ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

最新技術を搭載してデビューした5代目レジェンド

ホンダの最上級セダンであるレジェンをがマイナーチェンジし発売が開始された。

現行レジェンドは、5代目で2015年にフルモデルチェンジした。5代目レジェンドは、国内ではハイブリッドのみの設定となっている。このハイブリッドシステムが、まさにホンダテクノロジーの粋を集めたもの。3モーターハイブリッドシステム「SPORT HYBRID SH-AWD」が採用されたのだ。

この技術は、車体前部に1つ、後部に2つ配置された計3つのモーターとエンジンを使う。ドライバーの要求や走行状況に応じて、前輪駆動、後輪駆動、4輪駆動の3つの駆動方式を自動で選択する。またEV、ハイブリッド、エンジンという3つの走行モードの中から、最適な駆動方式と最もエネルギー効率の良い走行モードを自動で制御する。

鋭いハンドリング性能も魅力的だった

レジェンドは、単なる4WDのハイブリッド車ではない。リヤに搭載した2つのモーターにより優れた運動性能を発揮する。後輪に設置された2つのモーターにより、駆動力に加え減速力をも左右それぞれで自在に制御するトルクベクタリングを可能とした。この制御により、優れた車両の安定性や回頭性能を誇るクルマになっている。このシステムを使い、スーパーカーであるNSXはフロントを2モーターとし、他のスーパーカーにはない切れ味鋭いハンドリング性能を得ている。

もちろん、ハイブリッド車なので燃費は良好。V6 3.5Lエンジンながら、16.8km/Lという低燃費を実現。モーターの出力が加わったシステム出力は、なんと382psにもなる。

そして、安全面では世界初となる歩行者への衝突回避を支援する「歩行者事故低減ステアリング」などもある先進予防安全装備「Honda SENSING(ホンダ センシング)」も搭載した。

しかし販売は振るわなかった

ホンダ レジェンドは、これだけのハイテクを満載しながら、デビュー当時の価格は6,800,000円とリーズナブルな価格設定となった。

ただし、価格が安くハイテク満載だからと言って、このクラスのクルマがそう簡単に売れることはなかった。レジェンドは、デビュー直後から販売面では低迷。これは、クルマの出来が悪いということではない。

販売台数の低迷は、主にホンダの営業戦略にあった。日本マーケットは、セダンの人気が無い状態が長く続いていた。ホンダもそうした傾向に合わせ、セダンモデルを縮小。日本マーケットようにほとんどセダンを用意してこなかった。4代目レジェンドが生産を中止してから5代目レジェンドが投入されるまで、約3年放置されていたのだ。

ホンダはセダン顧客を失っていた

ホンダ自らが日本国内のセダン販売を諦め、売れるミニバンと軽自動車にしか新型車を投入してこなかったことから、セダンの顧客はドンドン流出。ホンダには軽自動車とミニバンの顧客ばかりになってしまったのだ。

こうした顧客層にしてしまったのはホンダ自身。そのため、自社の顧客からの買い替えはほとんど期待できない状況。こうした高級車の場合、営業が顧客をガッチリと囲み込んでいるので、新規で高級車の顧客を誘引するには、非常にハードルが高い。ホンダは、高級セダンの顧客を放置してきた結果、ツケが回った状態になってしまったのだ。

こうした販売環境ということもあり、マイナーチェンジされたホンダ レジェンドの販売目標は、なんと年間1,000台と非常に少ない台数となった。月販100台に満たない販売台数だ。この数字からも、ホンダの国内営業が完全に販売面で手詰まり状態になっているのかが分かる。1000万円を超えるレクサスLSの月販販売目標は600台。この差は大きい。

今回のマイナーチェンジで大きくデザイン変更

今回のマイナーチェンジでは、外観デザインが大きく変更されている。レンズが宝石の輝きを思わせる「ジュエルアイLEDヘッドライト」はそのままだが、デザインを大幅に変更。フロントグリルやバンパーも新デザインに変更された。

大幅変更されたフロントフェイスは、ヘッドライトやグリルなど、縁取りしたようなデザインとなった。マイナーチェンジ前のデザインもかなり個性的だったが、さらにアクの強いフェイスデザインになっている。マイナーチェンジ前の顔とは、まったく異なる顔になった。

