プリウスのメーターにあるモニター内に「ハイブリッドシステムチェック」という警告メッセージが出ることがあります。車のハイブリッドシステムに問題が発生していることをドライバーにお知らせしてくれているのですが、さまざまな疑問が出てきます。
「そのまま走っていても大丈夫なのか」「メッセージを消すことはできるのか」「修理が必要な場合の費用が気になる」…。こういった疑問に現役の整備士がお答えします。
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- ハイブリッドシステムチェックとは?
- ハイブリッドシステムチェックが点いても走行して大丈夫?
- ハイブリッドシステムチェックが点く原因
- ハイブリッドシステムチェックの消し方、復帰方法
- ハイブリッドバッテリーの修理費用の目安
- 整備士のまとめ
ハイブリッドシステムチェックとは?
ハイブリッドシステムチェックは、プリウスのハイブリッドシステムに不具合が発生していることを意味します。整備工場に入庫を促し診断・修理を受けるようドライバーにお知らせするために、モニターに出るメッセージです。
不具合発生時に「ハイブリッドシステムチェック」の警告を出す可能性のある、ハイブリッドシステムを構成する主な部品は以下のとおりです。
- ハイブリッドコンピュータ
- エンジンコンピュータ
- ハイブリッドバッテリー
- バッテリーボルテージセンサ
- パワーコントロールユニット(以下※を含む)
(※:DC-DCコンバータ、昇圧コンバータ、インバータ、MG-ECU)
これ以外にもハイブリッドシステムを構成する部品は多くあります。どの場所にどのような不具合を発生しているかは、プロの整備士が診断機を接続して詳しく診断をしないと分かりません。
ハイブリッドシステムチェックが点いても走行して大丈夫?
ハイブリッドシステムチェックが点灯する原因によって走行そのものに支障があるかないかは変わってきます。
まずは安全な場所に車を停車させてから整備工場に相談し、プロからの判断を仰ぐようにしましょう。
自走で工場までの入庫を依頼されることもあれば、レッカー業者を依頼することを提案されることもあります。
一旦は走行しても大丈夫なケースもありますが、走行不能となるケースもあるので、いずれにせよ早急に整備工場に入庫して原因の究明と修理をおこなう必要があります。
ハイブリッドシステムチェックが点く原因
ハイブリッドシステムチェックが点く原因はバッテリーの劣化以外にもいくつもあります。今回は分かりやすくお伝えするために、実際に多く発生している原因についてのみ解説します。
ハイブリッドバッテリーの劣化
ハイブリッドシステムチェックが点く原因のほとんどが、ハイブリッドバッテリーの劣化です。
ハイブリッドバッテリーは駆動用バッテリーとも呼ばれ、ハイブリッド車の動力となる電力を蓄えておくもので、プリウスの場合は40kgほどの重量があります。(プリウスPHVだと、およそ160kg)
使用過程において劣化が進むと、バッテリーとしての充電力や出力の低下につながり、そのしきい値が一定のラインを超えると、ハイブリッドシステムチェックが点きます。
ハイブリッドバッテリーは、10年または15万km程度を目処に交換が必要となることが多いです。
ボルテージセンサの同時交換
診断機で読み取った故障コードから確実な判別が難しいことから、ハイブリッドバッテリーを交換する際には「ボルテージセンサ」と呼ばれる、ハイブリッドバッテリーの電圧を測定している部品も同時に交換することが推奨されています。
後々のトラブル予防や工賃の節約も考慮して、整備工場側から提案された場合には交換しておくことをおすすめします。
【補足】ハイブリッドバッテリークーリングブロワの詰まり
使用過程において発熱するハイブリッドバッテリーは、車室内の空気を取り入れることで冷やされ、適温に保たれています。
空気の導入口がシートカバー等で覆われていたり、使用過程においてホコリやゴミでクーリングブロワのフィルターが詰まると、車はハイブリッドシステムの出力を制限します。
ハイブリッドシステムチェックとは別の警告「ハイブリッドバッテリ 冷却性能低下」でドライバーに不具合をお知らせしますが、プリウスを含めたハイブリッド車オーナーであれば、気を付けておきたいポイントです。
トラブルを未然に防ぐためにも、定期的なフィルターの点検・清掃をおすすめします。
ハイブリッドシステムチェックの消し方、復帰方法
ハイブリッドシステムチェックを消すには、整備工場にある診断機(テスター)を使用します。ユーザー自身でエラーを読み取って、消去もできる簡易的な診断機能を持ったテスターも販売されており、これを使用してのエラーの消去も可能です。
また、ハイブリッドシステムチェックを点灯させている不具合原因によりますが、補機バッテリーのマイナス端子を一度外して5分ほど置いてから再度接続することで、一時的にエラーが消えることもあります。(ただし、この方法だと車が学習しているもののうちリセットされるものがあるので注意が必要です)
エラーが消えれば、一旦は車を正常復帰させることができます。
ただし、一度消しても再度エラーが点く可能性が高いと考えられるので、騙し騙し乗り続けることは難しいです。
診断結果を元に不具合箇所を修理・部品交換しなければ、ハイブリッドシステムチェックのエラーを消して、完全に正常復帰させることはできません。
ハイブリッドバッテリーの修理費用の目安
ハイブリッドバッテリーの修理費用の目安は、純正部品を使用した場合で20万円前後〜です。
費用の内訳は「ハイブリッドバッテリー代+ボルテージセンサ代+作業工賃」です。高額な整備になりがちで、そのうち使用するハイブリッドバッテリーの種類(純正新品やリビルト品などの違い)によって修理費用が大きく変わってきます。
ハイブリッドバッテリーをリビルト品で交換すれば13万円〜15万円程度に合計の修理費用を抑えることができる場合もあります。
ボルテージセンサの部品代は3.5万円〜4万円程度です。
また、プリウスPHVの場合はバッテリー容量の違いなどから、かなり高額な修理費用が見込まれ60万円〜75万円とも言われています。
整備士のまとめ
プリウスのハイブリッドシステムチェックが点いたときは、そのほとんどがハイブリッドバッテリーの劣化が原因で、交換をしないとエラーを消しても再度点いてしまう可能性が高いです。
インバータやDC-DCコンバータなどほかの原因もあり得ますが、かなり少数なケースだと言えます。
ハイブリッドシステムの修理は高額になるケースも多く、ほかのハイブリッド車だとハイブリッドバッテリーを交換するのに30万円、40万円〜…と修理費用が掛かってしまうケースもあります。
走行距離が多い場合には、ハイブリッドシステムチェックが点灯したら乗り換えを検討するキッカケとするのもよいでしょう。
- Supervised by 整備士 ヒロ
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保有資格:2級整備士。国産ディーラー整備士、輸入車ディーラー整備士の経験がある、現役の整備士。 整備士経験は10年以上で過去にはエンジニアとして全国規模のサービス技術大会に出場。 車の整備に関する情報をtwitterで発信している。