ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

高級SUVカテゴリーを創り出したハリアー

トヨタは、高級SUVであるハリアーをフルモデルチェンジし、6月に発売すると発表した。
新型ハリアーは、このフルモデルチェンジで4代目となる。

ハリアーは、流行りのSUVながら歴史あるモデルだ。
初代モデルは、1997年に発売されたが、並行してアメリカのレクサス店向けRXとして開発された。

初代ハリアーは、エポックメイキングなモデルだった。
この時代、SUVといえば、トラック用のフレーム付きシャシーの上にボディを乗せた車両がほとんど。
そのため、乗用車としては、乗り心地や静粛性などでは物足りなく、乗用車として使うにはある程度割り切りが必要だった。

しかし、トヨタはセダンのカムリ系プラットフォームをベースに、軽量高剛性のモノコックボディを採用しハリアーを開発。
今までのSUVとは比べ物にならないくらい洗練され快適なSUVとなった。

その後、世界中の自動車メーカーが、こうした乗用車系SUVを開発。今や、SUVは大人気で、各自動車メーカーにとって収益の柱ともいえるカテゴリーになった。
現在のSUVブームのきっかけとなったのがハリアーなのだ。

ハリアーの歴史

新型ハリアーは、今回のモデルチェンジで4代目となった。
ただ、ハリアーの歴史はRXとの関係で少し複雑だ。

初代モデルは1997年に発売された後、2003年フルモデルチェンジで2代目に移行した。ここまでは、北米などで展開されていたレクサスRXと同じモデルである。

2009年に、3代目レクサスRXが発売される。しかし、レクサスブランドのユニークさを重視し、専売モデルとなった。

そのため、本来なら3代目モデルになるはずのレクサスRXが発売された後も、2代目ハリアーが日本では継続して販売されることになった。
当時、ハリアーはモデル末期でも高い人気を誇っていて、販売面で重要なモデルになっていたのだ。
こうした背景から、3代目レクサスRXが登場したからといって絶版にしてしまうのは、国内販売的にはマイナスと判断され2代目ハリアーの生産・販売が2013年まで続けられた。

そして、2013年にレクサスRXから独立した別モデルとして、3代目ハリアーが発売された。
レクサスRXがどんどん大きく豪華になっていったため、ハリアーを完全な別モデルにしないと、国内市場に合わないという事情もあった。

ほぼ国内専用車としてデビューした3代目ハリアー。しかし、すべてが国内専用とするのは、コストがかかりすぎるため、北米で販売されていたRAV4の基本プラットフォームや主要コンポーネンツが流用された。

ハリアーとRAV4を上手く差別化

3代目ハリアーとRAV4の関係は、4代目ハリアーにも引き継がれる。

プラットフォームは、現行RAV4と共通の新世代のTNGAプラットフォーム(GA-K)を採用。
その他、ハイブリッドシステムやエンジン、4WDなどの基本的なメカニズムもRAV4と共通だ。

4代目ハリアーは、ほぼRAV4と同じということになるが、コンセプトが異なるため、まったく違うクルマに見える。
RAV4は、カジュアルでアウトドア志向のSUVと方向性をもつが、4代目新型ハリアーは、都会派高級SUVとして価値をアピールする。

販売面やコストを考えると、どちらか1車種に絞った方が効率的なのは間違いない。
しかしトヨタは、歴代ハリアーの顧客やハリアーブランドを好む顧客向けに、4代目新型ハリアーを用意した。
こうした顧客を守る考え方や、開発できる資本力がトヨタが圧倒的な国内シェアを維持している理由でもある。

クーペ的なエレガントなデザインを採用

新型4代目ハリアーは、歴代ハリアーと同じくラグジュアリー系SUVの本道を貫く。その上で、心に響く感性品質を重視して開発された。

外観デザインは、今時の流行りを取り入れクーペ風の長く流れるようなルーフラインが美しさを表現する。

そして、フロントフェイスは、フロントアッパーグリルからヘッドランプへと流れるような連続性をもたせ、精悍かつシャープな印象を際立たせた。
3代目ハリアーには、あまり感じることができなかった睨みの効いた迫力あるフェイスに仕上がっている。

こうしたデザインテイストは、人気SUVに必須と言われている。トヨタは、マーケットのニーズを的確につかみ、デザインに取り入れる力がある。いいとこ取りと言われがちだが、売れるためには重要だ。

リヤビューは、スポーツカーのように張り出したホイールハウスが安定感とスポーティさを演出。
レクサスUXにも似た細く、鋭く、横一文字に光るテールランプとストップランプで、夜間での存在感をより際立たせている。

質感の高いラグジュアリーなインテリア

4代目新型ハリアーのインテリアは、「おおらかなたくましさ」がデザインテーマとなった。

センターコンソールは、SUVのタフネスさを表現するために、馬の鞍をイメージさせる幅広く堂々としたデザインを採用。

インパネから左右のドアトリムにかけては、ボリューム感豊かに、おおらかな広がりをみせる。
これは、包み込まれるような安心感と居心地の良さを両立させている。

さらに、厚い革を曲げたときにできる自然なシルエットをイメージした触り心地にもこだわったレザー調の素材や、「曲木(まげき)」と呼ぶ木工手法から着想されたウッド調の加飾を施しくつろげる空間を生み出した。

