近年、各メーカーの新型車には電気自動車のラインナップが増えている。補助金があるにせよ、まだ電気自動車は高いと感じる人も多いだろう。今回は電気自動車の価格が高い背景やガソリン車との違いを調べてみた。
EV普及を妨げる車両価格の高さ
2022年に国内で売れた電気自動車(以下EV)の数は5万8,813台。これは過去一番の多さであり、前年比の2.7倍です。しかしながら乗用車全体で見ると、その割合はわずか1.7%。本格的な普及にはまだ遠い状態です。
日本でEVの普及が遅れている背景には、以下のような要因があります。
- 車両価格が高い
- 地域によって充電スポットが少ない
- 集合住宅などでは自宅で充電できない
この中でも、車両価格の壁は高いです。昨年のEV販売台数が大きく伸びたのも、大幅拡充のCEV補助金があってこそ。補助金なしでは大幅な増加を見込めなかったでしょう。
国産EVの車両価格一覧
では、EVはガソリン車と比べてどれほど高いのでしょうか。現在販売中の国産EVの車両価格を一覧でまとめました。
車種 | 車両価格 |
---|---|
三菱「eKクロスEV」 | 239.8万円~ |
日産「サクラ」 | 254.9万円~ |
日産「リーフ」 | 408.1万円~ |
マツダ「MX-30 EV」 | 451万円~ |
ホンダ「Honda e」 | 495万円~ |
日産「アリア」 | 539万円~ |
レクサス「UX 300e」 | 580万円~ |
スバル「ソルテラ」 | 594万円~ |
トヨタ「bZ4X」 | ※リース専用 |
平均 | 445.3万円 |
※車両価格の情報は2023年1月12日時点の公式ページより。今後値上げ等で変更される可能性もあります。
軽自動車の平均価格は大よそ140万円といわれます。軽EVのサクラやeKクロスEVとは、約100万円の差です。また上記一覧から軽EVを除いた場合、車両の平均価格は約511万円。普通車の場合、人気車種の多くは200~300万円台なので、ガソリン車とは200万円以上の価格差があります。
なぜEVはこんなにも高いのか
EVの車両価格を吊り上げている最大の要因は、リチウムイオン電池(バッテリー)です。リチウムイオン電池は急速な充放電が可能で、EVに欠かせません。しかしその製造にはコバルトなどの希少金属が必要であり、大容量バッテリーを搭載するEVの生産コストはどうしても高くなってしまいます。
例えば日産「リーフ」の場合、40kWhバッテリー搭載モデルの販売価格は約408万円からです。一方60kWhバッテリー搭載モデルでは約525万円から。バッテリー容量が大きくなるほど、生産コストも大きく跳ね上がります。
補助金を使えば「許容範囲」になる可能性も
車両価格が普及の壁になっているEVですが、国や自治体の補助金を使えば「ガソリン車と同等」か、「ガソリン車より少し高い」程度になることもあります。
例えば国の令和4年度CEV補助金(受付終了、今後補正予算分執行予定)を使った場合、車両価格は以下のように変わります。
車種 | 車両価格 | R4年度 CEV補助金 |
R4年度補助金 適用後価格 |
---|---|---|---|
三菱「eKクロスEV」 | 239.8万円~ | 55万円 | 184.8万円~ |
日産「サクラ」 | 254.9万円~ | 55万円 | 199.9万円~ |
日産「リーフ」 | 408.1万円~ | 78.6万円 | 329.5万円~ |
マツダ「MX-30 EV」 | 451万円~ | 51.6万円 | 399.4万円~ |
ホンダ「Honda e」 | 495万円~ | 71.1万円 | 423.9万円~ |
日産「アリア」 | 539万円~ | 92万円 | 447万円~ |
レクサス「UX 300e」 | 580万円~ | 85万円 | 495万円~ |
スバル「ソルテラ」 | 594万円~ | 85万円 | 509万円~ |
トヨタ「bZ4X」 | ※リース専用 | - | - |
平均 | 445.3万円 | 373.6万円 |
※車両価格は各メーカーHPより、補助金交付額は次世代自動車振興センターの対象車両一覧より引用(2023年1月12日時点)
軽EVのサクラやeKクロスEVは、搭載バッテリーを小さくすることで車両価格をかなり下げています。そのためCEV補助金を使うだけでも、スーパーハイトワゴンと大差ない価格になります。他のEVも、各自治体の補助金も使えば車両価格をさらに抑えられます。
電気代とガソリン代の差はどれくらい?
車両価格はガソリン車の方が得ですが、EVの長所に挙げられる維持費はどうでしょうか。維持費の中でも電気代とガソリン代に注目し、その差を比べてみました。
以下は、年間1万㎞を走行した場合の電気代とガソリン代の試算例です。
電気自動車 日産「リーフ」 (2WD、X) |
ハイブリッド車 日産「ノート」 (2WD、X) |
ガソリン車 トヨタ「ヤリス」 (2WD、X) |
|
---|---|---|---|
電費/燃費 (WLTCモード) |
8.05km/kWh | 28.4㎞/L | 20.2㎞/L |
1万㎞走行時の 電気代/ガソリン代 |
約33,540円 | 約60,211円 | 84,653円 |
リーフとの価格差 | ー | ▼26,671円 | ▼51,113円 |
※電気料金は27円/kWh、ガソリン代は171円/Lで試算
今回の試算の場合、EV「リーフ」の電気代はハイブリッド車「ノート」やガソリン車「ヤリス」より数万円安く済みました。クルマを13年所有した場合、この3車種では約35万円~66万円の差が生じます。
現在のEV価格は「補助金ありき」
維持費はガソリン車よりEVの方が得になりやすいです。しかし車両価格の高いEVの場合、13年間所有したとしても、維持費でガソリン車との車両価格の差を埋めるのは困難でしょう。現在のEVの車両価格は、国や自治体の補助金があって初めて成り立つものといえます。
今後EVは安くなるのか
EVの価格のカギを握るのは、リチウムイオン電池のコストです。現在、リチウムイオン電池はスマートフォンなど多くの製品に使われており、今後さらに需要高になると見込まれます。しばらくはEVも現在のような価格を維持する可能性が高いでしょう。
一方で希望の光もあります。それはリチウムイオン電池の価格がこの10年で大幅に下がったことです。技術開発が進み、生産コストは1/4程度になったといわれます。今後もさらなる新技術が確立されれば、コスト削減に繋がるでしょう。とはいえ、その日を迎えるのは2030年以降など、かなり先になりそうです。
乗り換えるなら愛車の買取査定を!
現在はEVやPHEV購入時に国のCEV補助金や自治体の補助金を受け取れますが、この制度がいつまで続くかは分かりません。補助金を受けられる今のタイミングで乗り換えるのも、一つの選択肢でしょう。
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