マツダのフラッグシップセダン&ワゴンであるアテンザが、大幅改良され発売が開始された。
今回の大幅改良では、デザインや走行性能・静粛性・進化型エンジンの搭載など多岐にわたるものとなった。今回の改良について、マツダはフラッグシップモデルにふさわしい最新・最良の「走る歓び」を具現化したとしている。

この記事の目次 CONTENTS
マツダ アテンザの歴史
品格を失わない迫力あるデザインに
最新スペックのエンジンに変更
ボディ剛性強化で、快適な乗り心地と爽快な走りを提供
安全装備も進化!夜間も歩行者を検知できる自動ブレーキを標準装備化
マツダ アテンザの選び方
マツダ アテンザ/アテンザワゴンの価格

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

マツダ アテンザの歴史

現行マツダ アテンザのデビューは、2012年12月。このフルモデルチェンジしより、アテンザは3代目となった。マツダ新世代商品群の第2弾となり、「魂動(こどう)デザイン」が採用され、躍動感ある美しさのあるセダンとワゴンになった。

圧倒的な人気を集めた2.2Lディーゼルエンジン

デビュー時に搭載されたエンジンは、2.0Lと2.5Lの直4ガソリンと、2.2Lディーゼルエンジンの3タイプ。人気を集めたのは、2.2Lディーゼルエンジン。当時、420Nmという大トルクを誇り、セダンのATで20.0㎞/Lという低燃費を実現したことが、人気を集めた要因だ。このディーゼル車の人気が凄まじく、1ヶ月後の受注台数では、全体の76%を占めるほどだった。

2016年の改良でさらに進化

そして、2016年の改良では、新世代車両運動制御技術Gベクタリングコントロール、歩行者検知式自動ブレーキを含む先進予防安全装備、進化型ディーゼルエンジン、静粛性の向上が行われ、更なる進化を果たしている。

発売直後は好調だったが、その後販売台数は低迷

ディーゼル車人気で、発売直後のアテンザの販売状況は好調。しかし、好調だったのは、デビューから1年半ほど。その後は、ズルズルと販売台数は下降していく。ついに、1,000台/月売るのも厳しい状況が続き、直近では500台/月売るのも厳しい状況になっている。

セダンが売れない日本

こうした状況になっているのは、何もアテンザだけではない。今の日本マーケットは、セダンが非常に売れないのだ。ただ、アテンザはワゴンもボディももつだけに、もう少し売れてもいい。また、人気のディーゼル車は、ハイブリッド車並みの燃料経済性をもつのだが、そうしたメリットをしっかりと宣伝できていないなどのマイナス面もある。現在、アテンザの存在感はない状態だ。

セダン不人気でも販売台数を伸ばしたカムリ

ところが他車を見ると、セダンが売れないマーケットとはいえ、トヨタ カムリは予想を覆し大ヒットした。2017年度の販売台数は、26,127台で登録車販売台数ランキングで31位。なんと、クラウンに次ぐ順位となった。スタイリッシュで、ハイブリッドによる低燃費性能が評価された。ならば、アテンザもスタイリッシュで、ディーゼルエンジンによる優れた燃料経済性があるのだから、売れる要素が無いわけではないのだ。

まだまだセダンも売れるということをカムリは実証した。アテンザは、大幅改良によって得た優れたパフォーマンスを、どうやって顧客に伝えるかといのも重要な課題になりそうだ。

品格を失わない迫力あるデザインに

アテンザの大幅改良によるデザイン変更は基本的なフォルムは維持し、細部に変更が加えられ洗練さを増した。すぐに気が付く変更点は、ヘッドライトとグリル。ヘッドライトは、薄くワイドな造形により精悍さをアップ。グリルデザインは、立体感、骨格の強さ、重心の低さ、広がり感を強調した。単に押し出し感を出すのではなく、品の良さを生かしたまま睨みの効いたフロントデザインに変更している。

インパネデザインは質感もアップ

インパネデザインは、インパネとドアトリムのデザインを大幅に変更した。ワイド感とスピード感、そしてエレガンスさを表現。質感もアップしている。

シートデザインも一新

大幅改良ということで、シートもデザインを一新。シート全体で体を支え、絶妙なフィット感を実現した。さらに、人間が不快に感じる振動を遮断するウレタンを座面に採用し、ロングドライブでも快適なシートに仕上げた。

高級感のある内装に

レザー内装の上級モデルには、上質なナッパレザーシートや本杢(ホンモク)パネル、Ultrasuede®nu(ウルトラスエードヌー)など、最新で最良の素材を使用し、フラッグシップに相応しい高級感あふれる内装としている。

最新スペックのエンジンに変更

パワーユニット関連の改良では、最新タイプにアップデート。2.0Lの「SKYACTIV-G 2.0」は、新技術の採用により、全域で若干トルクアップを実現し、実用燃費を向上させている。燃費はセダンのJC08モードで16.6㎞/Lとなった。出力は156ps&199Nmとなっている。

SKYACTIV-G 2.5も燃費向上

低燃費技術である気筒休止技術を追加した2.5L「SKYACTIV-G 2.5」の出力は190ps&252Nm。このエンジンも日常域での扱いやすさと、実用燃費を向上させた。セダンのJC08モード燃費は14.8㎞/Lだ。

SKYACTIV-D 2.2 セダンのAT車は17.8km/Lに

人気の2.2Lディーゼルエンジン「SKYACTIV-D 2.2」は、「急速多段燃焼」技術などを採用し、静粛性も向上させながら、最高出力を175psから190psへとアップ。トルクを420Nmから450Nmへと向上させている。ディーゼルの燃費は、新たな燃費基準となるWLTCモード値で、セダンのAT車が17.8km/Lとなった。

