スズキ スペーシアは、スーパーハイト系に属する軽乗用車。そのスペーシアに、力強さと大きく迫力のあるフロントマスクを特徴とした新機種「スペーシア カスタムZ」が追加設定され、2016年12月26日より発売開始した。

この記事の目次 CONTENTS
1.スズキ スペーシアってどんな車?
2.販売面で大苦戦。売れない理由は「カスタムの顔」?
3.まさに、背水の陣!?大胆フェイスチェンジだけでなく、実質値下げ
4.相変わらず脆弱な安全装備
5.スズキ スペーシアカスタムZ価格

ライター紹介

221616 編集部

世の中の自動車ニュースとは一味違う視点でスローニュースを発信。編集部員はクルマ初心者からクルマをこよなく愛するマニアまで幅広いメンバーで構成。全国のガリバーで売れている中古車や車のスタッフレポートなど、生の情報をお届け中。

1.スズキ スペーシアってどんな車?

2013年に登場したスズキ スペーシア。スペーシアは、スーパーハイト系と呼ばれるカテゴリーに属するモデル。全高が1,700㎜を超え非常に背が高く両側スライドドアを持っているのが特徴だ。今や軽自動車で最も売れているクラスとなっている。

同カテゴリーの売れ筋はホンダ N-BOX、ダイハツ タント

この人気カテゴリーで最も売れているのが、ホンダN-BOXだ。すでにモデル末期で2017年にはフルモデルチェンジする予定。燃費はライバルに対して、大敗しているものの値引きが大きいことや広大な室内スペース、デザインが評価されていて、モデル末期ながら軽自動車ナンバー1のセールスを記録している。

そのN-BOXを追って軽自動車ナンバー2の販売台数を誇るのが、ダイハツ タント。ライバル車に無い左側のBピラーレスとしたミラクルオープンドアにより、使い勝手を大幅に向上させていて高い人気を得ている。

スーパーハイト系は、この2車が圧倒的によく売れていて、スズキ スペーシアは大きく引き離されているのが現状だ。2016年の累計販売台数は81,277台。N-BOXシリーズは186,367台も売っており、スペーシアはN-BOXの40%程度しか売れていないのが現状だ。

セールス結果では分からない、スペーシアの優れた性能

こうしたセールス結果を見ると、スペーシアが性能や使い勝手面で劣っているように感じる。ところが、性能面では、まったく逆。スペーシアは、マイルドハイブリッド機能を持ち32.0㎞/Lというクラストップの低燃費性能を誇り、スズキの優れた軽自動車技術により、クラストップの軽量ボディを誇っている。なんと、N-BOXより60kg前後も軽いのだ。

車重が軽いと、燃費だけでなく走行性能にも大きく影響を与える。ライバル車の自然吸気エンジンを搭載したモデルは、車重が重いためやや物足りない動力性能となるが、スペーシアは車重が軽いこともあり自然吸気エンジンでも十分な動力性能を得ているのだ。

2.販売面で大苦戦。売れない理由は「カスタムの顔」?

クルマがもつ動的性能という部分では、N-BOXやタントより優れている部分をもつスペーシア。しかし、なぜこれほどまでにライバルとの販売台数差が開いてしまったのか。

マーケットのニーズと合わなかったデザイン

その大きな理由のひとつが、デザインだと言われている。スペーシアは、あまりに万人受けを狙いすぎたのか、平凡すぎて存在感が無いイメージが強い。とくに、決定的な差となったのがカスタム系だった。スペーシアカスタムは、ほどよくスポーティでデザインとしての完成度も高い。標準車が地味なため、カスタムのデザインが標準車でもいいと思うくらいだった。
しかし、マーケットはデザイン性を求めている訳ではなかったのだ。マーケットが求めていたカスタム系のデザインは、とにかく大きく見える強面迫力系で目立つこと。そうしたニーズとスペーシアカスタムのデザインは、残念ながらマッチしなかった。

