- この記事の目次 CONTENTS
- ブレーキオイルの交換時期
- ブレーキオイルの交換費用の目安
- ブレーキオイルの役割
- ブレーキオイルの交換の仕方(セルフはおすすめしません)
- ブレーキオイル以外のオイル交換目安
- ブレーキオイル(ブレーキフルード)に関するまとめ
ブレーキオイルは車のブレーキシステムにとって必要不可欠なオイルです。
車の安全、健康のために定期的な交換が必要となるブレーキオイルについて、わかりやすく紹介します。
ブレーキオイルは、「ブレーキフルード」「ブレーキ液」といった別の名称で呼ばれることもありますが、すべて同じものです。厳密には潤滑油=オイルではなく、作動油=フルードですが、ここでは一般的に分かりやすくブレーキオイルとして解説をすすめます。
ブレーキオイルの交換時期
ブレーキオイルは劣化するので、安全な走行のためにも定期的な交換が必要です。
レースに使用するといった特別な使い方を除いた、一般的な使い方における交換時期について解説します。
走行距離と使用期間による判断
ブレーキオイルは、使用期間1〜2年ごと、または走行距離2万km前後のいずれか早い方での交換が推奨されます。
交換推奨時期を少し過ぎたからといって、急激かつ著しく性能が低下することはありません。その点はご安心ください。
色による交換時期の判断

一般的なブレーキオイルは、少し黄色がかったほぼ透明な液体です。
走行距離や使用年数が増えるに従って、茶褐色になり最終的には黒ずんできます。
少なくとも、茶褐色になってきたタイミングで交換しましょう。
車検時による判断
もっともわかりやすいのは、車検ごとにブレーキオイルの交換を実施することです。
交換忘れを防ぎかつ、早すぎず遅すぎることもない適切なタイミングと言えるでしょう。
年間の走行距離が5万kmを超えるような場合は、1年ごとの点検で交換するのがおすすめです。
【補足】車検を通すのにブレーキオイルの交換は必要?
車検時にブレーキオイルを交換しなくても車検に合格することは可能です。
なぜなら車検の合否は、ブレーキオイルがタンクに適切な量が入っており、漏れがなければ問題ないからです。
ただし、長らく未交換でいるとブレーキシステム内のゴムブーツの早期劣化やピストンの錆の発生などにつながります。その結果、ブレーキオイル漏れやブレーキの固着を引き起こすといった危険な状態に結びつきやすくなります。
車検時に必須ではなくとも、定期的なブレーキオイルの交換は必須です。
ブレーキオイルの交換費用の目安
ブレーキオイルの交換費用は、車種や使用するブレーキオイルの種類によって異なりますが、オイル代と工賃を合わせて5,000円〜10,000円程度と考えておきましょう。
ブレーキオイルの種類は、一般にDOT3またはDOT4という規格のものが使用されます。この末尾の数字が大きくなればなるほど、沸点が高くなります。
使用量は0.5〜1.0Lであることが多く、ブレーキオイルの費用は「1,000〜4,000円」です。
交換工賃は「4,000円〜7,000円」程度であることが多いです。
しかし、付随作業の有無や車検・点検と同時作業か否かなどによって、同じお店でも工賃が変わってくることもあります。
ブレーキオイルの役割
ブレーキのシステム内にあるブレーキオイルは、減速のためにドライバーがブレーキペダルを踏み込んだときの力をオイルの圧力に変換します。
オイルの圧力は四輪についたブレーキに作用します。
ディスクブレーキならキャリパーピストン、ドラムブレーキならホイールシリンダピストンをオイルの圧力で押し出す結果、制動力が得られるという仕組みです。
また、一般的に用いられるブレーキオイルには主に以下のような成分と性質があります。
【ブレーキオイルの成分】 | 効果 |
---|---|
防錆剤 | ブレーキシステム内部を錆から守る |
低粘度 | ブレーキの応答性を高める |
酸化防止剤 | 酸化による早期劣化を防ぐ |
【ブレーキオイルの性質】 | 補足説明 |
---|---|
高温になっても沸騰しない(高い沸点) | 沸騰して気泡が噛み、ブレーキが効かなくなること(ベーパロック)を予防する |
低温になっても凝固しない | ブレーキオイルが凝固してしまうと走行不可になる |
圧力による堆積変化が少ない | 変化が大きいと制動にムラが出たり、効きが悪くなる |
蒸発性能や水許容性能、ゴムの膨潤性なども性能テストで試験されます。
また、ブレーキオイルがボディの塗装に付着すると塗装を傷めます。
かならず、素早く大量の水で洗い流すようにしましょう。
ブレーキオイルの交換の仕方(セルフはおすすめしません)

ブレーキに関するものは重要保安部品です。そのため、ユーザーが自分で交換することは整備士として強くおすすめしません。
