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先代と同様なコンセプトを踏襲した3代目XVがついに登場
2代目のXVは、初代インプレッサXVからインプレッサ名が外されXVとなった。ややオンロード重視だった初代に対して2代目XVは、最低地上高を200㎜とし、オフロードでも十分に対応できる性能をもったモデルになった。それでいて、全高は1,550㎜に抑え日本に多い立体駐車場の高さ制限内とした。こうすることで、都市部に住み立体駐車場を使う顧客にも購入できるような配慮がなされた。普段は都市部で使い勝手重視。そして、レジャーなどいざとなれば本格的なオフロード性能を発揮できるモデルとしての価値をもったクロスオーバー車としたのだ。
また、この2代目XVはAWDにこだわった。AWDの設定しかなく、2.0Lエンジン+AWDのみの設定。FFモデルを用意すれば、より販売台数を伸ばすことも可能だったのに、あえてAWDにこだわる姿勢は、いかにもスバルらしいものだった、また、モデル途中からは、2.0Lハイブリッド車が追加された。
ハイブリッド車なし! 1.6Lと2.0Lガソリン車のみ。燃費性能面では、やや物足りなさも
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ただし、搭載されるパワーユニットが若干変更されている。まず、ハイブリッド車が無くなり、1.6Lエンジンが追加された。ベースとなるエンジンは、インプレッサと同じ。水平対向4気筒の1.6L(115ps&148Nm)と2.0L(154ps&196Nm)の2タイプとなった。このエンジンの燃費値は、1.6Lが16.2㎞/L。2.0Lが16.4㎞/L(2.0i-L EyeSight)もしくは、16.0㎞/L(2.0i-S EyeSight)となっており、燃費値に関しては、それほど大きな進化はみられない。この燃費値では、やや物足りなさを感じる。
もちろん、スバルも新型XVやインプレッサの燃費値ではいつまでも売れないことは百も承知。インプレッサや新型XVに採用された新型プラットフォームであるSGP(SUBARU GLOBAL PLATFORM)は、電動化に対応する設計が施されている。そのため、インプレッサやこの新型XVにハイブリッドモデルやPHV、EVなどが登場する可能性も高い。
すでに、スバルはトヨタと提携し、トヨタのハイブリッドシステムを使うことを公表している。先代XVで1モーター式のハイブリッド車を投入したが、このハイブリッドシステムはお蔵入りになるようだ。スバルのハイブリッドシステムは、今のところ詳細は不明。エンジンは、スバルの独自性をアピールするため水平対向エンジンが採用される可能性も高い。
ただし、ハイブリッドシステムにすればなんでも燃費が上がるというものではなく、エンジン単体の燃費性能も非常に重要。プリウスは、最大熱効率40%という優れた低燃費エンジンを採用しているからこそ超低燃費を実現している。スバルには、こういった優れた熱効率を誇るエンジンが未だ姿を現していないことから、こうしたエンジンの存在有無も気になるところだ。
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SUVルックのアクティブさと、カラフルなボディカラーで魅せるカジュアルさの対比がXVならではの世界観
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新型XVの魅力は、こうしたワイルドになった外観と鮮やかでポップなボディカラーの組み合わせにある。鮮やかボディカラーは、SUVとは無縁のように感じるが、コンパクトクロスオーバー車ならなかなか魅力的に見える。スキー場やキャンプ場などでも、ひと際目立つだろう。フルモデルチェンジにより、「クールグレー・カーキ」と「サンシャイン・オレンジ」と呼ばれるボディカラーを新たに採用した。
XVのインテリアデザイン
インテリアのデザインも基本的にインプレッサと同様だ。ブラックとグレーを基調とし、インテリアの各所にオレンジステッチをアクセントとして加え、XVらしい遊び心を表現し差別化している。また、シートは4種類のシートトリムを設定。表皮やステッチにこだわりスポ―ティさと遊び心を感じさせるものとした。
積載性が高いXVの荷室
ラゲッジルームは、インプレッサ同様ワゴン車で鍛えた高い積載能力が魅力。XVはハッチバックスタイルだが、ショートワゴンともいえる高い積載性が魅力だ。このクラスでは、ゴルフバッグを横済みできるクルマは数少ないが、新型XVは開口部も広く積載が可能。ゴルフだけでなく、スポーツやアウトドアなど趣味や仕事などに徹底的に使える。
全グレードに世界トップレベルの安全性能を与えたスバルの高い安全意識
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「アイサイト(ver.3)」が標準装備化
まず、重要な歩行者検知式自動ブレーキを含む先進予防安全装備「アイサイト(ver.3)」が標準装備化。車線中央維持機能、ACC(全車速追従機能付クルーズコントロール)、後側方の車両と接触を回避するためのスバルリヤビークルディテクションも用意された。ステアリング連動ヘッドランプ、ハイビームアシストも用意
また、夜間でよりワイドな視界を確保するために、ステアリング連動ヘッドランプを採用。コーナーや交差点で、ステアリング操作に合わせてヘッドランプ光軸を左右に動かし車両の進行方向を照射し夜間の視認性を向上。さらに、アイサイトのステレオカメラを生かし、先行車や対向車などの灯火を検知して、ハイビームとロービームを自動で切り替えるハイビームアシストも用意した。7つの保護用エアバッグを標準装備!