強面の顔に存在感をアピールしたライバル車

逆に顧客ニーズに上手く応えているのが、タントやN-BOXとなる。とにかく大きく見える強面の顔にし、存在感をアピール。さらに、タントなどは、LEDのパーツを惜しみなく使い、ギラギラ感を出し夜間でも目立つ仕様とした。

3.まさに、背水の陣!?大胆フェイスチェンジだけでなく、実質値下げ

こうした理由から、売れる顔にした新グレードがスペーシア カスタムZということになる。カスタムZは、なんと、ボンネットフードの位置を高くし、まず大きな顔にしている。そこに、専用のディスチャージヘッドランプ、LEDイルミネーション、大型メッキフロントグリル、フロントバンパーなどの専用装備が加わった。まさに、売れる顔の王道を行くフェイスチェンジだ。

上質感を演出したインテリア

そして、インテリアもスペーシア カスタムZの雰囲気に合わせ、ブラックを基調にした精悍な印象の内装となった。随所にチタンシルバーの加飾を施すことで上質感を演出している。ベージュ内装は、明るく広々とした印象を与えて魅力的なのだが、こうしたカスタム系は保守的なブラック内装の人気が高い。

オプション設定で利便性を高めた装備

さらに、後席右側ワンアクションパワースライドドアなどの快適装備を充実させた「ユーティリティパッケージ」、前後左右4カ所に設定したカメラで車両周辺の映像を映し出す「全方位モニター付メモリーナビゲーション」、ステレオカメラ方式の衝突被害軽減システム「デュアルカメラブレーキサポート」などをメーカーオプションを設定し利便性の高い装備や安全装備を充実させた。

4.相変わらず脆弱な安全装備

なかなか魅力的な仕様となったが、自動車の基本性能である安全装備に関しては脆弱なままだ。歩行者検知式自動ブレーキである「デュアルカメラブレーキサポート」が標準装備化されていない。

スズキは安全装備を積極的に標準装備化するべき

クルマは扱い方を間違えると凶器になる。いつ誰がどこで、ちょっとしたミスで加害者になるか分からない。同様に被害者になる可能性もある。誰もが事故を起こしたくはない。
すでに安価でリスクを減らすための装備があるのなら、凶器となる可能性がある製品を製造して販売する自動車メーカーは、積極的に標準装備化し交通事故を減らすための努力をする責任がある。オプション装着として、責任を顧客に負わせるという手法は賛同できるものではない。せっかくの素晴らしい技術が、多くの人の役に立たないのでは、なんの意味も無い。

また、軽自動車は横幅が狭いので、側突に関しても乗員を守る必要がある。しかし、スペーシアにはサイドエアバッグの設定がなく、オプションで選択することもできず褒められた仕様ではない。

ライバル車より安価で買い得感のある価格設定

そして、注目の価格は1,490,400円からとなった。燃費は30.6㎞/L(FF)で、ターボ車が26.8㎞/L。この価格は、従来のスペーシアカスタムに対してだけでなく、ライバル車に対しても安価な設定になっている。かなり買い得感がある設定となった。

万全を期してスーパーハイト系マーケットに挑む!

スペーシア カスタムZの投入で、スズキはこのクラスで起死回生を狙っている。さすがに、タントやN-BOXのように1万台超/月の販売は見込んでいないようだが、スペーシアシリーズで8,500台/月という目標を掲げた。
現在、平均7,000台/月程度なので、20%アップの販売台数となる。売れる顔にし、価格も下げたスペーシアカスタムZ。もはや、売れない言い訳ができない状況。まさに、背水の陣で、スーパーハイト系マーケットに再び挑む。

5.スズキ スペーシアカスタムZ価格

スズキ スペーシアカスタムZの価格は以下の通り。

グレード 駆動 価格
カスタムZ 2WD 1,490,400円
4WD 1,611,360円
カスタムZ ターボ 2WD 1,598,400円
4WD 1,719,360円