ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

2代目を日本マーケットを意識した仕様に

スバルは、スポーツワゴンとして人気の「レヴォーグ」をフルモデルチェンジする。正式発表は10月15日の予定だ。

今回のフルモデルチェンジで2代目となった新型レヴォーグ。その2代目新型レヴォーグのプロトタイプにいち早く試乗する機会を得た。

新型レヴォーグのボディサイズはやや大きくなった。
全長は4,755mmとなり、先代モデルから+65mm、全幅は1,795mmで+15mmとなった。
全高は変わらず1,500mmだ。

このボディサイズの拡大は、主に室内スペースに使われている。とくに、リヤシートの居住性が向上した。

また、全幅は1,800mm以下になったことで、都市部に多い立体駐車場の制限内に収まった。
そのため、マンションなどで立体駐車場を使う顧客も新型レヴォーグを買うことができる。

同様に、燃料もダウンサイジングターボエンジンながらレギュラーガソリン使用。これは、ハイオク仕様だと国内で敬遠されがちになるため。

このように、新型レヴォーグは初代と同様に日本国内を重視した仕様になっている。

スピード感ある外観デザインと先進感あるインテリア

新型レヴォーグのデザインテーマ 「Performance × Advanced」だ。

新型レヴォーグは、初代レヴォーグと比べると、随分雰囲気が変わった。とくに、フロントフェイスのデザインは、ヘキサゴングリルを中心彫りの深い立体感あるデザインとなった。エッジの効いたキャラクターラインの効果もあり、全体的にスピード感あるデザインとなっている。

インテリアも同様に、初代レヴォーグのイメージをあまり感じさせない。
ドアを開け、インテリアを見るとまず目に飛び込んでくるのが縦型の11.6インチのセンターインフォメーションディスプレイだ。

縦型というのがポイント。
ナビをヘディングアップで使用していると進行方向が広く使えるので、地図全体の位置関係をつかみやすく分かりやすい。

もちろんタッチパネル式なのだが、これはあまりいただけない。

それは、走行中に揺れる車内で、大くの人が利き手ではない左手では的確な操作をしにくいからだ。
そのためドライバーは指先を注視することになり、前方監視を怠りがちになる。安全面でもあまりよい傾向ではない。

これに対してスバルはアイコンを大きくするなど操作性をアップする工夫をしている。
こうした工夫も大事だが、やはりダイヤル式などとの併用がベストだ。
また、音声認識により、ナビやオーディオ、エアコン操作も可能になっている。

メーターは、先進感あるスバル初の12.3インチフル液晶メーターとなった。
ベースとなる表示は2眼メーターデザイン。これが「ノーマル」画面だ。
地図画面をメインに表示する「地図」画面やアイサイトの情報を表示する画面をメインに表示する「アイサイト」画面から選択できる。

新開発1.8L水平対向エンジン投入だが、電動化技術の投入はなし

新型レヴォーグには、新開発の1.8L水平対向4気筒直噴ターボエンジンが搭載された。
このエンジンはCB18型と呼ばれ、従来の1.6Lターボエンジンに対して、7psアップの177ps、50Nmアップの300Nmとなっている。
排気量をアップさせながら、エンジンの全長は40mmコンパクトになっているのも特徴だ。

この新エンジンに組み合わされるリニアトロニック(CVT)も約8割の部品を刷新。ほぼ新型といえるCVTだ。

このCB18型エンジンでは、燃費向上にも力が入れられた。リーン燃焼技術を採用し、ほぼ新型となったCVTの効果もあり、燃費は16.0㎞/L(JC08モード)から16.8㎞/Lへ向上している。

また、使用燃料も初代レヴォーグと同様、レギュラーガソリン仕様。
ハイオクガソリンを嫌う日本マーケット向けに開発されている。

新開発されたエンジンとはいえ、旧態依然のガソリンエンジン。
2020年度は、ホンダやマツダが市販EVを投入する予定だ。そんななかスバルは、相変わらず電動化技術投入が遅い。
トヨタのハイブリッドシステムを使ったモデルも開発中とはいえ、遅すぎる印象だ。

もちろん、燃費向上とCO2減は世界中で要求されている重要な要素。
それに加えてスバルに求められるのは、単なる燃費志向のパワーユニットではなく、モーターを上手く使った走って楽しいクルマ造りだ。

一般的にターボエンジンには、多かれ少なかれ必ずターボラグがある。
ターボラグとは、ターボの過給が間に合わず、アクセルを踏んでも一瞬エンジンが反応しない状態。この特性は、悪癖といえる。

