セダン&ワゴン編
安全なセダン&ワゴン選びのポイント
セダン&ワゴンは空前のSUVブームの影響を受け、車種が激減している。ベスト5を選ぶことも難しくなってきたほどだ。
だが、予防安全装備は意外なほど充実している。特に高級車では、過不足無い充実した予防安全装備だけでなく、自動運転に近い運転支援機能を搭載したモデルもあり、差別化されている。
また、ポップアップフードや歩行者エアバッグなど、歩行者の被害を軽減する装備も充実している。
自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)は、標準装備が義務化された。国内で販売される国産新型乗用車には2021年11月から、継続生産車は2025年12月以降から適応だ。そのため、現在販売されている多くの車種が自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)を標準装備している。
安全なセダン&ワゴンTOP5
ナンバー1相当の実力を誇るレクサスLSは、車両価格が1,000万円を超えるため今回のランキングでは除外した。
TOP.1
トヨタMIRAI(ミライ)

トヨタ ミライは、2020年12月にフルモデルチェンジし2代目となった。ミライは、水素を燃料として走行するFCEV(燃料電池車)だ。水素と酸素を化学反応させ電気を生み出し、その電気を使いモーターで走行。排出されるのは水のみであることから、究極のエコカーとも呼ばれている。
ミライの予防安全装備パッケージ「トヨタセーフティセンス」は、名前は同じでもグレードによって異なる2つのシステムが用意されている。
「アドバンスト ドライブ(Advanced Drive)」という名称が入っているグレードは、レクサスLSと同様のステレオカメラ+ミリ波レーダー+ライダーが組み合わされたセンサーを持つ。
その他のグレードは、単眼カメラ+ミリ波レーダーの組み合わせで、トヨタで最も使われているセンサーだ。
アドバンストドライブ | その他 | |
検知対象 | 車両 歩行者 自転車 |
車両 歩行者 自転車 自動二輪 |
検知シーン | 右折時の対向車 右左折時の対向歩行者 |
右折時の対向車 右左折時の対向歩行者と自転車 |
システムのセンサーが異なるため、自動ブレーキの検知対象や検知シーンはやや異なる。検知対象・検知シーンの豊富さは、アドバンストドライブ非搭載モデルの方が優れている結果となった。その他、微妙な違いがある。
アドバンストドライブが圧倒的に優れている点が、自動運転に近い運転支援機能だ。
アドバンストドライブは、ナビで目的地を設定後、高速道路上で一定条件を満たすと、システムが起動し高速道路上でハンズオフが可能になる。ステアリングやアクセル、ブレーキ操作は、システムが行う。
100km/h前後の高速域でハンズオフを可能とする運転支援システムは非常に数少ない。車線変更もウインカーを操作すると、後側方からの車両がいないことをシステムが確認して自動で実施してくれる。カーブなどでは自動減速するなど、システムの運転技術は非常に高く、一般的なドライバーの運転より安心できるほどだ。
こうしたハンズオフでの走行は、腕や肩や首などの緊張感から解放されて、大幅な疲労軽減となる。疲労は注意力不足の原因となるため、安全運転にも役立つだろう。
さらに、ヘルプネットも標準装備だ。エアバッグが展開するような大きな衝撃を受けると、専門オペレーターに通報。ドライバーの意識がなくても、救急車の手配や警察への通報を行ってくれる。
ドライバー異常対応システムも標準装備している。高速道路上でレーントレーシングアシスト(LTA)を使って走行中、ドライバーが病気などで意識を失い無操作状態が続くと、システムが自動で停車、ヘルプネットを使いドライバーの救護を行う機能だ。暴走による2次被害リスクも軽減してくれる。
ミライは、ほぼすべてと思われる予防安全装備を標準装備化した。高いレベルの予防安全性能を誇る共に、自動運転に近い先進運転支援装備アドバンストドライブの設定もあることも評価して、ナンバー1とした。
TOP.2
トヨタクラウンセダン

