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悩ましき2台 トヨタ ハイエース と 日産 NV350キャラバン

クルマ選びって楽しいですよね。でも、最後に選ぶ決め手ってなんだろう?って思うこと、ありませんか。このコーナーは、クルマ選びで悩み疲れたそんなアナタの背中をドーンと押しちゃいます。迷える子羊よ、存分に迷いたまえ・・・・

今回は国産ライバル車のなかでもガチンコ勝負の中のひとつ、日本の経済を支える1ボックスバン「トヨタ ハイエース」と「日産 NV350キャラバン」をお送りします。選ぶなら、どっち!?


◆単なる客貨運搬用バンに留まらない使用方法


4ナンバーの1ボックスバンとして長い歴史を持つハイエースとキャラバン。1967年にデビューしたハイエースの現行モデルは2004年に登場した5代目、一方1973年登場のキャラバンは2012年から現行型となる5代目(E26型)にスイッチ。名称がその際「NV350キャラバン」となりました。

4ナンバークラスの大型1ボックスは他社が撤退していることもあり、今やこの2台の寡占状態。送迎用の小さいバスとしての役割といった本来の客貨を運ぶトランスポーターとしての使い方以外にも、オフロードバイクの運搬、サーフィンの相棒、アウトドアユーザのギア、VIPサービスに活用などなど様々なシチュエーションで使用されるようになりました。そのため、商用車でありながら日常の足に使うユーザーを想定した装備充実の上級仕様がそれぞれ用意されているのも特徴となっています。

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◆1ボックスバンの雄、トヨタ ハイエース

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2012年にNV350が発売されるまでの時点では、このクラスのシェアはハイエースが80%、キャラバンが20%という状態でした。それほどまでに強かった現行ハイエースは、歴代ハイエースで培って来た使い勝手の良さや耐久性などをすべて投入したハイエースの集大成的なモデルともいえます。幾度かマイナーチェンジをしているとはいえ、基本デザイン2004年以来のまま。でも古くなったとは思えません。それはフォルムやディティールがクリーンだから、でもあるかと思います。

NV350キャラバンが登場するずっと前から進化の足は止めず、エンジンの改良による燃費の向上、安全対策の充実などバージョンアップにはぬかりがありませんでした。発売以来12年が経過したものの、いまだ一線級のパフォーマンスを持つ定番中の定番車です。


◆打倒ハイエースを掲げ猛追するNV350キャラバン

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1986年に登場し2001年までロングセラーとなって好調な販売を記録した3代目キャラバン(E24型)でしたが、2001年に満を持してフルモデルチェンジした4代目(E25型)では低いシェアに甘んじてしまうことになりました。その決定的な原因は、安全対策で延長したノーズゆえに狭くなった荷室でした。ビジネスバンの市場はシビア。それまで積めたものが積めなくなった、というだけで、あっという間に売れなくなってしまうのですね。道具感に徹した外装も敗因と言われますが、やはり室内長が短くなったことが理由でしょう。前述のようにシェアはどんどん下がり、ついに8:2となってしまったことを受け、日産は決断しました。強い意志で打倒ハイエースを掲げ、なりふり構わぬ猛追をかけたのです。

そして2012年現行型が登場しました。外観が似ているとも言われますが、8年新しいぶん面や線の練りこみ感がアップし、質感も高くなっています。そしてハイエースを倒すべく最上位バージョン「プレミアムGX」を用意しました。乗用車同様にスマートキーやプッシュボタン式エンジンスターターも装備、まさにハイエースの「スーパーGL」にガチンコ勝負を挑んだのでした。そうそう、荷室長さもハイエースよりも5cm伸ばして来ました!日産の意地がかいま見れます。

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◆決め手は、どこに!?


この2台、ガチンコ対決であるがゆえに、グレード構成、ボディバリエーションも、価格帯もかぶります。では決めては何か、といいますと、そのひとつは、(カタログ値ですが)燃費。例えばNV350の2.5リットルディーゼルターボの燃費12.2km/Lはハイエースの3リットルディーゼルターボの11.4km/Lよりも良いのです。それと、徹底したフォロワーであるNV350キャラバンは、デザイン、装備、使い勝手、積載性能、ハンドリング、乗り心地などあらゆるところに打倒ハイエースの息吹が感じられる出来になっていることでしょう。

ですが、長年の熟成が進んだ「完成系」でもあるハイエースが古くなっているということは全くないのです。繰り返されて来た変更によって、設計年次の古さは実はあまり感じません。NV350が発売されて4年がたったいまなおハイエースはトップを快走しています。それがハイエースが古くなっていないという最大の理由となっていると思います。


◆迷える子羊よ、迷いは消えただろうか


ということで、迷っているアナタ、いかがでしたでしょうか。気になったらぜひ現車に乗り、触れ、いろいろ感じてみてくださいね。
くるま選びは楽しくもあり、そして悩むもの。これからもいろいろな視点でのクルマ選びをこのコーナーで提案出来たら、と思います。


【イラスト/文 遠藤イヅル】
フリーのカーイラストレーター/ライター。東京都出身。自動車雑誌、WEBサイトにクルマをテーマにしたイラストや記事を多数提供。世界各国の生活感があるクルマを好み、20年間で18台のクルマを乗り継ぐ。クレイジーなほど深くて混沌としたクルマ知識を持つ元自動車系デザイナー。自身のクルマ体験をもと、独創的な視点で切り込むイラストやインプレッション記事は、他にないユニークなテイストとして定評がある。2015年7月現在の愛車はプジョー309SI。最新の掲載誌は遠藤イヅルのfacebookで確認!

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