ワゴンRスマイルvsムーヴキャンパス

スズキ ワゴンRスマイルとダイハツ ムーヴキャンバスは、軽自動車のハイト系ワゴンだ。2016年に登場したキャンバスは、当時人気だったスーパーハイト系に両側スライドドアがついていることに着目。ハイト系に両側スライドドアを付けるという差別化を打ち出すことでムーヴキャンバスは発売から年々存在感を高め、2020年度の軽自動車販売台数の6~7割を占めた。ワゴンRとの差は約6万台超となり、スズキは2021年9月にスマイルを投入した。
今回はこのハイト系ワゴンのブランド2車種を比較・評価する。

この記事の目次 CONTENTS
スズキ ワゴンRスマイルの特徴
ダイハツ ムーヴキャンバスの特徴
1.燃費比較 
2.価格比較
3.購入時の値引き術
4.デザイン比較
5.室内空間と使い勝手
6.全装備・運転支援機能の比較
7.走行性能の比較
8.リセールバリュー比較
9.まとめ・総合評価
スズキ ワゴンRスマイルの価格とスペック
ダイハツ ムーヴキャンバスの価格とスペック

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

スズキ ワゴンRスマイルの特徴

スズキ ワゴンRスマイル スズキ ワゴンRスマイル

スズキ ワゴンRスマイルは、現行ワゴンRをベースに開発されたモデルだ。プラットフォーム(車台)は、基本的に共通している。
全高は1,695mm(ワゴンR+45mm)だ。この全高は、スーパーハイト系のスペーシアと比べると90mm低いが、かなり大きく見える。その上で、両側スライドドアを装備し利便性を向上させた。
フロントフェイスは大きな丸型ヘッドライトなどを装備し、愛着が湧くデザインとなった。
搭載エンジンは660ccのマイルドハイブリッドシステムと自然吸気ガソリンエンジンを設定した。ターボエンジンの設定はない。

ダイハツ ムーヴキャンバスの特徴

ダイハツ ムーヴキャンパス ダイハツ ムーヴキャンパス

2016年に登場したダイハツ ムーヴキャンバスは、2021年10月時点で、デビューから約5年が経過。もはや、いつフルモデルチェンジしてもおかしくない状態だ。
キャンバスの全高は1,655mmで、ムーヴより25mm高い。このクラスで初めて両側スライドドアを装備したモデルだ。
キャンバスは、普段の暮らしに少しの変化を与えることで、自身のライフスタイルを楽しむ女性をターゲットに企画・開発されている。
後席シート下には、置きラクボックスと呼ばれる、ユニークで使い勝手の良い収納スペースが用意された。
エンジンは660ccの自然吸気エンジンのみの設定だ。バックドアなどを樹脂化するなどして軽量化したものの、燃費はやや物足りない。

1.燃費比較 

ワゴンRスマイルの評価は 4.5
ムーヴキャンバスの評価は 3.0

軽い車重&マイルドハイブリッドなどにより、燃費で大差を付けたワゴンRスマイル

二車種の燃費値と車重は以下の通りだ。

車種 燃費値(FF、WLTCモード) 車重
ワゴンRスマイル 23.9~25.1km/L 840~870kg(FF)
ムーヴキャンバス 20.6km/L 920kg

二車種の燃費値を比べると、スマイルの圧勝だ。キャンバスは、マイルドハイブリッドシステムを持たない上に、約5年前にデビューし設計が古い。最新モデルのスマイルには太刀打ちできなかった。

スマイルには、優れた熱効率をもつ660ccのR06D型エンジンを搭載している。このエンジンに2.6ps&40Nmという小さなモーターを組み合わせたマイルドハイブリッドを設定した。このモデルの燃費は25.1km/L(FF、WLTCモード)となる。
価格志向の顧客用として、マイルドハイブリッドシステムを外した安価なモデルも用意されている。このモデルの燃費は23.9km/L(FF、WLTCモード)だ。マイルドハイブリッド無しでもキャンバスを大きく上回る燃費となっている。
また、パワーユニットだけでなく、車重も燃費値に大きく貢献した。キャンバスの車重は92スマイルより50~80kgも重い。これも、基本設計が古いことが大きな要因だ。
キャンバスも近い将来フルモデルチェンジした際に、スマイルの燃費を超えられるかどうか注目したいポイントだ。

