【これで分かる!】V2Hとは?設置費用や補助金、メリット・デメリット

近年よく耳にするV2H。電気自動車やPHEVの普及に伴い、V2Hを導入する人も増えています。今回はV2Hについて充放電設備と家庭用蓄電池や普通充電器との違い、導入コストや補助金、対応車種などの情報をまとめています。

V2Hとは

V2hとは

V2Hとは「Vehicle to Home(クルマから家へ)」の略称であり、クルマに蓄えられた電力を自宅など建物に供給するシステム・考え方を指します。またクルマから建物への給電に必要な「V2H充放電設備」を指すこともあります。

V2Hを導入すれば、クルマに余った電力を家庭で使ったり、停電などの緊急時に電力を供給したりできます。またV2H充放電設備を使うことで、家庭からクルマへの急速充電も可能です。

V2H充放電設備とは

V2H充放電設備とは、建物の分電盤とクルマを繋ぐ機械のことです。クルマに蓄えられている電気は「直流」ですが、建物で使われる電気は「交流」。そのためV2H充放電設備の中で電気の置換を行います。

家庭用蓄電池との違い

電力を建物の外で蓄え、必要なタイミングで供給を担うという点で、V2H充放電設備は家庭用蓄電池と似ています。しかし両者には、以下のような違いがあります。

  家庭用蓄電池 V2H充放電設備
蓄電機能 あり なし
蓄電容量の目安 4kWh~16kWh (20kWh~72kWh)
※クルマに蓄電
クルマへの給電機能 なし あり

多くのV2H充放電設備はクルマを蓄電池として使うため、本体に蓄電機能を備えていません。一方、家庭用蓄電池はクルマへの給電を備えていません。

蓄電容量を比べた場合、家庭用蓄電池より電気自動車・PHEVの方がはるかに多くの電力を蓄えられます。クルマへの給電機能の有無も考慮すると、V2H対応車両を購入するなら家庭用蓄電池でなく、V2H充放電設備の導入がおすすめです。

普通充電器との違い

普通充電器とV2H充放電設備では、以下のような違いがあります。

  普通充電器 V2H充放電設備
80㎞走行に必要な充電時間 4~8時間 約15分
建物への給電機能 なし あり
導入コスト 10~40万円程度 約80万円~
備考 コンセントやスタンドなど種類がある CEV補助金の対象

V2H充放電設備は導入コストが高いため、現在でも普通充電器を使っている家庭は多いです。

しかしV2H充放電設備ならクルマの充電時間が短く済みます。また現在は導入にあたって国のCEV補助金を受けることができ、自治体からも補助金を受け取れる場合があります。詳しくはこの記事の後半で解説します。

導入するなら「系統連系型」がおすすめ!

V2H充放電設備には「系統連系型」と「非系統連系型」という種類があります。

  • 系統連系型…太陽光発電や電力会社からの給電とクルマからの給電を併行して行える
  • 非系統連系型は複数の給電システムを同時併用できない

V2H充放電設備を導入するなら、複数の経路から同時に給電できる系統連系型の方が便利でしょう。特に太陽光発電を設置しており、余剰電力をクルマや家庭で消費している場合は系統連系型の導入を強くお勧めします。

V2Hのメリット・デメリット

V2Hを導入すると、利便性や節約効果を得やすいです。しかし導入コストが高いといったデメリットもあります。

メリット

  • V2H充放電設備でクルマを急速充電できる
  • 夜間電力や太陽光発電の余剰電力で電気代を節約できる
  • 数日の停電に対応できる

冒頭で紹介した通り、V2H充放電設備にはクルマの急速充電機能があります。そのため充電を急ぐ場合も安心です。
また安価な夜間電力や太陽光発電の余剰電力でクルマの充電をしたり、電気料金の高い昼間にクルマから建物へ電力を還元したりできます。

デメリット

  • 導入コストが高い
  • クルマのバッテリーが劣化しやすい

主なデメリットは、導入コストの高さです。V2Hのシステムを利用するためには、V2H充放電設備やV2H対応車種を購入しなければいけません。補助金が支給されるとはいえ、クルマも含めると自己負担額が大きいです。
また充放電を繰り返せば、クルマのバッテリーが劣化しやすくなります。特に急速充電はバッテリーに負担がかかりやすいです。過度に充放電を繰り返さないようにしましょう。

導入コストと補助金制度

V2H充放電設備の導入には、本体価格と工事費用がかかります。双方を合わせると高額ですが、国や地方自治体の補助金を使えば、最終的な負担額はある程度抑えられます。

V2H充放電設備の導入コスト

V2H充放電設備の本体価格は安いもので約50万円、高いものなら150万円以上かかります。また設置には工事も必要で、工事費用の相場は約30万円です。
そのため補助金がなかった場合、導入には少なくとも80万円程度かかります。

