車の印象を大きく左右するホイールは、デザインだけではなくカラーの違いによっても、見た目にガラッと変化が出ます。
そこで自分でホイールの塗装にチャレンジしてみたいと考える方もいらっしゃるでしょう。
ボディを塗装する場合と比較すると万が一のときのリスクも低いので、実際にDIYでホイール塗装している人もいます。
この記事ではホイール塗装をDIYでやる方法について、分かりやすく解説します。
- ホイール塗装はDIYでもできる?業者に依頼した方がいい場合は?
- ホイール塗装をDIYでするときのポイント
- ホイール塗装に必要なもの
- ホイール塗装のやり方の手順
- 【注意点】ホイール塗装で塗ってはいけない箇所
- 整備士のまとめ
ホイール塗装はDIYでもできる?業者に依頼した方がいい場合は?
ホイール塗装はボディを塗装(修理)するのと比較しても、万が一のときには塗り直したり買い替えることができ、部品単体で塗装できる気軽さもあるので、比較的DIYでチャレンジしやすいです。
販売ラインナップにはないオリジナルのカラーに塗装できる楽しみもあります。
ただし、あくまでDIYでの塗装となると細かいゴミ噛みが発生したり、ホイールが複雑な形状の場合には塗装にムラが発生しやすい、プロの施工と比較して耐久性に劣るなど、仕上がりの品質にはある程度目を瞑らないといけないケースもあります。
完ぺきな仕上がりを求めたり、部分塗装による修理をしたい場合には業者に依頼する方が確実です。
ホイール塗装をDIYでするときのポイント
ホイール塗装をDIYでやるときのポイントは主に以下のとおりです。
- 下地処理を確実におこなう
- タイヤに塗料がはみ出さないように養生を実施
- 風通しの良い周囲に迷惑をかけない場所でおこなう
- 天気が良く、過ごしやすい気温の日におこなう
下地処理を確実におこなう
ホイールに限らず塗装するときに大切なのは「下地処理」です。
下地処理を適切におこなわないと塗装の密着が悪くなり、塗装剥がれが起こりやすくなったり、塗装面に凹凸ができて綺麗に仕上がらないといった問題が発生します。
養生の実施
ホイール塗装をするとき、塗装が不要な箇所にハミ出さないように確実に養生を実施します。
仕上がったときの見た目の美しさはもちろんのこと、安全のためにも大切なことです。
詳しくは後ほど解説します。
塗装する場所に配慮する
ホイールの塗装に必要な塗料にはシンナーが含まれているので、塗装の際には風通しの良い換気のされた場所でおこないます。
また、塗料は非常に細かい粒子のため、どれだけ気を付けていても周囲に飛散します。
たとえば隣家で洗濯物を干してあるような場所では、万が一のトラブルを避けるため作業は控えたほうがよいでしょう。
他人に迷惑がかからないように、周囲の環境には十分に配慮しましょう。
天候に注意する
塗装を実施する環境によりますが、ホイール塗装を成功させるためには、天候を考慮することも大切です。
特に影響を受けやすい屋外で作業する場合には、雨の予報がなく湿度が低い、暑くもなく寒くもない過ごしやすい気温の日にするのがおすすめです。
塗装途中で雨(水)がNGなことは安易に想像がつきますが、気温も重要な要素です。
(雨が降っていなくても湿度が高すぎると、塗装が白く濁ってしまうような症状が発生する可能性があります)
気温が低すぎると塗装にムラができやすく、さらに乾燥にも時間が掛かります。
一方で気温が高すぎると乾燥が早くなりすぎます。
この場合、塗装面がザラつきやすくなるなどで、塗装ムラが発生しやすくなります。
屋外で塗装する時は夏冬を避けて春秋に実施するようにして、どうしても夏冬に塗装するときは可能な限り外気温の影響を受けにくい屋内でする方が、塗装がうまくいきやすいのでおすすめです。
ホイール塗装に必要なもの
ホイール塗装に必要なものを、簡単な用途の説明と合わせてまとめました。
- マスキングテープ
→養生するのに使用。ナットホールなど塗ってはいけないところに貼ったり詰めたりする - 脱脂剤(シリコンオフ)
→塗装面の油分を除去する - サフェーサー
→塗料を密着させやすくする。 - 耐水ペーパー(#320→#600→#1000〜#1500)
→塗装表面を均したり細かい傷を消す。塗装の足付け - カラー塗料
→塗りたいカラーのもの、DIYではホイール塗装専用の缶スプレータイプがおすすめ - クリア塗料
→必要に応じて。使用時はホイール塗装専用のものを使う - コンパウンド
→塗装が完了したあと、コンパウンドで磨くことで艶が出てきれいな仕上がりになる - (トランプ)
→タイヤに塗料がハミ出ないように養生するために使用。便利な方法としてDIYするユーザーの中で有名な裏ワザ - その他
→下地処理の前にホイールの洗浄が必須。必要に応じてホイールを綺麗に洗うための洗車グッズを使用。また、塗装前にホイールの深い傷(ガリ傷)を修理する場合にはパテが必要。
基本的にここで紹介したものがあれば、ホイール塗装が可能です。
カラースプレーおよびクリアスプレーはホイール塗装専用のものを使用します。ボディペイント用とは成分が異なるためです。
カラースプレーのなかには、サフェーサー(プラサフ)成分を含んでおり、サフェーサーの使用は不要であることを謳った製品もあります。
耐水ペーパーは、研磨から仕上げまで可能な複数種類がセットになったものが販売されているので、迷ったらこうした商品を買えば安心です。