2.価格比較

ワゴンRスマイルの評価は 4.0
ムーヴキャンバスの評価は 3.0

価格はほぼ同等。装備や性能差で買い得感をアピールするワゴンRスマイル

二車種の価格帯は以下の通りだ。

ワゴンRスマイル 1,296,900~1,716,000円
ダイハツ ムーヴキャンバス 1,430,000~1,710,500円

上級グレードの価格は、ほぼ同等である。しかし、エントリーグレードの価格設定に大きな差が付いた。より安価なエントリーグレードを設定するのは、いかにもスズキ的だ。「ワゴンRスマイル、1,296,900円から! 」とチラシなどで訴求することで、ライバル車より安さをアピールして集客する手法となっている。
対するダイハツは販売に苦戦しグレードの整理を行ったのか、1,276,000円で設定されていたエントリーグレードを廃止している。

安価であることを訴求すること自体は、悪いことではない。スマイルのエントリーグレードであるGには以下が装備されていない。

  • ワンアクションパワースライドドア
  • キーレスプッシュスタートシステム
  • USB電源ソケット
  • 運転席シートリフター
  • チルトステアリング など

これだけシンプルな仕様になっていると、さすがに選びにくい。ハイブリッドSからがおすすめだ。ハイブリッドSの価格は1,472,900円だ。マイルドハイブリッド装着モデルで、わずかにキャンバスより高価な設定である。燃費性能面や走行性能面も含めれば、スマイルの価格はかなりリーズナブルといえる。
スマイルとキャンバスの最上級グレード比較でも価格差は1万円弱と、ほぼ同等だ。装備はややスマイルの方が充実している。スズキは、キャンバス対策として、かなり攻めた価格設定としたようだ。

3.購入時の値引き術

ワゴンRスマイルの評価は 3.5
ムーヴキャンバスの評価は 4.5

モデル末期のキャンバスは大幅値引き期間中?!

ダイハツ ムーヴキャンバスは、2016年に登場しており、2021年10月現在はモデル末期だ。しかも、ライバル車であるワゴンRスマイルが投入された。スマイルは、走行性能や価格など、多く部分でキャンバスを上回る。こうなると、もはや値引き勝負にでるしかない状態だ。

さらに今、ダイハツは深刻な状況にある。コロナ禍で東南アジアからの部品供給不足や半導体不足が生じており、ほとんどの自動車メーカーが工場の稼働停止に追い込まれている。
このような状況だと、注文を受けても生産がいつになるか分からないので、値引きを強要する顧客の相手をしないケースが多くなる。キャンバスは大幅値引きが期待できるモデルなだけに、残念な状況だ。

しかし、やはり1台でも多く受注しておきたいのが営業マンの心理だ。キャンバスも、スマイルとしっかりと競合させれば大幅値引きが期待できる。
前述の通り、キャンバスがワゴンRを超えている部分はとても少ない。そうした部分を軽く指摘しながら、安くなるならキャンバスもありという姿勢で臨むとよい。納期も長くなる傾向なので、商談に時間をかけてみるのもありだ。

対するワゴンRスマイルは、新型車でデビュー直後なので、しばらくの間は値引きゼロベースだ。しかし、スズキはキャンバスがフルモデルチェンジし2代目になる前に、バックオーダーを含めなるべく多くの受注を得たいと考えている。2022年春先頃にキャンバスとしっかりと競合させれば、一定の値引きが提示される可能性は高い。
スマイルの納期も長くなる可能性が高いので、こちらも時間をかけて商談するとよい。新型車なので、現金値引きよりオプション関係からの値引きの方が比較的ガードが下がるだろう。

4.デザイン比較

ワゴンRスマイルの評価は 4.0
ムーヴキャンバスの評価は 3.5

質感の高さと、より大きく見せるデザインで一歩上回るワゴンRスマイル

ワゴンRスマイルの外観 ワゴンRスマイルの外観

スズキ ワゴンRスマイルのデザインは、自分らしさを表現できる「マイスタイル マイワゴン」をテーマとした。メインターゲットの女性に合わせ、角を丸くしたボクシィなシルエットに、大きく丸いヘッドライトを組み合わせた。大雑把に言えば、キャンバスと同じような傾向のデザインと言える。

