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「もやもやクルマ選び」第7回 トヨタ プリウス(4代目)

レアでマニアックなだけがクルマじゃない。新型車たちにも、世間から忘れられた中古車たちにも、クルマ好きのぼくらをワクワク「もやもや」させる悩ましい魅力を持つクルマがたくさんあります。第7回は「4代目プリウス」をお送りします。


◆熟成を重ねる国民車「プリウス・スタイル」


いまや国民車といっても過言ではない、トヨタの誇るハイブリッドカー、プリウス。同門のアクア、ホンダのハイブリッドカー・フィットHVなどとともに、日本の新車販売台数の上位を争っています。1997年に初代(俗にいう10系)が登場、2003年には2代目(20系)、そして2009年には3代目(30系)へとモデルチェンジを行い、熟成を重ねました。

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2代目以降は初代のセダンボディとは異なり、5ドアハッチバックとなり、ボンネットからルーフに一直線にかけあがるライン、頂上あたりにカーブの頂点が来る山型ルーフ、そしてすとんと落とされたテールエンドは、いわば「プリウス・スタイル」とでもいえる個性にもなりました。もちろんスタイルだけでなく居住性の向上、装備の充実、そしてもちろん燃費性能、環境性能も着実に進歩を続けて来ました。


◆デザイン以上に走りの質が大きく改善

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そして2015年8月、4代目となる新型プリウス(50系)がアメリカ・ラスベガスでベールを脱ぎ、同年12月から日本でも販売が開始。大胆な形状のヘッドライトとテールエンドを持つ新しいプリウスは、大きな話題となりました。奇抜なディティールに目を奪われがちですが、フォルムの大きな変更にも注目です。テールは伸ばされ、ボンネットは先代よりは独立気味に。「山型ルーフ」も、少しなだらかになりました。もちろん燃費数値も向上。燃費スペシャルともいえるグレードでは、カタログ値でなんと40.8km/リットルを達成しています。

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ところで、4代目プリウスは、2代目のキープコンセプトだった先代とはガラリとイメージを変えてきてきたように感じています。それは、前述の斬新かつ大胆なデザインだけではなく、そのキャラクターです。燃費のために乗り心地や走り、視界の良さなどといった「運転しやすさ」を犠牲にしてきた、とも言われるこれまでのプリウスですが、今度のモデルは、その「プリウスの弱点」とも言える部分にメスを入れて来たからです。


◆エコだけではなく高品質な走りのクルマ


copyright_izuru_endo_2016_09_prius_gen4_1280_890(クリックで拡大)ハンドリングが向上してコーナリングが楽しくなり、これまでではちょっと曖昧だったステアリングフィールも改善。全体的に走りの質感は良くなっています。また、窓が小さくダッシュボードの上端が高かった3代目とくらべ、新型では視界向上と車両感覚の掴みやすさは確実に改善されています。

4代目のポイントは、これまで「エコカーだからいろいろ我慢しなくちゃ」といった要素が排されたことです。これまでは、やはりいくらプリウスが売れても、どこか「ハイブリッドカー」は特別なもの、という印象があったように思うのです。

でも、今度のプリウスは、まったく新しい大胆で斬新なクルマではありながら、「やっとカローラのようなふつうの実用車」になりました。もはや「エコカー(ハイブリッドカー)が当たり前のものとなったのだ」ということを、元祖ハイブリッドカーであるプリウスは、登場以来約20年かけ、自らが高らかに宣言出来るようになったと言えるのです。


【イラスト/文 遠藤イヅル】
フリーのカーイラストレーター/ライター。東京都出身。自動車雑誌、WEBサイトにクルマをテーマにしたイラストや記事を多数提供。世界各国の生活感があるクルマを好み、20年間で18台のクルマを乗り継ぐ。クレイジーなほど深くて混沌としたクルマ知識を持つ元自動車系デザイナー。自身のクルマ体験をもと、独創的な視点で切り込むイラストやインプレッション記事は、他にないユニークなテイストとして定評がある。2015年7月現在の愛車はプジョー309SI。最新の掲載誌は遠藤イヅルのfacebookで確認!

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