この記事の目次 CONTENTS
大人の都合で投入が遅くなったクリーンディーゼル、ゴルフTDI
北米発のディーゼル不正が国内導入を大きく遅らせた「大人の理由」とは
フォルクスワーゲン ゴルフTDIの選び方
フォルクスワーゲン ゴルフ/ゴルフ ヴァリアント価格、燃費などスペック

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

大人の都合で投入が遅くなったクリーンディーゼル、ゴルフTDI

フォルクスワーゲンは、主力コンパクトカー、コンパクトワゴンのゴルフ、ゴルフヴァリアントに、2.0LクリーンディーゼルエンジンであるTDIを搭載し10月1日より発売を開始する。

7代目となる現行のゴルフは、2013年に登場。
世界中の自動車メーカーがベンチマークするモデルということもあり、7代目ゴルフのパフォーマンスは卓越していた。
その実力は世界トップレベルといえるもので、日本では輸入車初となる2013-2014日本カー・オブ・ザ・イヤー受賞したほどだ。

実質的販売台数NO.1の実績

日本のフォルクスワーゲン車販売において、ゴルフは非常に重要な車種だ。
国内フォルクスワーゲン車販売の内、ゴルフは1車種で全体の4割弱を占める。

また、日本市場でも、車種別の実質ナンバー1の人気車種でもある。
2016年度に、輸入車新車販売台数ランキングでミニにナンバー1の座を奪われているものの、ミニは多くの派生車を含んだ合算台数のため、実質的にはゴルフが販売台数ナンバー1だ。

人気の理由は特別仕様車

7代目ゴルフはすでにモデル末期になっているのに、好調な販売台数を維持しているのは、テックエディションやマイスターといった非常にお買い得な特別仕様車効果が大きい。

好調とはいえ、モデル末期によるジリ貧状態が続いており、フルモデルチェンジ直後の2013年に3万台を超えたものの、直近の2018年度の販売台数は2万台を割って19,660台となった。
これは、高額なメルセデス・ベンツ Cクラスの19,215台とほぼ同等。お買い得車による訴求もそろそろ飽きられてきた様相だ。

しかし、新型ゴルフ8までの間、まだ少し時間がある。
フォルクスワーゲンの国内販売にとって、ゴルフのボリュームは全体の販売台数に大きな影響を与えるため、フルモデルチェンジまでの間、何かしらの話題作りが必要だった。

北米発のディーゼル不正が国内導入を大きく遅らせた「大人の理由」とは

ゴルフの販売台数を少しでも積み上げるために投入されたのが、2.0Lクリーンディーゼルエンジンを搭載したゴルフTDIだ。

ゴルフTDIに搭載される2.0Lクリーンディーゼルエンジンは、150ps&340Nmという出力となり、燃費性能はWLTCモードで18.9㎞/Lとなった。

ゴルフはコンパクトカーながら、輸入車ということもあり、ガソリンエンジン車の燃料は高価なハイオクガソリンが指定されていた。
しかし日本ではレギュラーガソリンが好まれるため、一部の日本車は欧州ではハイオク仕様だったものを日本用にレギュラー仕様に変更して導入している。
燃料が高コストになることで、一定の顧客を逃がしていることは事実だ。

そこで、注目されていたのがディーゼルエンジンだ。
ディーゼルエンジンの燃料は軽油で、ハイオクガソリンより30円/L前後も価格が安く、さらに燃費がよい。
燃料費視点となると、ハイブリッド車に近いものとなる。

ゴルフTDIは、欧州ではすでに主力エンジンであったことから、早期の導入が期待されていた。
しかし、導入は大幅に遅れ、モデル末期にようやく登場。いまさら感はあるものの、ゴルフファンにとっては待望の1台でもある。

TDIの導入が大幅に遅れたのは、2015年に起きた北米発のディーゼル不正問題だ。
当然、国内フォルクスワーゲンの販売台数も減少し、国交省のチェックも厳しくなった。

ブランドイメージが大きく傷ついた状態で、さらにその原因となったディーゼルエンジンを導入するのは顧客の理解が得られないとフォルクスワーゲンは判断したようだ。

その間、世の中の状況は大きく変わっていく。
欧州で大人気だったディーゼル車の規制はより厳しくなり、その規制をパスさせるに多額のコストがかかるようになる。
当然、車両価格が高くなるディーゼル人気は急激に下降していく。