スマイルは、全高をキャンバスよりも+40mm高くした1,695mmに設定している。より大きく立派に見えるデザインとなった。

ワゴンRスマイルのフロントフェイス ワゴンRスマイルのフロントフェイス
ワゴンRスマイルのリヤエンド ワゴンRスマイルのリヤエンド
ムーヴキャンパスの外観 ムーヴキャンパスの外観
ムーヴキャンパスのフロントフェイス ムーヴキャンパスのフロントフェイス
ムーヴキャンパスのリヤエンド ムーヴキャンパスのリヤエンド

対するダイハツ ムーヴキャンバスのデザインコンセプトは「ナチュラル・愛着・アクティブ」だ。シンプルでおおらかな面構成で、丸みのあるシルエットにまとめている。スマイルと比べると、確かにシンプルでスッキリ感がある。逆にスマイルは、ヘッドライトやグリルまわりのデザインがややアクが強い。2021年10月現在、キャンバスはデビューから約5年が経過したが、未だ古臭く見えないのは素晴らしいポイントだ。

スマイルのインテリアは、開放感と見晴らしの良さが重視されている。居心地がよくリラックスできる空間を目指し、質感にこだわっている。

ワゴンRスマイルのインパネ ワゴンRスマイルのインパネ
ムーヴキャンパスのインパネ ムーヴキャンパスのインパネ

インパネデザインは、柔らかな曲線でワイド感を演出した。艶と潤いを表現したインパネカラーパネルは、車体色に合わせてアイボリーパールとネイビーパールの2種類から選べる。また、インパネカラーパネルとエアコンサイドルーバーにカッパーゴールドのアクセントを施し、洗練された印象を醸し出している。インパネとドアトリムには、革を手縫いしたようなステッチ風の模様を施し高級感をプラスしている。インテリアの質感では、このクラスでトップレベルの仕上がりだ。

ワゴンRスマイルのメーター ワゴンRスマイルのメーター
ムーヴキャンパスのメーター ムーヴキャンパスのメーター

キャンバスのインパネデザインは、ナチュラルな心地よさを目指した。スマイル、キャンバス共に似たような方向性になっている。
インパネデザインは、見晴らしの良さを意識した水平基調で広さをアピールしている。センターメーターは、今となってはやや古さを感じさせる。各部のパネルには、ピンクやブルー、ブラウン、ブラックなど、ボディカラーやグレードにより豊富な選択肢が用意された。自分好みのインテリアカラーを選択できる楽しみがある。
さすがに、スマイルはキャンバスより新しいため、インテリアデザインと質感共にムーヴを上回る印象が強い。

5.室内空間と使い勝手

ワゴンRスマイルの評価は 4.5
ムーヴキャンバスの評価は 4.0

やや広いスマイル。ユニークな後席置きラクボックスを装備したキャンバス

ワゴンRスマイルの運転席 ワゴンRスマイルの運転席
ムーヴキャンパスの運転席 ムーヴキャンパスの運転席
ワゴンRスマイルの後席 ワゴンRスマイルの後席
ムーヴキャンパスの後席 ムーヴキャンパスの後席

スズキ ワゴンRスマイルは、ダイハツ ムーヴキャンバスに対して全高で+40mm、ホイールベースは+5mm大きい。全長と全幅は、軽自動車なので同じ。ほぼ、大差ない数値だ。しかし、室内の広さはスマイルがやや勝る。後席の広さは微妙な差だが、スマイルの全高+40mm分、頭周辺のスペースに余裕があり圧迫感は少ない。
スマイルの前席ヒップポイントは、ベース車のワゴンR比で+70mmと高い。この高さは、ちょっとしたミニバン並だ。前方やサイドなどを上から見下ろす視界になり、とくに運転が苦手というような人にとってはボディサイズをつかみやすく運転しやすいと感じるだろう。

ワゴンRスマイルの荷室 ワゴンRスマイルの荷室
ムーヴキャンパスの荷室 ムーヴキャンパスの荷室

次に使い勝手面を比較する。
スマイルには、様々な場所に収納スペースがある。これだけたくさんあると、いったい何を収納すればいいのか、少々悩むくらいだ。収納スペースに不満はない。USB電源ソケットもハイブリッドSとハイブリッドXには2個装備されているので、前席2名乗車でもスマートフォンの充電に悩むことはない。
リヤシートは左右分割スライドが可能だ。スライド量は160mmあり、背もたれを倒せば、ほぼフラットな荷室になる。
ナビのモニターは大型の9インチが用意されており、スマートフォン連携機能もある。
さらに以下の機能が安全運転をサポートしてくれる。

