<デビューから4年で、二度目の大幅改良は〇か☓か?>

マツダアテンザマツダは、セダンとワゴンという2タイプのボディをもつアテンザを改良し、発売を開始した。

アテンザは2012年11月にフルモデルチェンジした。アテンザは、デビューから約1年後の2013年11月に一部改良が施された。さらに、それから1年後の2014年11月に大幅改良が行われている。この改良では、安全装備が進化。内外装デザインの変更に加え、静粛性の向上や足回りの変更による走行性能の向上を図られた。インパネ周りのデザインも刷新。7インチのカーナビのディスプレーが独立して配置され、マツダコネクトをコマンドコントローラーと合わせて、全車に標準装備した。センターコンソールには、電動パーキングブレーキのスイッチが配置された。

さらに、外観デザインも変更。フロントグリルはフィンを強調し、シグネチャーウイングを立体的にした。やや押し出し感が出て、今時の人気セダンに共通する迫力を得た。上級グレードには、LEDシグネチャーウィングを採用され、夜間でもひと目でアテンザであることをアピールする。

これほどまでの大きな変更は、マイナーチェンジでも珍しいレベル。デビューから、わずか2年でここまで変更するのか? と、思えるほど。クルマそのものは確かに大きく進化した。しかし、それ以前のモデルに乗る顧客にとっては、あまりに短い期間での大変更は衝撃的。顧客のマインドを落胆させた。こうしたやり方は、賛否両論といえるだろう。

そんな大幅変更があったことから、アテンザはしばらく大人しくしていた。しかし、CX-3やアクセラに新技術が搭載されたことを受け、アテンザも同様の変更が加えられた。

<歩行者検知式の自動ブレーキが装備化。上級セダンに相応しい安全性能を得た>

マツダアテンザ今回の改良で、最も注目したい点は、歩行者検知式の自動ブレーキが標準装備化されたことだ。従来のアテンザでは、歩行者を検知することができなかったので、安全性能は飛躍的に進化した。このシステムは、アクセラの改良時に採用されたものと同じもので「アドバンスト・スマート・シティ・ブレーキ・サポート(アドバンストSCBS)」と呼ばれている。

このシステムは、フォワード・センシング・カメラが使われており、検知対象を車両のみから、歩行者にまで拡大。車両検知の作動速度域も従来の約4~30km/hから、約4~80km/hまで広がっている。歩行者検知は約10~80km/hで作動。他のシステムに比べ、やや高めの車速からでも歩行者を検知し自動ブレーキを作動させることができる。このクラスの輸入車では、すでに歩行者検知式の自動ブレーキは、標準装備が当たり前となっている。ところが、国産車ではまだ装備されているものが少ないのが現状。そうした点でアテンザは、優れた安全性能をもっているといえる。

また、カメラを使っていることから、速度制限・進入禁止・一時停止の交通標識等を読み取り、アクティブ・ドライビング・ディスプレイに表示するほか、制限速度超過をディスプレイ内のグラフィック点滅やブザー警告でドライバーに通知する新開発の「交通標識認識システム(TSR)」も採用されている。また、アクセルとブレーキの踏み間違えを防ぐ誤発進抑制制御も用意されている。

<新技術G-ベクタリングコントロールは、人馬一体というよりは・・・。ディーゼルエンジン車は、静粛性やレスポンスが向上>

マツダアテンザ走行性能面では、新開発されたG-ベクタリングコントロールが全車に標準装備化された。この機能は、なかなか分かりにくい。ドライバーのハンドル操作に応じてエンジンの駆動トルクを緻密に変化させることで、横方向と前後方向の加速度を統合的にコントロールするというもの。タイヤの接地荷重を最適化して、自然で滑らかな車両挙動を実現する制御技術だ。特に降雪、降雨時などの滑りやすい路面でより高い効果を発揮し、操縦安定性を向上。乗員にかかる加速度の変化をより滑らかにつなぐことで、体の揺れが減り、乗り心地も改善するという。

ただ、こうしたタイヤの接地荷重コントロールは、上手いドライバーは自ら行っている。運転に興味が無く、運転が下手なドライバーが運転する車に同乗者にとってはありがたい機能と言える。ただ、微妙なのは、マツダは「人馬一体」という運動性能のコンセプトを持つ。こうした制御でクルマが勝手に制御してくれるのであれば、人馬一体というよりは、賢い馬に乗せられているダメ人間となる。ドライバーの成長を促してくれない制御ともいえる。そう考えると、この制御はいつでもどこでもというより、ドライバーがONとOFFを選べるスイッチくらい欲しい。