トヨタ クラウンセダンは、2023年11月に登場した。全長5,030mmという大型のセダンだ。他のクラウンシリーズとは駆動方式が異なり、より上質な走りが可能なFR(後輪駆動)方式を採用している。プラットフォーム(車台)は他のクラウンシリーズがFF(前輪駆動)のGA-Kを採用している中、クラウンセダンはレクサスLSやミライと同じGA-Lが用いている。
クラウンセダンには、ミライと同じFCEV(燃料電池車)の設定があり、二車種の基本的な部分は共通化されている。異なるのは、クラウンセダンに2.5Lハイブリッドが搭載されていることだ。
逆にクラウンセダンに設定が無いのは、自動運転に近い先進運転支援機能「アドバンストドライブ」だ。そのため、クラスセダンの予防安全装備パッケージ「トヨタセーフティセンス」は、単眼カメラ+ミリ波レーダーの組み合わせのみだ。
この「トヨタセーフティセンス」の自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)はトップレベルの検知能力を誇る。検知対象は、車両と歩行者に自転車、そして自動二輪。検知シーンは、右折時の対向車と右左折時の対向方向車と自転車に対応している。
「ブラインドスポットモニター」は標準装備されている。これは車線変更時など隣接する車線にいる車両を検知し、衝突リスクが高い場合警報を発する機能だ。
この機能を使った安心降車アシストも標準装備されている。降車する際に、後側方から接近する車両や自転車、歩行者などを検知。ドアを開けると衝突の危険がある場合、警報を発してくれる。
パーキングサポートブレーキも標準装備だ。バックで出庫時など、後方に接近する歩行者や車両がいて、衝突の危険が高い場合には自動ブレーキが作動する。
車両周辺の予防安全装備は十分なレベルといえる。
また、ヘルプネットやドライバー異常時対応システムなども標準装備されている。コネクティッド技術を使いエアバッグが展開するような大きな衝撃を検知すると、自動で専門オペレーターに通報。ドライバーの意識がなくても、救急車の手配や警察への通報を行ってくれる機能だ。
クラウンセダンには、ミライのような高度な運転支援機能アドバンストドライブは設定されていない。だが、アドバンストドライブ(渋滞時支援)は標準装備だ。高速道路などで全車速追従式クルーズコントロールで走行中、約40km/h以下の渋滞時、一定の条件を満たすとハンズオフが可能となる。高速道路での渋滞時には、ドライバーの疲労をかなり軽減してくれる。
クラウンセダンには、ミライほどの先進運転支援機能は無い。だが十分なレベルの予防安全装備が揃っている。また安全装備は全車標準装備されていることも高評価して2位とした。
TOP.3
スバルレヴォーグ

2代目にあたるVN系スバル レヴォーグは、2020年10月に登場。スバルの予防安全装備パッケージと言えば、ステレオカメラを使った「アイサイト」だ。VN系レヴォーグがデビューした当時は、高い予防安全性能を誇っていた。
しかし、予防安全技術は日々進化している。他社の予防安全技術の進化も早く、徐々にアイサイトの優位性が失われてきた。そこで、スバルは2023年10月の改良で、ステレオカメラに広角単眼カメラをプラス。計3つのカメラを装備した新世代アイサイトを標準装備した。この次世代アイサイトにより検知対象や検知シーンなどが高機能化され、クラストップレベルの予防安全性能を手に入れた。
自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)の検知対象は、車両と歩行者、自転車に加え自動二輪にも対応。交差点内では、右折時の対向車両、右左折時の対向歩行者車と自転車も検知する。
交差点への進入時には、左右から接近する車両などを検知し出合い頭の衝突を回避・被害軽減も可能となった。
後側方警戒支援システム(車線変更時に隣接する車線にいる車両と衝突の危険がある場合、警報を発する機能)や、後退時支援(バックで出庫時に、後方左右から接近する車両を検知し、衝突の危険がある場合警報を発する機能)も全車標準装備されている。
デジタルマルチビューモニターも標準装備だ。車両に取り付けられたカメラ映像を俯瞰で見た映像に変換したり、色々なシーンに合わせ映像を変え死角を無くしてくれる。