また、ホイール塗装するときの便利でコスパの良い裏ワザとして、100均のトランプをホイールとタイヤのリムの隙間に挟んで、ぐるっと一周囲むことで塗料がタイヤに飛散して付着するのを防ぐ方法があります。
ホイール塗装のやり方の手順
ホイールを塗装するときの手順を解説します。
ここではパテを使用したホイール傷の修理は除きます。
①ホイールを洗う
まずはホイールについた余分な汚れ(主にブレーキダスト)を可能な限りきれいにします。
ホイールのデザインによっては、指先が入らずに洗いにくいところもあります。
歯ブラシなどで構わないので、しっかりと隙間の細かい部分まできれいにすることを意識してください。
②ホイールの足付けをおこなう
足付けには、耐水ペーパーを使用します。
耐水ペーパーは水に濡らしながら使用します。(「水研ぎ」といいます)
目立つ傷がある場合には、まずはじめに#320程度の粗目のものを使用し、順番に耐水ペーパーの目を細かくしていきます。
きれいなホイールであれば#1000〜の細目のものでOKです。
足付けで塗装する表面に細かい凹凸ができることで、塗装の密着を良くし耐久性も向上します。
同時に、ホイール表面の傷を目立たなくする役割もあります。
③ホイールを脱脂する
ホイールに油分が付着していると塗料を弾いてしまいます。
塗装ムラの原因にもなるので、シリコンオフを使用して確実にホイールの脱脂をおこないます。
「④ホイールの養生をする」と作業が前後しても構いません。
④ホイールの養生をする
マスキングテープなどを使用してホイールの養生をおこないます。
タイヤ付きのホイールを塗装する場合には、すでに解説したトランプを活用する方法がおすすめです。
また、塗ってはいけない場所となるホイールナットの装着面、ホイールのハブ面は確実かつ丁寧に養生します。
⑤サフェーサーを塗布
サフェーサー(プラサフ)を塗布することで以下の効果があります。
- 上塗りの塗料の密着を良くする
- 防錆
- 傷を埋めて表面を均一にする
薄く3〜5回に分け、15分ほど間隔を空けながら下地が見えなくなるまで塗布します。
⑥研磨して下地を整える
サフェーサーを塗布したら、#1000〜#1500程度の細目の耐水ペーパーを使って、あまり力を入れすぎないように気を付けながら表面のザラつきや凸凹が無くなるまで研磨(水研ぎ)します。
この後の塗装本番に備えて、しっかりと下地を整えます。
⑦カラー塗装をする
カラー塗装をする前に缶スプレーをしっかりと振って、噴射する塗料にムラが出ないようにします。
寒いときは、お風呂の湯船の温度よりすこし高い(40〜50℃)お湯で缶スプレーを湯煎します。
これらを怠ると、カラー塗装がうまくいかずムラができたり、塗料がダマになって出てきたります。
塗装する前には、ホイールの下地が確実に乾いていることを確認します。
缶スプレーによる塗装を成功させるコツは以下のとおりです。
- 一度で塗ろうと思わない
- 一定の向きから一定のスピードで、塗装面に対しても一定の距離を保って塗装する
- 塗装面が軽く乾燥するまで待って重ね塗りをおおなう
- すこし周囲より薄いところがあると思っても部分的に塗装しない
- 焦らず何度も薄く重ね塗りを繰り返して仕上げる
⑧クリア塗装をする(必要に応じて)
カラー塗装と同じ要領でクリア塗装も実施する。
⑨養生を取り除く
塗装が終わったら、完全に乾燥するのを待たずにある程度乾燥させた後に養生を取り除きます。
完全乾燥後だと塗料と養生したものが引っ付いてしまい、養生を取り除くときに塗装が一緒に剥がれてしまうリスクがあるためです。
⑩コンパウンドで磨いて仕上げる
カラー塗装、クリア塗装が完全に乾燥・硬化するまでは「1〜2週間」かかります。
その間、なるべくホイールに汚れが付着しないように配慮して保管します。
塗装が完全に硬化したら、コンパウンドを使用して表面を仕上げます。
【注意点】ホイール塗装で塗ってはいけない箇所
ホイール塗装で塗ってはいけない箇所は、ホイールナットとホイールが接触する座面部です。
これは、ナットを締め付けた際の力で塗装が割れることで、密着しなければいけない座面部に隙間が生じるリスクがあるためです。
また、ホイールナット部は均一に塗装しづらい狭い場所なので、塗装ムラが発生しやすく塗装膜の厚さの違いにより、ホイールナットの締め付け力が均一にならず、万が一のときに緩んでしまうリスクが高まります。
また、ハブとホイールの当たり面と同様にホイール側の塗装は避けたほうが良いでしょう。理由はホイールナットとの接触部分と同様です。
整備士のまとめ
ホイール塗装はボディ塗装と比較してもチャレンジしやすいDIYです。
失敗してもやり直しがききます。
タイヤがついたままでも塗装ができ、周囲の環境に配慮して作業すれば、気軽に車のイメージチェンジを計ることができます。
下地処理を丁寧に行うこと、一定の距離感とスピードで焦らず薄く繰り返し塗装すること、塗装後は完全乾燥するまで雨風を凌げる場所で保管することが成功のコツです。
- Supervised by 整備士 ヒロ
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保有資格:2級整備士。国産ディーラー整備士、輸入車ディーラー整備士の経験がある、現役の整備士。 整備士経験は10年以上で過去にはエンジニアとして全国規模のサービス技術大会に出場。 車の整備に関する情報をtwitterで発信している。