2022年、日産はエクストレイルを9年振りにフルモデルチェンジした。新型となる4代目のデザインやメカニズムの進化は劇的だ。さらに、ガソリン車の設定は無くハイブリッド車のみでの販売となった。3代目から何がどう劇的進化を果たしたのか、新旧エクストレイルを比較評価した。
- この記事の目次 CONTENTS
- 日産エクストレイルの概要
- コンセプト&エクステリアデザイン比較
- 安全装備&インテリア比較
- 室内・インテリア比較
- 燃費比較
- 走行性能・乗り心地比較
- おすすめは3代目エクストレイルか、4代目か?
- 4代目日産エクストレイル 価格・スペック
日産エクストレイルの概要
初代日産エクストレイル(T30型)は、2000年に登場した。タフギヤというキャッチフレーズと「4人が快適で楽しい、200万円の使える4駆」という開発コンセプトが支持され大ヒットを果たしている。エントリーグレードはFF車で185万円と、今では考えられないくらいの価格だった。
2代目エクストレイルは、初代のキープコンセプトモデルだ。2008年には、2.0Lディーゼルターボエンジンを搭載した2.0GTを投入している。
デビュー時は6MTのみの設定だったが、2010年のマイナーチェンジで6速ATが追加された。
四角くタフなオフローダー的デザインだからか、中古車でもとくにディーゼル車の人気が高い。
3代目エクストレイルは、2013年に登場した。
従来の四角いオフローダー的デザインから、流行りの都会派SUVへと大きなデザイン変更があった。2015年には、1モーター式のハイブリッド車を投入している。初代・2代目エクストレイル顧客に支えられ、3代目エクストレイルもよく売れた。
2017年にはマイナーチェンジを果たしている。従来のタフギヤに加え、アドバンスド・テックがキャッチフレーズに加わった。これは、高速道路などで同一車線内を維持しながら全車車速で前走車に追従走行できる「プロパイロット」機能をアピールするものだ。当時は画期的な技術だった。
最新の4代目エクストレイルは、2022年7月にデビューした。従来のタフギヤ、アドバンスド・テックに加えてRefined上質というキャッチフレーズが加わった。
さらに、日産のハイブリッドシステムであるe-POWERも一新され、可変圧縮比を実現したVCターボエンジンを搭載した。4WDシステムであるe-4ORCEは、モーター駆動のメリットを活かし新開発されている。
4代目エクストレイルは最新技術を多く搭載したことで、劇的進化を遂げた。
コンセプト&エクステリアデザイン比較
【4代目】より大きく上質さを感じさせるデザイン
4代目エクストレイルのコンセプトは「新次元の4WDで悪路からシティまで、余裕を持て楽しむことができる上質な本格SUV」だ。デザインのポイントは「上質」である。
3代目エクストレイルのような複雑な線と面の組み合わせではなく、意外なほどシンプルにまとめられている。
フロントフェイスは、大きな顔に大きなグリルを組み合わせ、迫力を出し大きく見えるデザインとした。両サイド上部には、薄型のポジションランプが組み合わされている。基本的にEV(電気自動車)アリアと同じようなデザインテイストだ。
リヤコンビネーションランプのデザインは水平で大きくサイドに回り込み、よりワイドに見える。無垢のインナーレンズは、日本の伝統的な切子パターンからインスピレーションを得ている。精密でキラキラと光り輝く加工が施され、上質さを演出している。
サイドビューはルーフの長さが印象的だ。水平基調のストレートなルーフで、伸びやかな印象を与えている。また、「く」の字型で太いCピラーも個性的だ。
【3代目】マイナーチェンジ前のモデルは、やや古さを感じさせる
対する3代目エクストレイルのデザインは、やや古く見える。
2013年のデビューで、とくにマイナーチェンジ前のモデルは仕方がない部分もある。
Vモーショングリルも小さく、押し出し感もやや物足りない。
だがフロントフェンダー部分の微妙な盛り上がりや、ボディサイドの面の張りは力強いSUV感を上手く表現している。
Vモーショングリルも小さく、押し出し感もやや物足りない。
だがフロントフェンダー部分の微妙な盛り上がりや、ボディサイドの面の張りは力強いSUV感を上手く表現している。
2017年のマイナーチェンジでは、日産デザインのアイコンであるVモーショングリルを大型化した。グリルからエンジンフードへとキャラクターラインを連続させることで、より迫力あるフェイスとタフネスさを表現している。やや濃い顔になったが、マイナーチェンジ前と比べると高級感や迫力が出ている。
安全装備&インテリア比較
【4代目】さらなる進化に期待したい予防安全装備
4代目日産エクストレイルは、360°全ての方向の安全を確保する「360°セーフティーアシスト(全方位運転支援システム)」を採用した。9年振りのフルモデルチェンジなので、予防安全装備は進化している。重要な自動ブレーキは、自転車や夜間の歩行者も検知できるようになった。
