事業用の車両売却時の仕訳

事業用の車両売却時の仕訳方法と勘定科目

勘定科目は?預託金は? 事業用の車売却時の仕訳方法と控除

更新日:2023/10/03

事業用の車両を売却した場合、仕訳や勘定科目はどうしたら良いのでしょうか。法人と個人事業主、それぞれの場合について解説します。預託金や消費税の取り扱い、直接法と間接法など細かな点も確認していきましょう。

会計における車の考え方

車両を売却した時の仕訳を理解するには、購入から今まで、車がどのように計上されているかを理解する必要があります。
基本的な考え方は、以下の通りです。

  • 車は「経費」ではなく「資産」であり、購入時に以下のように計上
    • 車両そのものは「車両運搬具」という資産(※減価償却対象)
    • リサイクル預託金は「預託金」という資産(※減価償却なし)
  • 車両の帳簿価額は、減価償却分だけ毎年減少(※減価償却分を損金・経費計上しているため
    • 減価償却が終わった車両は車両運搬具1円として計上することになる
  • 車両を手放した時の「利益」は「車両の売却額(※リサイクル預託金分除く)- 売却時の車両の帳簿価額(残存価額)」

これらの考え方を理解した上で、車を売却した時の法人/個人での仕訳方法を、以下の条件例で確認してみましょう。

  税込み処理の場合 税抜き処理の場合  
▼条件例(税込) 税込金額 税抜金額  
購入時の価格(帳簿価額) 3,000,000円 2,727,273円
購入時に支払ったリサイクル預託金 18,000円 18,000円
減価償却累計額(簿価価額の2/3と仮定して計算) 2,000,000円 1,818,182円
売却時の車両の帳簿価額(残存価額) 1,000,000円 909,091円 ①-③
売却価額(リサイクル預託金18,000円除く) 1,200,000円 1,090,909円 ④ 1,200,000円/1.1
仮受消費税   109,091円 ⑤ 1,200,000円×0.1/1.1

(※消費税は10%として計算)

個人事業主が車を売却した時の仕訳

個人事業主が車を売却した場合、固定資産の帳簿価額と売却価額との差額は「事業主借」「事業主貸」として計上します。

「事業主借」とは「事業主から借りたお金」という意味の勘定科目で、売却をして利益が出た時に使います。
「事業主貸」は「事業主に貸したお金」という意味で、減価償却や手数料を含めると、車売却により損が出た場合に使う勘定科目です。

【直接法(消費税込み処理)】

個人事業主の場合、「消費税を納税しているか否か」「納税している場合、簡易課税と原則課税のどちらかで納税しているのか」によって算出方法が異なります。
そのため今回は、消費税込みの処理を参考例としています。

借方 金額 貸方 金額
現預金
(※手放したことにより手に入った金額:④)
1,200,000円 車両運搬具
(※手放した段階での車の資産価値:①-③)
1,000,000円
現預金(リサイクル預託金) 18,000円 預託金
(※リサイクル預託金:②)
18,000円
    固定資産売却益
(※手放したことによる利益:④-①+③)
200,000円
合計 1,218,000円 合計 1,218,000円

【関接法(消費税込み処理)】

借方 金額 貸方 金額
現預金
(※手放したことにより手に入った金額:④)
1,200,000円 車両運搬具
(※購入時の車の資産価値:①)
3,000,000円
現預金(リサイクル預託金) 18,000円 預託金
(※リサイクル預託金:②)
18,000円
減価償却累計額
(※損金として今までに償却された価値:③)
2,000,000円 固定資産売却益
(※手放したことによる利益:④-①+③)
200,000円
合計 3,218,000円 合計 3,218,000円

直接法と間接法、どちらを選んでも資産や経費の金額は変わりません。
今までと同じルールで計上していくのが基本なので、前例があれば、それに倣うようにしましょう。初めて減価償却がある資産を売却する場合は、自分にとって分かりやすい方を選ぶことをおすすめします。

更に
差がつく!
譲渡所得には最大50万円の特別控除が!

譲渡所得には最大50万円の特別控除が!

事業用の車売却によって利益が出た場合、それは「譲渡所得」という扱いになり、所得税の対象になります。
ただし、譲渡所得には控除額が設けられており、家屋・土地以外については最大50万円の控除が受けられます。課税されるのは以下の計算式で譲渡所得が生じている場合のみです。

譲渡価額 -(取得費+譲渡費用)- 特別控除額50万円 = 譲渡所得

  • 取得価額から減価償却費累計額を控除した金額

所有期間が5年以上の「長期譲渡」となった場合、課税されるのは上記で算出された譲渡所得の1/2のみです。
ただし、特別控除額は全ての譲渡に対して上限で50万円までとなっており、例えば1年の間に2台の車を売却しても、それぞれの車について50万円ずつ控除される訳ではありません。

法人が車を売却した時の仕訳

法人が車を売却して損益が出た場合、その勘定科目は「固定資産売却益」「固定資産売却損」になります。仕訳のポイントは以下の通りです。

  • 売却時の車両の帳簿価額(残存価額)よりも売却値が上回る場合は「固定資産売却益」として「貸方」に計上、売却時の車両の帳簿価額(残存価額)より売却値が低い場合は「固定資産売却損」として「借方」に計上
  • 法人は課税事業者の場合は税抜き処理が一般的
  • 税抜きで仕訳する場合、売却価額の消費税分を貸方に「仮受消費税」として計上

多くの法人は税抜き処理を行っているため、以下の参考例は税抜き処理で掲載しています。

【直接法(消費税抜き処理)】

借方 金額 貸方 金額
現預金
(※手放したことにより手に入った金額:④)
1,200,000円 車両運搬具
(※手放した段階での車の 帳簿価額(残存価額):①-③)
909,091円
現預金(リサイクル預託金) 18,000円 預託金
(※リサイクル預託金:②)
18,000円
    仮受消費税
(※手放したことにより手に入った金額の消費税分:⑤=④×0.1/1.1)
109,091円
    固定資産売却益
(※手放したことによる利益:④-(①-③)-⑤)
181,818円
合計 1,218,000円 合計 1,218,000円

【関接法(消費税抜き処理)】

借方 金額 貸方 金額
現預金
(※手放したことにより手に入った金額:④)
1,200,000円 車両運搬具
(※購入時の車の 帳簿価額:①)
2,727,273円
現預金(リサイクル預託金) 18,000円 預託金
(※リサイクル預託金:②)
18,000円
減価償却累計額
(※損金として今までに償却された価額:③)
1,818,182円 仮受消費税
(※手放したことにより手に入った金額の消費税分:⑤=④×0.1/1.1)
109,091円
    固定資産売却益
(※手放したことによる利益:④-①+③-⑤)
181,818円
合計 3,036,182円 合計 3,036,182円

事業用の車を売る方法

事業用の車を売る方法は、個人で車を売るのとほとんど差はありません。車の名義が法人の場合は、書類として法人実印と法人の印鑑証明書が必要になりますが、個人名義で所有していた場合は普通に売るのと同じです。

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この記事を執筆・監修した人

宮川 真一
現在の役職・肩書

税理士法人みらいサクセスパートナーズ代表

保有資格

税理士、CFPⓇ、FP技能士1級

略歴

1997年から税理士業務に従事し、税理士として20年以上のキャリアがあります。
自動車税、所得税といった身近にある税金関係の記事監修が得意。確定申告の仕方や自動車税金の仕組みについてメディアで多く記事監修をしている実績があります。