ダイハツ トール、トヨタ  ルーミー/タンクダイハツはトール、トヨタはルーミー/タンクとそれぞれコンパクト トールワゴンである新型車の発売を11月9日より開始した。

■ダイハツが企画・開発・生産の全てを担って、トヨタに供給するコンパクトトールワゴンが誕生


この新型ダイハツ トール、新型トヨタ ルーミー/タンクは、ダイハツが企画・開発・生産の全てを担い、小型乗用車では初めて、トヨタ全チャネルへのOEM供給するモデルだ。

新型トール、ルーミー/タンクの全長は3,700mmとなっている。このボディサイズは、アクアなどのコンパクトカーよりさらに小さい。トヨタでは、パッソ(3,650mm)などと同じクラスだ。このトール、ルーミー/タンクは、パッソ/ブーンをベースとしたモデル。

このクラスのコンパクトカーは、非常に厳しい販売状況となっている。ボディサイズ的には、軽自動車と競合。価格は軽自動車並みとはいえ、維持費では軽自動車が優れる。そうしたことからも、なかなか販売面では厳しいマーケットになっている。

そんなマーケットで、比較的安定した販売台数を確保していたのがスズキ ソリオだ。高い全高をもつコンパクトトールワゴンというクラスに属しており、古くは軽自動車のワゴンRのボディを大きくし、1.0Lエンジンを搭載したワゴンR+から地味にスズキがマーケットを育ててきた。

ダイハツ トール、トヨタ  ルーミー/タンクソリオの販売は好調。2016年4~9月の販売台数は24,516台となり、前年153.3%と高い伸びを見せている。登録車の新車販売台数ランキングでは15位と大健闘。スズキの登録車でトップとなっており、燃費不正問題で販売が伸び悩む軽自動車を補うカタチとなっている。

■スズキソリオに対抗し、トヨタの営業力を全力投球している


そんなスズキに対して、トヨタも同様な車種でbBがあった。しかし、設計が古く燃費面などで顧客へのメリットが提示できなくなり、少し前にこのクラスから撤退した。一時、このクラスから撤退したトヨタだが、ダイハツとの関係強化をより明確にした新型トール、ルーミー/タンクという3車種を送り出した。なんと、トヨタの全チャネルで扱う。この圧倒的な営業力で、コンパクトトールワゴンクラスの顧客を根こそぎ奪う作戦だ。

トヨタとスズキは、協力関係を構築するための協議を開始しているが、足元の販売面では、まさに殴り合いともいえる販売戦争が始まったことになる。

 

■売れる迫力系デザインを知り尽くしたダイハツ。選択肢豊富な6種類のデザインを用意

ダイハツ トール、トヨタ  ルーミー/タンク「リトルジャイアント」が新型トール、ルーミー/タンクのデザインコンセプト。ダイハツは、軽自動車のカスタム系モデルで高い支持を得ている。これは、地方で、小さな軽自動車がより大きく見えるような威圧感あるデザインが好まれていることを上手くデザインで反映できたからだ。このデザインコンセプトも、それと同じだ。つまり、ダイハツは売れるデザインを熟知しているのだ。

新型トール、ルーミー/タンクは、とにかく顔がデカく大きく見える。空力や燃費のことを考えるのなら、フロントのボンネット先端はできるだけ下げて空気抵抗を減らしたい。しかし、新型トール、ルーミー/タンクのボンネットは、路面に対してほぼ平行に近い。顔の大きさをアピールするためのデザインだ。さらに、大きな顔に強面系のデザインがプラスされ、とにかく迫力がある。

この迫力系デザインにLEDの光モノがプラスされている。LEDのヘッドランプなど贅沢な装備が用意され、迫力+ギラギラ系となり、とにかく夜でも目立つ。ダイハツが軽自動車で成功させてきた軽自動車のデザインノウハウが生かされている。これが、まさに売れるデザインなのだ。

さらに、顧客の選択肢を増やし、顧客の多様化するニーズにも対応。トール、 ルーミー/タンクには、それぞれ迫力あるフェイスデザインなどを採用したカスタムが用意されている。計6タイプを用意することで、ライバルのソリオと差別化している。

 

