非日常感で存在感をアピールするアメリカンラグジュアリークーペ


IMG_8376レクサスブランドの歴史は浅い。高級車ブランドとして1989年に登場したレクサス。高級車ブランドといいながら、当時は多くのトヨタ車と同じ車両が使われていた。高級車ブランドながら、特別感がないのが特徴だった。そのため、レクサスブランドの日本導入後も鳴かず飛ばず状態を続ける。

レクサスNX登場で徐々にレクサスらしさを表現され始める

ところが、SUVのレクサスNXが登場した頃から、徐々にレクサスらしさが表現されてきた。未だトヨタブランド車と基幹部分を共用されている車種も多いが、デザインではトヨタブランドとは大きく異なる道を進んでいる。

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レクサスLC登場でさらにデザインが昇華

レクサスらしいデザインが、最近レクサス車の人気を支える秘密でもある。そんなレクサスデザインが昇華したともいえるのが、レクサスLCだ。長いボンネットに小さなキャビンというクーペデザインの定番といえるスタイルをもつ。こうしたクラシカルなデザインながら、各部のディテールはレクサスらしい斬新さが満載。キレのある線の中に、微妙な面とが共存。複雑なカタチを生み出している。

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ラグジュアリーな空間でちょっとアートっぽい仕上がり

レクサスLCインテリアは、まさにラグジュアリーな空間。日本車らしい精緻で質感の高い素材と、非日常感がある。ちょっとアートっぽい仕上がりは、レクサスの狙いだろう。

こうした内外装の複雑なパーツ類は、量産の工業製品としてはかなり高いレベルに達している。このあたりの生産技術は、トヨタの強みだ。

先鋭的なデザインだが、環境性能は進化ないまま


レクサスLCまず、最近では珍しいV8 5.0L自然吸気エンジンを搭載したLC500に乗った。このエンジンは、477ps&540Nmというパワーとトルクをもつ。2トン弱というやや重いボディであっても十分な出力だ。

先鋭的なデザインで、乗ってみたいと思わせるデザインをもつLC500だったが、まずスペックをみてガッカリした。このエンジンには、未だアイドリングストップ機能が無い。RC Fにも搭載されているエンジンで、その前には2008年に登場したIS Fに搭載されているやや旧式のエンジンだ。多少進化しているものの、環境性能は進化無し。ハイブリッド車で環境をアピールしながら、もう一方ではアイドリングストップ機能が無い大排気量車を普通に売る姿勢は共感できない。

走り出すと「ああ、昔のクルマ」って感じのフィーリングだ。10年前なら凄い! と思うが、電動化が当たり前の現代において、未来感は一切ない。内外装のデザインとは全く逆の超古典的なエンジンだ。燃費も7.8㎞/L。まさに、ガソリンが安いアメリカ向けのクルマだ。

古典的だが、走りの質はよく高速道路でも安定

レクサスLCただ、古典的とはいえ、走りの質は良い。10数年ぶりともいえる新開発のFR用のプラットフォームは低重心で、クルマのバランスは良い。高速道路でも非常に安定している。乗り心地は、タイヤのゴツゴツ感がやや伝わってくる。ラグジュアリークーペの快適性というよりは、スポーツクーペ的。よりスポーティな走りを楽しみたい人なら、納得できるだろう。

超古典的なエンジンを助けているのが、出来の良い10速AT。通常走行時は、いつシフトチェンジしているのか分からないくらいスムース。そんなジェントルさを持ちながら、ひと度アクセルを全開にしてみると、ちょっとしたシフトショックを演出しながら、スポーツ走行している雰囲気をドライバーに伝えてくれる。アクセル操作に対するダイレクト感もバッチリで、トルコンが滑るような感覚はなかった。このミッションは秀逸だ。

有段式ハイブリッドシステムで普通のAT並みのダイレクト感を出す


レクサスLC今ひとつ、納得できなかったV8 5.0LのLC500に乗った後、V6 3.5LハイブリッドのLC500hに乗った。このハイブリッド車は、有段ギヤを使った新型のハイブリッドシステムを使う。ハイブリッド車は、ラバーバンドフィールと呼ばれ、エンジンの回転が先に高まり後から速度が上がっていくというフィーリングにダイレクト感がないことからそう呼ばれている。北米や欧州では、こうしたフィーリングが嫌われていて、ハイブリッド車が苦戦した経緯もある。そこを改善したのが有段式のハイブリッドシステムなのだ。

最近のハイブリッド車でも、随分改良されラバーバンドフィールは無くなってきたが、有段式になったことで、もはや普通のAT並みのダイレクト感が出ていた。また、より高速域でもエンジンを停止することができ、EV走行できる速度域が広くなっている。

日本の高速道路の速度域なら、頻繁にエンジンが停止しクルージングが可能。こうした瞬間がLC500hがラグジュアリークーペとしての価値を最大限にアピールする。

静粛性を増し、オーナーの心とお金のゆとりを感じる


レクサスLCとにかく、静かな空間だ。僅かに聞こえるタイヤや風切り音も、オプションの高級オーディオのマークレビンソンから奏でられるサウンドによりほぼ消える。心地よいサウンドに酔いしれ、座り心地の良いシートに身を沈めながら、ゆったりとクルージング。速く走れるクルマなのにあえて、ゆっくり走りたくなる。贅沢な時間の使い方だ。1,300万円超というクルマを走らせることができるオーナーの心とお金のゆとりをわずかながら感じることができた。

燃費値より、環境に優しいクルマに乗っているという社会性が重要


LC500hの燃費は15.8㎞/Lと優れた燃費値を誇る。このクラスのクルマを買うオーナーにとって、燃費値はそれほど重要ではない。より環境に優しいクルマに乗っているという社会性が重要。もはや、世界的な課題であるCO2の排出量減に、クルマの選択だけでも協力するという姿勢は誇るべきものだ。レクサスもそうしたアイドリングストップ機能さえない古典的なV8 5.0Lエンジンなどを搭載したモデルをいつまでも売り続けていては、ブランド面でマイナスになるだろう。

レクサスLC価格


レクサスLCの価格は以下の通り。

レクサスLC500価格


・レクサスLC500 13,000,000円
・“S package” 14,000,000円
・“L package” 13,000,000円

レクサスLC500h価格


・レクサスLC500h 13,500,000円
・“S package” 14,500,000円
・“L package” 13,500,000円

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執筆者プロフィール
クルマ評論家 CORISM代表
大岡 智彦 氏

CORISM(http://www.corism.com/)編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員。


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