ボディ剛性強化で、快適な乗り心地と爽快な走りを提供

アテンザの大幅改良では、フラッグシップモデルに相応しい上質な走行性能を得るため、まず、ボディを強化した。とくに、サスペンション取り付け部の局部合成を大幅に向上させている。ボディ剛性のアップは、サスペンションをスムースに動かすために有効な手法である。

このボディ剛性のアップにより、サスペンションセッティングを再設定。しかも、専用タイヤまで新開発した。新開発タイヤは、タイヤのサイドウォールをわずかに柔らかく設定。タイヤのサイドウォールが柔らかいと、バネ効果が発揮され細かな振動を吸収しやすくなる。

ただし、サイドウォールが柔らかいと、カーブなどで大きな力が加わると、サイドウォールの変形が大きくなり、操舵レスポンスが悪くなる。こうしたデメリットを解消するために、マツダはタイヤのトレッド剛性を高くすることなどで、従来タイヤと同等レベルのステアリングレスポンスを確保しながら、上質な乗り心地を手に入れている。

また、フロントウインドウやフロアパネルの板厚アップ、各ピラートリム内に吸音材などを追加するなどし、さらに静粛性を向上させた。

安全装備も進化!夜間も歩行者を検知できる自動ブレーキを標準装備化

予防安全装備では、夜間における歩行者認識が可能となった自動ブレーキを含む先進予防安全装備「アドバンスト・スマート・シティ・ブレーキ・サポート」を標準装備化した。
「アダプティブ・LED・ヘッドライト(ALH)」は、LEDブロックを20分割に細分化。ハイビーム照射性能と配光性能を進化させ、より緻密な照射範囲のコントロールを実現。

マツダ・レーダー・クルーズ・コントロールは全車速対応式に

そして、ロングドライブでのドライバーの疲労軽減役立つ「マツダ・レーダー・クルーズ・コントロール(MRCC)」が、渋滞時など停車状態からでも追従走行が可能な全車速対応式に進化。ようやく、高級車として一定レベルとなる装備となった。

サイド&カーテンエアバッグも標準装備

アテンザは、すでにサイド&カーテンエアバッグも標準装備しており、安全装備がより進化したことで、高いレベルの安全性能をもったクルマに仕上がっている。

マツダ アテンザの選び方

アテンザには、セダンとワゴンがあるので、まずはその選択から。より荷物を積んでアウトドアなどでも楽しみたい人は、当然ワゴンという選択肢になる。セダンは、オッサンのクルマ的なイメージが強いが、アテンザのデザインはスタイリッシュなので、オッサン臭は少ない。

四駆車は2.2Lディーゼルのみ

また、降雪地域に住んでいたり、ウインタースポーツをガンガン楽しみたいという人は、やはり4WDが必要となる。しかし、アテンザの4WD車は、2.2Lディーゼル車にしか設定がない。

エンジンは3種類

エンジンの選択肢は3つ。2.0Lと2.5Lのガソリンと2.2Lディーゼルが用意されている。市街地走行中心で価格重視というのであれば、2.0Lでも十分だが、アテンザの車格を考えるのであれば、少なくとも2.5Lガソリン車以上ということになる。

おすすめは2.2Lディーゼル

おすすめめは、大トルクと低燃費を両立した2.2Lディーゼル。価格は、ガソリン車に対して約41万万円も高価になる。
ディーゼルは低燃費であることと、燃料に使う軽油が安く燃料経済性に優れている。軽油はレギュラーガソリンより、20円/L前後も安い。さらに、燃費も良いので燃料費はガソリン車に対して大幅に安くなる。ハイブリッド車並みといってもいだろう。
しかも、補助金やエコカー減税など、非常に優遇されているのも魅力だ。ただ、それでもガソリン車に対して、約41万円も高価なので、その分を回収するには、かなり走行距離を重ねる必要もある。また、450Nmという大トルクは非常に魅力的で、アテンザの走りを十分に楽しめる。

20SとXDは安全装備が不十分

アテンザのグレード選びでは、まず20SやXDは外して考えたい。自動ブレーキなどは、高いレベルにあるものの、全車速追従式のクルーズコントロールや、車線維持を支援するレーンキープ・アシスト・システムが装備されていないからだ。高級車の装備としては物足りない状態。とにかく、価格優先という人以外は、あまりおすすめできるグレードではない。

PROACTIVEをベースに検討を!

グレード選びでは、まずPROACTIVEをベースに考えると良いだろう。PROACTIVEと最上級グレードのL Packageとの装備差は、パワーシートやヒーター、シートベンチレーション、Boseサウンドシステム、19インチホイール、ナッパレザーシートなどなどと、かなり多岐に渡る。そのほとんどが、豪華装備の差となっている。車両の価格差は、なんと約58万円にもなる。

よほどの豪華装備好きでなければ、PROACTIVEの装備で十分といったところ。もう少し豪華装備が欲しいというのであれば、一部の豪華装備はオプション装着が可能だ。

マツダ アテンザ/アテンザワゴンの価格

アテンザの価格は以下の通り。

グレード 駆動方式 トランスミッション 価格
20S 2WD AT 2,829,600円
20S 2WD AT 2,959,200円
25S L Package 2WD AT 3,542,400円
XD 2WD AT 3,240,000円
XD 2WD 6MT 3,294,000円
XD 4WD AT 3,477,600円
XD 4WD 6MT 3,531,600円
XD PROACTIVE 2WD AT 3,369,600円
XD PROACTIVE 2WD MT 3,423,600円
XD PROACTIVE 4WD AT 3,607,200円
XD PROACTIVE 4WD MT 3,661,200円
XD L Package 2WD AT/MT 3,952,800円
XD L Package 4WD AT/MT 4,190,400円