  • 全方位モニター(車両周囲の映像を合成して車両を俯瞰から見た映像にして表示、クルマの死角がなくなり、衝突のリスクを軽減)
  • すれ違い支援機能
  • 左右確認サポート機能

対するダイハツ ムーヴキャンバスの使い勝手を見てみよう。収納スペースはスマイルと同様、非常に豊富である。スマイルに無い収納が、リヤシート下に装備された置きラクボックスだ。シート下から収納ボックスが出てくる。
リヤシートのスライド量は、スマイルより長い240mmを確保した。荷室の広さをより幅広くコントロールできる。ただし、通常時の広さは、スマイルの方が広い印象だ。
また、置きラクボックスを設置したことで、リヤシートは倒してもスマイルほどフラットにならない。

スマイルは、キャンバスよりやや室内と荷室が広い。対するキャンバスは、リヤシートのスライド量が大きく、スマイルにはないリヤシート下に装備された置きラクボックスがある。最小回転半径も両車4.4mと、ほぼ互角といえるレベルだ。

6.全装備・運転支援機能の比較

ワゴンRスマイルの評価は 3.0
ムーヴキャンバスの評価は 2.5

やや旧式となったキャンバスの安全装備

スズキ ワゴンRスマイルの予防安全装備は、「スズキ セーフティ サポート」と呼ばれている。従来のタイプから進化した自動ブレーキは、車両と歩行者検知に加え、夜間の歩行者も検知できるようになった。歩行者衝突事故は夜間に多いので、防止をサポートしてくれるのは心強い。
その他、一定レベルの予防安全装備が全車標準装備されている。

  • 誤発進抑制機能
  • 後退時ブレーキサポート
  • 後方誤発進抑制機能
  • 車線逸脱警報機能
  • サイドエアバッグ(※)
  • カーテンエアバッグ(※)

※…法規制によって必須となった装備

ただし、運転支援機能である全車速追従式クルーズコントロールなどは、セーフティプラスパッケージとして、一部グレードを除きオプション設定となった。

また、スマイルには以下の装備・機能は残念ながら用意されていない。

  • オートブレーキホールド機能(信号で停止時にブレーキを踏み続ける必要がなくなる)
  • SOSコール(衝突時にエアバッグが展開するような事故の場合、自動で専門オペレーターへ通報。ドライバーの意識が無い場合、専門オペレーターが救急車の要請や警察への通報も行ってくれる。)

キャンバスの予防安全装備や運転支援機能と比べると、スマイルはやや勝っている。しかし、スマイルは最新モデルながら、他メーカーのハイト系モデルのレベルには達していない。

ダイハツ ムーヴキャンバスは、予防安全装備パッケージを「スマートアシストⅢ」と呼んでいる。
自動ブレーキが全車標準装備されており、対車両と歩行者に対応している。だが夜間歩行者対応はしていない。その他、車線逸脱警報機能、前後の誤発進抑制制御機能などの機能も備えている。
ダイハツは、キャンバスの予防安全装備を徐々に進化させてきたものの、約5年前のモデルということもあり、やや旧式の予防安全装備になっている。また、法規制前のモデルなので、サイドエアバッグが標準装備化されていないグレードがある。また、カーテンエアバッグは用意されていない。
もちろん、全車速追従式クルーズコントロールやオートブレーキホールド、SOSコールと言った運転支援機能も設定されていない。こうした機能は、フルモデルチェンジし2代目となったキャンバスでは一気に改善されるだろう。