■幅広い年齢層に合う使い勝手の良さと、高い小回り性能

ダイハツ トール、トヨタ  ルーミー/タンクトール、 ルーミー/タンクは、コンパクトカーなので使いやすさが重要。まず、小回り性能を表す最小回転半径がひとつの指標になる。数字が小さいほど、小回りが効き、狭い駐車場や狭い道で使いやすい。トール、 ルーミー/タンクの最小回転半径は4.6m。ライバルのソリオが4.8mなので、トール、 ルーミー/タンクの機動性は高い。4.6mという数値は、軽自動車並みの優れた数値でもある。

こうしたコンパクトトールワゴンの顧客層は、子育て層から高齢者、初心者までとてもワイド。それだけに使い勝手は重要。トール、 ルーミー/タンクは、子供や高齢者などが狭い場所でのドアの開閉に便利な両側パワースライドドアをほぼ標準装備。後席のステップ高は366㎜と低床フロアを採用。広いドア開口面積もあり、高齢者でも乗り降りがしやすく姿勢変化もそれほど無く乗り降りが可能だ。また、後席は前後乗員間距離1,105mmとなっていて、コンパクトカーとは思えないゆとりある空間となった。

シートアレンジも豊富。フロントシートへのウォークスルー機能もある。子供をチャイルドシートに座らせてから、前方のシートへの移動することも容易だ。リヤシートスライドは240mmもあり、後席をスライドさせると、機内持ち込み用スーツケースなら4個程度を収納可能。さらに、フルフラットシートにもなり、車中泊などにも対応。そして、リヤシートをダイブインさせると、荷室は1,500mm超の長尺物も積載可能となり、自転車なども積載可能だ。

 

■燃費はソリオの勝ち! しかし、パワフルな1.0Lターボで差別化

ダイハツ トール、トヨタ  ルーミー/タンクトール、 ルーミー/タンクに搭載されたエンジンは2タイプ。新開発の直3 1.0Lターボエンジン(1KR-VET)と、自然吸気の直3  1.0Lエンジン(1KR-FE)だ。

1.0Lターボエンジンは、1.5Lクラス相当のトルク(140Nm)を2,400~4,000回転の幅広い回転域で発揮する。ライバルのソリオは1.2Lで118Nmなので、力強さではソリオより上をいく。ロングドライブが多い人や、上級車からのダウンサイザ―などは力に余裕があるターボモデルがお勧めだ。1.0L車は69ps&92Nmの出力となっていて、街中中心で使うスペックとなった。

燃費性能は、マイルドハイブリッド機能を装備するソリオが圧勝。ソリオの27.8㎞/Lに対して、トール、ルーミー/タンクはターボ車が21.8㎞/L、1.0L車が24.6㎞/Lとなっている。

こうした燃費値の差は、単なるエンジンの性能だけではない。トール、 ルーミー/タンクフロントは、フェンダーやバックドアを樹脂化し軽量化したものの、車重は1,100㎏。ターボ車なので、やや車重が増える傾向にあるが、ソリオの車重はわずか950㎏なのだ。さすがに、このコンパクトなボディサイズで150㎏の車重差は大きい。軽量化は、燃費だけでなく走りの質にも影響してくる。ソリオは、1.2Lながら、トール、 ルーミー/タンクのターボ車と遜色ない走りをみせるのは、こうした軽量化による効果だ。

 

■物足りない安全装備。スマートアシストⅡは全車標準装備化すべき!


安全装備では、ダイハツの自動ブレーキ関連の安全装備スマートアシストⅡが用意されている。しかし、全車標準装備化されておらず、一部グレードはオプション装備すらできない状態だ。スマートアシストⅡそのものも、今となっては少々微妙な機能で、対車両に対しての衝突回避・被害軽減が可能だが、歩行者に関しては警報のみ。対して、ライバル車のソリオにオプション装備されるデュアルカメラブレーキサポートは、歩行者検知式の自動ブレーキなので、対歩行者との衝突回避という面では、ソリオが優れる。ただし、後方への誤発進抑制機能は無く、前後の誤発進抑制機能をもつスマートアシストⅡが優れる。

