車が加速しない症状は、何かしらの不具合が発生している可能性が高いです。
通常の走行に支障をきたし、大きなトラブルに繋がることもあるので早急な修理が必要です。
加速しない原因にはどういったことが考えられるのか?また、車が加速しないうえに「ガタガタと音がする」「焦げ臭い」といった症状が発生したときにどうすれば良いのか?そんな疑問に現役整備士がお答えします。
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- 車が加速しない時に考えられる原因
- 【補足】ハイブリッド、ディーゼル車が加速しない原因
- 車が加速しない際の修理費用まとめ
- 「焦げ臭い」「ガタガタする」症状別の車が加速しないケースの対処法
- 整備士のまとめ
車が加速しない時に考えられる原因
車が加速しない原因はイグニッションコイルの劣化や燃料の誤給油、駆動システムの故障などさまざまです。例えばエンジンだけに原因を絞っても、点火系・燃料系・吸気系とそのパターンは多岐に渡ります。
加速しない原因となり得る原因をひと通りご紹介します。
体感的なものでしか分からないものもあれば、警告灯が点灯するパターンもあります。
エンジンの点火系に原因
イグニッションコイル
劣化や不良によりエンジン不調を伴って加速が悪くなることがある。
部品の交換…1万円〜(1個あたり)
スパークプラグ
劣化や不良によりエンジン不調を伴って加速が悪くなることがある。
部品の交換…1万円〜(エンジンの気筒数分)
エンジンの燃料系に原因
燃料系に原因がある場合にも様々なケースが考えられますが、まずは使用する燃料が正しいものかどうかご自身でチェックしておくことが大切です。なぜなら安価で粗悪な燃料が原因で加速が悪くなることもあるからです。
加速が悪くなったと感じた直前の給油が、いつもと違うガソリンスタンドでないか確認しましょう。
燃料ポンプ
→ポンプが必要な燃料を送ることができない。エンジン不調を伴ったり、最悪の場合エンストすることもあるが、加速が悪いこと以外に体感できる不具合がないこともある
→部品の交換…3万円〜
インジェクター
→燃料の吐出量不足、または過多によりエンジン不調を伴うこともある
部品の交換…2万円〜(1個あたり)
燃料の誤給油
→ハイオク車にレギュラーを入れることでパワーダウンや加速性能の悪化、ディーゼル車にガソリンまたは、ガソリン車に軽油を誤給油することでパワーダウン(加速不良)からのエンスト、高額修理に繋がるおそれがある
→修理費用…数万円〜数十万円(軽油⇔ガソリンの誤給油の場合。状態による。ハイオク車に誤ってレギュラーを入れた場合は、次回以降ハイオクを給油するようにすれば問題ないです)
エンジンの吸気系に原因
エンジンが動くためには空気を吸います。
エンジンが欲しい空気の量と、実際に吸う空気の量が異なると本来のパワーを得られずに、加速が悪くなることがあります。
吸気量を計測するセンサー
センサー部品の故障により、正しい吸入空気の量を計測できず、加速が悪くなることがある。エンジ不調を伴うこともある。
部品の交換…1万円〜
アクセルペダル
部品の故障により、実際のアクセル踏み込み量と加速感が一致しない。
部品の交換…1万円〜
スロットルバルブ
部品の故障により、実際のアクセル踏み込み量と加速感が一致しない。
部品の交換…3万円〜(リビルト品があれば費用を抑えられる
エア吸い(二次空気の吸入)
吸気量を計測するセンサーより下流側で、部品の劣化や不具合が原因で二次空気を吸う(エア吸い)と、エンジン不調を伴う加速不良の原因になることがある。
診断・修理・部品交換費用…5,000円〜
タービン(スーパーチャージャー)
ターボ車のみについている部品。故障や劣化によって過給性能が落ちて加速が悪くなる。(スーパーチャージャー車も同様、一部どちらも装着されている車もある)
修理または部品の交換…4万円〜(リビルト品があれば費用を抑えられる)
エアエレメント
極端な劣化により正常な量の空気を吸えずに加速が悪くなる。
部品の交換…5,000円〜
AT/CVTの故障
ATやCVTといったエンジンの力をタイヤに伝える役割を持つ「駆動システム」に起因する加速しないトラブルも多く発生しています。
たとえば、動力を伝達する機構に滑りが発生することで、動力の伝達に損失が発生します。
加速が悪い・鈍いのに、エンジン回転数だけが上がっていくような症状が出ます。
また、オイル漏れが発生してAT/CVT内のフルード(オイル)が極端に減っても、動力の伝達に支障をきたすことになり、加速が悪くなります。
修理や部品交換の際はリビルト品があれば費用を抑えられますが、ATやCVT本体の載せ替え対応が主となり10万円〜と高額な修理費用が発生します。
その他の原因
その他にも、加速が悪くなる原因はたくさんあります。
コンピューターやセンサー
エンジンやAT/CVT等のコンピューターや、その制御に関わる各部品についているセンサーの故障で加速が悪くなる。
