EVは非常時の電力供給源としても魅力的ですが、V2HとV2Lという供給システムの違いがあります。想定する利用目的によって違いがあるV2HとV2Lについて今回は解説します。
- V2HとV2L違いのポイント
- V2Hの特徴とメリット・デメリット
- V2Lの特徴とメリット・デメリット
- V2HとV2Lの違いとおすすめの人
- V2HとV2Lの導入金額は?補助金は出る?
- 大きな出費の前に愛車の買取査定を
V2HとV2L違いのポイント
V2HとV2Lは、ともに「車に蓄えられた電力を他のものに供給する」システムや考え方を指します。ただし電力の供給先や、利用できる環境が異なります。
- V2Hは車の電力を自宅など「建物」に供給、V2Lは車の電力を「家電等」に供給
- V2Hの場合、V2H充放電設備を介して建物⇔車間の電力のやりとりが可能
- V2Lの場合、アウトドアなど外出先で電力を使える
V2Hの特徴とメリット・デメリット
V2Hとは「Vehicle to Home」の略で、車に蓄えられた電力を建物に供給するシステム・考え方を指します。 車から建物へ電力供給するには、V2H対応車両とV2H充放電設備の設置が必要です。
V2Hのメリット
- 安い電力を車に蓄えられるので、電気料金の節約ができる
- 停電時も車の電力を使って通常通りの生活ができる
- V2H充放電設備によって車を急速充電できる
V2H充放電設備は「車から建物への給電機能」とともに「建物から車への急速充電機能」を備えています。そのため太陽光発電の余剰電力や安価な夜間電力を車に蓄え、必要なときに建物へ戻すことが可能です。
電気料金の高い昼間に車から建物へ給電すれば電気料金を節約できます。また停電時も車からの給電で数日間~1週間ほど通常の生活を続けられます。
充電時間の短さもV2H導入の大きな魅力です。航続距離80㎞分の電力を充電する場合、普通充電なら4~8時間程度かかりますが、急速充電なら約15分で済みます。
V2Hのデメリット
- 初期費用が高い
- V2H充放電設備がないと使えない
V2Hには専用のV2H充放電設備が欠かせません。工事費も含めると、設置費用は少なくとも80万円程度かかります。またV2H充放電設備のない建物や屋外での電力供給も不可能です。
【注意】V2H対応車種は意外と少ない
V2H対応車種は、実は種類が限られています。特に輸入車の場合、V2H対応車種はかなり少ないです。
この背景には、欧米諸国の自然災害の少なさがあります。災害の多い日本では、V2Hのような「緊急時に使える電力」が重宝されているものの、日本ほど自然災害の多くない海外ではV2Hが普及していないのです。
V2Lの特徴とメリット・デメリット
V2Lとは「Vehicle to Load」の略で、車に蓄えられた電力を家電等に供給するシステム・考え方を指します。車載コンセントに家電などを直接繋いで使用するか、外部給電器を介して電力を供給します。
V2Lのメリット
- 屋外で家電を使える
- 車載コンセント付きの車両なら初期費用なし
V2L最大の強みは屋外で電力供給できること。V2Hの場合はV2H充放電設備のある建物にだけ給電でき、その他の建物や家電に直接給電することはできません。これに対してV2Lは、車載コンセントか持ち運び可能な外部給電器を使って給電します。そのためアウトドアや屋外イベント、被災地などでの電力供給に役立ちます。
V2Lのデメリット
- 供給できる電力量が限られている
- 車載コンセントや外部給電器で車の充電はできない
一般に、V2Lで給電できる電力は1500W程度です。そのため家電であっても、エアコンやIHクッキングヒーターを使うことはできません。またV2HならV2H充放電設備を使って建物から車に充電できますが、V2Lの車載コンセントや外部給電器で家電などから車に充電をすることはできません。
V2HとV2Lの違いとおすすめの人
ここまでの内容をまとめると、V2HとV2Lには以下のような違いがあります。
- 違い①建物に電力供給できるか(V2H)
- 違い②車への充電ができるか(V2H)
- 違い③屋外で利用できるか(V2L)
上記の違いを踏まえて、以下ではV2HとV2Lの導入がおすすめな人をご紹介します。
V2Hの導入をおすすめする人
以下のような人は、V2Hを導入するとメリットを感じやすいでしょう。
- 電気代を節約したい人
- 自宅で車の急速充電をしたい人
- 長期的な停電に備えたい人
V2Hは導入における費用が高いものの、その後の節約効果も大きいです。また自然災害で停電の起こりやすい地域に住んでいる人にもお勧めします。
V2Lの導入をおすすめする人
以下のような人は、車載コンセントのある車を選ぶなど、V2Lを利用できるとメリットが大きいでしょう。
- 車中泊をする人
- アウトドアが好きな人
- 長時間の運転が多い人
V2Lの導入をお勧めするのは、屋外や車中にいる時間が長い人です。特に車中泊をする人や、ペット連れで車移動の多い人にお勧めします。
V2HとV2Lの導入金額は?補助金は出る?
V2H充放電設備とV2L用の外部給電器の費用相場は、以下の通りです。
- V2H充放電設備…本体価格約50~160万円+工事費用約30~40万円
- V2L外部給電器…本体価格約45~150万円(工事不要)
V2H充放電設備とV2L外部給電器はともに国のCEV補助金の対象です。令和4年度予算の場合、V2H充放電設備は最大115万円(本体価格の1/2+工事費用)、V2L外部給電器は最大50万円(本体価格の1/3)交付されていました。
各自治体でもV2HやV2Lの導入に補助金制度を設けている場合があります。CEV補助金と併用可能なものもあるので、事前に各自治体の補助金制度も確認しましょう。
大きな出費の前に愛車の買取査定を
電気自動車やPHEVの購入に合わせて、V2HやV2Lの導入を検討する人は多いでしょう。V2HやV2Lだけなら、補助金の利用で自己負担額が20~40万円程度に収まることもあります。
そうは言っても、車の購入費と合わせれば最終的な出費は数百万円かかります。負担が大きいと感じる場合は、今の車を少しでも高く手放すようにしましょう。
ガリバーでは各車種の買取相場と買取実績を公開しています。愛車の買取相場を確認した上で査定に出し、下取り・買取価格の交渉に臨んでください。