しかし、モーターを上手く使えば、こうしたターボモーターの悪癖を解消することができる。
モーターは、瞬時に最大トルクを発生する特性をもつ。
ターボラグが起きた瞬間、モーターがエンジンをアシストすることで、ターボラグを感じさせないレスポンスのよいエンジンになるからだ。
欧州の自動車メーカーでは、主に燃費改善のため、こうした組み合わせが多い。

また、搭載するモーターの出力次第では、燃費志向や走りのパフォーマンスアップにとキャラクターを変えられる。
モーターの使い方次第で、スバルのクルマはよりエキサイティングな走りが可能となるはずだ。

新型レヴォーグ進化のきもは、進化型SGPにあり!

新型レヴォーグ進化のきもは、新しく採用されたSGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)にある。
このSGPは2016年に初めてインプレッサに採用。その後、フォレスターにも使われている。

SGPのデビューが2016年ということもあり、新型レヴォーグに採用されたSGPは進化型が使われている。
進化ポイントは構造用接着剤の使用範囲拡大。インプレッサのSGP比で、約4倍の27mも構造用接着剤が使われている。これにより、ボディ剛性アップがアップし、フロアまわりの振動低減にも貢献している。

さらに、このSGPに組み合わされるボディも大幅に強固なものとなった。
まずボディ全体の骨格部材を強固に組み立ててから外板パネルを溶接する新工法に変更した。
これにより、ボディとしてねじり剛性を現行比44%向上。新型レヴォーグはワゴンボディなので、とくにリヤまわりの剛性がアップされている。

強固なボディを手に入れ、走行性能は飛躍的に向上!

低重心化されたSGPや強固なボディを手に入れた新型レヴォーグ。その走行性能は、想像を超えるものだった。

試乗したのは、最もスポーティなグレードである新型レヴォーグSTI Sportだ。

まず、最初に驚いたのがステアリング操作に対する反応速度。
わずかな操舵に対してもクルマは敏感に反応する。スポーツカー顔負けの敏感さだ。
あまりにクイックなので、少々やり過ぎだろうと思ったのだが、慣れてくると直進安定性そのものは良いので、意外にこれはあり! と思ったほどだ。ただ、ステアリング操作が雑なドライバーには向かない。

そして、カーブでは強固なボディとSGPの効果を十分に体感できた。
大幅に低重心化された車体は、非常に安定した姿勢でカーブを抜ける。
リヤ回りを中心としてボディ剛性をアップしたこともあり、リヤサスペンションはしなやかに動き路面をつかむ。

初代レヴォーグはなぜかドタバタした印象が強く残る。しかし、新型レヴォーグの走りはもはや異次元の走りといった印象で、とにかくよく曲がり安定していて速い。
それほど新型レヴォーグは大きく進化した。

スポーツ+が楽しい! クルマのキャラを変えるドライブモードセレクト

新型レヴォーグのSTI Sportには、電制サスペンションやAWDなどのセッティングをコンフォート、ノーマル、スポーツ、スポーツ+と4つのモードに変化させることができる「ドライブモードセレクト」が用意された。
この機能により、ドライバーは走る場所やシチュエーション、自分の好みにより自在にクルマをキャラクターを変えることができる。

試乗時にいろいろ試してみたが、スポーツドライビング時におすすめなのがスポーツ+だ。
この機能によってステアリングはやや重くなり、ダンパーの減衰力は一気にアップされる。カーブでのクルマの傾きも抑えられ、傾くスピードもかなりゆっくりになる。スポーツカーのような乗り味に激変する。

さらに、グリグリとより曲がりやすくなるのだ。
この曲がりやすさは、スバル初となるAWDスポーツモードに切り替わったためだ。
このモードでは、アクセルオフ時にも後輪へ駆動力を保ち高い旋回性を実現する。
後輪へのトラクションがしっかりかかったままなので、カーブの立ち上がりでアクセルをグッと踏み込むと、後ろから押されるようなFR(後輪駆動)っぽい走りになる。

コンフォートモードはスポーツモードの真逆になる。基本的に乗り心地重視。カーブではクルマの傾きも大きい。
限られた条件下だったが、街乗りではこれがベストかなぁといったところ。

ノーマルとスポーツモードは、ちょっと中途半端な印象。個人的には、コンフォートとスポーツ+の2つで十分だった。
設定をドライバーの好みで選択できる機能もある。新型レヴォーグを購入したら、いろいろ試して自分好みの仕様にできる楽しさがある。

