国産セダンマーケットでは、一人勝ち状態のクラウン。その理由は「国内専用車」


トヨタクラウン










■あのクラウンに70周年記念の特別仕様車が登場

トヨタは、クラウン“アスリート”シリーズと“マジェスタ”シリーズに特別仕様車“J-FRONTIER”を設定し発売を開始した。この特別仕様車は、トヨタ店創立70周年を記念したモデルになる。

<トヨタの魂「トヨタ店」>


トヨタ店は、トヨタの中でも最も歴史のある販売店で1946年に設立した。「日本の道に日本のクルマを走らせたい」というトヨタの思いに共感し、戦後間もない時期に立ち上がって以来、フロンティア精神のもと、自動車産業の発展のためにトヨタ車を売り続けてきた。トヨタ店は、クラウンやランドクルーザーなど高級車を中心に扱うチャネル。そんなトヨタ店のフロンティア精神をイメージしたモデルが特別仕様車“J-FRONTIER”ということになる。

<トヨタと共に走ってきたクラウンの歴史>


特別仕様車のベースとなるクラウンは、2012年12月にフルモデルチェンジ。現行モデルで14代目となっていて、トヨタ車の中でも歴史あるモデル。初代クラウンのデビューは1955年だ。

<現行クラウンの評価>


この現行クラウンは、従来のモデルからのイメージを大きく変えたモデルだ。その大きな理由はデザイン。冠婚葬祭何でもOK。目立ち過ぎずに高級車としての存在感を保っていたのが従来のクラウンだった。ところが、現行のクラウンは、かなりアグレッシブな顔つきになった。イナズマ型のグリルフレームデザインは、少々やり過ぎ? とも思えるほど。さらに、その派手なグリルは、バンパーのボトム部まで続く巨大なものだ。大げさに言えば、グリルが走ってくるようにも見える。この変貌ぶりには賛否両論あるようだ。下品という印象をもつ人もいれば、迫力があってカッコいいという人もいる。欧州車などは、こうした威圧感のある顔が主流ということもあり、マーケットには高く評価され売れている。また、思い切ったデザイン変更をしたことで、従来の顧客よりやや若い顧客が増えたという。人気グレードは、よりスポーティな設定としたアスリートだ。

トヨタクラウン

<現行クラウンの性能>


クラウンのエンジンラインアップは4タイプ。V6の2.5Lと3.5L、直4 2.0Lターボのガソリン車と直4 2.5ハイブリッドとなる。V6 2.5Lと3.5Lは、基本設計が古くアイドリングストップ機能さえ付いていない。そのため、燃費が悪い。また、2.0Lターボ車も燃費は標準レベルだが、燃料がハイオク仕様となる。ハイオク仕様は日本では敬遠されがち。ガソリン代も高くなるので、燃費は平均的でも燃料費は高くなる。

<ハイブリッド車が「高コスパ」>


全般的にガソリン系エンジンは、燃費性能や燃料経済性が物足りない。そのため、クラウンの売れ筋はほとんどがハイブリッド車となる。ハイブリッド車は、23.2㎞/Lという低燃費を誇り、ハイブリッド車らしい高い静粛性ももち高級車らしい仕上がりとなっているので、このモデルが売れるというのは当然の結果だろう。

■“J-FRONTIER”は、日本のモノづくり技術にこだわった

特別仕様車“J-FRONTIER”は、アスリートのみの設定で、2.0Lターボと2.5Lハイブリッド車に用意された。他のガソリン車は売れていないので、当然の選択といえる。
トヨタクラウン

<日本人のニーズをわかっている唯一のセダン、それがクラウン>


このクラスの国産セダンでクラウンは、完全に一人勝ち状態。他のセダン需要は、ほとんど輸入車に奪われている。クラウンが一人勝ちになっている理由のひとつは、ほぼ国内専用車であることだ。全幅も1,800㎜に抑えて、都市部に多い立体駐車場の全幅制限内となっている。こうした日本の道路事情での使いやすさや、日本人の好みを徹底的にこだわって開発されているから売れる。他の国産メーカーは、グローバル化という聞こえの良い言葉のでごまかし、日本マーケットを無視し、北米や中国向けに開発した結果、日本で売れなくなった。需要がないことも確かなのだが、国内マーケットにあったクルマを導入することをやめ、マーケットを育てようということをしなかったことも、クラウン以外の国産セダンが売れない理由だろう。

■特別仕様車“J-FRONTIER”は、「日本を夢中にするクルマ」を目指した。

トヨタクラウン

<内装に表れるメイドインジャパンの華麗さ>


特別装備されたレイヤーウッドステアリング(本木目)は、2色のメイプル木材プレートを重ね合わせ、特殊技術によりステアリング形状に曲げる。その後、職人による削りだしと塗装と磨き込みで、滑らかな肌触りとともに美しい色合いを生み出している。

<日本のモノづくりの技術を用いたモデル>


シート表皮は、ウルトラスエード×本革の組み合わせ。超極細繊維で構成されたスエード調人工皮革、ウルトラスエードを採用。座り心地や手触りにこだわり、加えて耐久性、ホールド感など、機能性にも配慮している。色や柄とも、なかなか洗練されていてやや若々しさがあるシートだ。

<マジェスタは更なる高級感>


この“J-FRONTIER”には、マジェスタにも用意された。レイヤーウッドステアリングに加え、インテリアはプレミアムナッパ本革シート表皮を装備。傷の少ない良質の原皮を使用し、塗装の膜を薄くし丁寧になめし、皮本来の柔軟性、風合いを引出した。クラウンに対して、マジェスタのシートは、よりラグジュアリー感のある重厚な仕様となっており、トヨタブランドのフラッグシップらしい仕上がりだ。

<改良点の注目は、ようやく着いた安全装備>


特別仕様車の投入と同時に、一部改良も行われた。ようやく歩行者検知式自動ブレーキ関連の安全装備「トヨタ セーフティセンスP」が全車標準装備化された。トヨタは、こうした自動ブレーキ関連の安全装備の装着が大きく遅れている。これで、ようやくライバル車と同等レベルの安全性能を手に入れたことになる。評価したいのは、全車に標準装備化されたこと。こうした安全装備は、普及させなくては意味がないからだ。

■気になるコストパフォーマンスは

特別仕様車クラウン アスリートS(ハイブリッド車)の価格は5,200,200円となっている。ベースのアスリートSに対して約17万円高。装備向上分を加味すると、トヨタにしてはなかなかお買い得感のある設定となった。クラウンの購入を考えているのなら、この特別仕様車を中心に考えてもいいだろう。また、クラウンはリセールバリューが良いので、短期の乗り換え時にも有利となる。

■トヨタ クラウン“J-FRONTIER”/クラウン マジェスタ“J-FRONTIER”価格

"・クラウン特別仕様車アスリート S-T“J-FRONTIER” 4,757,400円
・クラウン特別仕様車アスリート S“J-FRONTIER” 5,200,200円
・クラウン特別仕様車アスリート S Four“J-FRONTIER” 5,416,200円
・クラウン特別仕様車マジェスタ“Fバージョン・J-FRONTIER” 7,149,600円
・クラウン特別仕様車マジェスタ Four“J-FRONTIER” 6,739,200円"