コネクティッド技術を使ったスバルスターリンクには、ヘルプネットも標準装備されているので安心だ。エアバックが開くなど大きな衝撃が加わると、専門オペレーターに通報。ドライバーの意識がなくても救急車の手配、警察への通報を行ってくれる。また、ドライバー異常システムも標準装備だ。
レヴォーグでは、乗員だけでなく衝突した歩行者の被害を軽減するために歩行者エアバッグを標準装備している。
さらに、アイサイトXという先進運転支援機能も標準装備だ。アイサイトXは、高速道路などで全車速追従式クルーズコントロールを使用時、約50km/h以下になり一定条件を満たすとシステムが起動し、ハンズオフでの走行が可能となる。
アイサイトXには、カーブ手前での減速機能や、ウインカーを操作すると後方の安全を確認後に車線変更する機能もある。安全性が高まるのはもちろん、ドライバーの疲労軽減も可能だ。
レヴォーグは、優れた安全装備と高度な運転支援機能が、すべてのグレードに標準装備されている。どのグレードを選んでも差がないことを評価して3位とした。
TOP.4
ホンダアコード

CY系アコードは、2024年3月にフルモデルチェンジし11代目となった。アコードではホンダの予防安全装備パッケージ「ホンダセンシング」の進化型である「ホンダセンシング360」を搭載した。
自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)の検知対象も拡大し、車両と歩行者、自転車に加え自動二輪に対応した。交差点内では、右折時の車両と自動二輪を検知する。さらに、右左折時の対向歩行者と自転車も検知し、衝突回避・被害軽減が可能となった。
車線変更時衝突抑制機能、車線変更支援機能も標準装備された。車線変更時に隣接する車線に衝突の可能性がある車両がいる場合、ドライバーへ警告し、衝突回避のためのステアリング操作を支援してくれる。
後退出庫サポートも標準装備だ。バックで出庫する際に、後方から接近する車両を検知し衝突リスクがある場合、警報を発する。
マルチビューカメラシステムも標準装備。車両に取り付けられたカメラ映像を俯瞰からみた映像に変換し、死角を無くしうっかり衝突リスクを軽減する。
このように、車両周辺の予防安全装備は高いレベルにある。
運転支援機能では、渋滞追従機能付アダプティブクルーズコントロールに、カーブの曲がり具合を判断し速度を調節する機能がプラスされ、より安心・安全な仕様になった。
ホンダコネクトの機能である緊急サポートセンターも標準装備されているので安心だ。大きな衝撃を受けエアバックが展開するような状況になると、専門オペレーターに通報。ドライバーの意識がなくても、救急車の手配や警察への通報を行ってくれる。
衝突安全面の装備では、助手席にもニーエアバックも標準装備した。他社では運転席のみが多いが、アコードでは助手席にも装備されているのがユニークなポイントだ。
従来の予防安全装備から進化したホンダセンシング360。オプション選択の必要がないのは高評価ポイントだ。ただし、ハンズオフ機能やドライバー異常警報システムは用意されていないため、4位とした。
TOP.5
トヨタカローラセダン&カローラツーリング

トヨタ カローラセダンとカローラツーリングは2019年10月に登場した。日本でも扱いやすいボディサイズと、1.8Lハイブリッドの超低燃費性能で、人気のないセダン&ワゴンカテゴリーでも安定した販売台数を誇っている。
デビュー時に装着されていたトヨタセーフティセンスは、一定以上の予防安全性能を誇っていた。しかし2019年デビューであるため、最新のトヨタセーフティセンスと比べると、性能面で見劣りしてきていた。
そこで、トヨタは2022年10月の改良で最新のトヨタセーフティセンス投入した。これによって、カローラセダン&カローラツーリングの予防安全性能は大幅に進化している。
自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)の検知対象や検知シーンは、クラストップレベルの実力を誇っている。検知対象は、車両と歩行者、自転車と自動二輪だ。交差点内では、右折時対向車両、右左折時の対向歩行者と自転車、出合い頭時の車両と自動二輪に対応している。
比較的安価な価格帯のクルマながら、クラウンセダンなどの高級車と同等レベルの性能を得ている。高級車、大衆車問わず、予防安全装備の性能に差を付けない姿勢は高く評価できるポイントだ。