直接的な原因になっていることもあれば、フェイルセーフと呼ばれる保護制御による出力制限によって加速が悪くなっているパターンもある。
(例:ATのコンピューターがエラーを検出、保護制御で最低限の走行を確保するために、5速ATだが発進時から走行中まで3速固定での走行しかできなくなる…など)
コンピューターの交換…5万円〜、センサーの交換…1万円〜
ブレーキの引きずり
ブレーキキャリパーの固着等により、ブレーキペダルを踏んでいなくてもブレーキが掛かった状態になるので、その分加速が悪くなる。
部品の交換または修理(オーバーホール)…1.5万円〜(1箇所あたり)
サイドブレーキ/パーキングブレーキを掛けたまま走行
サイドブレーキを掛けたままだと、ブレーキが掛かった状態になるので、いつもよりアクセルを踏み込まないと加速しません。
→場合によっては修理・部品交換の必要あり…2万円〜
エンジン燃焼室内での被り
長期間、車に乗らない・エンジンをかけないでいると(特に寒いとき)、燃焼室内で被りが発生し、正常な燃焼がしばらく行えないことがある。その間、エンジン不調を伴って加速が悪くなることがある。
診断・処置費用…5,000円〜
オーバーヒート
冷却水漏れによるオーバーヒートで、車が異常な状態と判断して出力を制御しているケースも考えられます。
部品交換費用…10,000円〜
エンジンオイル量の低下やエンジンの寿命
エンジンによってはオイルが減ると加速不良やエンストするものがある。また、エンジンの圧縮低下など寿命を迎えていると、健康な状態と比較してパワーダウンしており加速が悪くなることが考えられます。
部品交換・修理…10,000円〜、エンジン本体の寿命が考えられる場合には30万円〜
バッテリーの極端な劣化
バッテリーが上がるほど劣化していて、ブースターなどでひとまずエンジンを掛けた後に走行するときに、バッテリーの電圧が不安定なことが原因で加速しないことがあります
バッテリーの交換…15,000円〜(オルタネーターの不具合も考えられる場合は別)
【補足】ハイブリッド、ディーゼル車が加速しない原因
ハイブリッド車やディーゼル車で特有の加速がしない場合について紹介します。
ハイブリッド車特有の原因
ハイブリッド車の場合、室内にあるハイブリッドシステム用の冷却ファン入口のフィルターが詰まると、ハイブリッドバッテリーが高温になってしまい、出力制御によって加速が悪くなることがあります。処置費用の目安は5,000円〜です。
ディーゼルエンジン特有の原因
現在のクリーンディーゼルはエンジンの特性と相まった乗り方などで、エンジン内部や吸排気システム内に煤(すす)が発生しやすい特徴があります。
この煤が局部的に堆積することで発生する不具合のなかで、加速が悪くなることもあります。修理・部品交換費用の目安は1万円〜ですが、エンジンの状態によっては10万円以上の費用がかかるケースもあります。
車が加速しない際の修理費用まとめ
単に加速が悪いといってもその理由はさまざまなので、修理費用も1万円以内で収まるものもあれば、数十万円の修理費用が掛かってしまうようなものまであります。
場合によっては乗り換えなども検討した方が良いケースも出てくるでしょう。
改めて、部位ごとの修理費用を一覧にして表にまとめました。
原因箇所 | 修理・処置・診断・部品交換費用 |
---|---|
イグニッションコイル | 1万円〜(1本あたり) |
スパークプラグ | 1万円〜(エンジンの気筒数分) |
燃料ポンプ | 3万円〜 |
インジェクター | 2万円〜(1本あたり) |
燃料誤給油 | 数万円〜 |
吸入空気量を計測するセンサー (エアフロセンサー、バキュームセンサー等) |
1万円〜 |
アクセルペダル | 1万円〜 |
スロットルバルブ | 3万円〜 |
エア吸い(二次空気を吸っている) | 5,000円〜 |
タービン・スーパーチャージャー | 4万円〜 |
エアエレメント | 5,000円〜 |
AT・CVT | 10万円〜 |
コンピューター本体 | 5万円〜 |
各センサー類 | 1万円〜 |
ブレーキキャリパー | 1.5万円〜(1箇所あたり) |
サイドブレーキ掛けたままの走行 | 1.5万円〜(ホイールシリンダの交換またはシールキット交換) |
エンジンの被り | 5,000円〜 |
オーバーヒート | 1万円〜 |
エンジンオイル交換 | 3,000円〜 |
エンジン本体 | 30万円〜 |
バッテリー | 1.5万円〜 |
ハイブリッドシステム冷却ファンフィルター詰まり | 5,000円〜 |
ディーゼルエンジンの煤による不具合 | 1万円〜 |
費用の目安はあくまで修理に掛かる最低ラインです。
不具合の重症度や車種による違いによって、修理費用は大きく異なってくるので注意しましょう。
「焦げ臭い」「ガタガタする」症状別の車が加速しないケースの対処法
車が加速しないこと以外にドライバーが感じる症状別に、どういった対処をするべきかいくつかピックアップして紹介します。
車が焦げ臭い
