ムーヴキャンパス 初代vs二代目

ハイトワゴンに両側スライドドアを装備したモデルの売れ行きが好調だ。
2016年、初代ダイハツ ムーヴキャンバス(以下キャンバス)が登場して以降、キャンバスの1人勝ち状態が続いていた。
2022年7月、キャンバスが初のフルモデルチェンジを果たした。新型キャンバスの進化を新旧比較してみよう。

この記事の目次 CONTENTS
ダイハツ ムーヴキャンバスの歴史
コンセプト&エクステリアデザイン
安全装備&インテリア
走り、メカニズム
おすすめは初代か、それとも2代目ムーヴキャンバスか?
2代目ダイハツ ムーヴキャンバス 価格・スペック

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

ダイハツ ムーヴキャンバスの歴史

初代ムーヴキャンパス 初代ムーヴキャンバス

2016年、ダイハツ ムーヴキャンバスがデビューした。
この頃すでに、スーパーハイト系であるタントやN-BOXなどが高い人気を誇っていた。これは、高い全高による広大な室内と、両側スライドドアの使い勝手が理由だ。

当時スーパーハイト系に対し、ハイト系は手詰まり感があった。「ハイト系にもスライドドアを装備すれば、売れるのでは?」という声が強まっていた。しかし、スズキはスライドドアを装備すれば価格が高くなり、ハイト系を好む顧客は買ってくれないと判断していたのだ。

そんな定説を覆すように登場したのが、ハイト系に両側スライドドアを装備したキャンバスだった。
ダイハツは、軽自動車ユーザーのニーズが多様化していることに注目していた。ライバルであるスズキは売れないとしていたモデルをあえて投入するという、ダイハツにとって攻めの戦略を取ったのだ。

キャンバスはデビュー直後から大ヒットとはいかなかったものの、着実に販売台数を積み上げていった。ムーヴシリーズにおいて、キャンバスの売上構成比は6~7割と言われている。キャンバスの販売台数はワゴンRシリーズ超えに大きく貢献した。

2代目ムーヴキャンパス 2代目ムーヴキャンバス

2022年7月、2代目キャンバスが登場した。外観デザインはコンセプトをキープしているが、プラットフォーム(車台)などは刷新され、走行性能は大幅に向上した。
ターボ車を設定したことで、ライバルであるスズキ ワゴンRスマイルとの差別化を図っている。

 

コンセプト&エクステリアデザイン

新たなマーケットを創り出した画期的なモデル

初代ムーヴキャンパスの外観 初代ムーヴキャンバスの外観

初代ダイハツ ムーヴキャンバスは、ライフスタイルを楽しむ女性に寄り添う新感覚スタイルワゴンとして登場した。ターゲットを女性に限定し、可愛らしいデザインに両側スライドドアという実用性も加えた。
ハイト系に両側スライドドアを装備すると高価になり売れないというのが定説だったが、ダイハツは果敢にチャレンジした。結果ヒットモデルとなり、新たなカテゴリーの創出に繋がった。

初代ムーヴキャンパスのフロントフェイス 初代ムーヴキャンバスのフロントフェイス
初代ムーヴキャンパスのリヤエンド 初代ムーヴキャンバスのリヤエンド

外観は角を丸くしたボックス形状のボディに、大きく丸いヘッドライトが組み合わされた可愛らしいデザインだ。パステルカラーの2トーンボディを中心に、個性的かつ柔らかな雰囲気を演出している。女性を中心に高い支持を得た。

 

初代の可愛らしさを継承しながら、男性もターゲットに!

2代目ムーヴキャンパスの外観 2代目ムーヴキャンバスの外観

2代目キャンバスの外観デザインは、初代キャンバスとの違いが分からないくらいよく似ている。初代キャンバスのデザインは完成度が高く、現在でも古く見えないというのも利点だ。ブランドイメージを上手に引き継いでいる。

2代目ムーヴキャンパスのフロントフェイス 2代目ムーヴキャンバスのフロントフェイス
2代目ムーヴキャンパスのリヤエンド 2代目ムーヴキャンバスのリヤエンド

初代キャンバスのユーザーは、ほとんど女性だった。
2代目キャンバスでは、男性ユーザー獲得にもチャレンジしている。従来のボディカラーであるパステルカラーの2トーンに加え、「セオリー」というシックで落ち着いたボディカラーのグレードが登場した。