ただし、ブラインドスポットモニター(車線変更時に隣接する車線内に衝突のリスクがある車両がいる場合、警報を発する機能)や、パーキングサポートブレーキ(バックで出庫する際に接近する車両を検知し、衝突リスクがある場合、警報と自動ブレーキが作動する機能)はオプションだ。
車線変更やバックでの出庫は、頻繁に行われる。それだけにブラインドスポットモニターやパーキングサポートブレーキの使用頻度は多い。ローテクな装備なので、標準装備して欲しい機能といえる。
ブラインドスポットモニターの機能を使った安心降車アシストは、トヨタ車に続々装着されている装備だ。停車中にドアを開ける際に、接近する車両や自転車、歩行者を検知。衝突する可能性がある場合、警報を発する機能だ。後方確認をせずにドアを開けた際の自転車や歩行者と衝突するリスクを低減してくれる、気の利いた予防安全装備だ。
ヘルプネットも標準装備なので安心だ。事故などの緊急時にドライバーの意識がなくても救急車の手配や警察への通報を行ってくれる。
カローラセダン&カローラツーリングは、オプション装備を装着すると予防安全性能が高レベルになることから、5位とした。
まとめ
上位車種には高級車が揃った。しかしレヴォーグは、ミライやクラウンセダンほど高額車ではないものの、同等レベルの予防安全装備を標準装備化している。これは、高く評価できる。このレベルの予防安全装備が揃ったレヴォーグは、予防安全性能のコスパが高いモデルといえるだろう。こうした部分にメーカーの安全に対する本質的な姿勢が見え隠れする。
カローラ系は予防安全装備のオプションをフル選択しないと、少々物足りない仕様だ。こうした傾向は、手が届きやすい価格帯のクルマではよくあること。
予算があるとは思うが、購入時に予防安全装備のオプションをケチってはいけない。躊躇なく予防安全装備はフル装備状態にしたいところだ。
なお、予防安全装備はメーカー毎に同じような名称・機能でも微妙に仕様が異なるため、じっくりと比較することが重要だ。
安全装備比較表
- ◯…全車標準装備
- △…一部標準装備または一部オプション
- ×…標準装備なし
トヨタミライ | トヨタクラウンセダン | スバルレヴォーグ | ホンダアコード | トヨタカローラセダン&カローラツーリング |
衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)検知対象 | ||||
---|---|---|---|---|
車両、歩行者、自転車 *アドバンストドライブ非搭載グレードは自動二輪車にも対応 |
車両、歩行者、自転車、自動二輪車 |
車両、歩行者、自転車、自動二輪車 |
車両、歩行者、自転車 |
車両、歩行者、自転車、自動二輪車 |
踏み間違い衝突防止アシスト | ||||
◯ |
◯ |
◯ |
◯ |
◯ |
サイドエアバック | ||||
◯ *運転席ニーエアバッグ |
◯ *運転席ニーエアバッグ |
◯ *運転席ニーエアバッグ+助手席シートクッションエアバッグ |
◯ *運転席&助手席ニーエアバッグ |
◯ |
カーテンエアバッグ | ||||
◯ |
◯ |
◯ *歩行者エアバッグもあり |
◯ |
◯ |
車線逸脱警報 | ||||
◯ |
◯ |
◯ |
◯ |
◯ |
車線維持支援 | ||||
◯ |
◯ |
◯ |
◯ |
◯ |
後側方車両検知警報 | ||||
◯ *安心降車アシスト付き |
◯ *安心降車アシスト付き |
◯ |
◯ *ステアリング操作支援付き |
△ *ブレーキ制御付き |
後退時後方車両接近警報 | ||||
◯ *ブレーキ制御付き |
◯ *ブレーキ制御付き |
◯ |
◯ |
△ *ブレーキ制御付き |
オートマチックハイビーム | ||||
◯ |
◯ |
◯ |
◯ |
◯ |
ドライバー異常時警報システム | ||||
◯ |
◯ |
◯ |
× |
◯ |
SOSコール(ヘルプネットなど) | ||||
◯ |
◯ |
◯ |
◯ |
◯ |
JNCAP | ||||
- |
- |
★★★★★ (2020年) |
- |
★★★★★ (2021年) |
※安全装備の詳細は各車メーカー公式サイトをご確認ください。