アテンザでは、最も人気の高い2.2Lクリーンディーゼルエンジンも、アクセラと同様な進化を遂げた。過給圧の制御を最適化し、より細かな燃料噴射を可能にしたことで、エンジンのトルク応答をより緻密にコントロールする「DE精密過給制御」を採用。アクセル操作に対するクルマの反応がやや遅れていた軽負荷領域においても、ドライバーの意思に沿った一体感のある走りが実現。

マツダアテンザまた、ガラガラとしたディーゼル特有のノック音を低減した。このノック音の原因であるエンジン燃焼による圧力波と部品の共振による圧力波に着目。特に音量が大きい周波数別に静粛性を向上させる「ナチュラル・サウンド・スムーザー」と「ナチュラル・サウンド・周波数コントロール」を採用。ディーゼルの不快な音を低減し静粛性を高めている。

アテンザは、マツダにとってフラッグシップモデルでもある。そのため、高級感を向上させるため、静粛性や振動の低減も図られている。車両の隙間からの騒音の侵入を徹底的に抑制するとともに、フロントドアガラスの板厚アップやトップシーリングの吸音材面積の拡大により、遮音・吸音性能を向上。フロントドアガラスに遮音ガラスを採用。ロードノイズと風騒音を大幅に低減し、静粛性を向上(L Packageのみ)。

さらに、L Packageには、よりラグジュアリー感もプラスされている。シート素材は上質でしっとりした滑らかな触感の高級素材ナッパレザーを採用。インパネデコレーションパネルやドアトリムスイッチ、シフトパネルは専用カラーでコーディネートし、パワーシートスイッチ、グローブボックスのノブも専用加飾で高品質感を演出した。このグレードは、かなり高級感がアップしており、価格相応のクオリティを得ている。

<アテンザのお勧めグレードは、XD PROACTIVEにオプションのセーフティ・クルーズ・パッケージをプラスした組み合わせ>

マツダアテンザマツダ アテンザの価格は2,764,800円から。クリーンディーゼル車の中間グレードXD PROACTIVEは3,277,800円。最上級のXD L Packageは3,774,600円となっている。XD L Packageの4WD車は4,001,400円となり、なんと400万円台に突入した。

アテンザの選び方。マツダ車は、その昔「マツダ地獄」と呼ばれたほど、リセールバリューが悪かった。それが新世代商品群に切り替わり、一般的なリセールバリューか、車種によっては中の上くらいのレベルに上がってきている。アテンザも同様で、その中でも、リセールバリューが良いのがクリーンディーゼル車だ。また、セダンよりワゴンの方がリセールバリューが高い。リセールバリューを主眼に置くと、ワゴンのクリーンディーゼル車を選ぶことがベースとなる。ただし、乗り潰すという人にとっては、リセールバリューは関係ないので、自分の好きなものをチョイスするといい。

グレード選びは、PROACTIVEを中心に考えたい。XDグレードでは、ブラインド・スポット・モニタリング(BSM)などがオプションでも選ぶことができず、安全装備面で少々物足りない。PROACTIVEでも物足りない装備がある。レーダークルーズコントロールなどは、長距離走行での必須アイテム。こうしたやや足りない装備は、セーフティ・クルーズ・パッケージとして設定されているので、このオプションを選択すればいい。これで、ほぼ十分に満足いく仕様になる。オプション価格は75,600円と、それほど高くないのでお勧めだ。

マツダは、国内販売は値引きゼロ戦略のため低迷中だ。アテンザは、とくに売れていない。それでも、値引きゼロで勝負してくる。とはいえ、交渉次第で多少の値引きは引き出せる。時期的には7月と3月が繁忙期なので、この時期に買うと値引きが引き出しやすい。さらに、カムリやアコードといったハイブリッド車を競合させてみるといいだろう。さらに、フォルクスワーゲン パサートやBMW320d(クリーンディーゼル車)の中古車などの輸入車を入れてみるのも効果的だ。いわゆるアテンザのライバル車に当るため、タイミングが良ければ一定の値引きが引き出せる。値引き額が思うように出なくなったら、用品系のサービスに切り替えてみるといいだろう。

■マツダ アテンザ セダン/ワゴン価格

<FF(前輪駆動)>
・20S 6EC-AT 2,764,800円
・20S PROACTIVE 6EC-AT 2,867,400円
・25S L Package 6EC-AT 3,364,200円
・XD 6EC-AT 3,175,200円/6MT 3,229,200円
・XD PROACTIVE 6EC-AT 3,277,800円/6MT 3,331,800円
・XD L Package 6EC-AT/6MT 3,774,600円
<4WD>
・XD 6EC-AT 3,402,000円/6MT 3,456,000円
・XD PROACTIVE 6EC-AT 3,504,600円/6MT 3,558,600円
・XD L Package 6EC-AT/6MT 4,001,400円