パワーに見合った高次元のハンドリング
ボルボ製の直列5気筒DOHCターボエンジンは、フォーカスST用に専用のチューニングが施され、166kW(225ps)/320N・mのパワー&トルクを発生する。フォーカスのボディに対しては十分すぎる実力である。やや高回転型のチューニングになっているとはいえ、ターボならではの低速トルクにより、フレキシブルな実力を発揮する。全開加速を試すと、1速で60km/h弱、2速で110km/h弱まで加速して気持ち良くスピードに乗っていく。
トランスミッションは6速MTのみで、スポーツモデルとしては当然の設定。短めのシフトレバーによってカチッカチッと決まるシフトフィールも上々のものだ。ただ、シフトチェンジ時などに若干のトルクステアが感じられるのは残念なところ。もう少し素直な加速フィールが欲しい。
またゴルフなどが2ペダルのマニュアルであるDSGを採用していることを考えると、6速MTだけの設定はユーザー層を狭めてしまうように思う。日本では若いユーザーが取得する免許はAT車限定免許が一般的だからだ。
足回りはかなり硬めにチューニングされているものの、少しも乗り心地をスポイルしない味付けはさすが。最近のフォード車はフォーカスSTに限らず標準モデルのフィエスタやフォーカスでもバランスの良い足回りが特徴だが、フォーカスSTではそれがさらに高い次元で両立されている。非常に好ましい足回りだった。
●まとめ
標準のフォーカスに比べると格段に高いパフォーマンスを発揮するのがSTだが、日本車はランサー・エボリューションやインプレッサWRX・STIなどが際立って高い性能を備えることを考えると、それほどではないともいえる。絶対的な性能の高さで選ぶのではなく、バランスの取れた高性能車として考えるべきクルマだと思う。320万円の価格は十分に納得モノといえる。