ブレーキパッド交換費用の目安と交換時期について整備士が解説

ブレーキパッドの交換は、カーオーナーにとって身近な交換消耗品のひとつです。
それだけに、費用や交換時期がどれくらいなのか気になる方が多いです。
今回はブレーキパッドの交換費用や交換時期について、現役の自動車整備士がわかりやすく解説します。

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ブレーキパッドの役割

ブレーキには一般的に「ディスクブレーキ」と「ドラムブレーキ」の2種類があります。
現在、ドラムブレーキは軽自動車やコンパクトカーのリヤに採用されるケースが多く、それ以外はすべてディスクブレーキと理解していただければ、ほぼ間違いないです。

ブレーキパッドは、ディスクブレーキに採用されている部品です。
タイヤと一緒に回転するディスクローターをブレーキパッドで挟むことによる摩擦力を利用して、制動力(ブレーキの力)を発揮します。
ブレーキパッドは、安心・安全に車を走らせるために必要不可欠な部品です。

ブレーキパッドの交換費用の目安

一般的な乗用車でのブレーキパッドの交換費用の目安は12,000円~40,000円です。また、軽自動車であれば、15,000円以内で収まるくらいが交換費用の目安です。
ブレーキパッドの交換費用の内訳について以下にまとめました。

  • ブレーキパッド交換工賃…5,000円〜15,000円
  • ブレーキパッド部品代…7,000円〜25,000円
  • 交換費用の合計…12,000円〜40,000円

ブレーキパッドの交換費用は車の整備費用と同様に、同等の作業でも車種によって異なります。また、ブレーキパッドの部品代は性能や製造メーカーによって千差万別です。
乗用車の中でも、高額車や高性能な車になるほど工賃が高くなり、ブレーキパッドも性能の良いものが標準となるので、部品代も高くなる傾向にあります。

【補足】ブレーキパッドの交換は自分でできる?

ブレーキパッドの交換はDIYでチャレンジできるのでしょうか。
答えは「ノー」です。
ブレーキは車の走行性能の中でも、もっとも重要な部位といっても過言ではありません。自分の車のブレーキパッド交換を自分ですることは違法ではありません。一見、簡単な作業のように感じる方もいるでしょう。
しかし、ブレーキパッドの交換は法令上の特定整備(分解整備)を伴う整備に該当します。(一部、該当しない構造のものもあります)
繊細な整備のひとつであり、素人が見よう見まねでできるものではなく、重大な責任も伴います。

よって、ブレーキパッドの交換はプロの整備士に依頼するようにしましょう。

ブレーキパッドの交換時期の目安

ブレーキパッドの厚さ

ブレーキパッドの交換時期は、普段の運転環境や車種によって大きく異なりますが、交換の目安となる残量に違いはありません。どんな車種でも、ブレーキパッド交換の交換目安となるパッド残量は3.0mmです。

ブレーキパッド交換目安として他にはウェアインジケーターによるキー音や警告灯などのお知らせ機能もあげられます。また、走行距離での目安は利用状況によって幅があるため、あくまで参考に留めるようにしましょう。

ブレーキパッドの厚さごとの確認

新品のブレーキパッドは、8.5mm〜12.0mm程の残量があります。ブレーキパッドの厚さ残量の減り具合についてまとめました。

  • 5〜6mm
    新品のおよそ半分、まだもうしばらくは使える残量
  • 4mm
    そろそろ交換の時期、次回整備工場に入庫する際には交換の必要があるかも
  • 3mm
    交換推奨時期、ブレーキの音や警告灯で交換を促す目安時期
  • 1〜2mm
    危険な状態。早急な交換必須。

ブレーキパッドは無くなるまで使い切るものではありません。
見た目には分かりませんが、ブレーキパッドは母材と断熱層から構成されています。
残量の低下は、ブレーキの効きそのものに影響が出て、万が一のときに危険であることはもちろん、残量が減るに従ってパッドの放熱性能が落ちることも、早めの交換を推奨する理由のひとつです。

ウェアインジケーターによる不具合症状ごとの確認目安

ブレーキパッドには「ウェアインジケーター」と呼ばれる、摩耗限度をドライバーに知らせる機能を持つものがあります。(機能のないものもあります)
このウェアインジケーターには、機械式と電気式があります。音や警告灯でドライバーに車の不具合を知らせます。

機械式ウェアインジケーターのキー音

ブレーキパッドに金属片が取り付けられています。
パッドの残量が減ると、この金属片がブレーキローターに当たって金属音を発生させることで、ドライバーにブレーキパッドの摩耗が進み、交換目安時期となっていることをお知らせします。
これまで発生していなかったブレーキ鳴きのような「キー音」が発生するようになったら、整備工場でブレーキパッドの残量を点検してもらいましょう。

電気式ウェアインジケーターの警告灯、お知らせ機能

電気式は、ブレーキパッド本体にセンサーが取り付けられています。
摩耗が進んで、センサーが直接ブレーキローターに触れることで、交換時期を迎えていることをコンピュータが検知します。
コンピュータは摩耗を検知すると、警告灯やワーニングメッセージをメーター内などに表示して、ドライバーにブレーキパッドの交換を促します。

【補足】パーキングブレーキのランプが点いたまま!?

パーキングブレーキ(サイドブレーキ)を解除しているのにも関わらず、パーキングブレーキの赤いランプが消えないことがあります。
または、走行していてカーブの時や凹凸路の走行中に、チカチカとパーキングブレーキのランプが点いたり消えたりすることがあります。
これは、ブレーキフルードが減っていることをお知らせする機能です。
ブレーキフルードが漏れているわけではないのに減る理由として、ブレーキパッドが摩耗していることが挙げられます。
ブレーキパッドとブレーキディスクの隙間を一定に保つめに、パッドが減った分、パッドは押し出されます。
その分、キャリパーのピストンの出しろが増えることで、フルードのリザーブタンク内の液面が下がります。
液面が一定ラインより減ると、タンクに取り付けてあるセンサーが反応して、パーキングブレーキランプを点灯させ、フルードが減っていることをお知らせします。
症状が発生したときは、整備工場でブレーキ廻りに異常がないか、パッド残量に問題はないか点検してもらいましょう。

<関連記事>ブレーキフルード(ブレーキオイル)の交換時期は?