そして、衝突安全装備では、歩行者保護エアバッグに前面衝突時にドライバーの下肢へのダメージを軽減する運転席SRSニーエアバッグを採用。従来からのデュアルSRSエアバッグ、側面衝突時に乗員を保護するためのSRSサイドエアバッグ+SRSカーテンエアバッグも含め、合計7つの乗員保護用エアバッグを標準装備した。自動車は、扱い方を誤ると人や同乗者を殺める。誰も積極的に加害者や被害者になりたいと願う人はいないが、クルマに乗る以上そのリスクは100%回避することはできない。自動車メーカーは、そうした商品を売っている。現在、そうしたリスクを回避するための技術があり、安価な価格になってきている。本来ならば、人を殺める可能性があるクルマを製造するメーカーは、自らの責任としてこうして積極的に装備する必要がある。しかし、多くの自動車メーカーが車両が高くなるなど、自分たちの都合ばかりが先行し、命を守る装備を標準装備化しない傾向が強い。これは、交通死亡事故を引き起こす商品を売っておきながら、使っている顧客が悪いとし、自らの責任を放棄しているのに等しい。
こうした傾向を考えると、新型XVやインプレッサがこうした安全装備を標準装備化したことは、自らの責任と社会貢献を果たしたと言っていい。オプション化して、顧客の財布の中身次第にして責任を放棄しているメーカーは、スバルを見習うべきだろう。もちろん、スバルもすべてのクルマが、こうした装備を標準装備化している訳ではない。今後、こうした姿勢を全車種に展開できるようになるかも注目したい。
オフロードでのAWD性能をさらに引き上げるX-MODEを搭載!
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また、高い走破性能をさらに磨き上げた。SUVのフォレスターにも装備されていたAWD性能を高めるX-MODEが、新型XVにも採用された。X-MODEは、エンジン・トランスミッション・AWD・VDCを統合制御。4輪の駆動力やブレーキなどを適切にコントロールすることで、悪路や滑りやすい路面、下り坂も安心して走ることができる。外観は、オシャレな都会派のクロスオーバー車。しかし、見た目とは裏腹に、悪路ではSUVも驚く本格的な悪路走破性をもつクルマに仕上がっている。
XVの価格予想!
さて、新型スバルXVの価格は、現在不明。1.6L車が登場したことから、エントリーグレードの価格は若干下がると予想できる。ベースのインプレッサが、やや買い得感のあるクルマに仕上がっていることもあり、先代XVをはるかに超えるような価格にはならないだろう。インプレッサは、国内でそれほど人気があるカテゴリーではないため、リセールバリューが高くなる可能性は低いが、クロスオーバー車の新型XVはSUV人気もあり、高いリセールバリューになる可能性が高い。リセールバリューを重視し、インプレッサかXVかという選択なら、XVを選ぶ方が良いだろう。
スバルXV プロトタイプスペック
スバルXVのスペック情報は以下の通り。
1.6L/2.0L共通
全長×全幅×全高
|
4465×1800×1550mm
|
---|---|
ホイールベース
|
2670mm
|
最低地上高
|
200mm
|
トランスミッション
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リニアトロニック
|
駆動方式
|
AWD(常時全輪駆動)
|
サスペンション形式[前/後]
|
ストラット式/ダブルウィッシュボーン式
|
1.6i EyeSight/1.6i-L EyeSight
エンジン 排気量
|
1.6ℓ DOHC 16バルブ デュアルAVCS
|
---|---|
最大出力[ネット][kW(PS)]
|
85(115)/6200
|
最大トルク[ネット][N・m(kgf・m)]
|
148(15.1)/3600
|
燃費[km/ℓ](社内測定値)
|
16.2
|
タイヤサイズ
|
225/60R17
|
2.0i-L EyeSight/2.0i-S EyeSight
エンジン 排気量
|
2.0ℓ DOHC 16バルブ デュアルAVCS 直噴
|
---|---|
最大出力[ネット][kW(PS)]
|
113(154)/6000
|
最大トルク[ネット][N・m(kgf・m)]
|
196(20.0)/4000
|
燃費[km/ℓ](社内測定値)
|
16.4(2.0i-L EyeSight) 16.0(2.0i-S EyeSight)
|
タイヤサイズ
|
225/60R17(2.0i-L EyeSight)/225/55R18(2.0i-S EyeSight)
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執筆者プロフィール
クルマ評論家 CORISM代表 大岡 智彦 氏CORISM(http://www.corism.com/)編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員。