スズキは、コンパクトSUVエスクードに、新エンジンである1.4L直噴ターボを搭載しモデルを追加し、発売を開始した。

この記事の目次 CONTENTS
コンパクトSUVながら、タフネス感あふれるエスクード
エスクードは四駆のみ
日本マーケットに合わせ、レギュラーガソリン仕様に
外観デザインは若干の変更あり
安全装備はようやく一定レベルになったが物足りない
スズキ エスクードのおすすめグレードは1.4ターボのみ
スズキ エスクードの価格

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

コンパクトSUVながら、タフネス感あふれるエスクード

スズキ エスクードは、2015年10月にデビュー。今回のフルモデルチェンジで4代目となる。エスクードは、ボディサイズの割にはかなか立派に見えるデザインが採用されているのが特徴。エスクードのボディサイズは、全長4,175×全幅1,775×全高1,610mm。全長こそ、コンパクトカーの日産ノートよりやや大きい程度。しかし、全幅はかなりワイドで全高も高い。そのため、意外と立派に見え存在感もある。

日産ノートよりもやや大きい程度だが、車高に注意

この短い全長もあり、4WDのみの設定ながら、最小回転半径は5.2mと小さい。全幅が広いため、狭い道での多少気を使うものの、日本でもまずまずの扱いやすさをもつコンパクトSUVといえる。しかし、全高は1,610㎜と高い。これだけ高いと、都市部に多い全高制限1,550㎜の立体駐車場には入ることができないため、都市部では少々不便なところもある。

エスクードは四駆のみ

スズキには、エスクードに近いボディサイズをもつコンパクトSUVのSX4 Sクロスがある。SX4 Sクロスは、FF(前輪駆動)車と4WD車が用意されているが、エスクード4WDのみの設定だ。エスクードにも、安価なFFモデルが欲しいところだ。

このエスクードとSX4 Sクロスは、日本で生産されているモデルではない。エスクードは、グローバルモデルとして開発されていて、スズキのハンガリーにある子会社、マジャールスズキ社で生産され欧州などでも販売されているのだ。そのため、日本には輸入車として販売されている。

日本マーケットに合わせ、レギュラーガソリン仕様に

エスクードに搭載された直4 1.4L直噴ターボエンジンは、なかなかパワフルだ。出力は、136ps&210Nmとなっていて、最大トルクは自然吸気2.0Lエンジン車と同等以上だ。車重は1,220㎏とやや軽いこともあり、かなり力強い走りが楽しめるだろう。

評価したいのは、この1.4Lターボエンジンがハイオクガソリン仕様ではなくレギュラーガソリン仕様であるということだ。
エスクードは、ハンガリーのマジャールスズキで生産され、欧州各地に送られている。欧州のベーシックなガソリンでエンジンの仕様を決めると、日本ではハイオクガソリン仕様になってしまうのだ。

仕向地に合わせた仕様変更はとても重要

スズキには、コンパクトカーのバレーノがある。このモデルは、1.0Lターボエンジンが搭載し同じくハンガリーから輸入されている。そのため、この1.0Lエンジンは、なんとハイオク仕様のままなのだ。欧州仕様をそのまま日本に持ち込んだためだ。

日本では、価格が高いハイオク仕様のクルマは敬遠される傾向が強い。多くの自動車メーカーは、それを理解していてダウンサイジングターボをもつ、レヴォーグの1.6Lターボやステップワゴンの1.5Lターボなどは、日本マーケット用にレギュラーガソリン仕様にしてあるのだ。
こうした仕向地に合わせた仕様変更は、とても重要。メーカーの都合で、顧客に無駄な負担を強いることは好ましくない。当然、そうしたクルマは売れない。

外観デザインは若干の変更あり

エスクードは、単に1.4Lターボが加わっただけでなく、若干仕様が変更されている。まず、外観は1.4Lターボと1.6Lとではグリルが異なる。1.4Lターボは5スロットタイプだが、1.6Lはフィンタイプ。足まわりでは、1.4Lターボが17インチアルミホイールでブラック塗装となった。

安全装備はようやく一定レベルになったが物足りない

残念なのは、安全装備の差別化がされていることだ。安全装備は、クルマの基本的な機能なので、どのグレードであっても同じにする必要がある。

1.4ターボには、歩行者検知式自動ブレーキではないのが少々物足りないが、1.6L車と同様に衝突被害軽減システム「レーダーブレーキサポートⅡ(RBSⅡ)」を標準装備。さらに、ロングドライブ時にドライバーの疲労軽減に役立つアダプティブクルーズコントロール(ACC)も標準装備している。
そこに、1.4ターボでは、さらにサイド&カーテンエアバッグを標準装備。これで、ようやく一定レベルの安全性能を持ったクルマになった。

スズキ エスクードのおすすめグレードは1.4ターボのみ

スズキ エスクードの選び方。エスクードは、1.4ターボの一択しかない。今時、サイド&カーテンエアバッグが装備されていないクルマは安全とは言いにくいからだ。
せめて、1.6Lにはオプションで設定できるようにすればいいのだが、これにはスズキ側の都合がある。

グローバルモデルであるがゆえの不自由さ

エスクードは、ハンガリーから輸入さていることから、日本生産車のように多様なオプション設定がしにくいのだ。長期間かけて船で運ばれてくることから「こんな仕様が売れるだろう」という見込みでいっきに輸入するため、売れ残ると困るのだ。そのため、使用はシンプルでボディカラーも少なく、オプション設定など無い仕様になる。これは、効率よく売りたいという完全にメーカーの都合だ。

他の欧州メーカーも同じような販売形態をとるが、もっと選択肢の幅は大きい。こうした選択肢の無さによる一方的な仕様が、結果的にハンガリーから輸入するモデルが売れない理由になっている。輸入車でも、コンパクトカーでここまで選択する自由がないクルマは珍しい。

スズキ エスクードの価格

スズキ エスクード1.4ターボ 価格:2,586,600円

効率を求めた結果、1.4Lターボの価格は2,586,600円となった。
この約259万円という価格は、コンパクトSUVの中ではかなり高価。やや装備が異なるとはいえ、輸入車ではシトロエンC3 SHINEが239万円。マツダCX-3の2.0Lガソリン車で20S PROACTIVE 4WDが約251万円という価格になっている。効率よく販売したいというメーカーの都合を押し付けるのであれば、せめて顧客には価格メリットを示して欲しい。