タコメーターは本革巻ステアリングなどとセットオプション。
新型デミオ インテリア
センターコンソールトレイは写真のようにハンドバッグを置いたり、小物の整理に使ったりといろいろな使い方ができる。
新型デミオラゲッジスペース
トノカバー、ラゲッジスペース内のカーペットは若干安っぽい。容量自体は約250リットルとクラスの水準を超えるレベルだ。

弟子永田:確かにシート表皮は「良くはないな」と思いました。でも、「すごく不満か?」と聞かれたら個人的にはそれほど気にならないです。ラゲッジスペース内も素材も同様に「どちらかといったら悪い」と思いますけど、でも「いつも体に触れるわけではないから構わないか」と感じたのですが。
国沢:そう感じたかあ。確かに気にする人が少ないなら、徹底的にコストダウンするという考えは決して間違いではないし。30歳以下くらいの若い世代やクルマに強い関心のない人だったら気にする人は少ないのかもしれない。
弟子永田:そのあたりの質感よりも「カッコいい」とか「安い」ことの方が大事という向きは、若い世代に限れば多いのではないでしょうか。
国沢:大人だと受け入れられないかもしれないけど、これはこれで正しいやり方なのかもしれないなあ。
弟子永田:それよりもクルマ好きと言わせてもらえれば、タコメーターが普及グレードだとオプションになることの方が残念だと思いました。
国沢:タコメーターがオプションのクルマって、何年ぶりだろう。いろんな意味で感慨深い。

走りの楽しさは相変わらずトップレベル、しかし味わいではという面では

国沢:それでは試乗といきましょう。
弟子永田:1台目の試乗車はスポーツグレードのSPORT(1.5リッター)です。
国沢:100kgの軽量化の効果ってすごいね。走り出してすぐに「軽いなあ」って感じる。
弟子永田:ライバルのスイフトなんかもその程度の車重ですから周りと比べてものすごく軽いということはないですけど、先代デミオがちょっとモッサリした動きだったことを考えるとすごい進歩だと思います。

新型デミオSPORT エンジンルーム

国沢:絶対的な加速自体は軽量化やCVTの効果もあってかなり速くなっているのは事実なんだけど、高回転をキープするとちょっとうるさくない?
国沢:ちょっと残念。でも、新しく採用されたCVT(ヴィッツやマイナーチェンジされたスイフトと同じアイシン製)のフィーリングはいい。燃費を稼ぐために「何が何でも回転を下げる」ようなところもないし、アクセル全開状態だと美味しいパワーの出る回転数になった後も少しづつ回転を上げていくところも人間の感覚には合ってる。

弟子永田:ハンドリングはいかがでしょうか。先代デミオはちょっと過剰と思えるくらいのボディ剛性(その分で重くなっていたのも事実)やテネコ製のダンパーの好影響で日本車離れした走りが売りでしたが。
国沢:とりあえず「ヨーロッパのクルマみたいだなあ」って感じるドッシリ感というか安心感のような部分はなくなった。どちらかという平均的な日本車って感じ。そのあたりではマイナーチェンジされたスイフトの方が日本車離れはしていると思う。
弟子永田:確かに「なんか日本車とは違うぞ」っていう感じはなくなりましたね。
国沢:それと乗り心地も今までみたいな「中身の詰まった感じ」ではない。
弟子永田:ダンパーのメーカーはフロント/トキコ、リア/テネコだそうです。
国沢:やっぱり日本製のダンパーを使ってる影響なのかなあ。リアはいいんだけど、フロントの動きが渋いような感じ(キチンとストロークしないとも言い換えられる)がする。それと前後でメーカーが違うっていうのもちょっと疑問。メーカーごとの特徴っていうのがあるから、セッティングするときも難しいと思うんだけど。
永田:そのあたりは新型デミオのプラットホームがマツダ主体で開発されたものであることや部品調達部門の事情の絡んだ部分なんでしょうか。

国沢:ハンドリングも基本的には素直でいいんだけど、4輪ともテネコ製のダンパーを使っていた先代デミオやアクセラやプレマシーみたいな「腕さえあれば自由自在にコントロールできる」っていう楽しさはなくなったと思う。といっても、普通にクルマを使うユーザーにとって問題があるか? というとまったく問題はないけどね。

新型デミオ 走り1
走りの楽しさを売りにするマツダ車らしく、動きはシャープ
新型デミオ 走り2
新型デミオは旧型のしなやかさを失った代わりに、軽快感では大きく進歩
旧型デミオベースの試作車両
軽量化作戦はこの試作車に乗ったときの感動により始まったという

弟子永田:今まで魅力だった「奥行き」のような部分が浅くなってしまったのはちょっと残念に思いますね。でも、普段の使い方で大切なステアリング操作に対する正確さやブレーキフィール(唐突な利き方ではなくなった)などは確実に進歩していると思います。

売れ筋の1.3リッターはどうか?

