日産は、中国で行われた北京モーターショーで、新型のEV(電気自動車)となるシルフィ ゼロ・エミッションを初公開した。この新型シルフィ ゼロ・エミッションは、リーフのプラットフォームや電動パワートレインを使ったセダン。急加速し始めた中国のEV戦略に対応する日産の切り札となる。

この記事の目次 CONTENTS
初公開されたシルフィ ゼロ・エミッション!
急加速する中国のEV戦略
日本メーカーでは、日産が有利か

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

初公開されたシルフィ ゼロ・エミッション!

日産は、中国・北京で行われた北京モーターショーで、新型シルフィ ゼロ・エミッションを初公開した。

この新型シルフィ ゼロ・エミッションは、EV(電気自動車)だ。細かいスペックなどは公開されていないが、プラットフォームや電動パワートレインなどをリーフと共通化していることは分かる。

中国マーケットを意識したプロポーション

しかし、単純に5ドアのリーフをセダンにしたという訳でもなさそうだ。

よく見ると、Aピラーから後ろは全く異なるデザインなっている。中国マーケットが好むロングホイールベース化されている。そのためか、やや腰高感のあるリーフだったが、セダンのシルフィ ゼロ・エミッションになると、なかなか伸びやかで美しいプロポーションになっている。空気抵抗を意識したのか、ルーフ形状はクーペ風で流麗なラインが魅力的だ。

ただフロントフェイスは、充電口が中央にありカバーの切れ込みが非常に目立つ。やはり顔の真ん中に充電口というのは、デザイン的にマイナスだ。

急加速する中国のEV戦略

今回の北京モーターショーでは、多くの自動車メーカーがたくさんのEVを出展。EVモーターショー的ともいえる状態だった。突然、EV色が強くなってきているのには訳がある。

これは、中国のしたたかなEV戦略にある。中国は、2019年には「新エネルギー車ポイント」を10%、2020年には12%とすることを義務づける政策をとる。

中国が展開するポイント制とその狙いは

このポイント制においては、EVが5ポイント程度でPHEVが2ポイントとカウントされる。そして生産100万台規模のメーカーなら、2019年の10%というゴールを達成するためには10万ポイント獲得が義務となるのだ。

10万ポイントをEVで獲得するとなると、10万ポイント÷5ポイントで2万台の生産が、PHEVなら10マンポイント÷2ポイントで5万台の生産が必要になる。

一見すると、環境を意識した制度にも見える。しかしこの制度の恐ろしいのが、ポイントが未達だとペナルティが課せられるという点。ポイント未達のメーカーは、ポイント達成したメーカーから、余剰ポイントを買い取る必要があるのだ。

中国でのEV&PHEV生産台数の内、約9割が中国メーカーが占める。現状では、ほぼ中国メーカーはポイント制を楽々クリアできる状態だ。対して、日本を含めた外国メーカーのほとんどは、現状のままならポイントの達成が困難。このままだと、中国メーカーからポイントを買わなくてはならないのだ。

ある意味、政策で海外メーカーに中国メーカーのEV開発資金を出させる、そんな手法にも見て取れる。そんな政策があって、2018年北京モーターショーはEVショーの様相を呈しているのだ。

日本メーカーでは、日産が有利か

そんな恐ろしいEV政策が行われる中、日本メーカーでは日産がやや有利な状況だ。日産は、すでに世界で一番売れている量産EV、リーフをもつ。重要なのは、マーケットで鍛えられてきた点だ。リーフは、何度も改良を加えてきており信頼性は高い。リチウムイオンバッテリーの発火事故もゼロだという。

この信頼性の高さは、中国メーカーのEVを上回るのは確実で、シルフィ ゼロ・エミッションがマーケットで販売されれば、高い競争力を発揮するだろう。日産は、こうしたメリットを生かし、より中国での存在感を発揮していくだろう。