「みんなの街のはたらくくるま」第8回 マツダ パークウェイロータリー26 マイクロバス
わたしたちの生活を支えている「はたらくくるま」にスポットを当ててイラストとともにご紹介するこのコーナー。第8回は、乗ったことが無いわけではないけれど、日常生活ではあまり使う機会の無い「マイクロバス」をご紹介します。まず思い浮かぶのは旅館・ホテル・ゴルフ場の送迎、部活の遠征用、ロケバス、幼稚園バス、工場・会社への送迎バスといった、料金を徴収しない「自家用」での運用でしょうか。
◆かつては各社がラインアップしていたマイクロバス
マイクロバスは、1950年代にトラックのシャーシの上に箱形の車体を載せて登場した小型の乗り合いバス。大型で専用設計のバスほどのサイズが不要だったり、道が狭く入れなかったりする場合、もしくは先述のような需要もあって、こんにちに至るまである一定の市場を形成しているジャンルです。乗車効率を考えて早々にリアエンジン式に移行したバスとは異なり、マイクロバスは現在でもなおフロントエンジンのトラックシャーシに車体を構築する方法で製造されているのも特徴です。
一般に普及したのは1960年代。当時はまだマイクロバスという名称ではなく、ライトバス、コーチ、ライトコーチなどと呼ばれていましたが、のちにマイクロバスという名前が定着しました。2016年現在マイクロバスを製造しているのはトヨタ、日産、三菱、いすゞの4社(厳密にはいすゞは日産からのOEMなので、3社)のみとなってしまいましたが、かつてはプリンス、ダイハツ、マツダ、など乗用車メーカー各社がラインナップにマイクロバスを持っていたのですから驚きです。
◆なんとロータリーエンジンを搭載してしまった
中でもマツダは比較的近年の1997年までマイクロバスを販売していました。その名は、パークウェイ。初代は1972年から1982年、2代目は1982年から1997年の製造でした。初代パークウェイ(パークウェイ26)は、未来感たっぷりのボディが大きな特徴だったマツダの「マツダ ライトバス」の後継で、外観こそ普通になりましたが、2.5リットルディーゼルが投入されるなどパワーアップも果たし、使い勝手は大幅に向上しました。そんなパークウェイ26ですが、注目すべきは1974年に追加された「ロータリー」です。
下はファミリアから上はロードペーサーまで各車にロータリーエンジンを搭載し、「ロータリゼーション」化を進めていたマツダは、なんとマイクロバスにも「パークウェイロータリー26」としてロータリーエンジンを積んでしまったのでした!
◆レブ6500rpmのバス!クーラー車は2つのロータリー心臓!
ロータリーエンジンは654cc×2ローターの13B型で、最高出力135ps/6,500rpm、最大トルク18.3kgm/4,000rpmを発生。ロータリーエンジンといえば低公害対策の「AP」(アンチポリューション)が思い出されますが、パークウェイ用のエンジンもAP仕様でした。パワーがありスムーズなエンジンのフィーリングがもたらす加速と静粛性は、他社への大きなアドバンテージとなりました。
(クリックで拡大)しかし一方で、当時のロータリーエンジンの欠点でもあった燃費の悪さや、そもそもロータリーエンジンは高回転型のためマイクロバスに必要な低速トルクも不足していたこともあり、パークウェイロータリー26の販売は不振。44台が販売されたに留まりました。ですが、世界唯一のロータリーエンジン搭載マイクロバスとして記憶に残したい「隠れた名車」であることは間違いありません。
あ、あとクーラー付きの場合、クーラー用に10A型ロータリーエンジンがサブで積まれていたということ、クーラーが積まれるとサブエンジン搭載の関係上定員が20名になってしまう(車名は26なのに)こと、バスなのにタコメーターのレブリミットが6500rpmもあったことも、ぜひ覚えておいてください(笑)。
【イラスト/文 遠藤イヅル】
フリーのカーイラストレーター/ライター。東京都出身。自動車雑誌、WEBサイトにクルマをテーマにしたイラストや記事を多数提供。世界各国の生活感があるクルマを好み、20年間で18台のクルマを乗り継ぐ。クレイジーなほど深くて混沌としたクルマ知識を持つ元自動車系デザイナー。自身のクルマ体験をもと、独創的な視点で切り込むイラストやインプレッション記事は、他にないユニークなテイストとして定評がある。2015年7月現在の愛車はプジョー309SI。最新の掲載誌は遠藤イヅルのfacebookで確認!
RX-7のカタログ情報
- 平成9年10月(1997年10月)〜平成15年4月(2003年4月)
- 新車時価格
- 289.8万円〜401.5万円
RX-7の在庫が現在1件あります
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