新型デミオ ミラーサイクルエンジン

弟子永田:2台目の試乗車は新型デミオで一番の注目グレードとなっている13CV(ミラーサイクルエンジン+CVT)です。乗ってすぐに思ったのは「ミラーサイクルだからといって、普通のエンジンと特に違う感じないないな」ということなんですが。
国沢:確かに変わらないね。ちょっと高回転でエンジン音がうるさいところも1.5リッターと同じ傾向だけど、ライバルの1.3リッターエンジンと比べてパワーがないとかいった悪い部分はない。
弟子永田:今日は実燃費の計測は出来ませんが、これで燃費が良ければ嬉しいですね。
国沢:燃費が自慢のグレードなのに燃費計がないのはちょっと納得できない。それとハンドリングと乗り心地のバランスは1.3リッターの方がいい。限界スピードは落ちるけど。タイヤが標準的な14インチ(SPORTは16インチ)だから限界域での挙動はマイルドだし、乗り心地もしなやかな方向。ただ、1.3リッターのブレーキはクルマに興味のない人向けに合わせているのか、コンパクトカーによくある「ちょっと踏んだのにイメージ以上に効くセッティングになってる。
弟子永田:一般的に使い方なら1.3リッターの方がおすすめですね。

新型デミオ13C−V フロント
標準モデルはグリル等が若干大人しい設え
新型デミオ13C−V サイド
標準モデルのタイヤは14インチサイズ
新型デミオ13C−V リア
新設計されたマフラーも軽量化に大きく寄与
新型デミオ13C MT

弟子永田:最後に量販グレードになると予想される13C(普通の1.3リッターエンジン)のマニュアル車に乗ることも出来ました。ちなみに新型デミオには1.5リッターのSPORT、15C、13Cの3グレードにマニュアル車がラインナップされています。
国沢:マニュアル車はご存知の通り絶滅の危機的な状況になっているけど、設定があるのはマツダらしいというか偉い! だけど、普通の1.3リッターエンジンはトルク感が薄いと思わない?
弟子永田:はい。周りの1.3リッター級エンジンと比べてもトルクが薄いように感じます。
国沢:積極的にギアチェンジをするっていうマニュアル車ならではの楽しさはあるけど、エンジンのフィーリングを楽しめるっていうタイプではないな。
弟子永田:スポーツモデルではないですから見方が間違っていると思いますけど、クラッチもやりにくいと意味ではありませんがフニャっとした感じです。
国沢:シフトフィールはタッチ、ギアの入り方とも合格点以上だけどね。まあ、今では少ないだろうけど「マニュアルに乗りたい」っていう人にも勧められるレベルはキープしているよ。

新旧デミオはどちらが魅力的か?

弟子永田:新型デミオに関する結論をお願いします。
国沢:旧型デミオって、過剰なまでのボディ剛性や良質なダンパーを使っていること等による「日本車離れした奥行きの深さ」が魅力だった。
弟子永田:使い勝手も含めて飛びぬけた部分を持っていたとところがクルマ好きやマスコミには高く評価されていました。

国沢:対して、新型デミオは「カッコいいスタイルも軽量化を通した燃費の向上なんかも含めたクルマ全体のバランスを重視」っていう方向で開発されている。どっちが正しいかというのは難しいけど、クルマ好きには正直薄味に感じる。でも、普通にクルマを使うユーザーが大半であるコンパクトカーであることを考えれば新型デミオのコンセプトの方が正しいのかもしれない。まあ、デミオは2代目も3代目もどちらも魅力的だし(ボディ形状も含めて名前は同じでも違うクルマになったとも言い換えられる)、3代目もいいコンパクトカーといえる仕上がりなんじゃないかな。
弟子永田:今まで「フォードが主でマツダは従」だったフォードとの関係から、マツダがフォードグループの柱に変わりつつあること含めて、新型デミオの市場からの評価やマツダのクルマ作りが今後どうなっていくかには大いに注目していきたいですね。

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