車の塗装が劣化する原因は?復活のさせかたを整備士が解説

車の塗装が劣化する原因は?復活のさせかたを整備士が解説

大好きな車は長く大切に乗りたいものですが、そこで避けられないのがボディの塗装の劣化です。
古い車の塗装が部分的に薄くなっていたり、クリア層が剥げている車を目にしたことのある人も多いはずです。
こうした塗装の劣化はなぜ起きるのか、復活のさせ方はあるのか、現役の整備士が解説します。

車の塗装が劣化する原因

車の塗装は常にさまざまなダメージを受けている状態です。

  • 紫外線
  • 酸性雨
  • 黄砂
  • PM2.5
  • 飛び石
  • 砂埃
  • 鉄粉
  • 水垢
  • 鳥のフン
  • 樹液
  • 融雪剤
  • 潮風(海水)
  • 排気ガス

こういった外的要因によるダメージの蓄積によって、車の塗装は徐々に劣化します。
また、これらのダメージを受けたまま放置することで、劣化のスピードが早まってしまいます。
車のボディ・塗装が汚れている状態そのものが、塗装劣化の原因になるとご理解ください。
紫外線はどんな車でも走行時は常に晒されるものなので、それゆえに長い目線で見るともっとも塗装へ与えるダメージが大きい原因です。

春はボディが汚れがち

春には花粉や黄砂(PM2.5)の影響で雨が降るたびに車が見るも耐えないドロドロな状態になりがちです。
雨が降らなくても数時間屋外に車を置いておくだけでも、車の塗装面には汚れが付着した状態になります。
わたしが整備士になった当初、春は洗車をしても終わる頃にはすでにボディや窓ガラスに黄砂の汚れが付着してしまっているのを見て、驚いたことを今でも覚えています。
この時期の雨の後は、すぐに汚れを落とさないとシミになって、塗装へのダメージが蓄積してしてしまいます。

錆の発生が塗装ダメージのスピードを早める

降雪地帯や海に近いエリアは、融雪剤(塩カル)や潮風による塩害によって、塗装面の劣化のみならず車全体が錆による腐食のダメージを受けます。
また、工場地帯や近くを電車が通っている環境だとボディに鉄粉が付着しがちです。
塗装面に刺さった細かい鉄粉を放置し続けていると、ひどい場合にはそこから錆が発生し、塗装面に錆の茶色い粒々が無数にできてしまう状態になります。

鳥のフンや樹液の付着の放置は危険

鳥のフンや樹液はいずれも酸性の性質があるので塗装にダメージを与えます。
また、放置していると固着して簡単には取れなくなってしまうので厄介です。
固着した鳥のフンや樹液を無理矢理除去しようとして、ボディに傷をつけてしまうリスクもあるので、可能な限り早く汚れを落とすようにしましょう。

【補足】白ボケとは?

車の塗装における白ボケとは一般的に「チョーキング」現象を指します。
チョーキング現象とは、塗装が劣化して白くチョークの粉が吹いたような状態になることで、年数の経過と共に目立つようになり状態が悪化します。
特に紫外線を受けやすいルーフやボンネットを中心に、白ボケが発生しやすいです。
白ボケは主に塗装面にクリア層のないソリッドカラーが目立ちやすいです。
これはメタリックやマイカ、パール塗装の場合はカラー塗装の上にクリア塗装があるため最低でも2層ある塗装が、ソリッドだと1層のみの塗装のため、カラー層が直接ダメージを受けてしまうためです。

劣化した車の塗装の復活のさせ方

劣化した車の塗装を復活させる方法は以下のとおりです。

  • 再塗装をする
  • コンパウンドを使用してボディを磨く
  • コーティングやワックスを施工する

再塗装をする

劣化した塗装を復活させるためには、当然ながらボディの再塗装を実施すれば綺麗に復活します。
ただし部分的な塗装でも10万円前後、複数のパネルを再塗装するとなると数十万円〜掛かるので、もっとも費用が高額になります。
また、部分的な塗装になると色褪せた他のパネルと色合いの違いが出てしまうこともあります。

コンパウンドを使用してボディを磨く

劣化した塗装面は、目に見えないレベルで傷や汚れの付着による凹凸があります。
コンパウンドは研磨剤とも呼ばれます。
凹凸のある塗装面をコンパウンドで磨くことで表面を均し、塗装の状態や艶を復活させます。
手作業で行うのは大変なので、ポリッシャーを使用して磨くのが一般的です。
塗装面の磨きはコーティング施工時の下地作りのひとつでもあるので、コーティングの施工は高額なためお金をかけるのが躊躇われるという方は、整備工場や洗車専門店で塗装の磨きだけ依頼するのも良いかもしれません。