安全装備&インテリア

予防安全装備はわずかに進化。インテリアは質感がさらに向上

初代ムーヴキャンパスのインパネ /> 初代ムーヴキャンバスのインパネ

初代キャンバスの予防安全装備は一定レベルにあった。予防安全装備パッケージ「スマートアシストⅢ」は全車標準装備されている。これには対車両と歩行者に対応する自動ブレーキなどが含まれている。

初代の惜しい点は、法規制前のモデルであることだ。サイドエアバッグが標準装備化されておらず、カーテンエアバッグは用意されていない。

2代目ムーヴキャンパスのインパネ 2代目ムーヴキャンバスのインパネ

2代目キャンバスは自動ブレーキがやや進化し、夜間の歩行者にも対応した。初代キャンバスには装備されていなかったサイト&カーテンエアバッグも全車標準装備となっている。しかし、SOSコールなどの安全装備は用意されていない。

後付けできる安全装備も用意された。

  • BSM(ブラインドスポットモニター)…後側方車両接近警報
  • 急アクセル時加速抑制機能

購入後にも装備できる安全装備という点では、高く評価できる。しかし、もはやローテクかつローコスト技術でもある。ならば、標準装備化して欲しいところだ。

初代ムーヴキャンパスのフロントシート 初代ムーヴキャンバスのフロントシート
初代ムーヴキャンパスのリヤシート 初代ムーヴキャンバスのリヤシート
初代ムーヴキャンパスの荷室 初代ムーヴキャンバスの荷室
2代目ムーヴキャンパスのフロントシート 2代目ムーヴキャンバスのフロントシート
2代目ムーヴキャンパスのリヤシート 2代目ムーヴキャンバスのリヤシート
2代目ムーヴキャンパスの荷室 2代目ムーヴキャンバスの荷室

外観デザインは、初代と2代目で違いが分からないほどだ。しかしインテリアデザインは、まったく異なるデザインとなった。

初代ムーヴキャンパスのメーター 初代ムーヴキャンバスのメーター

初代キャンバスはセンターメーターで、全体的にややコッテリとしていた。しかし2代目キャンバスは通常のメーターになり、水平基調のデザインとなった。

2代目ムーヴキャンパスのメーター 2代目ムーヴキャンバスのメーター

最近のトレンドであるノイズを抑えたシンプルな線と面で構成されており、落ち着いた雰囲気にまとめられている。
エアコンなどの使用頻度の高い操作系は、タッチ式ではなくダイヤル式だ。ボタンを見ずに操作することが可能なので、タッチ式より扱いやすく安全性も高い。

走り、メカニズム

燃費は約10%向上したものの・・・ターボ車の走りは好印象

初代、2代目キャンバスの出力と燃費は以下の通りだ。(燃費はFF、WLTCモード)

  出力 燃費
初代 52ps&60Nm 20.6km/L
2代目 52ps&60Nm 22.9km/L
2代目(ターボ) 64ps&100Nm 22.4km/L
初代ムーヴキャンパスのエンジンルーム 初代ムーヴキャンバスのエンジンルーム
2代目ムーヴキャンパスのエンジンルーム 2代目ムーヴキャンバスのエンジンルーム

2代目キャンバスは、プラットフォーム(車台)の刷新などによって車重が約50kg軽量化された。エンジンはほぼキャリーオーバーだが、燃費は約10%向上した。

ライバル車であるスズキ ワゴンRスマイルの燃費は以下の通りだ。(FF、WLTCモード)

  • マイルドハイブリッドシステム装着車…25.1km/L
  • マイルドハイブリッドシステム非装着車…23.9km/L

初代キャンバスより燃費が向上したとはいえ、やや物足りない燃費値といえる。

力強さでは、少しだけキビキビと走るようになった。2代目キャンバスは初代より約50kg軽量化された影響だ。とはいえ車重が880kgもあるので、勾配のキツい登り坂や高速道路では非力感がある。
こうしたパワー不足を払拭するために、2代目キャンバスではターボモデルが追加された。最大トルクは100Nmあるので、高速道路などでは余裕ある走りが可能だ。ターボ車はダイレクトなフィールとワイドな変速比幅をもつ最新のD-CVTと組み合わされた。ターボ車なら、ロングドライでも疲れない。