車が加速しないうえに焦げ臭いにおいがしている場合に考えられる不具合は、エンジン冷却水の漏れやエンジンオイルの漏れ、タービンブローの故障などさまざまです。
エンジン冷却水の漏れ
冷却水そのものは甘い臭いがしますが、漏れた冷却水がマフラーに付着するなどで焦げ臭いにおいが発生することもあります。
オーバーヒートやエンジンがダメージを受けるリスクがあるので、安全な場所に停車して自走を避けます。
エンジンを止めボンネットを開けて熱を逃し、レッカーサービスを利用して整備工場に車を搬入してもらいましょう。
AT/CVTフルードの漏れ
漏れたフルード(オイル)がマフラーなどに付着すると、焼けて焦げ臭いにおいが発生することがあります。
また、漏れによって本来潤滑されるべきAT/CVT内部が焼き付いてしまい、内部から焦げ臭いにおいが出ることもあります。
走行を続けるのは危険なのでレッカーサービスを利用しましょう。
エンジンオイルの漏れ
エンジンオイルの漏れも、AT/CVT漏れのパターンと同様の理由で焦げ臭いにおいが出ることがあります。
走行を続けることは危険な場合もあるので、レッカーサービスを利用しましょう。
ブレーキの引きずり/サイドブレーキを掛けたまま走行
常にブレーキが掛かった状態で走るとブレーキが熱を持って異常な高温になり、焦げ臭いにおいが発生することがあります。
サイドブレーキを解除せずに走ってしまった場合は、数分程度ならそのまま走行を続けても問題ありませんが、10分以上走行した場合には一度停車して加熱したブレーキを30分〜程度冷ましてから走ることをおすすめします。
また、ブレーキに異常や不具合が出ている可能性もあるので、速やかに整備工場で点検することをおすすめします。
最悪の場合は、ブレーキオイル漏れなどに繋がる可能性もあるためです。
ブレーキの引きずりが考えられる場合にも、過度な走行は避けて速やかに整備工場で点検・整備を依頼しましょう。
タービンブロー
ターボ車のタービンが壊れている場合、オイルを消費して排気ガスと一緒に排出されることがあります。
この時、オイルの混じった排気ガスが焦げ臭く感じることがあります。
自走に問題ない場合は、速やかに整備工場に入庫して点検を受けます。
マフラーからの白煙が酷い、異音が発生するなど走行に支障をきたす場合は、レッカーサービスを利用しましょう。
点火・燃料関連の不具合
加速が悪くなるなるような点火・燃料関連の不具合が発生している場合、エンジンが失火して排ガスが臭くなることがあり、これを焦げ臭いと感じることもあります。
走行に支障をきたす状態であればレッカーサービスに依頼し、走行に大きく問題ないようであれば自走も可能ですが、いずれの場合も速やかに整備工場で修理してもらうようにしましょう。
車からガタガタと異音がする
車からガタガタと異音がするケースは、加速が悪い症状と合わせて出ることがよくあります。ケースのほとんどが、エンジンそのものがガタつくか、AT/CVTの不具合でガタついているかの二択です。
ガタガタと異音がする症状が出る可能性のある主原因となるものを以下にまとめました。
- イグニッションコイル
- スパークプラグ
- インジェクター
- 燃料ポンプ
- 燃料の誤給油
- 吸気量を計測するセンサー
- アクセルペダル
- スロットルバルブ
- エア吸い
- タービン(スーパーチャージャー)
- エアエレメント
- AT/CVT
- エンジン燃焼室内での被り
- 各センサー
- エンジンオイル量の低下やエンジンの寿命
- バッテリー
- クリーンディーゼルエンジンの煤堆積
ガタつくほどの不具合が出ている場合は、安全に走行することが困難であると考えられます。
また、ドライバー自身で原因を簡単に見つけることも難しいので、無理に走ることは避けてレッカーサービスを利用しましょう。
整備士のまとめ
車が加速しない不具合は、非常にさまざまな原因が考えられます。
使い方の問題だけで解決するものもあれば、AT/CVTやエンジン内部の問題となれば数十万円の修理費用が必要になることもあります。
よって、場合によっては乗り換えを検討しなければいけないケースも出てくるでしょう。
中にはメンテナンス不足に起因する原因もあるので、定期的に点検・消耗部品の交換をすることはとても大切です。
また、今は加速が悪い程度で走行できていても、後に車が止まってしまうようなこともあり得ます。
車の加速に違和感を感じた場合には早めに整備工場に相談し、整備工場への入庫にはレッカーサービスを利用して、安全のためにもなるべく自走を避けましょう。
- Supervised by 整備士 ヒロ
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保有資格:2級整備士。国産ディーラー整備士、輸入車ディーラー整備士の経験がある、現役の整備士。 整備士経験は10年以上で過去にはエンジニアとして全国規模のサービス技術大会に出場。 車の整備に関する情報をtwitterで発信している。