残念ながら、トール、ルーミー/タンクやライバルのソリオ共に、安全装備に関しては高いレベルにあるとは言えない。最近では、高齢者を中心に多くの悲しい事故が起きている。高齢者だけでなく、どんなに注意していてもいつ自分が加害者や被害者になるか分からない。すでに、人間のミスを安価な価格で補ってくれる自動ブレーキ関連の安全装備がある。クルマは扱い方次第で凶器になる。そうした商品を売っているメーカーには、積極的にこうした安全装備を採用する責任がある。オプション設定だったり、そもそも設定がないなど、安全を顧客の財布の中身次第にして、メーカー自らの責任を放棄して売ってはいけない。

 

■ライバル、ソリオよりリーズナブルな価格設定。お勧めは、ターボのカスタムモデル


トール、ルーミー/タンクの選び方。新型トールGターボSAⅡの価格は1,803,600。G SAⅡの価格は1,684,800円。ライバルのソリオと比較すると、かなり安価な価格設定となっている。燃費や走行性能面で、ソリオを超えることができていないことを考えると、価格勝負ということになる。価格勝負の泥沼営業戦略で、まさに、コンパクトトールワゴンマーケットを根こそぎ奪い取る気合いを感じさせる価格設定だ。

リセールバリューがあるものならカスタムをチョイス。

トール、ルーミー/タンクは、それぞれにカスタム系があり、計6タイプが用意されているので、まず好みのデザインを選ぶことから始まる。短期の乗り換えなどで、リセールバリューを気にするのであれば、価格はやや高価になるが、カスタム系がお勧めだ。カスタム系のリセールバリューは、標準車に比べやや高めの傾向となることが多い。

そして、エンジンの選択。エンジンは、1.0Lターボと1.0Lの2タイプがあるが、お勧めは1.0Lターボ。1.0Lは、車重が重いトール、ルーミー/タンクでは、ややアンダーパワー気味。やはり、やや余裕のある1.0Lターボがお勧めだ。燃費は21.8㎞/Lと、少々物足りない。

Gグレードがおススメ

グレード選び。やはり、Gグレードがお勧めとなる。Xグレードは、マニュアルエアコンだったり右側スライドドアがパワースライドではなかったりするなど、かなりシンプルな設定で一般ユーザー向けではない。装備の満足度を考えるとGグレードがお勧めだ。ただ、このGグレードにも自動ブレーキ関連の安全装備スマートアシストⅡはオプション設定になっているので、必ず装備したい。今時、スマートアシストⅡくらいの安全装備は付いていて当然の時代なので、装備されていないとリセールバリューも期待できない。

その他、お勧めオプションはパノラマモニター(43,200円)、SRSサイドエアバッグ(運転席/助手席)&SRSカーテンシールドエアバッグ(前後席)〈リヤシートベルトプリテンショナー&フォースリミッター機構付(左右席)〉(49,680円)、LEDヘッドランプ(カスタムを除く64,800円)などだ。

一旦購入は待っても良いかも!?

トール、ルーミー/タンクは、急いで買う必要が無いのなら、しばらく待つといい。すでに、軽自動車のタントに歩行者検知式自動ブレーキであるスマートアシストIIIが搭載された。買い時は、このスマートアシストIIIがトール、ルーミー/タンクにも装備されてからだ。


■ダイハツ トール価格


・X 2WD 1,463,400円/4WD 1,636,200円
・X“SAⅡ” 2WD 1,528,200円/4WD 1,701,000円
・G 2WD 1,620,000円/4WD 1,792,800円
・G“SAⅡ” 2WD 1,684,800円/4WD 1,857,600円
・Gターボ“SAⅡ” 2WD  1,803,600円
・カスタムG 2WD 1,771,200円/4WD 1,944,000円
・カスタムG“SAⅡ” 2WD 1,836,000円/4WD 2,008,800円
・カスタムGターボ“SAⅡ” 2WD 1,965,600円

■トヨタ ルーミー/タンク価格

・X 2WD 1,463,400円/4WD 1,636,200円
・X“S” 2WD 1,528,200円/4WD 1,701,000円
・G 2WD 1,620,000円/4WD 1,792,800円
・G“S” 2WD 1,684,800円/4WD 1,857,600円
・G-T 2WD 1,803,600円
・カスタムG 2WD 1,771,200円/4WD 1,944,000円
・カスタムG“S” 2WD 1,836,000円/4WD 2,008,800円
・カスタムG-T 2WD 1,965,600円