利用できる補助金

V2Hに使える主な補助金には、国の「CEV補助金」と地方自治体の補助金があります。この2つは併用できることもあります。

CEV補助金

CEV補助金では、V2H充放電設備の本体購入費用と工事費用に補助金が給付されます。令和4年度CEV補助金の場合、補助金の給付額は最大115万円でした。

  • 購入費用への補助金…本体価格の1/2の金額(最大75万円)
  • 工事費用への補助金…最大40万円

なお令和4年度のV2H充放電設備導入に対する補助金は既に受付を終了しています。

地方自治体の補助金

地方自治体でも、V2H充放電設備の導入に補助金を出しているケースがあります。CEV補助金と併用できるかも自治体によって異なりますが、併用できればかなり安価でV2H充放電設備を導入できる可能性もあります。

例えば神奈川県の場合は、以下のような条件で補助金を交付していました。

  • 設備本体価格の1/3(上限20万円)
  • CEV補助金と併用可。ただし交付を受ける場合はその金額を控除

以下に、令和4年度CEV補助金と神奈川県の補助金を併用した場合の導入コストを試算してみました。

【試算条件】
・本体価格80万円のV2H充放電設備を購入
・工事費用40万円

【試算結果】
CEV補助金(本体価格の1/2):80万円÷2=40万円
神奈川県の補助金:(80万円-40万円)÷3=約13万円
自己負担額:80万円-40万円-13万円=約23万円
※工事費用:CEV補助金により0円

V2H対応車種は意外と少ない

V2hの車種例:2代目リーフ

2023年1月末現在、新車で購入できるクルマ(商用車を除く)は17車種です。

多くの国は日本より自然災害が少なく、停電を含めた災害対策への意識が高くありません。そのためV2H対応車種は国産車が中心で、欧州の輸入車はほとんど非対応です。

ただし最近はアジア系の自動車メーカーが日本の電気自動車市場に参入しています。また今後は日本国内でも電気自動車の導入が進み、対象車種も増えると考えられます。

V2Hに関するQ&A

ここではV2Hに関するよくある質問にお答えしています。

Q. V2Hはどんな人におすすめ?

V2Hは、以下のような人にとってメリットが大きいです。

  • クルマの急速充電をしたい
  • 電気代を節約したい
  • 長期的な停電に備えたい

V2H充放電設備の強みはクルマへの急速充電と、クルマを使った蓄電ができることです。これらの強みを活かした使い方をできる人なら、V2H充放電設備を導入しても後悔しないでしょう。

Q. V2H充放電設備はどこに設置する?

V2H充放電設備の設置場所はクルマと建物の中間地点です。一般に、V2Hの給電(充電)ケーブルの長さは7.5mのため、クルマの駐車場所から7.5m以内の範囲に設置します。また自宅の分電盤から50mを超えた場所には、V2H充放電設備を設置できません。

Q. V2Hを使った場合、停電には何日対応できる?

停電が起こった場合、何日分の電力を供給できるかはクルマによって違います。例えば日産「リーフe+」のエントリーモデル(60kWh)の場合、満充電で4日分程度の電力を供給できます。同じ日産の軽電気自動車「サクラ」の搭載バッテリーは20kWh容量なので、約2日分です。

Q. V2Lって何?V2Hと何が違うの?

V2HとV2Lはともに「クルマに蓄えられた電力を他のものへ供給する」システム・考え方のことです。V2Hが「建物」への給電を指すのに対して、V2L(Vehicle to Load)は「家電等」への給電を指します。

V2Lの場合、建物への給電はできません。ただし車載コンセントや外部給電器を介して家電を動かすことができ、屋外でも使えるのがメリットです。

乗り換え前には愛車の買取相場の確認を

現在は国が電気自動車やPHEVの普及に力を入れており、補助金制度も充実しています。そのためV2H対応車種やV2H充放電設備の導入には良いタイミングです。ただし補助金があるとはいえ、電気自動車やPHEVの車両価格はガソリン車より高いです。自己負担を少しでも減らすため、乗り換えでは愛車をできるだけ高く売却するよう心がけましょう。

ガリバーでは各車種の買取相場や買取実績を公開しています。愛車の買取相場が分かれば査定時の交渉材料にもできます。ぜひ参考にしてください。

ライター紹介

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221616 編集部

世の中の自動車ニュースとは一味違う視点でスローニュースを発信。編集部員はクルマ初心者からクルマをこよなく愛するマニアまで幅広いメンバーで構成。全国のガリバーで売れている中古車や車のスタッフレポートなど、生の情報をお届け中。