それをご理解いただいたうえで、交換の仕方について知識として解説します。
用意するものは以下のものです。
- 新品のブレーキオイル
- 工具
- ブリーダータンク(キャッチタンク)
- 補給機
ブレーキオイルの補給
ブレーキオイルの交換はリザーブタンク内がMINまたはLOWという最下限値を下回らぬように、補給機に入れ替えたブレーキオイルを継ぎ足しながら実施します。
これを怠ると、配管内にエア噛みを起こしてしまい、そのまま車を運転するとブレーキが正常に効かないので非常に危険です。
ブレーキオイルを抜く準備
四輪に備わるブレーキキャリパーまたはブレーキドラムのニップルを適切な工具で緩めて、ブリーダータンクを接続します。
ブレーキオイル抜き取り
ブレーキオイルを抜く方法はいくつかあります。
- 作業補助をしてくれるひとを1人呼んで、ブレーキペダルを踏んでもらう
- 負圧式を利用して抜く(手動式・エア式)
- 加圧式を利用して抜く(手動式・エア式)
それぞれ方法は異なりますが、これにより適量抜き取ります。
場所を変えつつ、四輪実施します。(車種によってはリヤは片輪に集約されてることもあります。)
リザーバータンクから遠いところから順番に行うという意見もありますが、特にこだわらなくても整備を完了することは可能です。
最終確認
四輪すべての箇所の交換が終われば、ニップルの締め付けが確実にされているかチェックします。
ブレーキオイルがこぼれていれば確実な清掃を実施します。
最後に、リザーバータンク内の容量をMAXまたはFULLレベルに調整してタンクのキャップを締めます。
作業前後にテスターを接続
まなければ作業完了できないものもあります。
特にハイブリッド車や電気自動車に多いですが、近年普通のガソリンエンジン車でも、そのような車種があります。
このような例もあるので、ユーザーが自分自身で交換を実施することはリスクがあります。
ブレーキオイル以外のオイル交換目安
車に使われているブレーキオイル以外のオイルの交換目安についても簡単に解説します。
オートマチックフルード(ATF ・ CVTF)
ATF・CVTFはその名のとおりATまたはCVT(変速機の名称、広い意味でオートマ)に使用されています。
最近ではメンテナンスフリー(無交換可)となっている車種も増えています。
交換する場合は2万km前後毎に交換することをおすすめします。
逆に10万km以上未交換であったのに、交換するとそれをキッカケに故障することがあるので注意が必要です。
ミッションオイル・デフオイル
ミッションオイルは、マニュアルトランスミッションに用いられるオイルです。
一部車種では2ペダルのATでありながら、変速機としてマニュアルトランスミッションが用いられていることもあります。
デフオイルはデファレンシャルに使われているオイルです。
デフは駆動方式や車種によって以下の3つのいずれか、または複数が備わっています。
- フロントデフ
- センターデフ
- リヤデフ
国産車の多くを占めるFF車はデフはトランスミッション内(AT内・CVT内含む)にあり、ミッションオイル・ATF・CVTFがデフオイルを兼ねています。
ミッションオイル・デフオイルはメーカーとしても定期的な交換を推奨されていることが多いです。
1.5万km〜10万kmと、車種によってかなり幅広いので、ご自身の車がどうなのかは取扱説明書のサービスデータ欄を参考にするか、整備工場に問い合わせて確認しましょう。
パワステフルード
最近は電動式パワステの普及により、該当する車種が大幅に減りました。
パワステポンプ内部の潤滑にも使われる重要なオイルなので定期的な交換が推奨されています。
2万km〜4万kmごとに交換しましょう。
エンジンオイル
エンジンオイルはもっとも身近なオイルです。
「オイル交換=エンジンオイル交換」とも言えます。
エンジンにとっての血液のようなものなので、交換を怠ると異音、寿命の大幅な低下、エンジン部品の損傷や早期劣化につながります。
一部輸入車などで長寿命なものが採用されていますが、一般的には以下のスパンのいずれか早いほうでかならず交換しましょう。
- 走行距離での交換時期の目安:3,000〜5,000km
- 使用期間での交換時期の目安:半年~1年
ブレーキオイル(ブレーキフルード)に関するまとめ
ブレーキは、車の「走る」「曲がる」「止まる」の三原則のひとつを担う、重要保安部品です。
ブレーキオイルはそのシステムを正常に作動させるための重要なオイルです。
車の安全運行はドライバーの義務でもあります。
不具合や事故につながる前に、定期的に交換することで、日々安全に車を運転できるようにしておきましょう。