コーティングやワックスを施工する

再塗装まではするつもりはないが、なるべく美しい塗装状態に復活させたい方は、ボディコーティングの施工をおすすめします。
専門店に依頼すると、先ほど解説したボディの磨きを含む下地処理にしっかり時間を掛けたうえでコーティングを施工します。
コーティングの効果によって艶感や塗装の深みが出て、その後の塗装面の保護効果もあるのでおすすめです。

【補足】塗装剥がれにまで進行すると注意

飛び石やボディの傷がキッカケの塗装剥がれは、放置しているとボディに錆が発生する原因になります。
よって、発見した場合には早めの対処が必要です。(※バンパーは樹脂製なので除く)
タッチアップペイントで応急処置するだけでも、錆の予防になります。
また、クリア剥げが発生した塗装は、塗装のクリア層が無くなってしまっていカラー層が剥き出しになった状態です。
塗装を復活させる方法で解説したようなコンパウンドで磨く方法は、本来磨くべきクリア層がそもそも無くなってしまっていることから、さらに状態を悪化させる可能性が高いです。
クリア剥げは経年劣化による発生もありますが、板金塗装修理をおこなった場合には、十分な技術力のない修理によって、早い場合には数ヶ月でクリア剥げが発生することもあります。
クリア剥げをきれいに復活させるためには、基本的には再塗装が必須となります。

車の塗装劣化を予防する方法

大切な愛車の塗装劣化を予防して、長く美しく保つ方法を紹介します。

  • ボディコーティングの施工
  • 屋内ガレージで車を保管
  • カーポートの設置
  • ボディカバーの使用
  • マメな洗車
  • 【補足】劣化しにくいボディカラーを選ぶ

ボディコーティングの施工

ボディコーティングを施工することで塗装の劣化を予防します。
理想は新車時の施工です。
また、効果が数年継続するような強固なコーティング被膜を形成するガラスコーティングであればより一層、塗装の劣化予防に効果が見込めます。

屋内ガレージで車を保管

塗装を劣化させる最大の敵は紫外線です。
そのほか、雨風を凌ぐことのできる屋内ガレージは、塗装を劣化から守るためにもっとも効果のある予防方法です。

カーポートの設置

生活環境によって誰しもが愛車を屋内保管できるわけではありません。
駐車場付きの戸建住居にお住まいであれば、カーポートを設置するだけでも直射日光から車を守り、青空駐車と比較して大きく塗装劣化の予防に貢献できます。

ボディカバーの使用

カーポートの設置も困難な場合には、ボディカバーを使用するのも塗装を守るために効果的な予防法のひとつです。

マメな洗車

車が汚れたときにマメな洗車をするかしないかで、塗装の劣化スピードは大きく異なります。
これはボディコーティング施工の有無に関わらず同じです。
汚れによっては長期間放置すると、洗車だけでは取れなくなる可能性があります。
雨シミや鳥のフン、融雪剤、樹液、黄砂とPM2.5…と種類は問わず汚れを見つけたときは、速やかに綺麗にすることを心掛けましょう。

【補足】劣化しにくいボディカラーを選ぶ

塗装劣化を予防するという観点からはすこしズレるかもしれませんが、車選びのときに経年劣化しにくいボディカラーを選ぶというのもひとつの方法です。
赤や黒は紫外線を吸収しやすいボディカラーのため、塗装の劣化スピードが早いです。
特にソリッド塗装のカラーは劣化が早いです。
一方で、ホワイトやベージュのような淡いトーンのボディカラーは長持ちしやすい色です。
もちろん愛車のボディカラー選びは、好きな色を選ぶことがベストですが、予備知識として覚えておくとよいでしょう。

整備士のまとめ

長く車を維持するうえで塗装の劣化は避けられません。
しかし、ボディメンテナンスや保管方法によって大きく延命させることが可能です。
一度、劣化した塗装を元の状態に復活させることは困難なので、この記事でご紹介した予防法を実践することをおすすめします。
すでに塗装の劣化がはじまり気になっているという方は、状態にもよりますが早い段階であれば塗装面の磨きで艶感を復活させることができます。
興味のある方は、洗車専門店や整備工場に相談してみるとよいでしょう。

Supervised by 整備士 ヒロ

ヒロ 2級整備士

保有資格:2級整備士。国産ディーラー整備士、輸入車ディーラー整備士の経験がある、現役の整備士。 整備士経験は10年以上で過去にはエンジニアとして全国規模のサービス技術大会に出場。 車の整備に関する情報をtwitterで発信している。