しかし、最新の自動ブレーキとしては、機能面でやや物足りない。すでにトヨタなどは昼夜の自転車と歩行者、昼間の自動二輪車まで検知が可能だ。加えて、右左折時の歩行者や右折時の対向車にも対応しているモデルもある。自動ブレーキ機能を活かしたアシスト機能(歩行者との距離が近ければ、歩行者との距離を取るようにステアリング操作を補助)などもある。
自動ブレーキ以外の予防安全装備は、グレードによってばらつきがあるのが惜しい。
例えばSOSコール。エアバッグが展開するような事故に合った場合、自動で専門オペレターに通報し、警察や救急車の手配をしてくれる機能だ。
SOSコールは最上級グレードに標準装備されているが、その他のグレードではオプションもしくは装着不可だ。
以下の機能は、エントリーグレードのS系には装備されておらず、オプションでも装着できない。
- インテリジェント BSI(後側方衝突防止支援システム)
- BSW(後側方車両検知警報)
- RCTA(後退時車両検知警報)
安全性能を重視するのであれば、S系グレードは選択肢から外したい。
【3代目】 デビュー時から高い予防安全装備
3代目エクストレイルは、2013年にデビューしている。当時のモデルとしては高い予防安全装備を誇っていた。
- 自動ブレーキ(歩行者や車両を認識して衝突被害軽減できる)
- BSW(後側方車両検知警報)
- アラウンドビューモニター(カメラ映像を加工し俯瞰から見た映像に変換。周囲の障害物がひと目で分かる)
- インテリジェントパーキングアシスト(駐車時の自動操舵で車庫入れや縦列駐車をサポート)
前期のモデルはほぼオプションだった。中古車の場合、こうした装備が装着されているか確認が必要だ。
2015年の改良では、早い段階で自動ブレーキを全車標準装備していた。
室内・インテリア比較
【4代目】圧倒的な上質感と使い勝手の良さを誇る
4代目エクストレイルのインテリアは、タフさと上質な心地よさを兼ね備えたデザインとした。重厚さとワイド感が上手く表現されている。
インパネには革張りのようなソフトパッドが張られている。上質感は3代目エクストレイルと比べると圧倒的に高い。また、7インチのカラーディスプレイは、高級感もある。そしてコンソール部分を宙に浮かせたデザインも特徴的だ。
荷室容量は575Lだ。MクラスSUVの中で、トップレベルの広さをもつ。さらに、アウトドアで家電が使えるようになる100V/1,500Wのアクセサリーコンセントも上級グレードに標準装備した。災害などの停電時には、電気を供給する発電車になるので、不便さを軽減してくれる。
【3代目】高い防水性能を誇る
3代目エクストレイルは、羽を広げたようなインパネデザインが特徴である。さすがに、デザイン的には古く見えてしまう。
防水ラゲッジや防水シートも装備している。濡れたものを積み込むことが多い場合は、4代目より使いやすい。
荷室の広さは550L(ガソリン車)もあり十分なレベルで、4代目と比べても遜色ないレベルだ。
燃費比較
大幅に燃費向上!
3代目、4代目エクストレイルの燃費は以下の通りだ。
4WD、WLTCモード | |
---|---|
3代目エクストレイルハイブリッド | 13.8km/L |
4代目エクストレイルe-4ORCE | 18.3~18.4km/L |
4代目エクストレイルの燃費は、3代目に対して30%以上も向上している。最新のシリーズハイブリッドシステムであるe-POWER効果だ。
e-POWERは、まさに日産の技術の賜物といえる。発電に徹するエンジンは、新開発の1.5L直3 VCターボだ。日産が世界初の量産を実現した、可変圧縮比エンジンである。圧縮比は、8.0〜14.0まで可変可能だ。大量の電力供給が必要な場合には、低圧縮比で出力をアップする。それほど電力を必要としないときには、高圧縮比で低燃費化に貢献する。
驚きなのは、非常に高い静粛性とキレイなエンジンサウンドだ。e-POWERシステムの制御はかなり洗練されていて、停止時にはほとんどエンジンが始動しない。走行中にエンジンが始動するものの、耳を澄ましていないとエンジン音が聞こえないくらい、とにかく静粛性が高い。直3エンジンのサウンドは、本来バラバラとした心地よいとは言えないものだった。だがVCターボには可変圧縮機能のリンクなどがあり、その効果でまるで直6エンジンのような心地よいエンジンサウンドになっている。しかも、直3エンジン特有の振動もほとんど感じなかった。
走行性能・乗り心地比較
走行性能の差は歴然。乗り心地も良い4代目
3代目、4代目エクストレイルの出力は以下の通りだ。
3代目エクストレイルハイブリッド | 188ps(システム出力)、147ps(2.0Lガソリン車 |
4代目エクストレイルe-4ORCE | フロントモーター204ps+リヤモーター136ps |
走行性能面を比べると、もはやすべての面で4代目が圧倒している。2013年にデビューした3代目エクストレイルから劇的進化を遂げている。