7.走行性能の比較

ワゴンRスマイルの評価は 3.5
ムーヴキャンバスの評価は 2.5

両車、街乗り仕様。優れた静粛性など、ほぼすべての面でワゴンRスマイルが勝る

ワゴンRスマイルのエンジンルーム ワゴンRスマイルのエンジンルーム

スズキ ワゴンRスマイルは、「走行シーンは街乗り」と、ある程度割り切った感がある。とくに、低・中速での乗り心地と静粛性が重視された。
アクセルを踏んでも、それほど力強さはない。最上級グレード比較で、スマイルはワゴンRより80kgも重いからだ。それでも、モーターアシストが効いているため、遅いなぁ、と思うレベルではない。街乗りと割り切るのであれば、可もなく不可もない曖昧な評価になる。エンジン出力は、49ps&58Nmだ。
これが高速道路になると、非力感が前面に出てくる。ダラダラと長い登り坂で100km/h巡行をしようとすると、アクセルはほぼ全開状態になる。エンジンも、かなり賑やかだ。
しかし、スマイルの静粛性は高く評価したい。車内はかなり賑やかになるが、意外と不満は少ない。耳障りな音はしっかりと抑え込まれているからだ。ボディには、不快な音や振動を低減する技術が投入されていて、クラストップレベルの静粛を誇る。車内での会話を妨げるようなことは、ほとんど無かった。

スマイルの乗り心地も快適だった。ボディは、構造用接着剤を積極的に使用し、ボディ剛性を高めている。そのため、サスペンションはしなやかに動く。低・中速域では、不満のない乗り心地だ。しかし、高速域に入るとクルマの揺れを抑えきれなくなる。高速道路などで、100km/h巡行すると、フワンフワンした乗り心地となりボディが常に揺れている印象を受けた。もう少し、ボディの揺れが抑えられるセッティングでもいいと思う。

驚いたのは、スマイルのハンドリング性能だ。交差点を低速で曲がるときには、それほど気にならなかったが、高速道路で本線に入る前の大きなカーブや峠道では、ハンドルを切ってもクルマがなかなか曲がらない。かなりダルなハンドリングになっている。運転が不慣れな人にとっては、機敏過ぎるハンドリングは扱いにくいのかもしれないが、ここまでダルだと運転が好きな人にとっては逆に扱いにくさとストレスを感じるかもしれない。スズキのソリオは同じタイプで1クラス上のクルマだ。ソリオくらいのハンドリング性能がちょうどよい。

ムーヴキャンパスのエンジンルーム ムーヴキャンパスのエンジンルーム

対するダイハツ ムーヴキャンバスは約5年前にデビューしたモデルなので、走行性能面で比べるのは酷だ。静粛性や乗り心地に関しては、スマイルが圧倒する。
キャンバスのエンジン出力は、52ps&60Nmだ。車重がスマイルより50kgも重いので、スマイルより、ややもっさりとした印象が残る。キャンバスも街乗り用と割り切っているため、高速道路などでは非力感がある。
静粛性もスマイルが圧倒する。キャンバスのエンジンは賑やかだし、ダイハツ車でお馴染みのCVTがキーンとなる音もしっかりと聞こえてくる。

キャンバスの乗り心地は、ベースとなったムーヴほどしっかりした感じはなく、結構バタバタと走る。ムーヴよりもサスペンションを柔らかくしたことや、両側スライドドアを装備したことによる重量増と剛性不足も影響していた。
キャンバスが登場した約5年前は、それでも平均的なレベルにまとまっていて不満はそれほどなかったのだが、さすがに新型のスマイルと比べるのは、キャンバスがかわいそうになるくらいだ。こうした部分は、キャンバスがフルモデルチェンジし2代目となったときに、比べるべきなのだろう。

8.リセールバリュー比較

ワゴンRスマイルの評価は 3.5
ムーヴキャンバスの評価は 3.0

高値維持のムーヴキャンバス、新車販売次第のワゴンRスマイル

スズキ ワゴンRスマイルは、新型車のためリセールバリューは不透明だ。楽観的に見れば、軽自動車はそのものの人気が高く、その上、スマイルのような個性派モデルはさらに高値になる傾向がある。こうした傾向を踏まえると、スマイルのリセールバリューは、やはり高値になることが予想できる。
スマイルで特にリセールバリューが高い傾向にあるのは、マイルドハイブリッド車で最上級グレードのハイブリッドXだ。このグレードに、人気の2トーンルーフや全方位モニター付メモリーナビゲーション装着した車は、プラス査定になるだろう。

