ワゴンRやムーヴと似たイメージのクルマでホンダ車としては特徴に欠ける印象もあったので、走り出す前にあまり大きな期待を抱かなかったのが良かったのかどうか、実際に走らせた印象はかなりの好印象だった。
走り出してすぐに感じたのが静粛性の高さだ。軽自動車というと、とかく安っぽい音が聞こえがちで、エンジン音やロードノイズの侵入が大きいのだが、ゼストではそれが想像する以上に静か。アクセルを踏み込んで加速していくときでも、不快な騒音は良く抑えられている。
搭載エンジンは2プラグを位相差点火するホンダ独自のi-DSI仕様のエンジンで、自然吸気仕様が38kW(52ps)、ターボ仕様が47kW(64ps)と、ともに十分なレベル。自然吸気仕様でもけっこう元気の良い走りを楽しむことが可能で、タウンユースを中心に考えるならこれで十分。高速道路を走る機会が多いならターボ仕様という風に考えても良い。電子制御式の4速ATが組み合わされていて、このATの変速フィールも上々だ。
足回りがしっかりした印象を与えたことも軽自動車の水準を超えた走りを感じさせた要素。自然吸気エンジンとターボ仕様とで足回りが異なるほか、自然吸気仕様もタイヤサイズの違いによって微妙なチューニングが施されているという。試乗したのは自然吸気とターボともに14インチタイヤの装着車だった。
特に好感が持てたのは自然吸気エンジン搭載車で、乗り心地と操縦安定性がほどよくバランスされていた。市街地を中心にした試乗だったことも自然吸気エンジン仕様の足回りに好感が持てた理由だろう。それに比べるとターボ仕様はやや硬めの足回りで、多少の突き上げ感が感じられた。山道などに持ち出すとターボ仕様のほうが良く感じられるかも知れない。
試乗したのはWでこの足回りが好感の持てるものだったが、実際に買うとなるとひとつしたのグレードであるGでも十分だと思う。装備の違いもエアコンのオート機能とフィルターくらいのもので、仕様の中身はほとんど同じだからだ。Gをベースにサイド&カーテンSRSエアバッグをオプション装着し、好みに応じてカーナビまたはオーディオを装着すれば良い。アクティブパッケージとセキュリティパッケージもそれほど高くないので装着しても良いだろう。