新型レヴォーグの走りはかなりキレッキレだ。スポーツドライビング好きにとっては、期待以上の走りが楽しめる。
このクラスの国産モデルとしては、ずば抜けて高いレベルに仕上がっていた。

国内トップレベルの安全性能となった「アイサイトX」

こうした走行性能だけでなく、2代目レヴォーグはスバルの代名詞ともいえる技術アイサイトもまったく新しい世代へと進化させ「アイサイトX」となった。

アイサイトXは、従来のアイサイト同様にステレオカメラにこだわったシステム。
カメラはより広角化され、新たなセンサーを追加。
カメラでは見えない部分は監視できる全側方レーダーを2つ追加。
さらに後側方レーダー2つ、リヤソナーを1つを追加し、360°車両周辺を監視できるようになった。

また、新たに3D高精度地図データも使用。
こうした多くのセンサーと地図データにより、高速道路などの渋滞時などでは約50㎞/h以下であれば、ハンズオフで車線維持しながら先行車に追従走行、停止&再発進も可能となっている。

同様に衝突回避、被害軽減機能も大幅に向上している。
右折時の対向車や歩行者を検知、衝突被害軽減・回避が可能となった。

また、前側方レーダーにより、前側方から接近する車両を検知。出会い頭事故リスクも軽減可能だ。
さらに、ブレーキ制御だけでは衝突回避が困難な場合、システムが操舵制御を行い、回避可能スペースへ車両移動させ衝突回避をサポートする機能もある。

こうした機能面では、国内トップクラスといえるレベルに達している。

人より運転が上手い?自然なフィールの車両制御

新型レヴォーグの運転支援機能は、非常に自然な制御が特徴。まるで熟練ドライバーが運転している感覚だ。
渋滞時ハンズオフアシストでは、車線維持や加減速、停止、再発進など、人間の感覚に近く洗練された制御になっていた。

また、ウインカーを操作するだけで、後側方の安全を確認し車線変更するアクティブレーンチェンジアシストも、実に運転が上手い。

テスト時には、左カーブで右側車線へ車線変更した。
左に曲がりながら右の車線に移動するのだから、熟練ドライバーでもかなり慎重にステアリング操作しなければならない。
ところが、アイサイトXは熟練ドライバーも驚くくらいスムースに車線変更した。自分で車線変更するより、アイサイトXに任せた方が余計な動きが少なく快適と感じたほどだ。
こうした制御も、走りにこだわるスバルならではだろう。

さらに、クルーズコントロール使用時には、料金所が近くなると自動で減速してくれる機能や、カーブの手前で減速してくれる機能もプラスされている。クルーズコントロール使用時の手間やドライバーの負担が減り、より快適なクルージングができるようになっている。

そして、病気などで気を失ったときの安全にも配慮された機能も用意されている。
まさに高齢化クルマ社会に必須ともいえる機能だ。

ドライバー異常時対応システムと呼ばれる機能は、クルーズコントロール使用時に急病などで運転ができなくなった場合、事故のリスクを下げるため車線内で減速し停車させる。
停止後は、ハザードランプ点滅、ホーン吹鳴で周辺通知しドライバーの救助や周囲の事故リスクを軽減してくれる。

さらに、エアバックが展開するような事故を起こした場合、車載通信機により先進事故自動通報(ヘルプネット)へ通報。専門のオペレーターから連絡が入り、警察や救急車の手配も行ってくれる。
ドライバーの意識が無い場合でも、オペレーターが同様の手配を行ってくれるので、もしもの時にとても頼りになる。

しかし新型レヴォーグでは、アイサイトXが全車標準装備化されておらず、6グレード中3グレードでは従来のアイサイトとなる。
こうした素晴らしい機能は、より多くの人に使ってもらってこそ意味があり、交通事故減に寄与する。全車標準装備化を目指してほしい。

新型スバル レヴォーグ燃費、ボディサイズなどスペック(参考値)

代表グレード レヴォーグSTI Sport

・ボディサイズ:全長4,755×全幅1,795×全高1,500mm
・ホイールベース:2,670mm
・最小回転半径:5.45m
・車両重量:1,580㎏
・エンジン種類:CB18型 水平対向4気筒DOHCターボ
・排気量:1,795㏄
・最高出力:130ps(177kW)/5,200~5,600rpm
・最大トルク:300Nm/1,600~3,600rpm
・燃費:13.6㎞/L(WLTCモード)
・トランスミッション:リニアトロニック(CVT)
・サスペンション 前:ストラット 後:ダブルウィッシュボーン