エンジンのフラッシングはエンジンの内部をクリーニングするものです。
整備工場でおすすめされたことがある人もいるでしょうが、その必要性についてはっきり分からないというのが本音でしょう。
そこで現役の整備士が、エンジンのフラッシングの効果や必要かどうかについて解説します。
エンジンのフラッシングとは?
エンジンのフラッシングは、エンジンの内部…具体的にはエンジンオイルが行き渡っている場所をクリーニングすることを指します。
洗浄剤または洗浄効果の高い添加剤やオイルでフラッシングをおこなうことで、エンジン内部に付着したカーボン汚れなどを除去します。
エンジン内部のコンディションを整えるためにもっとも大切なのは、エンジンオイルの定期的な交換ですが、そこを補うような役割があります。
主に以下の3つのパターンのいずれかでおこないます。
- 専用のフラッシング機械を使ったフラッシング
- 添加剤を使用したフラッシング
- フラッシングオイルを使用したフラッシング
それぞれもうすこし深掘りして解説します。
専用のフラッシング機械を使ったフラッシング
専用の機械をエンジンの指定された箇所に接続して、自動で洗浄剤を圧送してフラッシングを施工します。
エンジン停止状態でおこなうのがスタンダードです。
添加剤を使用したフラッシング
添加剤を使用したフラッシングには、添加剤を注入後に一定時間のアイドリングまたはレーシングを実施し、その後すぐにオイル交換するもの「即効性タイプ」や、添加剤を注入した後は次回のオイル交換までをフラッシング期間とするもの「遅効性タイプ」があります。
フラッシングオイルを使用したフラッシング
オイルを抜いた後に、通常のエンジンオイルよりも洗浄効果の高いフラッシングオイルを注入して、アイドリングでしばらく放置します。
その後、フラッシングオイルを抜き取り通常のエンジンオイル交換を実施します。
エンジンのフラッシングが逆効果の場合はある?
エンジンのフラッシングがトラブルを誘発してしまい、逆効果となるケースがあります。
過走行、メンテ不良の車はトラブルのキッカケになることも
あまりにメンテナンスの悪いエンジンや、過走行の車はエンジンのフラッシングをやらない方がよいでしょう。
フラッシングは高い洗浄効果でエンジン内部に付着したカーボンを落としますが、メンテナンスが悪いエンジンは、こうした汚れが多く堆積しています。
高い洗浄効果によって、落ちた汚れが油路やストレーナー(フィルター)を詰まらせてしまう恐れがあります。
そうすると、フラッシングがキッカケで二次的な不具合を誘発するリスクがあります。
オイル漏れ・滲みの誘発
エンジンの各所シーリング、ガスケットが劣化しているものの、エンジン内部の汚れがいい具合に劣化した場所をカバーしていることがあります。
フラッシングによる洗浄で、劣化した場所を埋めていた汚れが削ぎ落とされることで、オイル漏れ・滲みが発生することがあります。
エンジンのフラッシングが意味ない場合は?
エンジンのコンディションを整えるフラッシングは、オイルメンテナンスが良好な車や新しくて走行距離の少ない車など、やっても意味のない場合があります。
オイルメンテナンスが良好な車
そもそも整備工場の推奨するインターバルでエンジンオイルの交換をしていれば、エンジン内部にフラッシングが必要なほど汚れが堆積することはありません。
オイルメンテの良い20万kmオーバーのエンジンより、オイルメンテの悪い5万kmのエンジンの方が明らかにエンジン内部の状態は劣悪です。
よって、エンジンオイル交換をマメにしている車は、あえてエンジンフラッシングをする必要はありません。
新しくて走行距離の少ない車
新車購入して間もない車は、フラッシングで落とす必要のある汚れすらまだ付着していないので、エンジンのフラッシングは無意味です。
エンジンのフラッシングの頻度は
エンジンのフラッシングをおこなう場合、その頻度はエンジンの状態によって異なります。また、フラッシングの方法によっても推奨の頻度は異なります。
フラッシングの際はオイルフィルターの交換も同時におこなうので、エンジンオイルのみの交換時にはフラッシングはおすすめしません。
基本的には頻繁におこなうものではないので、フラッシングを検討している場合には、整備工場に相談することをおすすめします。
エンジンのフラッシング費用
すでにご紹介した3つのエンジンのフラッシング方法ごとに、費用と所要時間の目安まとめました。
それぞれ扱っている商品ごとに費用も大きく異なるので、気になる方は整備工場に問い合わせてみることをおすすめします。
また、整備メニューとして扱っていないお店もあるので注意しましょう。
フラッシング方法 | 費用の目安 | 所要時間の目安 |
---|---|---|
専用のフラッシング機械を使ったフラッシング | 6,000円〜 | 10〜30分 |
添加剤を使用したフラッシング | 3,000円〜 | 5〜10分 |
フラッシングオイルを使用したフラッシング | 1,500円〜 | 15〜30分 |
整備士のまとめ
エンジンのフラッシングは必ずやったほうが良いというものではありません。
たしかに効果はありますが、トラブルの元になるリスクを考えるとメンテナンスの悪すぎるエンジンは控えたほうが良いです。
また、エンジンのコンディションを整えるという意味では、フラッシングに頼るよりもまずはエンジンオイルの交換インターバルを守ることに尽きます。
そのうえで、ある程度走行距離も増えてきたときにコンディションを整える一環として、フラッシングを試してみるという使い方が、リスクも少なくおすすめです。
- Supervised by 整備士 ヒロ
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保有資格:2級整備士。国産ディーラー整備士、輸入車ディーラー整備士の経験がある、現役の整備士。 整備士経験は10年以上で過去にはエンジニアとして全国規模のサービス技術大会に出場。 車の整備に関する情報をtwitterで発信している。