4代目エクストレイルの出力は、フロントモーター204ps+リヤモーター136psの組み合わせだ。前後のモーター出力を合算した数値がシステム最高出力にはならないので、それほど強力な加速をするクルマではない。パワフルさという点では、3代目エクストレイルハイブリッドとそれほど差はない。ただし、100%モーター駆動なので、アクセルを踏んだ瞬間のレスポンスの良さと出足の良さは格別だ。
また、4WD機能であるe-4ORCEもなかなか気持ちよい走りをアシストしている。前後左右のトルクを自在にコントロールしているので、カーブではとてもよく曲がる。しかも、自然な制御なので違和感もない。
3代目エクストレイルの4WD機能は、とにかく安定志向で走る楽しさは感じなかった。4代目でも安定志向に変わりは無いが、少しリヤタイヤを滑らせて走ることも可能だ。自らコントロールして走ることが出来る。
4代目エクストレイルの乗り心地は、3代目とは比べ物にならないほど快適だ。e-4ORCE制御で後輪側のトルクをコントロールし、減速時やカーブでも車体はフラットに保たれとても快適だ。ただし、4代目エクストレイルの19インチタイヤ装着車は、多少タイヤのゴツゴツ感が伝わってくる。乗り心地をさらに重視するのであれば18インチタイヤ装着グレードがお勧めだ。
3代目エクストレイルハイブリッドには、41psという小さなモーターが組み合わされている。狭い範囲だがモーター走行も可能だ。スバル フォレスターのe-BOXERと比べると、よりハイブリッド車らしくアクセルレスポンスもよい。
おすすめは3代目エクストレイルか、4代目か?
車両は4代目の圧勝!価格を加味すると3代目もあり?
4代目日産エクストレイルは、9年振りのフルモデルチェンジを果たしたモデルだ。もはや3代目エクストレイルが勝る部分が無いほど劇的進化を遂げている。クルマの性能という面で評価するのであれば、問答無用で4代目がお勧めだ。
劇的進化した分、4代目エクストレイルの価格は大幅にアップした。最上級グレードの新車価格比較は以下の通りだ。
4代目 G e-4ORCE | 4,499,000円 |
3代目 20Xi ハイブリッド | 3,624,500円 |
装備の違いはあるとはいえ、90万円近く車両価格がアップしている。さらに3代目エクストレイルハイブリッドであれば、中古車しかない。上記の新車金額よりも安価になるので、価格差はさらに広がる。
例えば、2019年式3代目エクストレイルハイブリッド20Xiの中古車価格は、おおよそ230~280万円だ。4代目の新車価格である約450万円と比べると、170~220万円も安価だ。これだけ価格が異なると、3代目エクストレイルハイブリッドという選択肢もありだろう。
しかも、新車は納期が超長期化しているだけに、中古車ならすぐに乗れるというメリットもある。4代目エクストレイルの購入予算がギリギリ、下取り車の車検がすぐ切れるなど、すぐに乗りたいというのであれば中古車の3代目がよいだろう。
逆に予算に余裕があり、しかも納期が長くてもOKというのであれば4代目がお勧めだ。
4代目日産エクストレイル 価格・スペック
4代目日産エクストレイル 価格
e-4ORCE(4WD) | FF(前輪駆動) | |
---|---|---|
S | 3,479,300円 | 3,198,800円 |
X | 3,799,400円 | 3,499,100円 |
X(7人乗り) | 3,930,300円 | - |
G | 4,499,000円 | 4,298,800円 |
日産エクストレイル スペック
代表グレード | エクストレイルG e-4ORCE |
---|---|
全長×全幅×全高 | 4,660mm×1,840mm×1,720mm |
ホイールベース | 2,705mm |
最低地上高 | 185mm |
最小回転半径 | 5.4m |
車両重量 | 1,880kg |
総排気量 | 1,497cc |
エンジン種類、最高出力 | KR15DDT型 直3 DOHCターボ、106kW/4,400-5,000rpm |
エンジン最大トルク | 250N・m/2,400-4,000rpm |
フロントモーター最高出力、最大トルク | 150kw、330N・m |
リヤモーター最高出力、最大トルク | 100kw、195N・m |
WLTCモード燃費 | 18.4km/l |
バッテリー 種類 | リチウムイオン |
サスペンション(前/後) | ストラット/マルチリンク |
タイヤサイズ | 235/55R19 |
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エクストレイルのカタログ情報
- 現行モデル
- 令和4年7月(2022年7月)〜現在
- 新車時価格
- 319.9万円〜533.3万円
エクストレイルの在庫が現在497件あります
以下車両の保証内容詳細は画像をクリックした遷移先をご確認ください。