欧州で売れなくなってきたディーゼル車だが、日本では補助金などがあり、まだまだ売れる要素がある。
欧州で売れなくなったディーゼルだが、日本で少しでも売れれば、と考えるのは当然のことだ。

モデル末期になり、本来ならゆっくりと8代目ゴルフにフルモデルチェンジを待つ身であった7代目ゴルフ。
フルモデルチェンジ直前に、新たにディーゼルエンジンを投入したのは、多少なりともそんな大人の事情が複雑に絡み合っている。

フォルクスワーゲン ゴルフTDIの選び方

ゴルフTDIは、投入直後だがモデル末期であることもあり、お買い得な特別仕様車「Meister」が設定されている。
基本的には「Meister」を中心に選びたい。

ゴルフTDI特別仕様車「Meister」には、渋滞時追従支援システム“Traffic Assist”、駐車支援システム“Park Assist”や液晶デジタルメータークラスター“Active Info Display”などの先進安全装やナビを装着。
ハイライン系には、レザーシートにシートヒーターもプラス装備されている。かなり高額なオプションだった装備が標準装備化され、価格アップも抑えられているので非常に満足度の高い特別仕様車になっている。

価格は、ベース車に対して30万円ほど高額な設定だ。
しかし、これらの装備の総額は、従来だと70万円近い価格になっている。
単純に考えると、約40万円引きの価格設定ということになる。これを見逃す手はない。

そうなると選択肢は2つ。
コンフォートライン MeisterかハイラインMeisterかという選択だ。
レザーシートといった高級装備は必要無いというのであれば、コンフォートライン Meisterの3,539,000円で十分。その他の装備は、十分な満足できる内容だ。

ガソリン車のコンフォートライン系は、リヤサスペンションがトレーリングアーム式なのに対して、ハイラインは4リンク式になっていた。
乗り心地や走行性能面では4リンク式が上回る。
だが、ディーゼルエンジンをTDIでは、コンフォートラインでもリヤサスペンションは4リンク式。走行性能の差はない。

ゴルフTDI Meisterシリーズの値引き術

ただ、購入時に注意したいのが、ゴルフTDI特別仕様車「Meister」シリーズの値引きだ。

「特別仕様車Meister系は、かなりお買い得な仕様なので値引きはできません」などと言われると思わず納得してしまいそうだが、ここで引いてはダメ。
導入直後の値引きは確かに厳しいものの、モデル末期で1台でも多く販売台数を積み上げたいモデルでもある。少し購入タイミングを遅らせて、2020年1月あたりから商談するといいだろう。

2~3月は、自動車業界が最も忙しい繁忙期。買い手が有利な時期だ。
同じ輸入車で、メルセデス・ベンツAクラス、BMW1シリーズ、ボルボV40、国産車ならマツダ3、トヨタ カローラスポーツ(ハイブリッド)と競合させたい。
ジックリと商談して大幅値引きを勝ち取ることができれば、かなりお買い得感が出てくる。

フォルクスワーゲン ゴルフ/ゴルフ ヴァリアント価格、燃費などスペック

■ゴルフTDI

  • Golf TDI Comfortline:3,230,000円
  • Golf TDI Comfortline Meister:3,539,000円
  • Golf TDI Highline:3,620,000円
  • Golf TDI Highline Meister:3,910,000円

■ゴルフ ヴァリアントTDI

  • Golf Variant TDI Comfortline:3,370,000円
  • Golf Variant TDI Comfortline Meister:3,679,000円
  • Golf Variant TDI Highline:3,760,000円
  • Golf Variant TDI Highline Meister:4,050,000円

燃費、ボディサイズなどスペック

代表グレード:ゴルフTDI ハイライン

全長×全幅×全高 4,265×1,800×1,480mm
ホイールベース 2,635mm
車両重量 1,430kg
燃料消費率(WLTC モード) 18.9km/L
エンジン種類 直列4気筒 DOHC インタークーラー付ターボディーゼル
総排気量 1,968cc
最高出力 110kW(150PS)/3,500-4,000rpm
最大トルク 340Nm(34.7kgm)/1,750-3,000rpm
燃料タンク容量 53L
トランスミッション 7速DSG