ブレーキパッドの走行距離による交換目安

ブレーキパッドの走行距離での交換目安は3万km~10万kmと幅広いです。車種や普段走る道、運転のクセによって走行距離での目安はかなり大きく変わってきます。
わたしたち整備士は、ブレーキパッドの交換目安距離を、よくお客様から質問されますが、確実な目安の距離が決まっているわけではありません。

ストップアンドゴーや勾配路が多く、ブレーキをよく踏むクセのある方であれば、3万km前後で交換時期を迎えることもあります。
一方で、回生ブレーキ採用の車で郊外路や高速道路をよく走る方であれば、10万kmオーバーでもまだまだ交換の必要がない場合もあります。
だからこそ整備工場に定期的に点検入庫して、ブレーキパッドの残量を含めた、愛車の現状を知ることがとても大切です。

回生ブレーキのある車のブレーキパッドは長持ち?

EVやHV車などで回生ブレーキと呼ばれるシステムを採用している車は、ブレーキパッドが減りにくいです。
回生ブレーキとは、減速の運動エネルギーを走行モーターなどに使う電気エネルギーに変換するシステムです。
電気エネルギーに変換するのに、タイヤからモーターを駆動して電気を作っており、その抵抗力が減速力となります。
回生ブレーキ採用車はドライバーの意図とは関係なく、減速時の回生ブレーキの割合と従来のブレーキとの割合をコンピュータによって制御しています。
回生ブレーキによる減速力も十分にあるので、ブレーキパッドの減りにくくなり、長持ちすることになります。

ブレーキパッド交換が安いところと依頼の注意点

ブレーキパッド交換費用の目安と交換時期について整備士が解説

自動車整備に限らず、安いには安いなりの理由があり、高いには高いなりの理由があります。もちろん、例外もありますが安く済ませることだけを考えていると後悔することもあるかもしれません。

安いブレーキパッド使用によるトラブル

値段の安い分、使用しているブレーキパッドが安価な社外品である場合、それに起因するトラブルが考えられます。たとえば以下のような例があげられます。

  • ブレーキ鳴きが酷い
  • ブレーキ性能が落ちた(効きが悪い)
  • 異音の発生

車種専用品を謳っており、問題なく装着できるがサイズが微妙に合わずに、走行中にブレーキを踏んでいなくてもカタカタと異音が発生する例に遭遇したことがあります。

十分なメンテナンスがされていない

ブレーキパッドの交換は、その部品をただ交換するだけではありません。

  • スライドピンの状態をチェック
  • 古いグリスやブレーキダストの清掃、必要箇所に新しいグリスを塗布
  • ピストンやスライドピンのダストブーツに破れや損傷がないかチェック
  • キャリパーに装着されている金具部品(アタッチメント)の交換

私の場合、ブレーキパッド交換時には、上記のような整備も合わせて行います。しかし、いずれも必ず実施しなければいけない訳ではありません。作業者にもよりますが、安いところはこういった細やかな整備が省かれている可能性があります。

部品の持ち込みは工賃が割増になることも

すこしでも安く済ませようと、自分で部品を購入して持ち込む方がいます。
最近では、部品を持ち込んでの整備は標準工賃から割増となる整備工場が増えています。
これは部品の交換に際して、お客さまが用意した部品にまで整備工場が責任を持てないことなどが理由です。
他にも様々な理由はありますが、持ち込みの場合の費用割増は、自動車整備業界に限らずある話なので、注意点として理解しておきましょう。

ブレーキローターの交換も必要なパターンがある

ブレーキパッドが摩耗するのと同じように、ブレーキローターも摩耗します。
特に輸入車は顕著で、パッドとローターの交換は基本的にセットとなることがあります。国産車でも、摩耗具合や錆が酷いといったようなブレーキローターの状態によっては、交換が必要になるかもしれません。
ブレーキパッドの交換を依頼するときは、そういったイレギュラーなケースがあることも理解しておきましょう。

1番大切なのは信頼できるお店かどうか

消費者心理としてすこしでも出費を抑えたい気持ちはありますが、ブレーキパッドの交換工賃そのものは、数千円変わるかどうか程度です。
安さだけで依頼するのではなく、自動車の整備は信頼できるお店を見つけて依頼することが、もっとも大切です。
特にアフターフォローの有無や、ユーザーの相談に親身になって応えてくれるか、作業内容の納得のいく説明があるか?といった点が、信頼関係に直結します。

ブレーキパッド交換に関する整備士のまとめ

ブレーキパッド交換費用の工賃は、お店によって極端に大きくは変わりません。それよりも部品代によるトータル費用の違いが大きいです。安さだけに捉われず、信頼のできる部品を使用している、信頼できる整備工場で整備してもらうことが安全・安心のためにも大切です。
また、交換時期に至る目安距離は千差万別です。半年または1年ごとの定期的な点検を通して、直接整備士さんに交換目安時期をアドバイスしてもらうのが確実です。

Supervised by 整備士 ヒロ

ヒロ 2級整備士

保有資格:2級整備士。国産ディーラー整備士、輸入車ディーラー整備士の経験がある、現役の整備士。 整備士経験は10年以上で過去にはエンジニアとして全国規模のサービス技術大会に出場。 車の整備に関する情報をtwitterで発信している。