パイピング加飾を随所に配しながら、個性的な上質感を演出。
いかにも、ハリアーらしいラグジュアリー感あふれる空間になっている。

インテリアカラーは、コントラストを抑えたブラウン、グレー、ブラックの3色の内装色が採用。
落ち着いた雰囲気で、シックな大人の室内空間に仕立てている。

最新2.5Lハイブリッドと2.0ガソリンを用意

新型ハリアーのパワーユニットは、2.0Lガソリンと2.5Lハイブリッドの2種類が用意された。それぞれに、FFの2WDと4WDを設定されている。

4WDは、ガソリン車がダイナミックトルクコントロール4WD、ハイブリッド車がe-FOURの電子制御4WDが装備される。いずれもAIM(AWD Integrated Management)と呼ぶ4WD統合制御を採用した。

AIMとは、4WDの駆動力やブレーキ、ステアリングなどを統合制御。ドライブモードセレクトの走行モードに応じ、各制御を最適化する。
この機能により、優れた操縦安定性と走破性、そして快適な走行を可能にする。

M20A-FKS型、直42.0Lガソリン車の出力は、26kW(171ps)/6,600rpm、207N・m/4,800rpm。CVTと組み合わされる。

このエンジンは困ったことにアイドリングストップ機能が装備されていない。
ハイブリッド車で地球環境をアピールしながら、ガソリン車ではアイドリングストップ機能さえ持たない。

アイドリングストップ機能を外すことで、安価に設定してより販売台数を伸ばしたいという狙いがあるとはいえ、環境と安全は自動車メーカーが避けて通れない道でもある。
世界の自動車メーカーをリードするトヨタがやるべき仕様ではない。

ハイブリッド車は直42.5Lの直噴仕様で、131kW(178ps)/5,700rpm、221kW/3,600~5,200rpmのパワー&トルクを発生する。
これに前輪用として88kW(120ps)/202N・mを発生する3NM型モーターと、4WD車には40kW(54ps)/121N・mを発生する4NM型のリヤモーターが組み合わされる。

ハイブリッド車のシステム出力は2WD車が160kW(218ps)、4WD車が163kW(222ps)だ。
こちらもRAV4と同じで、かなりパワフルなハイブリッドシステムになっている。

昼夜歩行者対応の自動ブレーキを含むトヨタ セーフティセンスを標準装備したが…

新型ハリアーの予防安全装備には、歩行者(昼夜)や自転車運転者(昼間)を検知できる自動ブレーキなどを含む、「Toyota Safety Sense」を全車に標準装備した。

歩行者(昼夜)や自転車運転者(昼間)の検知機能は、高いレベルにあるものの、2020年2月に発売されたコンパクトカーのヤリスには、右折時の対向直進車や右左折後の横断歩行者も検知(トヨタ初)し、衝突・被害軽減できる機能が装備されている。

発売が遅く、しかも高額な4代目新型ハリアーにこうした機能がプラスされていないのは、少々物足りないポイントでもある。

その他の予防安全装備として、駐車場など低速走行時における衝突緩和、被害軽減に寄与するインテリジェントクリアランスソナー[パーキングサポートブレーキ(静止物)]などが用意された。

そして、自動ブレーキは進化しなかったが、トヨタ車としては初の採用となるデジタルインナーミラーを設定した。これは走行中、前後方向の映像を録画する機能をもつ。ドライブレコーダーが必須アイテムになった現在、新たに購入する必要がなくなるのはありがたい。

ハイブリッド車用のおすすめオプションは、アクセサリーコンセント(AC100V/1500W)だ。家電製品など、計1500Wまで使える機能をもつ。
キャンプや車中泊などで、家電製品が使えるだけでなく、災害時などの停電時に電源車として活躍できる。

気になるハイブリッドの燃費は20.0km/L前後?

新型ハリアーのグレードは、ハイブリッド車・ガソリン車それぞれ3グレード設定となった。その中で「Z」、「G」には本革シートなどを装備した豪華仕様の「Leather Package」を用意している。

新型ハリアーの燃費は、今のところ好評されていない。
RAV4と同じハイブリッドシステムを使っているのだが、新型ハリアーはRAV4より、80~100㎏程度車重が重い。そのため、RAV4より燃費が若干悪くなる可能性がある。

RAV4ハイブリッド(4WD)の燃費は20.6km/L(WLTCモード)。
新型ハリアーハイブリッドは、0.5~1.5km/L程度悪くなるだろう。4代目ハリアーハイブリッドの燃費は20.0km/L~19.0㎞/Lの間ではないかと予想した。

新型トヨタ ハリアー、ボディサイズなどスペック、価格

■代表車種
トヨタ ハリアー/ハイブリッド車

・全長/全幅/全高(mm):4,740/1,855/1,660
・ホイールベース(mm):2,690
・トレッド(Fr/Rr)(mm):1,605/1,625
・最低地上高(mm):190
・車両重量(kg):1,710(FF)/1,770(4WD)
・最小回転半径(m):5.7
・乗車定員(名):5
・4WD機構:E-Four
・4WD統合制御システム:AIM
・エンジン型式:A25A-FXS
・排気量(cc):2,487
・システム最高出力(kW[PS]):160[218](FF)  163[222](4WD)
・サスペンション(Fr/Rr):マクファーソンストラット/ダブルウィッシュボーン
・タイヤサイズ(Fr/Rr):225/55R19/225/55R19