リヤビューもリヤツインフィニッシャーが採用されスポーティさをプラス。また、新デザインのテールランプは。より立体感と高級が増したデザインに変更されている。

マイナーチェンジで、これほど大きくデザインを変えるということは、マイナーチェンジ前のモデルのデザインが不評であったということを感じさせる。好評なデザインである場合、マイナーチェンジでは大きくデザイン変更することはない。

レジェンドのデザインは、良くも悪くも個性的で好き嫌いが明確になりそうだ。マイナーチェンジ後のデザインが、マーケットでどう評価されるかにも注目したい。

使い勝手が向上も高級セダンとしては当たり前

インテリアデザインは、それほど大きな変更は無い。ただ、シートデザインは大きく方向性を変えてきた。マイナーチェンジ前は、サイドサポートが少ないどちらかというとラグジュアリー感あるシートだった。マイナーチェンジ後は、サイドサポートをより強くした。これは、ドライバーのホールド性を高めスポーツドライビングにも対応できるようにしている。

またインテリジェント・パワー・ユニットも小型化された。バッテリーなどをリヤシートまわりに搭載している関係上、レジェンドのトランクは、ガソリン車と比べると小さい。しかし今回の改良により、トランク容量は13L拡大され414Lとなり、使い勝手はより向上した。

また、パワートランクも追加されている。ただ、これくらいの装備は、もはやこのクラスでは当たり前の装備といえる。

走りの質感・安全性もアップ

レジェンドは、高級セダンという価値だけでなく「SPORT HYBRID SH-AWD」がもたらすスポーティな走りと低燃費性能が魅力だ。燃費性能はトップレベルということもあり、マイナーチェンジでは走りの質感をアップさせるための改良が施された。

走りの質感を向上させるために、まず、ボディが強化が行われた。ボディー骨格に構造用接着剤を塗布範囲を拡大した。構造用接着剤は、ボディ剛性を高めるための手法のひとつで、最近ではよく使われるようになったテクノロジーだ。

ドライバーズカーとしての高い完成度

ボディ剛性がアップすると、よりサスペンション性能などを生かせるようになる。この強固なボディを生かすため、各部のセッティングを変更。ドライバーが「意のまま」と感じられるようなハンドリング性能と上質な乗り心地を実現した。

同時に、エンジンと3つのモーターで4輪の駆動力を自在に制御するSPORT HYBRID SH-AWDをさらに熟成した。こうした改良により、レジェンドはドライバーズカーとしての価値をさらに高めた。

ホンダセンシングもさらに進化

安全装備面では、先進予防安全装備であるホンダセンシングが進化した。ホンダセンシングには、トラフィックジャムアシスト(渋滞運転支援機能)をホンダ車として初搭載。高速道路などの渋滞時、0km/hから約65km/hまでの速度域で前走車との車間を保ちながら、自車の走行車線をキープする。ドライバーの運転負荷を軽減は、事故の確率を下げるメリットもある。ただ、こうした機能は、このクラスの高級車ではもはや当たり前の機能だ。

レジェンドは、新車より中古車がお得?

ホンダ レジェンドは、販売が低迷したため中古車としての流通量は少ない。まず、見つけることが大変だ。また、リセールバリューがやや低めなので、乗り潰すつもりで購入したほうがよい。短期での乗り換えには向かないクルマだ。

割安な中古車市場

ただ、リセールバリューが低いということは、中古車で割安ということになる。レジェンドは、ハイテクが満載の高級車でクルマとしての性能は素晴らしい。

2015年式の中古車は、350~470万円と幅が広くバラツキがある。ざっくり400万円くらいの予算があれば、程度の良いモデルが十分に選べる。新車価格が約700万円。約3年で300万円も安くなっている。高級車なので、経年劣化も小さいのでなかなか買い得感があるので中古車という選択も悪くない。

ホンダ レジェンド価格、スペックなど

■ホンダ レジェンド価格:7,074,000円

ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) 5.030×1.890×1.480mm
ホイールベース[mm] 2,850mm
車両重量[kg] 1,990kg
総排気量[cc] 3,471cc
システム全体出力[kW(ps)]/システム最大トルク[N・m/rpm] 281(382)/463
ミッション 7速DCT
JC08燃料消費率[km/l] 16.4km/l