ハンドリングは初代、2代目キャンバス共にダル(スロー)だ。ステアリング操作してからクルマが曲がり出すまで時間がかかる。
キャンバスは女性ユーザーがほとんどなので、クルマが機敏に動くと不安に感じられるからという理由だ。だがこれから男性ユーザーを獲得したいのであれば、もう少しハンドリングに関しては煮詰める必要があるだろう。

乗り心地と静粛性に関しては、2代目キャンバスは初代とは比べ物にならないくらい進化した。基本骨格やサスペンションなどが刷新されたことで、乗り心地は軽自動車トップレベルだ。軽自動車は、大きな凹凸が苦手傾向にあるものの、2代目キャンバスは意外なほど強烈な突き上げ感をいなしてくれた。

静粛性では、初代キャンバスで感じたCVTのキーンという音が消えていた。走行中、不快に感じる音はほとんどなく、助手席との会話もはずむ。ただ、やはりマイルドハイブリッド車と比べると、アイドリングストップからの再始動時に、キュルキュルブォーンという競るモーターの音とエンジン音、振動は完全に抑え込めていない。だが、初代キャンバスよりは快適性や静粛性が増している。

おすすめは初代か、それとも2代目ムーヴキャンバスか?

長期の納車待ち状態で異常事態!? それでも2代目がお勧め

2代目キャンバスも他車同様、コロナ禍による部品・半導体不足などによる大幅な納期長期化が発生している。こうした流れを受け、初代キャンバスの中古車も軒並み高値傾向になっている。

初代キャンバスの中古車相場は2017年式で90~140万円程度だ。新車価格が約120~170万円だったので、これだけ年式が古くなっているのに車両価格は75~82%位を維持している。軽自動車は、人気カテゴリーでリセールバリューが高いとはいえ、異常値といえる。

これだけ値落ちしないのは、新車納期の長期化に加え、キャンバスは2代目になっても外観デザインの変更がほとんど無いことも理由のひとつだろう。こうなると、燃費や操縦性能が大幅に進歩した2代目キャンバスを購入するのがお勧めだ。

中古車でメリットがあるのは未使用車だ。
未使用車とは、買い手がいないのにメーカーやディーラーの都合で登録(届出)した車両を指す。一度登録(届出)すると中古車扱いになるため、ほぼ新車コンディションながら中古車店で販売されているのだ。
初代キャンバスは、2代目キャンバスへのフルモデルチェンジ時に、初代の在庫車を一斉に登録(届出)して未使用車を大量発生させている。もし納期が重要なら、未使用車を狙うのも良いだろう。ただし、コロナ禍前の未使用車と違い、価格のメリットはそれほどない。

2代目ダイハツ ムーヴキャンバス 価格・スペック

2代目ダイハツ ムーヴキャンバス価格

 
  2WD 4WD
ストライプスX 1,496,000円 1,622,500円
ストライプスG 1,672,000円 1,798,500円
ストライプスGターボ 1,793,000円 1,919,500円
セオリーX 1,496,000円 1,622,500円
セオリーG 1,672,000円 1,798,500円
セオリーGターボ 1,793,000円 1,919,500円

2代目ダイハツ ムーヴキャンバス 燃費、ボディサイズなどスペック

 
代表グレード ムーヴキャンパス セオリーGターボ(2WD)
ボディサイズ 全長3,395mm×全幅1,475mm×全高1,655mm
ホイールベース 2,460mm
最低地上高 150mm
最小回転半径 4.4m
車両重量 900kg
総排気量 658cc
エンジン種類 KF型 直3 DOHC12バルブターボ
エンジン最高出力 47kw(64ps)6,400/rpm
エンジン最大トルク 100N・m(10.2kg-m)/3,600rpm
ミッション CVT
WLTCモード燃費 25.2km/l
サスペンション前/後 マクファーソン・ストラット/トーションビーム
タイヤサイズ 155/65R14