ダイハツ ムーヴキャンバスのリセールバリューは、かなり高い。2017年式の中古車相場は、おおよそ80~140万円だ。新車価格が120~170万円なので、新車価格の67~82%となっている。新車登録から約4年落ちでこの価格だと、もはや新車を大幅値引きしてもらった方が、買い得感がある。
2021年10月現在、キャンバスの中古車を買うのは待つことをおすすめする。近い将来、フルモデルチェンジした2代目キャンバスが登場してからだ。
2代目キャンバスが登場し半年くらい経つと、下取りに入ったキャンバスが多く中古車マーケットに流通する。流通量が増えれば、中古車価格が下がる傾向になるからだ。

9.まとめ・総合評価

デザインが気に入れば、ワゴンRスマイルがベストな選択

静粛性や乗り心地、燃費、インテリアの質感など、ほぼすべての面でスズキ ワゴンRスマイルがダイハツ キャンバスを上回っている。
これは、キャンバスがダメということではない。約5年前に登場したモデルなので、設計が古いためだ。キャンバスもデビュー時は、クラス平均レベルは確保していた。
クルマの機能面で比べると、スマイルを選んだ方が無難だろう。

どうしてもキャンバスのデザインが好き! という人もいるだろう。そういう人には、本来、買い得感のある中古車をおすすめしたいところだ。
ところが、キャンバスの中古車はかなり高値がついている。リセールバリューの項目でも書いたが、中古車でも今は買い時ではない。2代目新型キャンバスが登場し、半年位経過した後がおすすめだ。
どうしても今、キャンバスが欲しいというのであれば、新車という選択がベストだ。ただし、大幅値引きが前提となる。いつフルモデルチェンジし、リセールバリューが大きく落ちるか分からないからだ。スマイルと競合させて大幅値引きで購入すれば、少しは買い得感が出る。

ワゴンR スマイル ムーヴキャンパス
総合得点(40点満点) 30.5点 26.0点
1.燃費 4.5点 3.0点
2.価格 4.0点 3.0点
3.購入時の値引きしやすさ 3.5点 4.5点
4.デザイン 4.0点 3.5点
5.室内空間と使い勝手 4.5点 4.0点
6.安全装備 3.0点 2.5点
7.走行性能 3.5点 2.5点
8.リセールバリュー 3.5点 3.0点

スズキ ワゴンRスマイルの価格とスペック

スズキ ワゴンRスマイル価格

2WD 4WD
G 1,296,900円 1,420,100円
HYBRID S 1,472,900円 1,596,100円
HYBRID X 1,592,800円 1,716,000円

スズキ ワゴンRスマイルのスペック

代表グレード ワゴンR スマイルHYBRID X
ボディサイズ(全長×全幅×全高) 3,395mm×1,475mm×1,695mm
ホイールベース 2,460mm
車両重量 870 kg
総排気量 657cc
エンジン最高出力 49 ps(36kw)/6,800rpm
エンジン最大トルク 58N・m(5.9 kg-m)/5,200rpm
モーター型式 WA04C
モーター最高出力 2.6ps(1.9kw)/1,500 rpm
モーター最大トルク 40 N・m(4.1 kg-m)/100 rpm
WLTCモード燃費 25.1 km/L
ミッション CVT
タイヤサイズ 155/65R14
定員 4人

ダイハツ ムーヴキャンバスの価格とスペック

ダイハツ ムーヴキャンバスの価格

【X】

2WD 4WD
SAIII 1,430,000円 1,556,500円
メイクアップリミテッド SAIII 1,507,000円 1,633,500円
ブラックインテリアリミテッド SAIII 1,507,000円 1,633,500円

【G】

2WD 4WD
SAIII 1,518,000円 1,644,500円
メイクアップリミテッド SAIII 1,584,000円 1,710,500円
ブラックインテリアリミテッド SAIII 1,584,000円 1,710,500円

ダイハツ ムーヴキャンバスのスペック

代表グレード ムーヴキャンバス G SAIII
ボディサイズ(全長×全幅×全高) 3,395mm×1,475mm×1,655mm
ホイールベース 2,455mm
車両重量 920kg
総排気量 657cc
エンジン最高出力 52ps(38kw)/6,800rpm
エンジン最大トルク 60N・m(6.1 kg-m)/5,200rpm
WLTCモード燃費 20.6km/L
ミッション CVT
タイヤサイズ 155/65R14
定員 4人