新しいデジタルサービスが次々と生まれている中国。そんな中国の民営自動車メーカーである吉利汽車(ジーリーオートモービル)が、新ブランド「Lynk&Co.」の拠点を上海に設立して世界的に注目を集めています。その最大のセールスポイントは、今や定番となりつつあるサブスクリプションやカーシェアリングの概念を、クルマそのものに取り入れていること。新ブランドとして初めて発表されたコンパクトSUV「01」を皮切りに、若い世代を取り込んでいくことを目指しているようです。

  1. 新型車「01」の注目ポイント

  2. ・インターネット接続が全車標準装備

  3. ・カーシェアリングのアプリも全車標準装備ボルボのノウハウを活用したデザインや技術

  4. ・カーシェアリングの世界的なIT有力企業が開発に協力


コネクテッドカーとは


最近、耳にする機会も多いコネクテッドカーとは、インターネットなどのネットワークに接続したクルマを指します。クルマに取り付けられたセンサーを通じてクルマの走行データや路面状況など様々なデータを取得。それをネットワークを通じて集積・分析することで、交通事故の緊急通報や車両情報の把握などに活用ができるのではないかと、現在、高い期待が寄せられています。

そんなコネクテッドカーの新たな一歩となるであろうニュースが、吉利汽車による「Lynk & Co.」設立です。2017年4月に上海で設立される同社は、2017年の秋には中国で、さらに2019年にはヨーロッパやアメリカでもクルマの発売を予定しているとのことです。

発売第1号はボルボ製のエンジンとデザインのコンパクトSUV


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「Lynk & Co.」が手掛ける最初のモデルは「01」と呼ばれるコンパクトSUV。中国国内での製造を予定しているとのことですが、そのデザインは、吉利汽車が2010年に買収したボルボのデザイナーによって手掛けられており、2016年秋に披露されたその姿はどこかボルボの「コンセプト40.1」を感じさせる仕上がり。また技術面でもボルボのノウハウをベースに開発するとのことなので、ボルボの代名詞でもある高いデザイン性と安全技術を備えたモデルになることが期待されています。

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搭載されているエンジンは1.5リッターの直列3気筒と、2.0リッターの直列4気筒で、こちらもボルボ製。「Lynk & Co.」のクルマは「01」も含めて全てハイブリッドまたはプラグインハイブリッド車を予定しています。また、完全な電気自動車も登場する可能性があると言われており、この辺りにもボルボの高い技術力が活きてくることが予想されます。

ボタンひとつで自分のクルマを貸し出し?!


しかし「Lynk & Co.」の最大の注目ポイントは、”born digital”であること。つまりコネクテッドカーを前提としたブランドであり、クルマもデジタルの時代に合わせて作られているということでしょう。

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そのため、インターネットに接続しており、クルマ同士の通信によって様々な情報と便利な機能が使えるのは当たり前。「自分が乗らない時間もクルマを有効活用したい」と思ったら、コンソール上に作りつけられたボタンを押すだけで、クルマを貸し出すことができます。
この動画ではその様子をイメージできます。

https://youtu.be/qydaNhBUOp8

デジタルキーとアプリによって実現されたそのコンセプトはまさに「Airbnb」のクルマ版。シェアリングエコノミーを前提に開発された一台といえるでしょう。また、その技術開発に当たっては、IT関連有力企業であるアリババやエリクソン、マイクロソフトなどが協力をしているといわれており、今後は更に先進的な機能も期待できそうです。


「Lynk & Co.」のビッサー副社長は「自動車業界は、クルマをより”connected”(インターネットにつながった状態)にしようとしています。他方でIT業界は、自動車産業に進出しようとしています。」と自動車業界に留まらない、各社のコネクテッドカーへの注力と開発競争について語りました。その上で、アップルが車を作ろうとしてうまくいかなかったことも引合いに出し、 「様々な技術とノウハウが必要なクルマ作りは簡単なことではありません。 携帯電話にクルマとしての役割を足すよりも、自動車をインターネットに繋げる方が、遥かに容易なのです」と成功への自信をのぞかせています。


支払い方法は月々定額のサブスクリプション方式


そんな「Lynk & Co.」は2021年までに4種類のモデルを発売することを予定しており、この「01」はその第一弾。販売に当たってはテスラ同様、ディーラーを排除して価格を抑えることを考えているといわれています。


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また頭金なしの、定額サブスクリプションのような購入方法も用意されているといわれており、既存の自動車業界に捉われない新しい販売方法を取り入れることで、特に若い世代の獲得を狙っているようです。
2010年にフォードからボルボ・カーズを買収。2014年にはブラジル進出。更に2017年にはプロトンとの提携交渉にも一度は名乗りを上げた吉利汽車。「Lynk & Co.」はそんな吉利汽車にとって、新たな方向性を探る第一歩となることは間違いないでしょう。


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