この記事の目次 CONTENTS
ブランドを牽引するミニ クロスオーバー
日本ではほぼ全域でEV走行が可能!
軽快で楽しい走り
走行性能と環境性能を両立
完成度が高い一台

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

ブランドを牽引するミニ クロスオーバー

2代目ミニ クロスオーバーは、もはやミニとはいえないくらい大きくなった。今回試乗したミニ クーパーS E クロスオーバー ALL4 のボディサイズは、全長4315×全幅1820×全高1595mm。このボディサイズは、もはやCセグメントのSUVであるメルセデス・ベンツGLAやBMW X1と同じクラスに属する。

従来のミニファンにとっては、もはやミニではないと感じるかもしれない。しかし、ボディサイズを大きくしたことで、新たな顧客層を取り入れることに成功し、ミニブランドはさらに勢いを増している。

その結果、ミニは、プレミアムコンパクトと呼ばれるジャンルで成功。多くのプレミアブランドが、このジャンルに参戦するも苦戦。もはや、ミニだけが、このプレミアコンパクトで唯一成功したブランドといえる。

日本ではほぼ全域でEV走行が可能!

ミニ クーパーS E クロスオーバー ALL4のパワーユニットは、1.5L直3ターボエンジンに電気モーターを加えたもの。ミッションは6速ATだ。

最高出力はエンジンのみで、136馬力で220Nmのトルクを発揮。このエンジンに、88馬力&165Nmというモーターの出力がプラスされる。

PHEVなので、通常時はEVとして走る。EV走行時は、走り方によって航続距離は大きく変化するが、カタログ値では満充電で約42.4km走行が可能。最高速は124km/hとなる。

EVならではの快適さ

EVでの最高速が124㎞/hということもあり、日本ではほぼEV走行が可能。クルージング状態で100㎞/h程度なら、エンジンが始動することはほとんどないくらい。この時の車内は、EV走行していることもあり静粛性は高く快適だ。

実際のEV航続距離は、さすがに42.4㎞まではいかなかったが、都心からアクアライン海ほたるPAまでの35㎞程度は、ほぼEVで走行できた。実際の電費もカタログ値とそれほど大きな乖離がないようだ。

EV走行するために必要な電力は、200Vの普通充電器で充電する。空の状態から約3時間で満充電となる。

軽快で楽しい走り

ミニ クーパーS E クロスオーバー ALL4は、なかなかおもしろい走行パターンをもつ。後輪側にモーターを設置しているので、EV走行時は後輪駆動になる。ミニは4WDを除くと、ほぼ前輪駆動車だ。後輪を駆動して走るミニ。気持ち的に違和感があるのだが、意外なほど後輪駆動でのミニは楽しい。

後方に大きなリチウムイオン電池とモーターが設置されたこともあり、重量バランスは他のクロスオーバーとは大きき異なる。アクセルをグッと踏んだ時に、しっかりとリヤに荷重がかかり、後ろから前に押し出される感覚はなかなか力強い。フロントタイヤで駆動していないことも加わり、車重はやや重いものの軽快感もある。

レスポンスの良さも魅力

アクセルをさらに強く踏み込むと、1.5Lターボエンジンが始動しイッキに加速。ターボエンジン特有のターボラグを瞬時に最大トルクを立ち上げるモーターがアシストしていて、非常にレスポンスの良いクルマに仕上がっていた。

ミニ クーパーS E クロスオーバー ALL4 のAUTO EDRIVEモードでは、後輪駆動や前輪駆動、そして4輪駆動を最適に使い分けて走行する。バッテリーの残量が7%未満になると、20㎞/h以下の低速や中速域でのクルージング状態のみEV走行になる。

走行性能と環境性能を両立

ミニ クーパーS E クロスオーバー ALL4は、リチウムイオン電池を搭載したことにより、ディーゼルエンジン車よりボディ剛性がアップしたようにも感じだ。より重くなっているのにもかかわらず、大きな凸凹でもボディとサスペンションは、しっかりと衝撃を吸収。硬めのサスペンションセッティングながら、乗り心地は快適だ。

カーブでは、このサスペンションの硬さが絶妙なフットワークを魅せる。やや背の高いクロスオーバーなのに、カーブではほとんどクルマが傾かない。重心の高さを感じさせない走りは秀逸。普通のミニのようなゴーカートフィールが、背の高いクロスオーバーなのに楽しめる。
 
ステアリング操作に対するクルマの反応は絶品。しっかり感があり、路面のうねりや凹凸などといった状況がステアリングを通して手に伝わってくる印象だ。走れば走るほど、クルマと一体化していくような雰囲気を感じた。

見た目はクロスオーバーなのに、走りの味はスポーツモデル。PHEVというと、エコカー的イメージが強いが、ミニ クーパーS E クロスオーバー ALL4は単なるエコカーとは大きく異なる。環境性能を大きく伸ばしながら、新たな走る楽しさも提案するモデルだ。

完成度が高い一台

ミニ クーパーS E クロスオーバー ALL4は、クルマを毎日使うような人に合う。平日の通勤や送り迎えなど、通常時はPHEVの魅力を生かしゼロエミッション生活。環境維持に貢献しながら、ランニングコストを低減。1日の移動距離が短い人にとっては、ほぼガソリンを使わない生活が可能だ。

また、休日のロングドライブでも、目的地で充電するなどしながら環境維持に貢献しランニングコストを低減。同時に、走る楽しさを十分に堪能できる。

この優れたランニングコストの経済性とモータードライブの楽しさを体感すると、もう普通のガソリン車など買いたいとは思えなくなるほどだ。

また、歩行者検知式自動ブレーキを含む先進予防安全装備も標準装備化されているので、安全面でも安心だ。

価格が高いのだけがネック

ミニ クーパーS E クロスオーバー ALL4は、粗を探すのが困難なほど高い完成度を誇る。その中で、強いて難点を上げるならば、それは価格だ。

価格は479万円からと非常に効果。これに、ちょっと贅沢なオプションを選択すると600万円近い価格になる。まぁ、これだけ高価なら、完成度も高くて当たり前。しかし、価格なりの満足感を十分に与えてくれる数少ない1台だ。