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「気になるくるま」第5回 ランチア Y(初代イプシロン 1994)

ひとことでくるまと言っても、誰にも知られていないようなマイナーなものから、みんなの憧れのようなスーパーカーまで、実に様々です。そんなクルマたちの中から、マニアックカー・マニアでもある遠藤イヅルが、独断と偏見で選び出したくるまたちをイラストとともにみなさんにお送りいたします。第5回は、デザイナーのイメージカットがそのまま実車になったと言われるデザインを持つ、ランチア Y(初代イプシロン)をお送りいたします。


◆歴史あるメーカーの小さな高級車


長い歴史を持つイタリアの高級車メーカーであるランチアは、独創的な設計と品質の高さを誇りとしていましたが、技術至上主義のメーカーによくある話なのですが経営状態が悪化、フィアットが救済の手を差し伸べてからはフィアットグループの中でも高級車ディビジョンとして存在感を得ていました。高級車メーカーといっても積極的にラリーやレースに参戦してスポーティさもアピールしていたほか、小さな高級車もラインナップしていたことが特徴です。

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その小さな高級車が、イプシロンです。現在3代目となった同車は、リッターカークラスでありながら高い品質と上質な内外装を持たせた“プレミアムコンパクト”ですが、その原点が今回取り上げる初代イプシロンです。ちなみに初代のみ、イプシロンのつづりYpsilonの頭文字「Y」が正式な車名なんですよ。


◆デザイナーの個性が具現化した内外装


初代イプシロンはランチアらしい高級素材を用いた内装や、ベースとなったフィアットとは異なる小型車らしからぬしっとりとした操縦感覚を持っておりいかにも上質な小型車である、という一台なのですが、それ以上に大きな個性がありました。それが、内外装のデザインです。

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デザインしたのはかつて、フェラーリのデザインで有名なピニンファリーナに在籍し、当時ランチアのデザインセンター(イタリア語でチェントロ・スティーレ)のチーフだったエンリコ・フミア。円弧を描いてボディサイドを走る黒いールなど見所が多くモダンとクラシックが融合した不思議なデザインは、彼が描いた初期のスケッチとほとんど変わっていないと言われています。なお、センターメーターを採用したダッシュボードも斬新で、外装デザインに見合ったものでした。


◆カラーオプションで自分だけのYに


初代イプシロンの“目玉”はまだあります。それが、「カレイドス」です。標準のボディカラー12色のほかになんと100色ものオプションカラーが用意され、数種類ある内装色と組み合わせることも可能でした。これによって個性溢れる自分だけのイプシロンを手に入れることが出来たのです。カレイドスは日本に導入されたイプシロンでも対応していたことも特筆に値します。

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2002年に2代目にモデルチェンジしたイプシロンは、初代とは趣を変えてランチアの最上級車「テージス」の雰囲気を取り入れた重厚感のあるデザインとなりましたが、3ドアのみ、センターメーターを採用するなど初代の要素も残していました。そして現在の3代目に至り、日本ではクライスラー・イプシロンとして導入されています。そうそう、2代目以降の正式な車名は「Ypsilon」となっています。


【イラスト/文 遠藤イヅル】
フリーのカーイラストレーター/ライター。東京都出身。自動車雑誌、WEBサイトにクルマをテーマにしたイラストや記事を多数提供。世界各国の生活感があるクルマを好み、20年間で18台のクルマを乗り継ぐ。クレイジーなほど深くて混沌としたクルマ知識を持つ元自動車系デザイナー。自身のクルマ体験をもと、独創的な視点で切り込むイラストやインプレッション記事は、他にないユニークなテイストとして定評がある。2015年7月現在の愛車はプジョー309SI。最新の掲載誌は遠藤イヅルのfacebookで確認!

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