この記事の目次 CONTENTS
安全装備を充実!特別仕様車プリウスS“Safety Plus”
販売不振でお買い得な特別仕様車を設定!
予防安全装備を軽視した結果の販売不振?
誕生20周年記念「20th Anniversary Limited」

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

安全装備を充実!特別仕様車プリウスS“Safety Plus”

トヨタは、Cセグメントに属する人気ハイブリッド車であるプリウスを一部改良した。同時に、お買い得な特別仕様車S“Safety Plus”、S“Safety Plus・Two Tone”を設定。さらに、期間限定の特別仕様車Aプレミアム“ツーリングセレクション・20th Anniversary Limited”も投入された。20th Anniversary Limitedの受注期間は、12月下旬まで(販売店により異なる)とした。

新しく設定された特別仕様車S“Safety Plus”、S“Safety Plus・Two Tone”は、プリウスのエントリーグレードである「S」をベースとしたモデルだ。

特別仕様車の特徴は?

この特別仕様車の特徴は、安全装備を大幅に向上させていること。通常のSグレードは、駐車場などにおけるアクセルペダル踏み間違い時の衝突被害軽減に寄与する先進の安全機能インテリジェントクリアランスソナーがオプションでも装備できなかった。

特別仕様車では、この機能を標準装備。さらに、オプション設定だった歩行者検知式自動ブレーキを含む先進予防安全装備「トヨタセーフティセンスP」、シンプルインテリジェントパーキングアシスト、LEDフロントフォグランプなどを特別装備している。従来のSグレードに対して、大幅に安全性能を向上させている。さらに、ナビレディセットも特別装備した。

そして、S“Safety Plus・Two Tone”は、内外装の随所にブラック加飾を施し、より個性的な仕様としている。ボディカラーは、ツートーン仕様でルーフ色をアティチュードブラックマイカ、ボディ色はホワイトパールクリスタルシャイン(特別設定色・オプション)の組み合わせなど、全3色の組み合わせを設定している。

新設定された特別仕様車の価格はS“Safety Plus”で2,607,120円。ベースのSが2,479,091円なので、約13万円高となった。オプション設定のあるトヨタセーフティセンスPの価格が86,400円。ナビレディセットが32,400円なので、その他プラスされた装備を考えると、かなり買い得感がある価格設定となった

販売不振でお買い得な特別仕様車を設定!

トヨタは、あまり買い得感のある特別仕様車は投入しない傾向が強い。特別感はあっても、価格はそれなりという仕様が多い。しかし、今回投入された特別仕様車S“Safety Plus”は、かなり買い得感がある。これは、かなり稀なことだ。

トヨタが珍しくお買い得な特別仕様車を設定したのには訳がある。それは、販売台数面でかなり厳しい状況に追い込まれているからだ。現行プリウスは、2015年に登場。まだ、1回目のマイナーチェンジさえ行われていない新しいモデル。

相変わらず新車販売台数ナンバー1!

しかし、2017年4~9月の販売台数は78,707台。相変わらず新車販売台数ナンバー1という人気車なのは変わらない。しかし、台数という面では、前年比57.6%にまで落ち込んでいる。

ハイブリッド車のラインアップが増え、プリウスではないハイブリッド車の選択肢があるので、トヨタ内でのカニバリが発生している。販売台数が落ちるのは仕方のないこと。それは、トヨタの営業サイドも十分織り込み済みだろう。ただ、前年比57.6%まで落ち込んだとうのは、想定外だったのだろう。

予防安全装備を軽視した結果の販売不振?

トヨタの予想を超えたプリウスの販売不振の理由は、やはりやや高めの価格設定があげられる。他のモデルを含め、プリウス以外の選択肢が増えた以上、割高感のベーシックな5ドアHBでは決定的な購入動機にはなりにくい。

また、好き嫌いが出てもより個性的なデザインを重視したことも、ここに来て裏目に出ているようだ。プリウスのデザインが好きという顧客に売りつくした感もある。プリウスのデザインに対して、少々微妙と感じている顧客が他車に流れているようだ。

そして、エントリーグレードのSが、あまりにも安全装備が貧弱で高価だったことも大きな理由だろう。トヨタは、安全装備に対して後ろ向きの装備設定が目立つ。

予防安全装備を充実させた特別仕様車

ホンダは軽自動車のN-BOXに歩行者検知式自動ブレーキを含む先進予防安全装備「ホンダセンシング」を標準装備。しかし、プリウスのSグレードは、歩行者検知式自動ブレーキを含む先進予防安全装備「トヨタ セーフティセンスP」がオプション設定。軽自動車以下の予防安全性能となる。

しかも、アクセルとブレーキの踏み間違えに効果のあるインテリジェントクリアランスソナーは、オプションでも装備でいないという状況。安全装備を充実したモデルを選ぼうとすると、豪華装備も標準装備化された上級グレードのAを買うしかなかった。これでは、販売不振になるのも当然だ。

そこで、今回特別仕様車として、予防安全装備を充実させ買い得感のある特別仕様車S“Safety Plus”を投入し、なんとか販売台数を挽回したいのだろう。

誕生20周年記念「20th Anniversary Limited」

買い得感で勝負に出た特別仕様車S“Safety Plus”とは対照的なのが、プリウス誕生20周年を記念した特別仕様車Aプレミアム“ツーリングセレクション・20th Anniversary Limited”だ。

この特別仕様車は、上級グレード「Aプレミアム」をベースとした。215/45R17のタイヤ&アルミホイールなど“ツーリングセレクション”の装備に加え、外板色には、特別設定色ツートーンボディカラーとした。ルーフ色アティチュードブラックマイカとボディ色ホワイトパールクリスタルシャインの組み合わせと、ボディ色エモーショナルレッド(オプション)の組み合わせの全2タイプを設定。エクステリアは、ブラックスパッタリング塗装を施したアルミホイールなど、随所にブラックを配色し、外板色とのコントラストを際立たせた。

インテリアはより高級感をアピール!

インテリアは、シート表皮に、ホワイトのプレミアムナッパレザーを採用。また、随所にブラック加飾を施し、フロントコンソールトレイには、ピアノブラック加飾に艶と輝きを保つ自己治癒7クリヤーを採用し、より高級感をアピール。さらに、アクセントに専用レッド加飾を施したサイドレジスターなどが採用されている。

利便性の高い装備では、11.6インチのT-Connect SDナビゲーションシステムを特別装備。オリジナル加飾を施した専用スマートキー、専用車検証入れ(プレミアムナッパ本革仕様)を設定。20周年記念ならではの小物も用意して、特別感を出している。

特別仕様車Aプレミアム“ツーリングセレクション・20th Anniversary Limited”の価格は3,850,000円となかなか高額な価格設定になっている。Aプレミアムツーリングセレクションが3,199,745円なので、約65万円も高額だ。ただし、355,320円のナビが標準装備。シートやインテリアの質感も大幅に向上している。

これを高いか安いかという判断は、プリウスというクルマがどれだけ好きかということによって大きく変わりそうだ。Cセグメントのクルマということを考えると、一般的な人にはお勧めしにくい特別仕様車だが、プリウスを愛してやまない人にとっては満足感が高い1台になるだろう。

プリウスは、こうした特別仕様車のほか、一部改良も行われた。ピアノブラック加飾のフロントコンソールトレイを採用し高級感をアップ。プリウスPHVにも採用されている大型11.6インチのT-Connect SDナビゲーションシステムを設定し、視認性・操作性を向上。T-Connect DCMパッケージと合わせている。価格は、驚きの据え置き。こうした部分にも、プリウスの厳しい状況を感じるとることができる。